岡山駅から特急列車で約2時間半。高知市は四国の南側中央部で太平洋に面した、人口約33万人の城下町で県庁所在地。明治維新前後に人材を輩出した新進かつ開放的な気質と、かつおのたたきや皿鉢料理で知られる。駅弁は1935(昭和10)年から売られ、2003年に地元の業者と交代、ホーム上で駅弁を売るほか、改札外の土産物店で売られる弁当も駅弁とされる。1924(大正13)年11月15日開業、高知県高知市栄田町二丁目。
1990(平成2)年に中央食堂が高知駅で1,030円にて発売か。土佐のカツオを生のまま使い、駅弁の常識を覆した珍品。高知名物のかつおたたきを紹介する白いボール紙製容器の中に、ネギやニンニクやミョウガやオオバやダイコンと保冷剤に囲まれたカツオのたたきの容器と、日の丸御飯に有頭海老、ホタテ煮、タケノコ、高野豆腐、柴漬け、たくあん、カツオのたたきのタレ(ポン酢)などを詰めたトレーを収める。主役の味は、食堂や惣菜で食べる味と同じ。こういうものが、ここでは列車の脇で買えて、列車の中で食べられるのだ。
旅行者にとって高知で一番人気の食材だと思うカツオのタタキは、生のカツオのウロコを落とし、身を皮ごと火であぶった刺身。醤油に付けて食べるのではなく、たっぷりの薬味とタレでいただく。なぜ炙るのか、なぜ「たたき」と呼ぶのか、いろんなサイトにいろんなことが書いてあるので、どうも定かでないらしい。価格は2003年時点で1,050円、2014年時点で1,100円、2020年時点で1,300円。
※2020年6月補訂:値上げを追記2003(平成15)年3月21日に購入した、高知駅弁の箱。構造や中身は上記の2015年のものと同じだが、絵柄はまるで異なる。また、当時は駅弁を買った時点でカツオのタタキを詰めており、その売店は地上駅舎の改札口の脇にあった。高知駅では2003年1月に駅弁業者が突然交代したが、この駅弁は以前の姿で引き継がれた。
※2020年6月補訂:解説文を手直し長方形のプラ製の惣菜容器に透明なふたをして、商品名と宣伝文を書いた紙帯で留める。中身はカツオの混ぜ御飯に、鶏南蛮やスパゲティ、玉子焼の海苔巻きやキュウリの酢の物を添えるもの。身が香る御飯も、手抜きのない鶏も、甘くない玉子焼も、酸っぱくないキュウリも、どこから食べてもおいしくて食べ飽きない。
この弁当は容器の構造や販売箇所からコンビニ弁当の一種だと思ったが、JR四国が2010年10月に始めた「第1回四国の駅弁ランキング」で対象の15駅弁のひとつに入っていたため、少なくとも四国の中では駅弁と定義されている模様。調製元は高知市内の食堂業者。
※2021年2月補訂:写真を更新2010(平成22)年8月14日に購入した、高知駅弁の掛紙。上記の2020年のものと、ほぼ同じ。当時は掛紙にも値段が記され、中身にウナギの小片が入っていた。
焼サバ寿司6切れをスーパーの食品トレーに詰めて、透明なふたをしてビニール袋で密封し、竹皮に包んでひもでしばり、商品名を描いた掛紙を巻く。焼きサバは表面が軽くあぶられ、酢飯にはゴマが混じり、全国各地の同等品に比べて特段の差異はない、しかし少量にしてもずいぶんと安価な軽食。高知ではサバよりカツオを食べたいとは思うものの、機能的には優れている。
こういう商品が駅の中のコンビニで売られることは珍しくないが、この商品はJR四国が2010年10月に始めた「第1回四国の駅弁ランキング」で対象の15駅弁のひとつに入っていたため、少なくとも四国の中では駅弁と定義されている模様。調製元は高知市内の土佐料理・皿鉢料理屋。価格は2010年時点で500円、2015年時点で514円、2018年時点で756円。
※2021年2月補訂:写真を更新2010(平成22)年8月14日に購入した、高知駅弁の掛紙。上記の2020年のものとの変化は、値段と調製元の社名のみ。同じ場所で同じように売られている。
1975(昭和50)年の発売。かますの漢字は多くのコンピュータで表示できないため、駅弁の名前は平仮名で表記した。かますの腹を割き酢飯を入れ、頭や尾も含め魚の形のまま竹の皮で包み袋詰む、三次元のレベルで本物の姿寿司。見た目はちょっと怖いが、ボリュームたっぷり。かつては冬季限定の駅弁として紹介されていた。後にかますに代えてサバを使った、下記の「鯖の姿寿し」が誕生、こちらは21世紀にその姿を見ていない。予約をすれば作ってもらえることがあるという。
岡山駅や高松駅と高知県を結ぶ、土讃線の特急列車「南風」「しまんと」は、四国山地を一直線のトンネルで貫く高知自動車道が1992(平成4)年1月に開通したことで、速いうえに安い高速バスに乗客を奪われた。以後は毎時1本の本数を維持しながら、編成を4〜6両から2〜3両に短縮、バス1台で運べるくらいの客を乗せて、曲線が連続する災害多発地帯を駆け抜ける。
※2007年2月補訂:現況を追記1998(平成10)年8月10日12時の調製と思われる、昔の高知駅弁の掛紙。掛紙の絵柄も独特な「鯖の姿寿し」と違い、こちらの絵柄は普通の駅弁。よさこい踊りと土佐闘犬を描く。かますの漢字は多くのコンピュータで表示できないため、駅弁の名前は平仮名で表記した。
昭和時代に高知駅を代表した奇抜な駅弁「かますの姿ずし」のサバ版で、冬季限定の駅弁という。尾頭付きのサバをまるごと一匹使用、ゴマ混じりの酢飯をいっぱい詰めて、薄紙で巻いて竹皮で包み掛紙をかけてビニール袋に詰める。分量の多さから来る重さ、見た目のグロテスクさ、掛紙まで染める油の多さ、クセのある鯖の風味、あらゆる面で客に媚びない頑固強情一本気な、高知気質あふれる珍駅弁。
日が経った後も焼いて食べられる旨の案内があり、これは保存食と言えよう。販売は完全予約制な模様だが、京王百貨店と阪神百貨店の駅弁大会であればその場で買える。価格は長らく1,260円だったが、2018年時点で1,500円、2021年時点で1,600円。
高知県内の駅弁販売駅は、昭和40年代後半から国鉄分割民営化の直前まで駅弁があり、現在も非公式駅弁がある中村駅を除き、昔も今も高知駅のみ。最近は駅弁販売駅が1駅だけの県も増えてきたとはいえ、今は公式な駅弁のない徳島県にもかつて3つの駅で駅弁の販売があった。
※2021年3月補訂:値上げを追記2020(令和2)年1月15日に購入した、高知駅弁の掛紙。下記の2005年のものや、上記の2018年のものと、何も変わるところはない。買った場所も同じ。この駅弁が京王百貨店駅弁大会と阪神百貨店の駅弁大会に来ること以外で、高知駅の駅弁を現地以外で見ることはなくなったと思う。
2005(平成17)年1月23日に購入した、高知駅弁の掛紙。価格の表記がないので、上記の2018年のものと、まったく同じ。サバの油によるシミのみが異なる。
2002(平成14)年1月1日の調製と思われる、昔の高知駅弁の掛紙。上記の3年後と変わらないように見えて、駅弁業者の交代により調製元が異なるほか、注意書きのフォントも違っている。
インターネット上のコメント投稿サイト「ツイッター」をきっかけに、2010(平成22)年8月13日に発売。木桶を模した円形の容器に、貝殻や駅弁の名前などを書いた紙帯を締める。中身は長太郎貝の炊込飯に長太郎貝を3個置き、きぬさややニンジンやタクアンなどで彩るもの。感想は上品なホタテ丼。欲張りに何でも盛り込みたがる傾向が一般的な、地域おこしの願いを含む創作駅弁らしからぬ、シンプルな名前と内容を持つ。価格は2010年の発売時や購入時で1,050円、2011年時点で1,100円。2012年頃までの販売か。
高知県内では長太郎貝(ちょうたろうかい)と呼ばれるヒオウギガイは、ホタテガイと同じ科に属する二枚貝で、大きさはその半分ほど。貝柱が食用になるほか、様々な色を持つ貝殻がアートや工芸に使われることがある。
※2020年6月補訂:終売を追記ビニール容器に橙黒二色刷の掛紙をかける。中身は白御飯に鰻蒲焼を2切れ載せるだけのシンプルな内容。飯や焼いた後の鰻にタレがかかっていないため、ひょうたん型容器に入るタレをかける。古風な掛紙に喜んだのもつかの間、ゴム草履な鰻にがっかりした。 価格は2003年の購入時で840円、2014年時点で900円。2016年頃までの販売か。
※2020年6月補訂:値上げと終売を追記