岡山駅から特急列車「しおかぜ」で2時間強。今治市は愛媛県の北東部で瀬戸内海に面する、人口約15万人の城下町。第二次大戦後は新産業都市に指定され、タオルや造船などの工業で発展した。駅弁は1930(昭和5)年からの駅弁屋が、改札脇の専用売店で駅弁を売り、タイを使う駅弁で知られる。1924(大正13)年2月11日開業、愛媛県今治市北宝来町一丁目。
今治駅弁のフラッグシップ。1986(昭和61)年の発売か。押寿司の雰囲気がある、木枠がしっかりした長方形の容器を、ボール紙のパッケージに詰める。中身は容器に笹の葉を1枚敷き、酢飯を詰め、大葉を1枚貼り、タイの身を一面に敷き詰めるもの。身が透けて見える、全国の押し寿司駅弁で最も見た目が美しい駅弁ではないだろうか。価格は2002年時点で1,160円、2010年時点で1,260円、2014年時点で1,350円、2020年時点で1,400円。
来島海峡はマダイの漁場。干満差の大きい瀬戸内海において、本四架橋のルートになるほど島々の間隔が狭まるこの箇所では、最大で秒速約5mという目視が可能なほど強い潮流が発生する。そんな航海の難所でもまれたタイは、身が引き締まり美味いという。
※2020年6月補訂:写真を更新2011(平成23)年1月22日に購入した、今治駅弁のパッケージ。上記の2020年のものや、下記の2002年のものと、同じものといえる。
2002(平成14)年1月20日に購入した、今治駅弁のパッケージ。上記の2020年のものや2002年のものと、同じものといえる。
今治駅に3種類ある鯛めし駅弁のうち、最も安いタイプ。長方形の容器にタイの炊込飯を詰め、タイのほぐし身を振り、えび天、カニかまぼこ、普通のかまぼこ、昆布巻、奈良漬などを添える。ふんわりおいしいタイ御飯で、この飯ばかりをシンプルに味わえる。価格は2002年時点で740円、2010年時点で840円、2014年時点で880円、2020年時点で930円。
※2020年6月補訂:写真を更新し値上げを追記し解説文を手直し2002(平成14)年1月13日に購入した、今治駅弁の掛紙。上記の2020年のものと、同じものといえる。中身も変わらないが、当時は独特な形状のプラ容器を使っていた。
930円と1,050円と1,300円で3種類ある、今治駅の鯛飯駅弁のうち、最も高額なもの。この駅弁に専用のボール紙箱には、明治時代の東海道本線の駅弁掛紙と同じような姿で、赤いタイが魚拓で飛び跳ねる。中身は3種類で同じタイの炊込飯に、有頭海老、タケノコ煮とシイタケ煮とがんもどき、海老天、ホタテ風味かまぼこフライ、玉子焼、タコときゅうりの酢の物、酢れんこん、煮豆、オレンジ、奈良漬。おかずが豊富な鯛飯駅弁という、今は珍しいタイプの駅弁。
※2021年2月補訂:写真を更新し解説文を手直し2007(平成19)年1月14日に購入した、今治駅弁のパッケージ。上記の2020年のものと同じ。中身もほとんど同じだった。
2004(平成16)年1月頃の発売か。ヒョウタン型の容器を使用、3本の赤い輪ゴムでしばり割りばしを置いて、瀬戸大橋尾道・今治ルート「しまなみ海道」と駅弁の中身の写真を印刷したシールと、食品表示のシールで貼り付ける。中身は穴子やタコや海老などの小片が載るちらしずしと、海老天や巻昆布や蒲鉾、デザートにミカンゼリー。価格は2010年時点で1,050円、2014年時点で1,100円、2020年時点で1,200円。
1999(平成11)年5月1日全通のしまなみ海道は、瀬戸大橋3ルートのうちひとつ。長大橋2本で事足りた神戸・鳴門ルートや、連続する長大橋と高架橋で一気に横断する1988(昭和63)年全通の児島・坂出ルートと異なり、瀬戸内海に浮かぶ島々を10本の橋でくねくねとつなぐ道路。島内道路の整備を待たず、橋梁の完成をもって全通としたため、開通後の数か月間は大渋滞が発生、定時性を失った高速バス路線は多くが廃止され、マイカー客からそっぽを向かれる最悪のスタートとなった。景観の多様さと3ルートで唯一自転車や徒歩で利用可能という売りで、どこまで挽回できるか。
※2020年6月補訂:値上げを追記2004(平成16)年1月11日に購入した、今治駅弁の掛紙。上記の2018年のものと、値段以外は何も変わらない。
今治駅で「幕の内弁当」(890円)「さくら」(1,100円)「さざんか」(1,150円)と3グレードもある幕の内駅弁の、最も安価なもの。しかし経木折に掛紙をかけて、ひもでしばる姿は、3グレードの中で最も駅弁らしいものである。
中身は日の丸俵飯に、焼サバ、かまぼこ、玉子焼、海老天、ウインナー、タケノコ煮、肉団子、酢れんこん、きんぴらごぼう、昆布、オレンジ、煮豆、漬物。御飯の多さやおかずの多種さで、これは幕の内駅弁として古典的な内容ではないかと思う。
※2021年2月補訂:写真を更新し解説文を手直し2009(平成21)年5月24日に購入した、今治駅弁の掛紙。上記の2020年のものと同じ。容器も中身も同じ。変わらぬ姿で存在し続けるのは、それだけ固定客が付いているということか。
2007(平成19)年1月14日に購入した、今治駅弁の掛紙。瀬戸大橋の尾道・今治ルート、通称「しまなみ海道」の来島海峡大橋を描いていると考えられるが、何か少し足りない。容器や中身は、上記の「瀬戸内幕の内弁当」と同じだった。
発泡材製の小柄で薄めな惣菜容器に、透明なふたをして、商品名と調製元のみを書いた紙帯を締め、割りばしごとラップで包んでから食品表示ラベルを貼る。中身は買う前から見えているとおりの穴子飯。タレで染まる御飯の上に、アナゴ蒲焼きのきれいな刻みが並び、錦糸卵やインゲンなどを添えるもの。ふんわりアナゴがぎっしり詰まり、御飯との相性も良く、食べて良かった地元の弁当。価格は2009年の購入時で950円、2014年時点で1,000円、2020年時点で1,100円。
※2020年6月補訂:値上げを追記小さな握り寿司かバッテラ向けに見える細長い容器に、酢飯を詰め、錦糸卵で覆い、アナゴとレンコンとシイタケを刻んで散らし、グリーンピースとニンジンと紅生姜も入れる。アナゴは入っているものの、分量や存在感は風味付けまで。この駅で他の駅弁を見ていると、これは割高に思えた。
今治駅で「幕の内弁当」(890円)「さくら」(1,100円)「さざんか」(1,150円)と3グレードもある幕の内駅弁の、中間のもの。現物にはどこにも「さくら」の表記がなく、専用のボール紙箱には「特製お好み弁当」と書かれる。加えて「さざんか」とは容器を共用するので、外見からの区別はできない。
パッケージには今治(いまばり)城、しまなみ海道(かいどう)、大山祇神社(おおやまづみじんじゃ)、来島海峡(くるしまかいきょう)のイラストと、簡単な解説が描かれる。
中身は日の丸御飯に、トンカツ、鶏唐揚、エビフライ、ウインナー、紅白のかまぼこ、玉子焼、カニかまぼこ、焼サバ、ミートボール、タケノコ煮、がんもどき、きんぴらごぼう、煮豆、昆布、オレンジ。千円を超える弁当の高級感がなくても、内容はなかなかの盛りだくさん。昭和時代の幕の内駅弁なのだろう。
※2021年2月補訂:写真を更新し解説文を手直し2007(平成19)年1月14日に購入した、今治駅弁のパッケージ。上記の13年後と、まったく同じ。中身も変わらない。鉄道と駅弁がまだ元気だった昭和時代ならともかく、いまどき幕の内弁当が3種や4種もある駅など、そうあるものではない。
駅弁売店ではなくコンビニで売られる、駅弁屋が調製したおにぎり。直径約10センチの直巻きおにぎりを1個、ラップでぐるぐる巻きにして、中身の名前と食品表示ラベルを貼り付ける。味は普通のコンビニおにぎりだが、名前と見栄えで印象に残る。人吉駅のあれよりは、インパクトがひとまわり小さいのだが。
入手状況から1977(昭和52)年の調製と思われる、昔の今治駅弁の掛紙。ごらんのとおり、とにかく何の情報もない紙なので、普通の人が見ても駅弁の掛紙であるとは思わないだろう。