東京駅から新幹線で約5時間。福岡市は福岡県の西部で玄界灘に面する、人口約160万人の城下町かつ港町。政令指定都市かつ福岡県の県庁所在地で、九州の鉄道や経済の中枢である大都市。駅弁は主に新幹線ホーム、新幹線コンコース、改札外の東西自由通路の売店で、地元や九州一円や西日本のものが多種売られる。1889(明治22)年12月11日開業、福岡県福岡市博多区博多駅中央街一丁目。
秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2017(平成29)年秋の新商品か。かしわめしを名乗る駅弁らしからぬ派手なデザインの掛紙には、博多地どり、桜島どり、辛子明太子の文字と写真が載る。正方形の容器に鶏飯を詰め、鶏肉のぶつ切りと細かいそぼろと錦糸卵で覆い、紅生姜と明太子と高菜と玉子焼を添える。かしわめしの駅弁としては型破りな鶏飯。大味という感じは受けても、贅沢という感じは受けなかった。価格は2017年の発売時で1,000円、2023年時点で1,100円。
駅弁の名前は「復刻版かしわめし」とも。2014(平成26)年1月の京王百貨店の駅弁大会で、1,000円にて輸送販売。同年にこの720円の博多駅弁になったらしい。調製元は鳥栖駅弁の中央軒だが、博多駅でのみ売られる駅弁。福井県立歴史博物館が提供した、つまり福井県の駅弁催事業者のプロデュースにより、第二次大戦中のものと考えられる鳥栖駅の駅弁掛紙の絵柄を使う掛紙を用いる。
中身は昭和時代までの標準的なかしわめし駅弁で、経木折に鶏スープで炊いた御飯を敷き、鶏フレークと錦糸卵と刻み海苔のストライプで覆い、海苔佃煮と漬物を添えるもの。半世紀くらい前の、もしかすると一世紀くらい前の大正時代の、鶏飯駅弁の雰囲気を備えているのではないかと思う、再現度あるいは完成度の高い復刻駅弁。価格は2023年時点で760円。
秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2020(令和2)年秋の新商品か。鶏飯と刻み海苔と錦糸卵と鶏フレークのストライプで覆い、紅生姜を載せ、肉団子と煮豆と漬物を添える姿は、九州北部やその周辺の各地で売られるかしわめし駅弁と同じ。調製元が鹿児島駅弁の松栄軒であり、しかし掛紙には福岡タワーにラーメン屋台、櫛田神社に博多祇園山笠、太宰府天満宮と、福岡や博多の絵柄でできている。かしわめしの味も、かつての博多駅弁の寿軒のような油っぽさを持っていた。2022年までの販売か。
※2023年7月補訂:終売を追記2018(平成30)年の年末に発売。第二次大戦前から2010(平成22)年まで博多駅で親しまれた名物駅弁「かしわめし」が、8年間ものブランクを経て復活した。広島県の広島駅の駅弁屋である広島駅弁当が、博多駅前で新会社「博多寿改良軒」を設立、廃業した駅弁屋から寿軒のブランドを引き継ぎ、広島駅と博多駅や東京駅へこの駅弁のみを卸し始めた。
「筑後赤坂土笛(鶏)」なる福岡県筑後市の郷土玩具と駅弁の名前を描く掛紙の絵柄は、かつての博多駅弁「かしわめし」のものを踏襲。鶏飯を錦糸卵と刻み海苔で覆い、鶏フレークでなく鶏照焼のスライスを並べ、筑前煮とひじき煮を添えている中身は、かつての博多駅弁とは少し異なる。駅弁趣味を始める前に博多駅で何度か食べた、中途半端に甘さのある鶏飯の味がうまく再現されていて、懐かしく思えた。価格は2019年の東京駅での購入時で860円。2019年1月や2020年1月の京王百貨店や阪神百貨店の駅弁大会でも860円、博多駅では770円。
2020(令和2)年1月のさいか屋横須賀店の駅弁大会で実演販売。現物には間違いなく「博多名物かしわめし」と書かれているが、復活の記事のものや復活前の現物とは違い、博多駅の寿軒の駅弁でなく、折尾駅の駅弁に酷似したかしわめしだった。味は博多寿軒を向いていたが、ここまで似せるのはどうなのかと。博多駅で買えるかどうかは分からない。
日本鉄道構内営業中央会が駅弁誕生135周年を記念して、会員のうち21社が2020(令和2)年4月10日から販売した、駅弁の原点であるおにぎりをメインとした記念弁当「駅弁誕生135周年おにぎり弁当」の、広島駅弁の広島駅弁当バージョン。同社は山口県内の駅弁屋を吸収したり、福岡県の博多駅の駅弁屋を継承したりした経緯からか、この福岡版と、広島駅版の「廣島おにぎり弁当」と、山口版の「山口ふくふくむすび弁当」の3種類を、同じ容器と似た掛紙で発売した。
掛紙にはこのキャンペーンに共通の駅弁マークを使わず、ニワトリを描く。中身はかしわ、つまり鶏飯のおむすび3個、筑前煮、鶏唐揚、かまぼこ、玉子焼、高菜。狙ったのか、偶然なのか、中身はかなりの鶏づくし、鶏固めだった。駅で売った後は催事向け商品となり、2021年7月までの販売か。
※2023年4月補訂:終売を追記博多駅の、駅弁屋ではない業者のかしわめし。しかし、茶色と紫色を混ぜたような色一色に弁当名を筆字で記す掛紙と、正方形の容器をひもで十字にしばる外観の味わいは、駅弁と呼ぶにふさわしい。しかも価格が同じ種類の駅弁より60円安い点と、売店の清潔で活気を感じる外観や雰囲気で、本物の駅弁屋の上を行く。しかしただ一点、かしわめしの味の奥深さのみは、まだ本物の駅弁屋に追いついてはいないと感じた。
現在ではこの業者の商品を駅構内で見ることはできない。調製元は2003年当時では、当時全国一の持ち帰り弁当チェーン「ほっかほっか亭」の九州におけるフランチャイジーで、後にその本体を子会社化し「ほっともっと」に転換、自身が全国一の持ち帰り弁当チェーンとなった。
※2022年3月補訂:現況の追記を追記博多駅で昭和時代から長く親しまれた駅弁。北部九州を中心に、山口県から鹿児島県までで広く分布する「かしわめし」駅弁の博多駅版。経木枠の長方形の容器に、かしわ(ニワトリ)のスープで炊いた御飯を敷き、鶏・卵・海苔でストライプを描く。そんなつくりは他の駅の駅弁と共通ながら、これはかしわのフレークがやや大きめで、海苔が粉のように細かいのが特徴。もちろん味も独自のもの。2002年の購入時で、ホーム上の駅弁ワゴンや立ち食いそば店などで売られる、博多駅で最も買いやすかった駅弁。
2010年12月限りで調製元が駅弁から撤退、この駅弁も買えなくなった。
※2011年2月補訂:終売を追記博多駅弁のかしわめしに、おかずを付けて値段を上げたもの。このあたりの関係は、折尾駅や小倉駅のかしわめしと同じ。しかし、枠に紙の底を貼った容器に直接御飯を敷くため、その水分で糊が弱くなり、底が抜けるかと思った。また、千円を超える価格にしてはおかずの水準が低い気もするし、容器の深さに対して浅い敷きのため、上部に空間の多い御飯部分など、見栄えの工夫も欲しい。
2010年12月限りで調製元が駅弁から撤退、この駅弁も買えなくなった。
※2011年2月補訂:終売を追記1980年代に発売。立方体のボール紙製パッケージの中に、赤緑黒と三色のボール紙製容器が積まれている。中身は、黒が海苔と錦糸卵と少しの鮭フレークをかけた酢飯、赤はかしわめし、緑はひょうたん型の白御飯に煮物が少々。つまり、おかずがない御飯弁当。割り箸とナプキンと爪楊枝がふたつずつ入っており、確かに一人分の分量ではない。
パッケージには博多山笠・博多どんたく・太宰府天満宮鬼すべの光景と、小柄な蒸気機関車が15両編成の青い客車を牽引する姿が描かれる。国鉄当時の東京・九州間の寝台特急列車は15両編成が当たり前で、それでも寝台券はプラチナチケットであった。しかし道中が4社に分割されたJR発足以降は各社の意見の違いから、手入れがされないまま乗客を減るに任せ、2009年3月までに消滅した。
2010年12月限りで調製元が駅弁から撤退、この駅弁も買えなくなった。
※2011年2月補訂:終売を追記