札幌駅から特急列車「オホーツク」で約5時間半、石北本線と釧網本線との接続駅。網走市は北海道の北東部でオホーツク海に面した、人口約3万人の港町。オホーツク海の漁業と盛衰をともにした、沿岸有数の都市であり、監獄や流氷などの観光資源が客を集める。駅弁は国鉄時代からの駅弁屋がカニの駅弁などを、ホームと改札外待合室に面した店舗で販売するほか、秋冬の駅弁催事へも出品する。1932(昭和7)年12月1日開業、北海道網走市新町。
北海道庁のオホーツク総合振興局によるプロジェクト「地場産たくさんオホーツク弁当(通称:オホ弁)」の一環で、2022(令和4)年4月1日に網走駅で発売。同局とオホーツク財団と管内の事業者で構成する「『オホ弁』製作実行委員会」では、「オホーツクブランド認証商品」を活用したオホ弁の開発に取り組み、まずは2022年4月にモリヤ商店の駅弁知床とりめし、アルカディアの網走弁当パエリア、レストランエフのオホーツク彩り弁当の3商品を認証した。
長方形のプラ容器に、もち麦を混ぜた白飯を敷き、錦糸卵で覆い、ビート糖を使用した特製醤油ダレに漬け込んだという北海道知床どりの照り焼きを並べ、タレとグリーンピースをかけ、ひじき煮、ごぼう煮、西洋わさび袋、ホタテ、松前漬け、柴漬けを添える。見た目や味では、各地にありそうな鶏飯駅弁。オホ弁の定義「オホーツクブランド認証商品を1品以上使用すること。」「その他の食材も、オホーツク産または道内産を中心に使用することが望ましい。」「日常利用のお弁当から、特別な日や観光客向けのお弁当までをターゲットとしても構わない。」に合致するのは、鶏肉でもタレでも麦や米でもなく「北海道丸大豆醸造しょうゆ」なのだそうな。
2015(平成27)年の秋に、駅弁催事向け商品として発売か。2017(平成29)年1月の京王百貨店の駅弁大会で実演販売して以降、網走駅でも売り始めた模様。小柄な正方形の容器に醤油飯を詰め、イクラとカズノコと、カズノコのほぐしで覆う。その見た目は、チラシやパッケージの写真と寸分違わない美しさ。カズノコのほぐしは、駅弁以外を含めて初体験。風味はほぐさないほうが良いものの、これで見栄えと個性を備えた感じ。価格は2017年の購入時で980円、2020年時点で1,280円。
※2020年5月補訂:値上げを追記網走駅の幕の内駅弁。駅弁の名前は網走駅でも調製元でも、市販の時刻表の駅弁紹介でも「オホーツク弁当」であるが、現物にその名はどこにもなく、市販の仕出し弁当向け容器がそのまま使われる。中身は日の丸御飯にスパゲティ、エビフライ、焼き鮭、玉子焼き、ホタテ煮、焼売、春巻、うにくらげ、漬物など。ほぼ特徴のないお弁当であり、そんな姿は今の駅弁では希少になってきたと思う。
上記の駅弁「オホーツク弁当」の、2015(平成27)年時点での姿。上記の2025年のものと、市販の仕出し弁当向け容器の選択を除き、何も変わらない。値段や具の一品一品さえ、まったく変わっていないことに驚く。この容器はかつて京都府の山陰本線綾部駅で買った幕の内弁当と同じだった。
1955(昭和30)年に網走駅で発売した、人気の駅弁。カニでデザインした真っ赤なスリーブに収める真ん丸のプラ容器に、茶飯を詰め、錦糸卵とカニほぐし身で覆い、シイタケと紅生姜と漬物で彩る。見栄えや調味料にあまり頼らない自然なカニの風味を楽しめる。今となっては、特徴のなさが特長のカニ駅弁だとも感じられる。価格は2000年代で840円、2014年時点で900円、2020年時点で990円、2023年時点で1,100円、2025年時点で1,200円。
上記の駅弁「かにめし」の、2015(平成27)年時点での姿。上記の2025年のものと変わらない。
※2025年9月補訂:新版の収蔵で解説文を手直し2004(平成16)年4月19日に購入した、網走駅弁のスリーブ。その絵柄も、容器も中身も、上記の2015年2月のものと変わらない。その後は女満別空港では、網走駅弁の販売を見掛けていない。
ふたと底を上げた容器を窓開きのスリーブにはめる、見栄え重視の体裁。中身は茶飯の上にウニとイクラと錦糸卵を散らし、大根桜漬を添えて彩ったもの。味は見た目のとおりの輝き。11年前に大都会の駅弁催事でボソボソしたものを食べていたので、現地のものは現地ではおいしく感じた。分量は控えめ。価格は2015年の購入時で1,400円、2020年時点で1,580円。
※2020年5月補訂:値上げを追記2004(平成16)年1月25日の調製である、網走駅弁のスリーブ。大阪のデパートで実演販売されていたお弁当。見た目や内容は、上の現地での11年後のものと変わらない。2004(平成16)年1月の阪神百貨店の駅弁大会で購入した「ウニ・イクラ」で、他に「タラバ・ホタテ」(1,470円)、「タラバ・ウニ」(1,470円)、「タラバ・イクラ」(1,470円)、「鮭・イクラ」(1,050円)、「カニ・イクラ」(1,130円)の5種が、同じ容器で実演販売されていた。
2000(平成12)年10月に発売。上げ底の容器に透明な上げぶたをする催事受けしそうな容器を、海と中身の写真を載せたボール紙の枠にはめる。中身は白御飯の上にカニとイクラと錦糸卵を載せるもの。写真と違い中身の具がシェイクされているが、見栄え良く分かれているより食べてうまいと思う。小柄だけど満足感は出る。ただ、現地に実態があるかは分からない。パッケージにはしっかりと、現地で買えた駅弁にはなかった製造委託の記号が付いていた。価格は2008年の購入時で1,050円。後に他の磯宴シリーズと同じような姿に変わり、2020年時点で1,480円、2023年時点で1,580円、2025年時点で1,680円。
網走は、行政面では網走支庁を擁し、産業面では漁業の、観光面では監獄と流氷の街。鉄道では石北本線と釧網本線がぶつかる運行上の拠点。しかし人口においては、約4万人の網走市は約11万人の北見市の半分以下であり、鉄道は路線図上1本の路線で列車は2方向に出るのみ。
※2025年9月補訂:値上げを追記1955(昭和30)年に網走駅で発売。正方形の容器に茶飯を詰め、錦糸卵で覆い、甘辛く煮たベビーホタテを散らし、シイタケ煮も散らし、梅干しを据え、柴漬けを添える。ホタテの滋味と甘辛な味付けで飯が進む、食べておいしいお弁当。価格は2000年代で840円、2014年4月の消費税率改定で900円。
※2025年9月補訂:写真を更新し解説文を手直し上記の駅弁「帆立弁当」の、2015(平成27)年時点での姿。上記の2025年時点のものと変わっていない。きぬさやの存在と、スリーブでの表記の一部が異なる。
※2025年9月補訂:新版の収蔵で解説文を変更上記の駅弁「帆立弁当」の、2003(平成15)年時点の姿。スリーブの絵柄や中身や味は変わらない。当時は踏んでも壊れなさそうな、異様に強度のある黒いプラ製容器を使っていた。
1989(平成元)年頃の発売。流氷がやってきた網走市街の航空写真と、中身の食材のイメージ写真を印刷したボール紙の容器を使用、中身は小さな紙カップに収まる、鮭フレーク丼、カニほぐし身丼、イクラ醤油漬け丼、ベビーホタテ煮丼。柴漬けのプラ製カップも収まる。
新潟県は長岡駅の「越後長岡花火寿し」など、四半世紀前はこのような駅弁が流行ったのだろう。味については、イクラは見たまんま、カニは網走駅弁の味、ベビーホタテはエキスが香り、鮭は色も味もパサパサ。同じ売店で隣に磯宴シリーズがいては、名前負けする感じ。価格は2015年の購入時で1,300円、2020年時点で1,400円。2020年に終売か。
※2022年4月補訂:終売を追記2006(平成18)年の秋に、催事業者がプロデュースする催事向け駅弁シリーズ「駅弁の達人」のひとつとして、現地と催事場で発売か。正八角形の発泡材製容器に透明なふたをして、中身の写真を載せたボール紙の枠にはめる。中身は茶飯の上にタラバ、いくら、サーモンの3種を載せて、きぬさやを添えるもの。具が3種だから三つ巴。こういう内容は道内ではどうしても属地不詳となるが、きぬさやの添付と、軽く焼いたぶつ切りタラバの風味が個性を出す。現存しない模様。
※2015年7月補訂:終売を追記昭和50年代、1980年前後のものと思われる、昔の網走駅弁の掛紙。中身はつまり特製幕の内弁当か。ホタテとサケと、1990(平成2)年までに廃止された名寄本線や湧網線を含む国鉄線の略図を描く。