2024(令和6)年6月6日に小禄駅で発売。その前後の、5月15日から20日まで大阪府大阪市の阪神百貨店の、7月24日から30日までの熊本県熊本市の鶴屋百貨店の、8月8日から13日までの東京都豊島区の東武百貨店の、沖縄物産展で実演販売された。沖縄県やゆいレールで初めての、駅で売られる駅弁。壺川駅の「海人がつくる壺川駅前弁当」は、駅の外で売られた弁当であり、那覇空港駅で2012年に発売された「油味噌かつサンド」は、サンドイッチであり米飯のお弁当ではなかった。
商品名が書かれた掛紙には、ゆいレールの電車の写真が使われる。長方形のプラ容器に白飯を詰め、らふてぃ、軟骨ソーキ、ゴーヤーちゃんぷるーで覆い、赤かまぼこと煮玉子を載せ、ドラゴンフルーツと大根の甘酢漬けと紅芋のマッシュを添える。現物で特に解説をしなくても、旅行者でも那覇や沖縄本島に何度か来ていれば、きっと実に沖縄らしい弁当だと感じさせてくれる内容を、1食分でコンパクトに詰めていた。冷めてもおいしく駅弁らしい弁当、見た目も良い弁当にしたためか、沖縄のお店では見られないような高額な弁当になったと思う。
調製元は那覇市内で2008年9月に宅配専門のお弁当屋さんとして開業。駅弁は毎日でなく6の付く日、毎月6、16、26日の、平日は7時から9時までと11時から14時までと17時から19時まで、土休日は10時から14時まで、小禄駅構内で台売りされる。価格は物産展では1,836円、現地では発売記念特別価格として1,500円。催事でも現地でも、これ以外の弁当も併売される。
1か月に3日間だけ売られるこの弁当はどうもメディアで、日本一手に入りづらい駅弁、日本一購入難易度が高いレア駅弁と定義されているようだが、そんなことはない。恵方巻の駅弁は毎年2月の節分の日のみの販売だし、1年で4日間、第3土曜日だけ、6年に一度といったものが、ごろごろ出てくる。
これは駅弁ではなく、宮古島へのフェリーが発着する伊良部島の佐良浜(さらはま)港の売店で売られていた惣菜。透明で簡易なプラ製の惣菜容器に白御飯を敷き、焼きそば、フライ、肉団子、こんにゃくとダイコンとニンジンの煮物、キャベツとニンジンの炒め物、塩焼きそばを載せるもの。こういう格安で珍妙な市販メニューもまた、沖縄の名物であるような気がしてきた。
これは駅弁ではなく、宮古島へのフェリーが発着する伊良部島の佐良浜(さらはま)港の売店で売られていた惣菜。小柄な牛丼。白御飯の上に固く油っぽい牛肉煮が置かれる。この他に三角形や四角形のおにぎり、ハンバーガー、御飯に炒め物を載せた弁当など、油っぽく健康に悪そうだと見える惣菜が10種類以上販売されていた。船弁や港弁というほど飾りのあるものではない、日用品かつ実用品。
訪問時、人口約6千人の伊良部島では、総事業費380億円もの巨費をかけて、宮古島との間に全長3,540メートルもの伊良部大橋を建設中。海中に橋脚が完成し、天へ向けて橋桁を架けつつあった。2006年に着工し、2014年には完成するという。その暁(あかつき)には一日11〜12往復の高速船と一日6往復のフェリーは廃止され、佐良浜港の旅客ターミナルはその役目を終え、この弁当も売店ごと消えることだろう。
これは駅弁ではなく、宮古島へのフェリーが発着する伊良部島の佐良浜(さらはま)港の売店で売られていた惣菜。プラ製トレーの惣菜容器に白御飯、白身魚フライ、豚バラとニンジンとダイコンの煮物、キャベツとニンジンの野菜炒め、塩やきそばが入る。普段着の沖縄らしい、茶色と油のお弁当。伊良部島ではこれが、コンビニ弁当やスーパーの惣菜を兼ねているのだろう。
伊良部島と下地島は事実上の陸続き。下地島には国内航空各社のジェット機パイロット養成訓練のために1979(昭和54)年7月に開港した下地島空港があり、その建設のために住人の全員が島を離れ、3000mもの滑走路を備え、タッチアンドゴーの訓練飛行を見物するために多くの航空ファンが集まる。
これは駅弁ではなく、伊江島と沖縄本島の本部を結ぶ村営フェリーの売店で販売されていた惣菜のひとつで、コッペパンにゆで卵のペーストと焼ウインナーを挟んだもの。
伊江島は沖縄本島の西側にある島で、伊江村で1村1島をなす。那覇空港から高速バスで名護まで約2時間、路線バスに乗り継いで本部まで30分、さらに一日4往復、片道30分のフェリーで伊江へ着く。島内には1500m前後の滑走路が3本もあるが、東の伊江島空港は定期便の発着がなく開店休業状態、西の米軍基地は当然に立入禁止、真ん中の伊江島補助飛行場はどういう使い方をするのか、とても痛んだ舗装路が地面にただ広がっており、誰もが立ち入りできる状態になっていた。
これは駅弁ではなく、伊江島と沖縄本島の本部を結ぶ村営フェリーの売店で販売されていた惣菜のひとつで、とても細い海苔を締めた鮭の三角おむすびに、ゆで卵を半分と、タコ状ウインナー揚げ2個を添えたもの。
この日は伊江村=伊江島をレンタサイクルで走り回った。そこには空の広い畑、立派で低利用な公共施設の数々、片仮名3文字を強調した政治家ポスター、軍用地買います旨の立て看板ばかり。そんな景観だけを見れば、ここは観光に来る場所ではない、観光客は招かれていないなと感じてしまうと思った。フェリーには学生団体が乗っていたし、遠足か修学旅行で来るくらいの見所があるはずなのだが。
これは駅弁ではなく、伊江島と沖縄本島の本部を結ぶ村営フェリーの売店で販売されていた惣菜のひとつで、とても小さな透明のプラ製の惣菜容器にタマゴサンド、ハムチーズサンド、半分のゆで卵、タコ状ウインナー揚げを詰めていた。
伊江島もまた他の沖縄の島々と同じく、昭和の戦争と占領の歴史を持つ。上記の滑走路も日本軍ないし米軍からいわゆる銃剣で強制的に作られた経緯があるという。しかし一方で、1平方メートルあたり年間約200円、島全体で年間十数億円の地代収入と、米軍施設の存在を理由として十億円単位で次々と投入される補助事業が、観光や産業よりも現在の島や村の経済を支えている事実と現状があるのだろう、ここではテレビや新聞で見られるような基地反対、土地返還の声は実は建前あるいは大きくなく、総論では引き続き島と村の経済を支えて欲しいと望まれているように感じられた。
これは駅弁ではなく、伊江島と沖縄本島の本部を結ぶ村営フェリーの売店で販売されていた惣菜のひとつで、コッペパンに2種類各1個の焼ウインナーを挟んだもの。このメニューはさすがに不健康だなと感じたが、ここで販売されていた以上全4種の軽食の見栄えは、他の沖縄の那覇を除く本島や離島での空港や地元商店や船乗り場で販売されていた、油漬けでメタボ一直線な惣菜群より、はるかに健康的なものに見えた。
これは駅弁ではなく、伊江島と沖縄本島の本部を結ぶ村営フェリーの売店で販売されていた持ち帰り商品。注文すると麺入りカップにスープを注ぎ、袋入りのだしを添えてくれる。具はまったくないけれど、味はだいたいあの沖縄そば。列車内からも船着き場からも船内からも売店がどんどんなくなる昨今、片道わずか30分の生活路線でこんなものに出会えるとは思わなかった。