2024(令和6)年1月6日から22日までの京王百貨店の駅弁大会で、一日200個を輸送販売。台湾や台北駅の駅弁の再現や復刻でなく、台鉄(國營臺湾鐵路股?有限公司)の監修により、神戸駅弁の淡路屋が容器を作り弁当を調製した、日本オリジナル、駅弁大会オリジナルの商品だったらしい。
丸い容器に透明なプラ製トレーを詰め、白飯を敷き、豚肉の揚げ物で覆い、煮玉子と2種の菜の物を添える。台北駅弁の排骨飯に似ているよう見えて、ほのかな五香の匂いを除き、脂や油の感じがまるでない、これは別物の揚げ豚丼。骨も癖もないので、食べやすいお弁当だった。これに台湾の土産物店にあるような金属製で円筒形の容器と、過去の復刻駅弁や記念駅弁に似た形の布袋を付けた。今回の売れ行きは可もなく不可もなし。行列ができ売り切れる日もあれば、閉店時間まで買えた日もあった。
台湾の国営鉄道である臺湾鐵路管理局(臺鐵または台鉄)は、2024年1月1日に国営企業の國營臺湾鐵路股?有限公司(国営台湾鉄路株式会社)へ転換された。赤字に加えて列車の遅延と相次いだ事故が、民営化へ向けた動きを後押ししたという。とはいえ、1987年に国有鉄道を分割民営化した日本のケースと異なり、路線網を切り刻むことなく、略称もロゴマークも変えず、駅弁の姿と直営も変わらないようで、海外旅行者では変化に気付かないかもしれない。
2023(令和5)年1−2月の鶴屋百貨店の駅弁大会で、3週目のみ実演販売。「台湾・台北で親しまれている駅弁を再現!」として、かつて台北駅に出店していたまねき食品による姫路駅弁の実演販売に、この1品を加えた。2021年11月に半導体受託生産で世界最大手企業である台湾企業TSMC(台湾積体電路製造股?)が熊本県内に半導体製造工場を建設し進出することを発表し、地元が沸いていることも販売の背景か。鶴屋の駅弁大会なので「駅弁当ではございません」という、独特かつ正確な案内をチラシに掲載した。
見た目はたしかに、台北駅の駅弁にそっくり。正八角形の木質エコ容器に透明なふたをして、白飯を敷いて豚肉の揚げ物を載せ、煮玉子や高菜炒めなどを添える。食べれば香りも台北そっくり。しかしその匂いはすぐに消え、油っぽさも薄く、あとは日本の惣菜、あるいは高菜で九州風味。調製元が2017年に開店し2020年に閉店した台北駅の店舗では、台湾の弁当でなく「日式便當」つまり日本風の弁当を販売しており、台湾料理のノウハウはなかったのではないかと思う。
下記「懐旧弁当」の、2016年1月時点での姿なのかどうか。京王百貨店駅弁大会へ9年ぶりに出てきた台湾の駅弁。調製元は前年5月に京浜急行電鉄が売った「台鉄弁当」と同じ、横浜市内の食品業者。写真の袋と空の金属容器付きでは2,200円。台北駅などの駅弁と同じような容器、透明なふたをした薄い木製の円形の容器と中身だけなら、1,000円で輸送販売した。
中身は、白飯を骨付き豚肉の油揚げ(排骨)、薩摩揚げ、煮玉子、高菜炒め、刻みタクアンで覆うもの。全体的な臭いと排骨(パイコー)の味に現地の雰囲気があるも、野沢菜は油のない漬物の味で、タクアン千切りも同じく日本の味。薩摩揚げなどなぜ入れたのか疑問に思うもので、台湾の何を見たのだか、これではまるで、タイワンを名乗る日本の弁当。現地の駅弁や過去の京王百貨店の駅弁大会での台湾駅弁を経験した者としては、とても残念な商品だった。また、会期を通して、あまり売れていなかった。
2018(平成30)年1月の京王百貨店の駅弁大会で売られた台湾駅弁。上記の2016年の販売から丸2年経つのに、袋とステンレス容器が2年前とまったく同じ「台灣鐵路129週年紀念」のままで驚いた。当時のデッドストックだろうか。調製元が羽田空港の空弁屋に変わり、台鉄の円形の容器に入る排骨飯が、メインの豚肉スペアリブ揚げが骨なしになるなど、日本向けのきれいな味になり、現地の香りを少し残しながら、だいぶ上品にされた。
下記の駅弁「懐旧弁当」の、2007年1月時点での姿。前年の11月に見送ったものと袋色が異なるので2007年版だと思ったが、その袋に記される「丙戌年」は2006年のことらしい。
既収蔵品で最も安っぽい緑色の布袋には、台北近郊のローカル線かつ行楽地として人気を集める内灣線内灣駅が描かれる。箸も金属箸は付くが、竹箸や割りばしなどは付かない。いつもの円形金属容器にも内灣駅の絵柄。中身はやはりいつもの排骨飯、上段に豚肉や煮玉子や野菜炒めなどが入り、下段には通常の駅弁と異なり、小海老その他を炊き込んだか炒めた混ぜ御飯か炒飯の入る。
品質は良さそうだが、日本人向けでないクセに少々難儀。しかし御飯の常温で出す風味は他の台湾駅弁にない奥深さ。個人的な好みかもしれないが、この御飯だけ紙箱に詰めてチャーハン駅弁として売ってほしいとも思うほど。今回の台湾ツアー2泊3日で最も美味かった食事は、きっとこれだった。
下記の駅弁「懐旧弁当」の2004年版。今年の袋はさらに手が凝っていて、台湾のローカル線で活躍した旧型ディーゼルカーを模した。容器は昨年と同じステンレス円形二重容器で中身も同じ、今年は新たに金属製の箸が付いた。価格は50円アップ。
2003年の販売が会場内先着順整理券配布で激しい争奪戦となったため、2004年は開店30分前から入口で整理券を配布した。発売2年目でもあり、前年ほどのプラチナチケットではなかったが、それでも休日は開店と同時に、平日でもおおむね午前中には予定数量終了となっていた。
京王百貨店のおかげで台湾に駅弁が存在することは広く知れ渡ったものの、旅行者の現地での購入報告が今でも見つからないのは不思議。台湾の鉄道情報は鉄道ファンにより多数が発信されている。駅弁ファンは海外にあまり関心がないのだろうか。
なお、翌年以降の京王百貨店の駅弁大会では、台湾駅弁の実演販売は実施されていない。台北では年1回のリリースが続いているようで、陶製容器の復刻もされたとか。
下記の駅弁「懐旧弁当」の2003年版。台湾の鉄道記念日「鉄路節」を記念して毎年販売される記念弁当を、京王百貨店が駅弁大会の目玉として2003年1月9日から22日まで販売したもの。とはいえさすがに台湾からの直送とはいかず、台湾鉄路管理局の監修のもと日本国内の台湾料理店が製造した。連日開店と同時に予定数量終了となる大変な人気だった。
以前と比較して、ステンレス製容器が二重になり、手提げ袋の形状が弁当容器と同一になった。中身はほぼ同じだが御飯が白御飯から干し海老入り炊き込み御飯となり、臭みと油味が強かった骨付き豚肉がクリスピーでほのかな香りの骨なし豚肉に変わっている。後者はおそらく国内で販売するための変更点。高菜や煮玉子は変わらず。お箸は普通の割り箸だけが付いていた。
日本の漢字に変換すると「懐旧弁当」。台湾で1970年代に高級弁当として車内にて販売された「排骨菜飯便當」を、台湾鉄路管理局が2001(中華民國90)年6月に復刻した記念駅弁。丈夫な布製の手提げ袋に円形の金属製容器が入る。中身は他の駅弁と同じく、御飯の上に高菜が敷かれ、豚肉の骨付き肉を揚げて煮込んだものを載せる「排骨飯」で、煮卵が1個添えられる。竹の箸に加えて金属製の箸も付属する。2003年1月の京王百貨店新宿店の駅弁大会で販売される予定。