博多駅から九州新幹線で17分。久留米市は福岡県の南部で筑紫平野の中心に位置する、人口約30万人の商業都市。久留米絣やゴム工業などの工業都市でもある。駅弁は明治時代から売られ、1925年に営業を引き継いだ駅弁屋が、鳥栖の駅弁屋と合併と分離を経て2003年に再吸収。2011年3月の新幹線の開業で、鳥栖駅とは異なる駅弁が、コンビニや観光案内所で売られた。1890(明治23)年3月1日開業、福岡県久留米市城南町二丁目。
駅では2020(令和2)年の発売か。JR久留米駅近くで2014年12月19日に開店した、テントで営業するフランス料理屋の看板メニューのひとつで、テイクアウトやイベント向けに売られた箱サンドが、久留米駅の観光案内所兼土産物店「地場産くるめ JR久留米駅店」で取り扱われるようになったもの。
耳あり食パンのトーストに、丸いとんかつと千切りキャベツとソースとマヨネーズを挟んだカツサンドを3切れ、商品名と中身の写真が美しい専用の紙箱に直置きする。固さと厚さで食べにくいので、併売する紙箱でない1切れ物が便利そう。紙箱の「総州特製」「総州自慢」とは、千葉県の上総や下総を指す総州のことではなく、調製元の名前である。2022年の秋までに久留米駅の観光案内所では、これなど駅弁のようなものは売られなくなった模様。
※2023年2月補訂:駅での終売を追記「肉めし」は、1965(昭和40)年頃から久留米駅で売られた名物駅弁。2003(平成15)年11月限りで失われ、その後に合併先の鳥栖駅の駅弁屋が売り、久留米駅から売店が消えてなくなり、2011(平成23)年3月の九州新幹線開業で駅のコンビニに復活し、時期不詳でまた消えてなくなり、今回の訪問で再度復活していたもの。
とても小柄な木の折り箱に、鶏スープで炊いた御飯を敷き、牛焼肉と高菜で覆い、玉子焼と花にんじんを置き、焼売、シメジと菜の花、大根漬を1区画ずつ添える。とはいえ、かつての「肉めし」を受け継いだのは掛紙の絵柄のみ。味も容器の形状も捨て、ただの牛肉と高菜の安っぽい弁当の味しかしなかった。2022年の秋までに久留米駅のコンビニでは、駅弁が売られなくなった模様。
※2023年2月補訂:終売を追記2011(平成23)年3月の九州新幹線鹿児島ルート全線開業に合わせて、久留米駅のコンビニで発売か。高菜色のボール紙に商品名を記したふたをかける、小さな長方形の容器に、鶏飯を高菜で巻いた俵飯を4個も並べ、鶏唐揚、玉子焼、かまぼこ、しゅうまい、大根桜漬を添える、おにぎり弁当。九州では炒めるか漬けて刻まれ食べられる高菜が、ここでは九州でなく紀州のめはりずしのように、あるいは大分県日田の郷土料理とも紹介される巻き物として使われる。価格は2011年の発売時で525円、2014年時点で540円。2022年の秋までに久留米駅のコンビニでは、駅弁が売られなくなった模様。
※2023年2月補訂:終売を追記2011(平成23)年3月の九州新幹線鹿児島ルート全線開業に合わせて、久留米駅のコンビニで発売か。ふたの絵柄は、2駅先の鳥栖駅の駅弁「かしわめし」と同じ。ただし縦長の絵柄が横長に手直しされたうえ、こちらの中身はかしわめしというよりはむしろ焼麦(しゃおまい)弁当であり、店舗では「ミニかしわ焼麦弁当」の名で売られる。
鶏スープで炊いた御飯を、鶏フレークと錦糸卵と刻み海苔のストライプで覆い、大根桜漬で彩り、しゅうまい4個と酢醤油を添える。鳥栖とはどこにも書いていないが、このしゅうまいは鳥栖駅で名物の焼麦(しゃおまい)であり、調製元は鳥栖駅の駅弁屋である。1食分の見栄えと内容を持つ、ハーフサイズの駅弁。2022年の秋までに久留米駅のコンビニでは、駅弁が売られなくなった模様。
※2023年2月補訂:終売を追記2001(平成13)年に発売か。特急列車「ゆふいんの森」の車内販売専用弁当として開発された。赤い花柄和紙を貼った美しい長方形ボール紙容器に掛紙をかけて深緑色の紙ひもでしばる。中身は12分割され、ちらしずし・山菜飯・茶飯で御飯が3区画、チキンのハーブ焼やバジル添え野菜マリネやレモングラス味付ウインナーなど、ハーブをふんだんに使ったおかずが7区画、デザートにハーブ寒天のフルーツポンチが1区画、漬物に1区画。知名度が意外にないが、実際に食べた人の多くが絶賛しているようだ。
2003年11月限りで、久留米駅弁の調製や販売が、久留米中央軒から鳥栖駅の中央軒に引き継がれ、この駅弁も写真のとおり現在は中央軒の調製。2006年の購入時で、容器や中身や850円の価格に変化はない。2015年時点で博多駅の駅弁となり、価格は930円。
※2015年10月補訂:現況を追記2011(平成23)年3月の九州新幹線鹿児島ルート全線開業に合わせて、久留米駅のコンビニで発売か。2駅先の鳥栖駅でかつて売られた駅弁「かしわてりやき弁当」を、小さくして安くしたもの。鶏スープで炊いた御飯を、鶏フレークと錦糸卵で覆い、鶏照焼と紅生姜で彩り、焼売としめじ和えと大根桜漬を添える。1食分の見栄えと内容を持つ、ハーフサイズの駅弁。店舗では「ミニてりやき弁当」の名で売られる。2021年までの販売か。
※2022年4月補訂:終売を追記2010(平成22)年4月3日のJR久留米駅の新駅舎オープンで開業した、久留米市観光案内所に併設の売店「地場産くるめ」で発売。この店のみの限定販売という。福岡県産の地鶏「はかた一番どり」の焼き鳥3個を埋め込んだ、かっちり正三角形の型押し茶飯をふたつ、たくあんと唐辛子を添えて透明なプラ製の惣菜容器に詰め、商品名と宣伝文を書いた紙帯で留める。その姿はまるでミニ駅弁。この内容と値段の範囲で、冷たくてもおいしい感じの商品。調製元は久留米市内の弁当屋。調製元の廃業により、2021年3月限りで終売。
※2022年5月補訂:終売を追記1965(昭和40)年頃に発売。扇形でも楕円形でもない独特な形の容器を使用、牛肉スープとカレー粉で炊いた味付御飯の上に、錦糸卵と牛肉を半分ずつ敷き詰め、さくらんぼでアクセント。御飯・錦糸卵・肉それぞれを個別に食べるとお世辞にも美味くないが、まとめて口に含むと不思議な旨味がにじみ出てくる。駅弁屋の社長が阿蘇旅行で思い付いたのだとか。
久留米駅では駅でクジャクを飼育し、下りホーム上で鑑賞することができたが、新幹線の工事による駅舎の解体の頃に失われた。昔は久留米絣、以前はゴム工業、その後は松田聖子やチェッカーズといった芸能人、続いて孫正義や堀江貴文といった異色の実業家を輩出するなど、久留米の名物は時代に対応して変化する。
九州の鉄道は、現在の鹿児島本線のうち博多と久留米を結ぶ区間が最初に開通するはずであったが、久留米駅のすぐ北側を流れる筑後川での架橋が遅れ、その手前に千歳川という仮駅を設けてとりあえず開業、約3か月後に橋が完成し久留米駅が開業した。線路際で橋のたもとの草むらの下が九州最古の廃止駅の位置らしく、九州新幹線の工事で踏み潰される際に何か遺構が出てくるかもしれないと期待したが、そういう報告は見ていない。
なお、2003年11月限りで久留米駅弁の調製販売が鳥栖駅の中央軒に引き継がれ、この駅弁は失われた模様。2004年1月の阪神百貨店の駅弁大会には出品されていた。
上記の駅弁「肉めし」を、2009(平成21)年に購入したもの。特徴的な容器や中身の雰囲気に加えて風味もだいぶ変わってしまい、価格もあり得ないくらい上がったが、本来は2003年の駅弁屋の廃業に伴い失われた駅弁であり、こうやって残存しただけでもありがたい。
しかし、この駅弁をデパートの駅弁催事で購入した時点で、久留米駅での駅弁の販売は中止されており、旧駅弁屋の合併先である鳥栖駅では相変わらず、かしわめしや焼麦など従来の鳥栖駅弁だけが売られていた。そのためこの時点では、駅で売らない疑義駅弁と見なさざるを得ない。九州新幹線の工事に伴う久留米駅の改造が終われば、駅弁の販売も再開されると聞くが。