博多駅からJR快速で約1時間、天神駅から西鉄特急で約1時間。大牟田市は福岡県の南端で有明海に面する、人口約11万人の工業都市。明治時代から昭和時代まで炭鉱で大いに栄え、大事故と大争議で戦後史の舞台にもなった。第二次大戦前から売られた駅弁は、2007年末の駅弁屋の廃業により失われた。1891(明治24)年4月1日開業、福岡県大牟田市不知火町一丁目。
博多駅から新幹線「つばめ号」で約35分。大牟田の市街から約7km離れた、山と田畑と住宅が混じり合う郊外に設置された。在来線特急列車の時代は毎時3本の全列車が大牟田駅に停車したが、新幹線は毎時1本のみの停車。開業時には改札外待合室のキヨスクで筑後船小屋駅の駅弁が売られたが、今はない模様。2011(平成23)年3月12日開業、福岡県大牟田市大字岩本。
2011(平成23)年3月12日の新大牟田駅の開業日に、駅のキヨスクで売られていたお弁当。四角く平たい惣菜向けプラ製トレーに透明なふたをかけ、商品名とお品書きを印刷した茶色い掛紙で包む。中身は錦糸卵と貝ひもと紅生姜でストライプを描くタイラギの御飯と、マジャク唐揚、真エビ煮付け、エツ南蛮、貝柱粕漬など。
下記のかつての大牟田駅弁「たいらぎ寿し」と違い、見た目も内容も味もクセが非常に強い。地元の味を飾らずに詰めたのだろうが、このままでは素直に書くと不味い弁当なので、解説がもっとほしいところ。しかし購入直後にリニューアルの末、数か月も経つと販売そのものがなくなった模様。調製元は柳川の海産物商で魚屋食堂。
開業前に一日あたり2300人と予測された新大牟田駅の乗降客数は、開業景気が過ぎると一日300人という数値に落ち着いたそうな。鉄道の接続がなくバスが不便だからと言われているそうだが、今は大都会を除き自動車こそが住民の足であるため、新幹線駅や空港は駐車場を確保できる郊外のほうが便利なはず。福岡の都心へ行くには、所要時間が倍かかっても本数が4倍で運賃が半額の鹿児島本線や西鉄が便利であり、その他の新幹線駅への需要はもともとなかったのであろう。大牟田市では駅前駐車場の値下げやアンケート調査により、利用者を増やすための取り組みを始めた。
2005(平成17)年に発売。市販の惣菜弁当向け容器に、商品名を書いた掛紙をかけて、ビニールひもでしばる。中身は既存の大牟田駅弁「たいらぎ寿し」とほとんど同じで、貝柱に焼き目が入り、フライや煮物に代わりアサリ佃煮と赤えびが入る。下記「たいらぎ寿し」の解説文のとおり、大牟田駅での入手は事前予約でも無理だが、2005年「九州の駅弁ランキング第2弾」にエントリーされ、各地の駅弁大会に大牟田駅弁として送り込まれた。九州では稀な、本格的疑義駅弁。経木の容器を使うバージョンもある。
この駅弁は2005〜2006年の駅弁大会シーズン終了をもって終売となった可能性がある。なお、駅弁屋が2007年12月16日に廃業したため、大牟田の駅弁はすべて終売となった。
※2008年1月補訂:終売を追記下記の駅弁「たいらぎ寿し」と同じもの。有明海のタイラギ資源が回復しないためか、掛紙から「有明海の」が取れて、有明海・瀬戸内海・中国産の貝柱を使う旨の注記が入った。これは仕方がない。
ところが、2005(平成17)年の九州の駅弁ランキング第2弾の実施に伴い、新作の駅弁「有明海の貝柱寿し」を出したはずなのに、大牟田駅ではそれを売らずに、同時実施のシールラリーではこの駅弁にシールを貼って、中身はほとんど同じだからと販売していた。これはいただけない。
なお、駅弁屋が2007年12月16日に廃業したため、大牟田の駅弁はすべて終売となった。
※2008年1月補訂:終売を追記1999(平成11)年4月18日に購入した、昔の大牟田駅弁のパッケージ。2002年のものと絵柄はだいたい同じでも、構造がまるで異なる。大牟田の駅弁はかなり頻繁に容器を変更したようで、「たいらぎ寿し」「幕の内弁当」とも、ネット上で様々な形状での収穫報告がみられた。
1989(平成元)年2月に発売。大牟田駅で最後の特殊駅弁。他の駅の駅弁でも見たことがある、市販の仕出し弁当向けのボール紙製容器に掛紙をかける。大牟田沖の有明海でよく獲れた二枚貝「タイラギ」の貝柱を、酒で煮て甘酢に漬けてちらし寿司にしたものを、他のおかずなどとともに9つの区画を持つトレーに詰める。ただし1999年頃からタイラギの漁獲がほぼゼロになり、瀬戸内産の材料に切り替えたとか。
大牟田は日本最大級の炭鉱である三井三池炭鉱を抱え、石炭と工業の街として栄えたが、石炭産業の衰退と中心市街地の無策で、今では駅とその周辺がすっかり寂れてしまった。
なお、駅弁屋が2007年12月16日に廃業したため、大牟田の駅弁はすべて終売となった。
※2008年1月補訂:終売を追記大牟田駅最後の普通駅弁。つまり「たいらぎ寿し」とこの幕の内弁当で、最終期の大牟田駅弁のすべてであった。市販の仕出し弁当向けボール紙箱を使うも、駅弁らしく掛紙をかける。中身は日の丸御飯に焼き魚、かまぼこ、玉子焼その他のおかずで、特徴のない標準的な幕の内弁当だった。駅弁屋が2007年12月16日に廃業したため、大牟田の駅弁はすべて終売となった。
※2008年1月補訂:終売を追記入手状況等から1977(昭和52)年の調製と思われる、昔の大牟田駅弁の掛紙。当時の駅弁掛紙のほとんどに印刷された、国鉄の旅行キャンペーン「一枚のキップから」のロゴマークを、この掛紙では捺印としたのが珍しい。
掛紙には九州銘菓と書いてあるが、大牟田限定の名物饅頭で、弾力的に柔らかい一口サイズの褐色薄皮白あん蒸しまんじゅう。1個40円換算で様々なパッケージがあり、写真のものは20個入りだから800円。個人的に日本一の饅頭だと思い、大牟田での知名度は抜群でも、大牟田以外での知名度がなく、博多のデパートと通信販売を除き大牟田でしか入手できなく、頑固に地域名物という殻に収まり続けるような。
これが鉄道銘菓と紹介されることはないが、明治時代に鉄道員が各地の饅頭を研究して開発し、平和饅頭の名で売り始めたのが、黒田家の草木饅頭のはじまりだというから、鉄道とのつながりはある。商品名より販売地を冠した「草木の饅頭」と呼ばれることが多かったそうで、今はその名で定着した。江口栄商店版の草木饅頭も市内では有名で、お互いが本家だ元祖だと競い合う。
上記の饅頭の、2011(平成23)年時点での姿。20個入りか12個入りかの違いもあるが、紙箱に掛紙の姿から専用紙箱に包装紙の姿に変わっている。中身の味は変わらない。九州新幹線の開業に伴うものか、大牟田駅からキヨスクが撤退していた。
黒田の草木饅頭の10個入り。飾らず変わらない江口と異なり、包装紙の柄がまた変わり、しかし個別包装の中身は変わらない。在来線の大牟田駅での販売はなくなっても、駅前に店舗があるのでそこで買える。江口の店舗も隣にあり、両者まとめて買える。
大牟田銘菓な草木饅頭の江口栄商店(えぐちさかえしょうてん)バージョンで、2008年当時で駅のキヨスクで売られていたのはこちら。黒田家版とは見た目で容器も中身も間違い探しの範囲でしか違いがないし、値段も同じ。九州名物を名乗るあちらとは対照的に、こちらは正直に「大牟田名物」と記す。
主な違いは、製造が黒田は機械で江口は人手、包装が黒田は個別で江口は5個単位。どちらがうまいかは好みによるが、黒田ファンに江口を聞けば味が違うと言い、江口ファンに黒田を聞けばまずいと言う違いがあると思う。両社は親戚同士だそうで、業者間の対立はない模様。
江口の草木饅頭の10個入り版。飾るし変わる黒田と異なり、こちらは包装紙に飾りがなく、パッケージは真っ白なボール紙であり、中身はラップで5連を包むだけのシンプルさ。在来線の大牟田駅での販売はなくても、駅前に店舗があるのでそこで買える。黒田の店舗も隣にあり、両者まとめて買える。