岡山駅から特急列車で約2時間半。高知市は四国の南側中央部で太平洋に面した、人口約33万人の城下町で県庁所在地。明治維新前後に人材を輩出した新進かつ開放的な気質と、かつおのたたきや皿鉢料理で知られる。駅弁は1935(昭和10)年から売られ、2003年に地元の業者と交代、ホーム上で駅弁を売るほか、改札外の土産物店で売られる弁当も駅弁とされる。1924(大正13)年11月15日開業、高知県高知市栄田町二丁目。
高知駅の駅弁売店で買えた商品。タケノコ、ミョウガ、シイタケ、リュウキュウ、コンニャクの握り寿司が各1個、寿司惣菜向けトレーに並んで500円。駅弁としての見栄えを備えない商品があっても仕方がないが、高知で買える田舎寿司や、改札外で買える上記の駅弁に対して非常に割高なことと、昼飯時の訪問時でこの商品が最後の1個であるなど、この駅弁売店には何度訪れてもほとんど商品が見あたらない、品切れになっていることが、大いに気に掛かる。
インターネット上のコメント投稿サイト「ツイッター」をきっかけに、2010(平成22)年8月13日に発売。小柄で平たい正方形の木製容器を、駅弁の名前やロゴマークなどをいろいろ描いた正方形の掛紙で包む。中身は『日曜市にお店を出しているおばあちゃんたちがお昼時に食べていそうな「田舎寿司」』と書いてある、りゅうきゅう、きゅうり、なす、たけのこ、こんにゃくの握り寿司に、エビイモやカボチャなどの煮物、玉子焼、ようかんを一見で適当に並べるもの。
この年の京王百貨店駅弁大会に出ていた馬路村のお弁当を思わせる、町おこしや話題性では優れていると思う。一方で、こういう食材の組合せと味に慣れていないと、買うのや食べるのに抵抗感が出るとも思う。同時に登場したふたつの駅弁では、話題はこちら、味は「貝飯」という役割分担ができる。価格は2010年の発売時や購入時で840円、2014年時点で900円。2016年前後には買えなかったようだが、2018年までに1,050円で復活した。2020年までの販売か。2023年に1,080円で再復活か。
掛紙に名が記される「土佐駅弁学会」とは、地域振興やまちづくりの分野で活躍する高知県内の有志が、2010年4月末のツイッター上での会話をきっかけに、駅弁で鉄道旅行の魅力を再発見したり高知の魅力を発信しようと立ち上げたグループ。高知駅の駅弁屋である安藤商店の協力のもと、新作駅弁「日曜市のオバア弁当」「貝飯」を開発、会員が「エキベンヌ」なる駅弁立売人に扮して、2010年8月13〜15日に高知駅のホーム上で立ち売りを実施した。県内ではテレビや新聞に掲載されて知名度を得ている。
※2023年4月補訂:発売と値上げを追記長方形のプラ製の惣菜容器に透明なふたをして、商品名と宣伝文を書いた大きなシールを貼る。中身は白御飯の上をとりそぼろと玉子そぼろで半分ずつ斜めに覆い、焼き鳥2個と揚げナスとミニトマトを添え、ダイコンとニンジンとキュウリの野菜ゼリーを付けるもの。駅弁とコンビニ弁当との中間的な普通のお味。野菜ゼリーというものは初めて見た。
この弁当も容器の構造や販売箇所からコンビニ弁当の一種だと思ったが、JR四国が2010年10月に始めた「第1回四国の駅弁ランキング」で対象の15駅弁のひとつに入っていたため、少なくとも四国の中では駅弁と定義されている模様。さらにそのランキングで第3位を獲得している。調製元は高知市内の弁当屋。
2013年までに「土佐はちきん地鶏母子(おやこ)弁当」(500円)にリニューアル。2015年までに「土佐はちきん母子弁当」に改称。
※2021年2月補訂:現況を追記2010(平成22)年1月の京王百貨店駅弁大会と、同年のNHK大河ドラマ「龍馬伝」の放映に向けた新作か。長方形の容器に透明なふたをして、坂本龍馬の簡易年表などを印刷した掛紙を巻く。中身はシイタケ、ミョウガ、タケノコのにぎり寿司と鯖寿司2個、有頭海老に子持ちイカにゴボウや高野豆腐などの煮物、カツオの角煮にダイコンの酢漬けなど。高知の田舎料理を詰めたらしい個性作。値段は2010年の発売時や購入時で1,000円、2014年時点で1,050円。
坂本龍馬は高知県の出身であるため、大河ドラマによる観光ブームにあやかりたい全国各地のどこの観光地よりも、高知は龍馬を名乗り売れる土地である。しかし主観で記すと、龍馬は暗殺の悲運があったとはいえ、旧体制を壊すことを目的としたフィクサーあるいはテロリストであり、壊れた日本の国造りを行い地位を築いた高知県人としては、三菱財閥の創始者である岩崎弥太郎が大きな役割を果たしている。企業色が付くため役所の宣伝には使いにくいのだろうが、龍馬がヒーローで弥太郎がヒールという区別が付いてしまうような活躍ないし暗躍の差は、両者にほとんどないような気がしてならない。
※2021年2月補訂:値上げを追記高知駅では2019(平成31)年までに発売か。食品表示ラベルや売店での掲示では「土佐の田舎寿司」とある。中身はこんにゃく、たけのこ、みょうが、シイタケ、などの握り寿司とゴボウの太巻きで、典型的な高知や土佐の田舎寿司。旅行者には肉も魚もないことや酸味で食べにくいかもしれないが、このあたりの食料品店ではどこでも売っている地元の味。調製元は高知市中心街の寿司処。駅では2021年までの販売か。
※2023年4月補訂:終売を追記土佐駅弁学会・とさっ子タウンの「とさっ子駅弁開発プロジェクト」で考案し、「はちきん地鶏弁」(900円)「高知の野菜いっぱい弁当」(800円)とともに、2012(平成24)年4月1日に発売。何があって、どんな思いでこの駅弁になったのかが、オレンジ色の掛紙に多くの文字で記される。中身は白ごはん、鰹めし、やさい天巻、金目鯛、つけもの、だし巻卵、ピーマン塩こぶ和え、ちょこっとお野菜、果物ゼリーと掛紙に書いてある。
見た目では、おつまみ駅弁になりきれない、なんでも弁当という感じ。雑多を感心に変えるには情報が必要だと感じるが、掛紙には経緯や開発への思いが書かれていても、中身への思いや高知との関係について記載がない。その方面での味付けがあれば、旅の印象に残ってくれるかもしれない。食べ終わったら写真のように、仕切りカップの花が咲いた。2016年頃までの販売か。
2014年度のJR四国の駅弁キャンペーン「四国の駅弁選手権」で金賞を得た理由は、公式には示されていない。JR四国社長や作家など有識者11名の審査員が、エントリーの30種類から選抜した9つの駅弁について試食し、食材、味、コンセプト、見た目などで採点し、順位を付けたそうな。報道では、高知らしさがある、彩りよく盛り付けられた、お酒によく合う味付け、などが受賞や評価の理由だという。
※2020年8月補訂:終売を追記高知駅の幕の内弁当。枠だけ経木の正方形の容器を二段重ねにして、下段は日の丸弁当、上段は海老に数の子に黒豆に蒲鉾に焼き魚にと、見た目も内容も豪華なおかずが入る。もしかすると元旦バージョンであったのかもしれない。元旦の高知市の中心市街地は、ダイエー以外の食料品店や飲食店はすべて正月休みで閉店、駅弁屋が開いていたのが嬉しかった。2003年1月の調製元の撤退で安藤商店に引き継がれ、2016年頃までの販売か。
1987年に国鉄がJRになった時点で、四国の県庁所在地の駅はどこも、高度経済成長期の面影を残す駅舎を構えていた。徳島が駅前再開発で変貌、高松ももっと大規模な駅前再開発で生まれ変わり、高知でも2002年から高架化工事が着手される予定で、数年後には大きく変わっているはず。松山については伊予鉄道の駅こそ変貌したものの、JR駅は昔のまんま。
※2020年8月補訂:終売を追記「とさのおきゃく弁当」とも。JR四国の駅弁キャンペーン「四国の駅弁選手権2014」の開催に合わせて、2014(平成26)年11月に発売。同時に同キャンペーンの「2014新作駅弁部門」にエントリー。市販の大きな仕出し弁当用のボール紙製容器を使用、中身は俵飯、こんにゃく鮨、みょうが鮨、鶏の竜田揚、豚肉煮、イカフライ、カツオ煮、チキンナット、きんぴらごぼう、漬物など。
高知のお酒と食の文化「おきゃく」の雰囲気を駅弁にしたという。見た目でも食べても高知を感じられなくても、これは量でも種類でも盛り沢山で腹一杯になる。その点でも、駅弁というよりは仕出し弁当や御料理弁当なのだろう。そんな心意気で高知を感じる駅弁。2016年頃までの販売か。
※2020年8月補訂:終売を追記