マドリード・チャマルティン駅からリスボン・サンタ・ルチア駅までの夜行列車に連結されていたビュッフェで注文した朝食。この重いメニューと、軽いメニュー「MENU BOM DIA」から前者を選ぶと、パンが4種、焼玉子、ソーセージ、マッシュルーム、ジュース、コーヒーが出てきた。値段がなぜか壁掲示のメニューより1ユーロ安く、何か1品足りなかった模様。食堂車とビュッフェが隣り合い連結されており、厨房と従業員を共用し、連接車の貫通路を人と飯が行き来していた。
ポルトガル鉄道が誇る最高速列車「アルファ・ペンドゥラール」のビュッフェで買えたボックスランチで、今回の欧州遠征で初めて発見した駅弁のような箱売り飯。壁に掲示されていたメニューに駅弁のような箱入り飯の写真があり、これをひとつと指差して注文した。日本の駅弁と異なり、注文を受けてからいろいろ詰めたり温めたりするようで、注文から購入まで10分以上待った。
緯度を示す「LATITUDES」は、この列車内売店のブランドネームか。ビュッフェの掲示類と同じデザインを持つ緑色の大きなボール紙箱に、かぼちゃスープのカップ、パン1個、焼き魚の混ぜ御飯のカップ、パスタ入りティラミスのカップ、ペットボトルのミネラルウォーター1本を詰めていた。座席に持ち帰りやすい機内食といったところ。
アルファ・ペンドゥラールとは、日本でいえば東海道本線に相当するリスボンとポルトの間で、1999年から走り始めた全車指定席の特急列車。イタリア版新幹線「ペンドリーノ」の車両を輸入し、6両編成301席で最高時速220kmにて軌間1668mmの広軌路線を振り子式で走る。乗車時はリスボンからコインブラまで約170kmを1時間50分で走行、表定時速92.7kmは日本の在来線特急で表すと「フレッシュひたち」や「北斗」の程度であり、そんなに速くはない。ポルトガルでもフランスTGVつまりスペインAVEの規格で新幹線を持つべく、まずはマドリードとリスボンとの間で2013年の開業を目指し新線建設事業に着手したが、経済危機の影響でこの訪問の頃に中止されてしまった。
コインブラで特急列車が発着するB駅のホーム上で買えた箱入り食。カウンターを兼ねるガラスケースの中にこれが積んであり、駅弁ではないかと思い購入してみたら、中身は直径約5センチで濃厚に柔らかな甘さのカスタードタルトが6個ということで、つまり甘味であった。商品名は「テントゥガル村のチーズケーキ」という意味だそうな。テントゥガル村はコインブラ近郊の教会町で、修道院のお菓子が郷土の名物として人気なのだとか。
コインブラB駅とコインブラ駅との関係は、かつての横浜駅と桜木町駅との関係か。頭端式の無印駅が市街に入り、電車で4〜5分のB駅に各方面の路線が接続、特急や夜行はB駅にのみ発着し、鈍行列車は無印駅に発着しB駅を経由して各地へ行く。無印駅にも売店やカフェやバーがあったが、駅弁のような箱売りの食べ物は見当たらなかった。
ポルトガルのリスボン・サンタアポローニャ駅からスペイン国内を通過しフランスのアンダイエ駅までの夜行列車に連結されていたビュッフェで注文した料理。前夜のマドリード発リスボン行と同じ内容の車両が来たので、肉ではなく魚を注文してみた。トマトソースの白身魚に、茹でたジャガイモとニンジン、焼いたトマトとナスが添えられていた。ここでもビールやアップルパイやコーヒーを付けて19.75ユーロも支払う、学生の貧乏旅行並みの旅程に似合わない豪華ディナー。
切符や列車を見ても分からないが、今回乗車した列車には「SUD EXPRESSO(南急行)」の列車名が付いている。かつてフランスのパリとポルトガルのリスボンを2昼夜かけて直接結ぶ名門列車であったが、飛行機の時代になって没落し、1989年9月のTGV大西洋線の開業で西仏国境にて打ち切りとなった。北行はフランスのアンダイエ駅まで行き、南行はスペインのイルン駅から出て、所要時間は約13時間。パリ・モンパルナス駅発着のTGVが接続し、プラス6時間でパリまで結ばれる。