高知駅からごめん・なはりの列車と高知東部交通バスを乗り継いで約2時間。馬路村は高知県の東部山あいに位置する、人口約700人の村。全村がほぼ森林であり、昭和時代には魚梁瀬森林鉄道が魚梁瀬杉を積み出し、その遺構が2009(平成21)年6月に国の重要文化財に指定された。村の馬路地区に馬路温泉があり、その近くで日曜日に観光用の森林鉄道が周回し、その乗り場を駅に見立て、「駅弁」を温泉で予約販売する。1994(平成6)年開業、高知県安芸郡馬路村馬路村馬路。
2007(平成19)年8月に、馬路温泉のミニ森林鉄道の運行日である日祝日に、一日10個の販売で発売したそうな。2010(平成22)年1月の京王百貨店の駅弁大会で、地域おこし商品として実演販売された催事弁当。円形の容器を大小2個使用、それぞれに透明なふたをして、「馬路森林鉄道特別招待券」なる木片を載せて、和紙風の風呂敷で包む。中身は上段が御飯でタケノコ、ミョウガ、シイタケ、コンニャクをネタにした柚子風味のにぎり寿司、下段がおかずでアメゴ甘露煮、山菜やカボチャなどの煮物、じゃこ、なます、ゆずようかんなど。
高知県安芸郡馬路村(うまじむら)は、高知県の東部で室戸岬の北方に位置する、2010年当時で人口約1,000人の村。1960年代まで林業輸送用の森林鉄道「魚梁瀬森林鉄道」が走っていた。馬路村ではこれにちなんで、丸山公園の中に遊覧鉄道を設置して日祝日に観光列車を走らせており、その乗り場「馬路温泉前駅」の駅弁がこれであるというストーリーをもって、デパートとともに都会の客へ売り込んだものか。現地では観光列車の運行に合わせて一日10個が販売された。2020年時点で予約により販売。
食べ物としては郷土の素材と料理を本当にふんだんに取り入れたものであり、とても個性的であるが、甘味でなく酸味とか、マグロでなくタケノコやミョウガの寿司とか、焼き魚でなく甘露煮とか、そんな馬路あるいは高知の味が、どうも首都の都会人の口には合わなかったようで、残念ながら会場ではあまり売れていなかった。食品表示ラベルの個人名は、観光庁から「観光カリスマ」に選定された、馬路村農業協同組合の代表理事専務。
※2020年8月補訂:発売年を追記高知駅から特急列車で約1時間40分。中村駅のある四万十市は高知県の南西部に位置する人口約3.6万人の城下町で、室町時代に京都を模して区画された市街地が「土佐の小京都」と呼ばれる。駅弁は国鉄時代の一時期に鉄道弘済会が入っていたが、現在は駅舎内の売店で市内の弁当屋の幕の内弁当が売られるほか、駅前のうなぎ料理屋の駅前弁当も駅弁と紹介されている。1970(昭和45)年10月1日開業、高知県四万十市駅前町。
1980年代に鉄道弘済会が発売か。1987年に国鉄がJR四国を経て土佐くろしお鉄道に替わり、駅売店も鉄道弘済会から同鉄道に変わっても、2010年代にいくつかの駅弁が生まれては消えたり駅舎が変貌しても、変わらずに売られ続ける中村駅の幕の内弁当。幕の内駅弁として価格や内容に優れることと、中村が時間と費用の面でどこからも行きにくいことから、幻の駅弁と紹介されることがある。
昔ながらの駅弁の浅さと大きさを持つ経木折を、四万十川名物の沈下橋の写真を使う掛紙で包む。中身は俵飯の日の丸御飯に、プラ製トレーに収めた焼サバ、かまぼこ、玉子焼、白身魚フライ、昆布佃煮などのおかずや付合せ。価格は1986年時点で600円、2003年の購入時で670円、2018年時点で700円と、あまり変わらない。容器は2021年から経木折をやめて紙製の仕出し弁当向けになったらしい。
※2022年3月補訂:解説文の見直し「清水サバ姿寿司焼」とも。JR四国の駅弁キャンペーン「四国の駅弁選手権2014」の実施に合わせて、2014(平成26)年11月の発売。あるいは従前の「サバ姿寿司」(1,000円)のリニューアル。3日前までの注文が必要な、完全予約制の駅弁。
ワインのハーフボトルが入りそうな箱に、スーパーの白い発泡材トレーに置いてラップでぐるぐる巻きにした、サバの姿寿司を1本まるごと収める。商品名のシールには「要冷蔵」とあるが、アツアツの状態で受け取った。
これはとにかくでかい。尾頭付きで、酢飯をたっぷり腹に詰めた焼きサバは、三人前と名乗ってよい。非常に塩辛い味付けではあったが、豪快さがとても印象に残った。あるいは、豪快さに圧倒されてしまった。
中村駅は2010(平成22)年3月にリノベーション。東京都内の建築家チーム「nextstations(ネクストステーションズ)」が、開業から40年が経過した鉄筋コンクリートの駅舎のうち、改札口、待合室、売店のあたりを造り替え、木材と塗装と照明とサイン類で彩った。これが2010年の日本デザイン振興会「グッドデザイン賞」特別賞・中小企業庁長官賞、2012年の土木学会「デザイン賞」最優秀賞、2014年のワトフォード会議「ブルネル賞」駅舎建築部門の優秀賞など、様々なタイトルを次々に得た。ただ、実物を見れば、改装後に漸増したと思われる様々な掲示や什器が、デザインの面では目障りに感じられるかもしれない。
以前とはまるで違う形に美しく改装された売店でも、引き続き弁当類の販売はあるが、スーパーやコンビニの惣菜のようなものがメイン。この姿寿司とともにJR四国の駅弁キャンペーンにエントリーされ、2013年度に金賞を獲得した「こだわりの四万十うなぎ弁当」(1,620円)は売り止めたという。一部で評判を得た鰻重の駅前弁当「駅弁四万十」も、調製元ごと消えてしまった。