岡山駅から特急列車「しおかぜ」で3時間弱。松山市は愛媛県の中央で瀬戸内海に面した、人口約51万人の城下町で県庁所在地。四国最大の都市として商工業で栄えるほか、古湯や食文化や文学作品で年に500万人以上の観光客が訪れる観光地でもある。駅弁は1938(昭和13)年創業の駅弁屋が2018年4月に事業を停止、以後は岡山駅の駅弁屋がキヨスクへ弁当を卸す。1927(昭和2)年4月3日開業、愛媛県松山市南江戸1丁目。
松山駅を代表する駅弁。1955(昭和30)年に「五目めし」の名前で発売、1958(昭和33)年に現在の名称「醤油めし」になったそうな。1960(昭和35)年の発売とする資料もある。長方形の容器の中身は、醤油飯の混ぜ御飯の上に鶏・椎茸・レンコン・フキなど釜飯のような具が載る。
醤油めしとは、伊予地方で昔から親しまれる郷土料理で、こいくちしょうゆを使った炊込飯。見るからに、聞くからに、なんとも塩辛そうではあるが、醤油はほのかに香るだけでまったく刺激はなく、むしろ甘みを感じた。ボール紙製のふたには、伊予の方言が相撲の番付表を模して並ぶ。価格は2007年の購入時で730円、2017年時点で800円、下記の再発売時で780円、2023年時点で880円。
この駅弁は、調製元が2018(平成30)年4月に事業を停止したことで失われたが、岡山駅弁の三好野本店が引き継ぎ、8月から松山駅での復刻販売が実現している。
※2023年5月補訂:値上げを追記2022(令和4)年8月1日に松山駅や岡山駅で発売か。駅弁の名前のとおり、スリーブの写真のとおり、長方形のプラ容器の3区画に、こいくちしょうゆの炊込飯を五目の具材で覆う「松山名物醤油めし」、味飯にタイときんぴらごぼうと紅生姜を載せた「瀬戸内産真鯛の塩麹焼き」、味飯をに焼穴子を貼り付けて芽れんこん梅酢漬を添えた「焼き穴子」を詰める。名前も内容も地味になりがちな醤油飯に、別物を仕込んで派手に華やかにして、この程度の値段なら納得の一品。松山駅の駅弁は入荷数が少ないのか、売り切れの状態しか見たことがないので、予約をするか催事で買うのが吉。
2021(令和3)年9月に松山駅と岡山駅と駅弁催事で発売。駅弁の名前のとおり、容器の3区画に醤油めしや茶飯を詰め、真鯛の甘辛揚げときんぴらごぼうと紅生姜、真鯛の塩麹焼きと、真鯛の醤油漬けにイクラや海苔やゆず皮、鶏肉やシイタケやタケノコや山菜に錦糸卵で、それぞれを覆う。駅弁の名前どおり、スリーブの写真どおりの内容。食べれば魚の焼き物のお弁当という印象。名前も見た目も内容も、そして利幅でも催事では苦戦しそうな「醤油めし」にかわり、こちらが活躍するのだろうと思う。1年間弱の販売か。
※2023年4月補訂:終売を追記上記の駅弁「醤油めし」の、2007(平成19)年時点での姿。見た目や内容は変わらない。調製元の事業停止で終売となるまでは、経木折に掛紙をかけていた。
※2019年8月補訂:新版の収蔵で解説文を整理上記の駅弁「醤油めし」の、2002(平成14)年時点での姿。プラ製容器にボール紙のふたをかける現代風の姿が、上記のとおり後に経木折と掛紙を使う古風な姿に変わることになる。当時のふたは醤油色であり、名前と見た目で辛そうなものだった。
※2019年8月補訂:新版の収蔵で解説文を整理2017(平成29)年秋の新作。デパートの駅弁催事で松山駅の駅弁として売られ、パッケージの記載でも愛媛県の駅弁に見えて、調製元は岡山駅弁の三好野本店であり、主に東京都内の駅弁売店で売られるという、属地不詳な存在でデビューした。岡山駅の駅弁と紹介されることもある。
中身は真鯛丼とブリ丼と穴子丼のセット。3区画のそれぞれで、鯛だし入り味飯に愛媛県産の真鯛のほぐし身とイクラを載せ、白飯に錦糸卵で覆い愛媛県産みかんブリの西京焼きと紅生姜を載せ、味飯に刻み海苔を振って穴子の蒲焼きを載せる。おかずがないので雑味と色彩と価格が抑えられた印象。価格は2017年の発売時や2020年の購入時で1,000円、2021年時点で1,100円。2021年までの販売か。
2018(平成30)年4月に、松山駅の駅弁屋が事業を停止してすべての駅弁が消え、8月に「醤油めし」をこの岡山駅の駅弁屋が松山駅で復刻販売し始めた。この駅弁もその時点で、松山駅へ輸送されている模様。
※2022年4月補訂:終売を追記2018(平成30)年1月28日に購入した、松山駅弁あるいは岡山駅弁のスリーブ。この駅弁の発売時は、こんな絵柄だった。価格や中身は上記の2020年のものと、まったく同じ。
2016(平成28)年秋の新作か。発売時は主に東京都内で売られたようで、販売箇所によって岡山駅弁とも松山駅弁とも記された。調製元が岡山駅の駅弁屋で、松山駅の駅弁屋が消えたことでこの駅の駅弁も作ることになり、2018(平成30)年8月に名実とも松山駅弁の一員になった。スリーブには商品名や宣伝文で愛媛の名が何度も現れ、愛媛県のゆるキャラ「みきゃん」もいるので、現物では愛媛県の駅弁にしか見えない。
中身は白御飯をブリ西京焼2切れとも貝煮で覆い、玉子焼、人参と椎茸の煮物、紅生姜を添えるもの。味噌が味と香りでおいしい焼き魚丼も、みかんや柑橘類の風味がどこにもないのは、使うのはミカンでなく、みかんの皮などを餌に混ぜて養殖した「みかんブリ」だから。今の人気は肉駅弁で、輸送駅弁が肉々しい駅弁売店で買ったので、こんなお魚の駅弁が存在することに清涼感があった。2018年までの販売か。
養殖魚に柑橘類を食べさせると、身の臭みを抑えたり、切り身の変色を抑えたりする効果があるらしい。愛媛県宇和島市の水産加工会社では、2012(平成24)年に「みかんブリ」「みかん鯛」、2014(平成26)年に「みかん銀鮭」を商標登録。うんしゅうみかんや伊予柑の果皮を与えた養殖ブリを出荷している。
※2020年5月補訂:終売を追記