スペインのバルセロナ・サンツ駅の観光売店で発見したパッケージ。透明な袋にハムとチーズの三角サンド、ミネラルウォーター、ポテトチップス、飲むヨーグルトを詰めていた。いずれもこの売店で販売されている商品であり、中身にはバルセロナはおろかスペインを表すものもないし、プリングルスやダノンは日本でもおなじみの国際ブランド。しかしそれをわざわざセット販売する点に、駅弁の機能や役割を感じた。
水がコカコーラになると7.25ユーロ。ヨーグルトを板状ウエハースチョコレートに替えたセットもあった。マドリード・アトーチャ駅でも売店でセット売りの掲示を見たが、そこでは個々の商品をまとめてレジに持ち込むと割り引いてくれる案内だった感じ。
バルセロナは1992年の夏季五輪の開催地。スペイン第2の都市であり、ガウディの建築群で日本人にも人気の観光地であり、2008年2月には高速鉄道の新線が通じた。その他に日本でいう国鉄、私鉄、地下鉄、ケーブルカー、ロープウェイ、路面電車とひとおおりの交通機関が揃っており、半日の滞在ながら乗って楽しい都市だった。
スペイン版新幹線「AVE」の1等車で提供された車内食。写真のとおり飛行機の機内食のような見栄えと提供方法。バルセロナから出発後すぐに飲み物の提供、新聞の配布、雑誌の配布、イヤホンの提供と続き、車内食を配膳し片付け終わるまで、わずか50分のうちに慌ただしく済ませた点は、ガイドブックに書かれるスペインのイメージとだいぶ異なる。
乗車時の内容はパン、野菜と鶏肉の煮付、サラダ、ケーキ、スープ。メインディッシュとサラダの姿も味がくすんでいるように思えたのは気のせいか。列車は快適であり、パエリヤやトルティーヤなどの食文化を誇る国でもあるのに、この列車の食事は旅程の前後の車内食や食堂車のような高級感や清潔感がなかった。
AVEはスペインが誇る高速鉄道。セビリア万博の開催に合わせて1992年4月にマドリードとセビリアの間で開業、鉄道らしくない航空便並みの保安検査や車内食などの車内サービスと、5分遅れで返金をするスペインらしからぬ約束が話題となった。その後はマドリードからバルセロナへ向けてゆっくりゆっくり路線を伸ばし、予定より4年遅れの2008年2月にバルセロナ・サンツ駅まで達した。現在はここからフランスへ向けて延伸工事中で、TGV路線網との接続が予定されている。
マドリードの北の玄関口であるチャマルティン駅のコンコース兼待合室のカフェカウンターで買えたサンドイッチ。夜行列車の待ち時間に買ったため時刻は21時を過ぎていたが、小さな売り場に4種類の三角サンドに多種のコッペパンサンドが陳列されていた。欧州の各地で見られるとおり、固めのプラ製容器に三角サンドを2切れ詰める。今回の中身はベジタブルサラダで、トマトやレタスやニンジンなどの野菜とチーズが豊富に挟まれていた。
マドリードでは、南の玄関口であるアトーチャ駅にはスペイン版新幹線のAVEが発着し、天井が高く縦列駐車が可能な長い長いホームや、旧駅構内を利用した植物園を備えるのに、こちらのチャマルティン駅は見渡せて歩き回れる程度の広さしかない。東京駅と上野駅の関係を思い出した。
マドリード・チャマルティン駅からリスボン・サンタ・ルチア駅までの夜行列車に連結されていた食堂車で注文した料理。牛焼肉、ナス炒め、トマト炒め、ジャガイモ入り玉子焼と、これに先行してパンが運ばれてきた。こういう料理を食べ慣れていないので感想を出しづらいが、昼間のAVEは何だったのかと思うくらい、至福の時を過ごせたと思う。
利用した列車は、スペインが世界に誇る軌間可変客車「タルゴ」を使う夜行列車。座席車と個室寝台車を含む短い車体の11両編成の編成定員はおそらく100名程度で、マドリードからリスボンまでの走行時間は約10時間。つまり日本国内で例えれば「サンライズ瀬戸」のような条件で、食堂車とビュッフェ車がそれぞれ発車前から一晩中営業しているとは、日本では昔も今も考えられない。海外に出ないと得られない貴重な体験をと、ワインと水とヨーグルトを付けて26.95ユーロも支払う、ユーロ安の恩恵を受けながら個人的にはとても豪華なディナーを楽しんだ。