釧路駅から釧網本線(せんもうほんせん)の列車で約1時間半。摩周駅のある弟子屈町(てしかがちょう)は、北海道の東部に位置する人口約8千人の開拓地。19世紀末には硫黄が採掘されたほか、戦後は摩周湖や屈斜路湖や川湯温泉などへ行ける道東観光の拠点のひとつとなった。駅弁は弟子屈駅時代の1946(昭和21)年から1980年代まで売られたが撤退、東京のデパートでの駅弁大会を機に「摩周の豚丼」が2005年に誕生した。1929(昭和4)年8月15日開業、北海道川上郡弟子屈町朝日1丁目。
2005(平成17)年1月13日に摩周駅でなく、京王百貨店の駅弁大会での実演販売で発売。会期中の1月20日から摩周駅でも販売を始めたらしい。掛紙に「摩周駅前」と記し、駅で売られる駅弁でないことを示したが、百貨店のチラシやテレビのワイドショーなどでは摩周駅弁と宣伝されたため、現地にないぞと苦情でも出たのだろうか。
催事で映える赤く派手な掛紙には、摩周湖とおいしそうな豚焼肉の写真が使われる。中身は白飯にたっぷりタレをかけて、焼き豚で覆い、さらにタレをかけて胡椒を振り、玉子焼、たくあん、山くらげを添えるもの。催事の会期2週間で22,901個が売れる人気で、これに続く駅弁催事でもよく見かけ、現地での販売も定着した。価格は2005年の発売時で1,050円、2014年4月の消費税率改定で1,080円、2023年時点で1,100円。
北海道の釧網(せんもう)本線の摩周駅は、1990(平成2)年11月19日までの弟子屈(てしかが)駅。かつては急行列車が発着する公式な駅弁販売駅で、椎茸弁当の販売が少し知られたが、地元客はマイカーで、観光客も観光バスやレンタカーで移動する時代になり、急行列車も駅弁も人知れず1986年頃に消えた。ここでの駅弁の復活は現実的でなくても、食堂の副業で駅でもたまに売り、冬場は都会で稼ぐ駅前弁当としてなら生き残れるのだろう。
2023年の摩周駅への訪問時、この駅弁は改札口脇の観光協会で注文販売により売られていた。調製元は駅前で唯一営業するカフェのような食堂なので、そちらへ行くほうが手間がかからない。豚丼はメニューに載り、食事としていただけるほか、注文により弁当にもしてくれ、出来立ての豚丼が食べられる。
※2023年6月補訂:写真を更新し値上げと現況を追記2017(平成29)年1月20日に購入した、摩周駅弁の掛紙。2005年の発売時から、上記の2023年まで、掛紙の絵柄も容器も中身も、おおむね同じ。今回は京王百貨店の駅弁大会で購入。11年ぶりの実演販売で、生まれ故郷の催事場へ戻ってきた。2010年代になると東京その他都会のスーパーやデパートで、摩周の豚丼その他「摩周」を名乗る「駅弁」を見ることは少なくなってきたが、摩周駅に行って駅弁を買ったという話は当時も今もほとんど聞かれないので、やはり秋冬の駅弁大会シーズンの都市部のほうがこれを買いやすい。
2005(平成17)年1月16日に購入した、摩周駅弁の掛紙。生まれたての頃に購入。上記の2017年や2023年のものと、容器や中身を含めて、基本的な差異はない。東京の駅弁大会で生まれ、曲がりなりにも現地で定着した。発売時には十穀米混じりの御飯を使った。
秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2022(令和4)年秋の新商品か。同時に摩周駅の観光案内所での前日までの予約販売も始めたらしい。薄い長方形のプラ容器に白飯を敷き、豚ロースかつと豚肉のたれ焼きで覆い、玉子焼と山くらげを添える。「摩周の豚丼」よりこちらを積極的に選ぶ理由を思い当たらない。実際に現地でも催事でも買えたという話をほぼ見聞きしない。それでも下記の疑義駅弁群と違い、そもそもの摩周駅の駅弁と違い、摩周駅でも買えることを認めるべきか。現地では駅前で、催事では製造委託で調製する模様。
秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2015(平成27)年秋の新商品。主にスーパーの駅弁大会や北海道催事で摩周駅弁を名乗り販売される疑義駅弁だと考えられる。中身は牛丼と煮物と玉子焼と紅生姜。味も普通の牛丼。このような駅弁は摩周の駅や駅前にあるのだろうか。スリーブの調製元表記が、従前の疑義駅弁の「製造者 ぽっぽ亭T」から、今回は「販売者 ぽっぽ亭OS」に変わった。
2017(平成29)年1月の京王百貨店の駅弁大会で実演販売するために発売か。駅弁の名前のとおり、そして掛紙に書かれるとおり、従前の駅弁「摩周の豚丼」の豚肉が、甘辛だれとうに味噌だれの2種類の味で、白御飯を覆う。付合せはタクアン2切れのみ。ウニを名乗るが、味は焼き鳥でいうタレとシオの組合せのように感じた。そんな味は通常版でも良好だが、こちらは味が2種あるのも変化があってうまい感じ。2019年頃までの販売か。
※2021年3月補訂:終売を追記秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2015(平成27)年秋の新商品。主にスーパーの駅弁大会や北海道催事で摩周駅弁を名乗り販売される疑義駅弁だと考えられる。中身は牛丼と豚丼と玉子焼と紅生姜。豚丼にふりかかる荒粒なコショウの辛さを除き、普通の牛飯や豚飯であった。摩周駅の駅弁は2011年を最後に、その発祥地である京王百貨店の駅弁大会に来なくなった。価格は2015年の発売時や購入時で1,150円、2016年時点で1,180円。2018年までの販売か。
※2022年4月補訂:終売を追記秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2011(平成23)年秋の新商品か。長方形の加熱機能付き容器を、中身のイメージ写真と商品名を印刷したボール紙の枠にはめる。中身は白御飯の上にタレまみれの豚肉を詰めただけというシンプルな内容。付合せも入る通常版に比べて、見た目の賑やかさでは劣っても、こんな割り切りもよい。弁当を注文により販売する摩周で、加熱機能付きの駅弁など存在するはずがないと思うし、摩周駅で売られることはなかったようだが、事前にこの商品の存在を知り駅前の食堂で予約すれば受け取ることができたらしい。2020年頃までの販売か。
※2022年4月補訂:終売などを追記2006(平成18)年秋の投入か。赤いプラ製トレーを接着した長方形の容器を、人気駅弁「摩周の豚丼」と似たデザインの紙枠にはめる。中身は白御飯の上に牛すき焼き肉と牛そぼろを半分ずつ載せ、玉子焼や薩摩芋などを添えるもの。
つまり米沢の名駅弁「牛肉どまん中」の模倣で、本家越えはさすがに無理。これで摩周シリーズは豚丼、ラム丼、牛丼と揃ったが、豚丼以外はどれだけ、現地や地域とのつながりがあるのか。少なくとも今回買った商品が摩周から送られたとは思えない。購入時で現地の食堂に同じ名前のメニューはあるそうだが、それは牛バラ肉の丼なので、この弁当との共通点はない模様。
この駅弁は2007年頃までに「摩周の豚丼」「摩周のラム丼」とともに現地での販売が開始された模様。駅舎内改札外のキオスク型売店に3種の駅弁(か見本)が陳列され、駅前の食堂でも購入が可能。ただ、駅弁大会で販売される商品には製造委託と思われる記号が付いている。2010年頃までの販売か。
※2017年4月補訂:終売を追記2005(平成17)年10月発売の、スーパーの駅弁催事向け商品か。加熱機能付き容器に見えてそうではない丼型の容器を、中身の写真を大きく載せたボール紙の枠にはめる。中身は白御飯の上にラム肉やキャベツ炒めとピーマン・人参・ポテト・山くらげを載せた、商品名どおりのラム丼。常温なのに臭みなく炭火香るラム丼のラムや具は、主力商品の豚丼を超える出来だと思ったが、どうも現地での販売はない模様。
この弁当は「摩周の豚丼」と同様、商品には駅弁ではなく駅前弁当と記されるが、スーパーの駅弁催事では堂々と駅弁を名乗るか名乗らされるので、誰もが駅弁と認識していると思われる。2005年最大の駅弁サクセスストーリーがおかしなことにならないよう、少なくともスーパーには正直な商売を期待したい。
この駅弁は2007年頃までに「摩周の豚丼」「摩周の牛丼」とともに現地での販売が開始された模様。駅舎内改札外のキオスク型売店に3種の駅弁(か見本)が陳列され、駅前の食堂でも購入が可能。ただ、駅弁大会で販売される商品には製造委託と思われる記号が付いている。2010年頃までの販売か。
※2017年4月補訂:終売を追記