岡山駅から特急列車「しおかぜ」で3時間弱。松山市は愛媛県の中央で瀬戸内海に面した、人口約51万人の城下町で県庁所在地。四国最大の都市として商工業で栄えるほか、古湯や食文化や文学作品で年に500万人以上の観光客が訪れる観光地でもある。駅弁は1938(昭和13)年創業の駅弁屋が2018年4月に事業を停止、以後は岡山駅の駅弁屋がキヨスクへ弁当を卸す。1927(昭和2)年4月3日開業、愛媛県松山市南江戸1丁目。
JR四国の駅弁キャンペーン「四国の駅弁選手権2014」の開催に合わせて、2014(平成26)年11月に発売。同時に同キャンペーンの「2014新作駅弁部門」にエントリー。ただし2011年10月からの同キャンペーン「第2回四国の駅弁ランキング&駅弁ラリー」にも、同じ名前と似た内容と異なる価格を持つ駅弁がエントリーされていた。
豚肉駅弁らしからぬ、青く爽やかな掛紙で、簡素なプラ製の惣菜容器を包む。中身は白御飯を豚そぼろと細かい卵そぼろで覆い、グリーンピースで彩り、唐揚げ、焼き鮭、サトイモやニンジンなどの煮物、春雨などの酢の物、わさび漬け、オレンジなどを添える。鶏にしては脂がしっとり豊かだなと感じるのが、この「愛媛甘とろ豚」を使うという豚そぼろ。掛紙や予備知識でこれを感じられれば、そこに個性がある。掛紙のシールのとおり、わずか6種類の中での競争ではあったが、同キャンペーンで「新作駅弁部門」の最優秀賞を獲得した。
愛媛甘とろ豚(えひめあまとろぶた)は、愛媛県農林水産研究所畜産研究センターが2004(平成16)年度から開発を進め、2010(平成22)年4月に販売を始めた食用ブランド豚。掛紙に記されるとおり、「ジューシーでやわらかい肉質」「口溶けのよい脂身」「オレイン酸が豊富」が特徴で、それぞれ剪断力価と保水力と筋肉内脂肪、脂肪融点、オレイン酸比率の数値で裏付ける。愛媛県庁が飼育管理マニュアルや専用飼料を提供し、養豚農家を指定し、ブランド戦略を管理し、取扱店の情報を提供するなどの、強力なバックアップ体制を敷く。
この駅弁は、調製元が2018(平成30)年4月に事業を停止したことで失われた。
※2018年10月補訂:終売を追記JR四国が2011年5〜7月に募集して10月に結果を発表した「第1回四国の特産食材を使った駅弁レシピコンテスト」の受賞作(金賞1点、銀賞3点)のひとつで、「四国巡り〜♪」(600円)「土佐の牛すじ弁当」(650円)とともに2012(平成24)年2月に商品化。これは愛媛県今治の方の作品で、銀賞を受賞。 原題は「がっつり男の四国いけてる弁当」だそうな。価格は2012年の発売当時で930円、2015年の購入時で950円。
正八角形の容器を4分割し、豚そぼろと玉子そぼろで覆った白御飯、ちくわやシイタケなどを散らした御飯、カツオやナスやジャコ天や春雨サラダなどのおかず、ゆで卵やキュウリやポテトサラダやオレンジなどのおかず。様々な四国名物が詰め込まれていると思うのだが、一切の解説がないことや、数が多すぎてテーマが散漫になり、味がよいのに印象が薄れる。原題に違い分量が控えめなのも、印象の面では惜しい。これでは頑張れないのではと思うし、ネット上のでの評判も厳しいが、3年以上も販売が続いている。
この駅弁は、調製元が2018(平成30)年4月に事業を停止したことで失われた。
※2018年10月補訂:終売を追記2015(平成27)年秋の松山駅で出会った惣菜。中身は直巻き三角おむすびが2個と、鶏唐揚、ポテトサラダ、かまぼこ、玉子焼、ウインナー、糸コンニャク入り炒り卵、大根桜漬のおかずのセット。この駅には改札の内にも外にもコンビニがあるのに、駅弁売店でもこのような商品が売られている、つまり売れている点は興味深い。
この駅弁は、調製元が2018(平成30)年4月に事業を停止したことで失われた。
※2018年10月補訂:終売を追記2010(平成22)年の年末の松山駅で出会った惣菜。イカリング、目玉焼きフライ、レンコン揚げ、切り干し大根、春雨サラダ、玉子焼、かまぼこ、焼き魚などが、薄いプラ製の惣菜容器に詰められる。スーパーでもコンビニでも惣菜屋でもない駅弁売店でこのような商品が売られるのは、他に小田原エリアくらいではないかと思う。
この駅弁は、調製元が2018(平成30)年4月に事業を停止したことで失われた。
※2018年10月補訂:終売を追記下記の駅弁「瀬戸のあな子」の、2010(平成22)年12月時点での姿。駅弁の名前と掛紙は変わらないが、容器がまるで異なるため見た目の印象がまったく違う。内容は同一だ、中身の見栄えから華やかさが消え、酢飯との合わせ技という微妙な味もよりプレーンになった感じで、駅弁としての雰囲気がまた減じたのではないかと思う。アナゴの色は不思議なことに毎回異なる。価格は40円の値上げで770円。2015年時点での価格は800円。
この駅弁は、調製元が2018(平成30)年4月に事業を停止したことで失われた。
※2018年10月補訂:終売を追記下記の駅弁「瀬戸のあな子」の、2007(平成19)年1月時点での姿。中身と容器の形状は変わらないが、容器本体がプラ製から発泡材製に変わり、箸袋が大型に変わり、ふたがボール紙から透明ふたと掛紙へ変わった。掛紙の復活とは珍しい。百貨店の催事場で「あなごずし」の商品札を付けられていて、掛紙のデザインが大きな箸袋で隠れていたため、新作だと思って購入したら、4年前に食べていた。価格は20円のアップ。
真ん丸のプラ容器を使用。ボール紙製のふたを取ると、中身は敷き詰めた御飯の上に錦糸卵を敷き、正方形5センチ角ほどの穴子とともに、エビやシメジや椎茸に紅生姜を載せたもの。アナゴの駅弁は、瀬戸内海に面した駅にはたいてい存在し、その調理法に大差はないのだが、駅弁の内容はそれぞれに個性が強く多種多様であり、穴子の味や食感もまるで異なるのが興味深い。
※2006年5月補訂:調製元の移転?を反映2007(平成19)年に発売。寿司桶の形をした容器を使用、これを中身の写真や松山をイメージするイラストを載せたボール紙の枠にはめる。中身は小魚入りの酢飯の上に錦糸卵と刻み海苔を敷き、サワラ、アジ、エビ、アナゴ、タケノコ、ミツバ、レンコンなどを散らしたもの。
つまり、郷土料理の松山鮨を一人前で再現したもので、ふんわりおいしい瀬戸内の味。まだ世に出たばかりだが、将来は岡山の祭ずしのように名物駅弁として育っていけるだろうか。俳人の正岡子規、小説家の夏目漱石、俳人の高浜虚子と、松山にゆかりのある明治時代の文学者も愛した味ということで、パッケージのあちこちにその名前が記される。価格は2009年の購入時で980円、2014年4月の消費税率改定で1,000円。
この駅弁は、調製元が2018(平成30)年4月に事業を停止したことで失われた。
※2018年10月補訂:終売を追記松山駅の並等幕の内駅弁。長方形の形状が駅弁らしい木製の容器に、木目柄のボール紙でふたをして紙袋入りの割りばしを置き、人の顔がいくつも描かれる絵柄の掛紙をかけて、ビニールひもでしばる。中身は日の丸御飯と玉子焼、蒲鉾、焼タラコ、うずら卵、れんこんなどの天ぷら、魚の揚げ物や佃煮、厚揚げや切干大根、柴漬けなど。
同時に購入した上等の幕の内駅弁「御料理四季の友」に比べて、内容に価格と位置付けなりの種類や分量の格差があるはずが、こちらはおかずの見栄えや風味や大きさの良さに雰囲気がある。旅情と郷愁を醸し出せる駅売り幕の内駅弁という印象。ただし、幕の内にこだわらなければ、松山駅にはこれより安くて感じの良い駅弁がいくつもあると思う。
この駅弁は、調製元が2018(平成30)年4月に事業を停止したことで失われた。
※2018年10月補訂:終売を追記松山駅の上等幕の内駅弁。松山出身の俳人で明治時代に活躍した正岡子規の句と簡単なイラストで春夏秋冬を描いた専用の長方形ボール紙箱を使用、2枚のトレーに収まる中身は、ひとつが日の丸俵型押し飯、もうひとつがおかずで、焼き魚、鳥唐揚、なす天、里芋と人参の煮物に昆布巻と高野豆腐、玉子焼と蒲鉾とハム、うぐいす豆に切干大根に酢の物、オレンジなど。
中身は確かにいろいろ入っているけれど、風味が並で見栄えはそれ以下で、どうも雰囲気がない。幕の内でいいから何か弁当を買いたいいう鉄道客が、車販で買い求めるための弁当という印象。価格は2008年の購入時でおそらく1,000円、2014年4月の消費税率改定で1,030円。
駅弁のふたで達筆すぎて読めない子規の句は、春からそれぞれ「順礼の 杓に汲みたる 椿かな」「われに法あり 君をもてなす もぶり鮓」「柿くへば 鐘が鳴るなり 法隆寺」「炭二俵 壁にもたせて 冬ごもり」。この秋の句が教科書にも載る子規の代表作。これを2008年7月時点で国内における検索サイト最大手のヤフーで検索をかけると、それぞれ6件、16件、3,090件、4件となり、そんな数字でも納得。相当な野球好きとしても知られ、そのため歌人なのに2002年には野球殿堂に入り、同年に没後100年(と松山築城400年)を記念してか、プロ野球のフランチャイズがない松山でオールスターゲームが開催された。
この駅弁は、調製元が2018(平成30)年4月に事業を停止したことで失われた。
※2018年10月補訂:終売を追記下記の550円版「坊っちゃん辨當」の、2008(平成20)年時点の姿か、高級版か。新潟駅弁などでも使われるタイプのプラスティック製楕円形弁当箱を、駅弁の名前や宣伝文を書いたボール紙の枠にはめる。中身は梅おにぎり、きな粉のおにぎり、焼き魚、エビフライ、玉子焼、団子など。
550円版と比べて、内容や分量や風味はほとんど変わらないが、こちらのほうが催事受けしそうな気がする。もし両者が併売されていたとしても、毎年冬の阪神百貨店の駅弁大会にはこれからこちらが来るのではないかと思う。
この駅弁は、調製元が2018(平成30)年4月に事業を停止したことで失われた。
※2018年10月補訂:終売を追記松山駅のリニューアルに伴い、2000(平成12)年11月に発売。竹皮柄のボール紙に中身を直接載せ、しおりと割りばしを添えてビニールひもでしばる。中身は梅おにぎり、きな粉のおにぎり、焼き鮭、エビフライ、玉子焼、オレンジ、ようかんなど。夏目漱石の好物を詰めたというが、しおりに書かれる鋤焼(すきやき)とミートボールは見あたらない。全体的に雑な作りに感じるが、価格は安いし腹は満たされるし、松山駅弁にこの名とコンセプトの駅弁があるのは良い。
明治時代の文豪として今も有名な夏目漱石の、代表作品のひとつである娯楽小説「坊っちゃん」の舞台が、漱石が1年だけ愛媛県尋常松山中学に勤めていた、愛媛県松山市である。作品では松山を批判的に扱っているが、今の松山観光に漱石と坊っちゃんはなくてはならない存在であり、様々な施設や商品にその名が付いている。なお、作品中に登場する鉄道は現在のJR線ではなく、四国最初の鉄道として開業した現在の伊予鉄道。
この駅弁は、調製元が2018(平成30)年4月に事業を停止したことで失われた。
※2018年10月補訂:終売を追記2004(平成16)年1月の阪神百貨店の駅弁大会で購入。深さのある経木の正方形二段重ね容器に掛紙をかけてビニールひもでしばり、さらにピンクの紙袋に入れてひもで口をしばり荷札をくくる。下段は酢飯にごぼうやにんじんなどを混ぜ込んだちらし寿司、上段は鮭塩焼や玉子焼や薩摩芋天や蒲鉾など、デザートにみかんとぶどう。容器にこだわり中身は上質でウンチクも語られる、そしていずれも地域色豊かな、特殊駅弁の優等生。しかしまだ松山駅で出会えていない。価格は2004年の購入時で840円、2015年時点で900円。
この駅弁は、調製元が2018(平成30)年4月に事業を停止したことで失われた。
※2018年10月補訂:終売を追記1960年代に使われたのではないかと思われる、昔の松山駅弁の掛紙。松山城と道後温泉が表現されているのではないかと思う。