2022年9月までの肥前山口駅。博多駅から特急列車で約50分、長崎本線が佐世保線を分ける駅。江北町は、江北駅を中心に広がる、人口約1万人の町。かつて長崎街道の小田宿が置かれ、1895(明治28)年に鉄道が通じ、1930(昭和5)年に長崎本線が佐世保線を分ける駅となり、列車の分割や併合を行う拠点となった。駅弁は1936(昭和11)年に誕生、ムツゴロウの駅弁などが知られたが、1990年代に自然消滅し、2002年に廃業か。当時の駅弁がイベントなどで時々復刻される。1895(明治28)年5月5日開業、佐賀県杵島郡江北町大字山口。
2022(令和4)年5月に、当時の肥前山口駅北口でオープンしたコンテナショップ「エキ・キタ」で発売。かつて肥前山口駅で売られた駅弁「かしわめし」を、地元の商工会と飲食店組合と町民8名を含む15名で2016年11月に発足した江北町駅弁研究会が復刻し、江北市街の料理店「枡屋」の調製により2017年6月からイベント時に販売していた弁当が、駅前の常設店舗で売られるようになった。
掛紙の絵柄は昭和時代の駅弁から流用、これに食品表示ラベル、駅名と調製元の名があるシール、町認証のシールで3枚のシールを貼る。長方形の容器に、鶏ガラスープで炊いた御飯を詰め、とりそぼろと錦糸卵で覆い、紅生姜で彩り、焼鮭、肉団子、鶏唐揚、玉子焼、かまぼこを添える。価格は駅弁とみれば格安の500円。おかずを充実させた1,000円のものが、2022年のJR九州の駅弁キャンペーン「第13回九州駅弁グランプリ」にエントリー。他におかずを排し海苔を加えた500円のかしわめしと、季節により前日までの予約により「ムツゴロウちらし寿し」(500円)も販売。
肥前山口駅は、長崎本線が佐世保線を分ける駅。平成時代にも寝台特急列車や特急「かもめ」「みどり」の分割・併合が行われた鉄道の要衝で、1990年代まで駅弁が売られ、全国で唯一のムツゴロウ駅弁「むつごろうちらしすし」が知られた。1986年の国鉄ダイヤ改正で分割併合が激減したり、寝台特急が2000年に分割併合しなくなり2008年までに廃止されたことは、肥前山口駅の盛衰に影響を与えなかったと思うが、駅弁はひっそりなくなり、調製元もひっそり廃業、廃業年は後に2002年と紹介される。
人口1万人の町に比して、優等列車の停車や最長片道切符のテレビ放送などで知名度が高かった肥前山口駅は、地元の要望により2022年9月の西九州新幹線の開業と同時に「江北(こうほく)」へ改称、町名と一致したが、知名度を捨てた。駅弁は国鉄時代、むつごろうちらしすしの知名度に対して、九州の各駅に存在した「かしわめし」の肥前山口駅版は無名の存在であったが、地元ではこれがかつて親しまれたと進んで復刻された。全国あるいは東京の視点からは、いずれも不思議に思える。
2022(令和4)年10月までに発売し、JR九州の駅弁キャンペーン「第13回九州駅弁グランプリ」にエントリー。上記の駅弁「かしわめし」の特製版のようなもので、鶏ガラスープで炊いた御飯をとりそぼろと海苔で覆い紅生姜で彩るかしわめしに、えび天や鶏唐揚、有頭海老やローストビーフ、焼鮭にかまぼこや玉子焼など3マスのおかずを加えた。これだけ多種のおかずを詰めて、この値段はお買い得。上記のかしわめしを含め、現地で買えるかは運次第なので、確実な入手は電話での確認や予約がおすすめ。
昭和40年代までには肥前山口駅で売られていた、全国で唯一のムツゴロウ駅弁。正方形の経木折に佐賀米の酢飯を詰め、錦糸卵を敷き、ムツゴロウの蒲焼きを置き、伊達巻き、しいたけ、きゅうり、れんこん、かまぼこを散らし、生姜と煮豆と大根漬を添えた。ここにしかない珍味として1990年代の駅弁紹介本にはよく取り上げられていたが、人気だ評判だという紹介はされなかった。調製元が1990年代に駅売りの弁当から撤退した後も、シーズン中の臨時販売や、5個以上の予約販売があったという。調製元が2002(平成14)年に廃業したらしく、駅弁も消えた。
ムツゴロウは、日本では主に有明海に生息する小魚。干潟に横たわったり、ヒレで立ったり飛んだりする姿は、テレビなどでよく紹介され、佐賀県南部の観光資源でもある。この地域の食堂や土産物店で出会えるムツゴロウの蒲焼きや干物は、真っ黒になったドジョウの化け物のようなもので、見慣れないと驚くが、味は淡泊な白身魚のよう。
肥前山口駅は、長崎本線が佐世保線を分ける駅。かつてはこの駅で、長崎方面と佐世保方面の列車の分割や併合がよく行われ、そのための数分から十数分の停車時間があった。だから駅弁がよく売れたのではないかと想像できるが、そんな賑わいを記録した文章や写真を見たことがなく、特急列車「かもめ」「みどり」や寝台特急列車「さくら」の分割併合があった頃には駅弁が消えていたので、そうでもなかったらしい。
1980年代のものと思われる、昔の肥前山口駅弁の掛紙。葉隠の里、有明のりひび、武雄温泉が賑やかに描かれる。当時も今も特急列車「かもめ」「みどり」が行き交う、列車が賑やかな駅であるが、駅弁はひっそり消えてしまった。
博多駅から特急列車「リレーかもめ」と新幹線「かもめ」を乗り継いで約80分。嬉野市は佐賀県の南西部で2006年に嬉野町と塩田町が合併してできた、人口約3万人の温泉町。千年以上前からの温泉町で、長崎街道の宿場町でもあった。鉄道は長崎本線も佐世保線もここを通らなかったが、2022年に新幹線の駅ができた。駅に売店はなく、駅弁もない。2022(令和4)年9月23日開業、佐賀県嬉野市嬉野町大字下宿甲。
西九州新幹線と嬉野温泉駅前が開業した2022(令和4)年9月23日に、駅前のイベントで買えたお弁当。9月23日から25日まで嬉野温泉駅の駅前広場で開催された、西九州新幹線しゅん功・開業イベント「CHANGE URESHINO FESTIVAL」に隣接したテントで、「日本財団 海と日本PROJECT」の幟を出し、この弁当を積んで販売していた。
駅弁でもよく使われる長方形のプラ容器を、弁当の名前と海や魚を描いた薄手の掛紙で包む。中身は太良みかんを使用したみかん御飯を、佐賀県有明海太良町産のコハダの竜田揚げ、玉子焼、ししとう、さつまいもなどで覆い、有明海産海苔の佃煮を添える。思わず出会えた、お魚がおいしいお弁当。この近隣にそんな駅弁はないので、嬉野温泉駅の駅弁になったら面白いと思う。
これは国土交通省と首相官邸の総合海洋政策本部が絡む日本財団の補助事業「海と日本プロジェクト」により、株式会社まちづくり嬉野と嬉野温泉和多屋別荘と海と日本プロジェクトin佐賀実行委員会が企画し、竹崎コハダ女子会と嬉野温泉和多屋別荘とSAGANキッズが参加し、この時にプレ販売した弁当だったらしい。10月8日から12月まで、嬉野温泉駅前の観光交流施設「まるくアイズ」で本販売。新幹線の駅弁とも、道の駅の駅弁とも、紹介されていない。
博多駅から地下鉄直通電車で約1時間半、天神から高速バスで約1時間。唐津市は佐賀県の北西部で唐津湾に面する、人口約12万人の城下町。有史以来の大陸や朝鮮半島と日本列島との交通路にあり、中世に松浦党が支配、江戸時代に肥前国唐津藩の城下町ができ、以後は石炭と積出港で栄えた。発電と競艇に松原や焼き物でも知られる。2005(平成17)年1月の合併で呼子や伊万里湾も市域となる。駅弁は1983(昭和58)年3月の筑肥線の乗り入れで、東唐津駅から博多駅の駅弁屋の支店が移転してきたが、1998(平成10)年頃までに撤退。1898(明治31)年12月1日開業、佐賀県唐津市新興町。
1980年代頃の調製と思われる、昔の東唐津駅弁の掛紙。1983(昭和58)年3月まで、東唐津駅は筑肥線からの唐津の玄関口であり、すべての列車はこの駅で進行方向を変え、博多駅方面と山本駅方面へ向かい、駅弁も売られていた。掛紙の記述から、博多駅の駅弁屋の支店があったことが分かる。写真は史実によらず1966(昭和41)年に模擬天守を新築した唐津城。
佐賀駅から列車で2駅7分。久保田は2007(平成19)年に佐賀市へ編入されるまで、約120年間単独で村制や町制を敷いた宿場町。長崎本線が唐津線を分けるこの駅では、1920年代に駅弁が売られた記録がある。1896(明治29)年10月10日開業、佐賀県佐賀市久保田町徳万。