東京駅から新幹線つばさ号で2時間強。米沢市は山形県の南端で内陸の盆地に広がる、人口約8万人の城下町。ブランド和牛の生産や、江戸時代の名君である上杉鷹山でよく知られる。駅弁は明治時代からの駅弁屋と戦後昭和の駅弁屋が激しく競い、無数の牛肉弁当があることになっている。1899(明治32)年5月15日開業、山形県米沢市駅前1丁目。
1993(平成5)年の発売。山形新幹線開業記念駅弁と紹介する資料が多いが、1992(平成4)年7月の開業とは1年のずれがある。米沢と日本を代表する、有名で名物の駅弁。1992年に公募で名前が付けられた山形生まれのお米「どまんなか」の白御飯を、米沢の名物である牛肉にちなみ、甘辛な牛肉煮と牛そぼろで覆い、サトイモ、ニンジン、ニシン昆布巻、かまぼこ、玉子焼、大根桜漬を添える。米沢の名物と山形の米を、デザインでも内容でもシンプルに組み合わせた。
米沢駅では、昭和の頃から2社の駅弁屋がいくつかの牛肉駅弁を出していたが、この駅弁だけが不思議と大当たりした。今では全国各地に似たような駅弁が広がるが、この駅弁の人気は健在。下記のバリエーションが生まれたり、東京駅の駅弁売店で山と積まれたり、毎年1月の京王百貨店の駅弁大会での実演販売では販売個数でだいたい2位か3位に付ける。
2021年時点で最近約10年、年間約60万個が売れているという。価格は2000年代で長らく1,000円であったが、2008年9月から1,100円、2014年4月の消費税率改定で1,150円、2016年6月から1,250円、2023年3月頃から1,350円、2024年8月から1,480円。
※2024年9月補訂:写真を更新し値上げを追記2021(令和3)年4月1日に米沢駅と調製元と道の駅米沢で発売。米沢駅と日本を代表する駅弁のひとつ「牛肉どまん中」の、外観を隆慶一郎原作で原哲夫作画の漫画作品「花の慶次」のキャラクターに、中身を米沢牛に替えたもの。花の慶次の公式サイトでは限定登場としたが、販売期間などの限定の内容は示されていない。同年10月のJR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2021」には、牛肉どまん中の通常版や下記の派生版でなく、これがエントリーされた。通常版も併売し、東京駅の駅弁売店でも両者が売られていた。
スリーブの絵柄は、2011(平成23)年1〜6月に販売された牛肉どまん中「慶次400thメモリアルパッケージ」と同じ。これにJR東日本の観光キャンペーン「東北MONO」のアイコン、ボイシネウォーク『花の慶次〜米沢傾奇(かぶき)巡り〜』の300円引きクーポン、前田慶次にちなむ名所案内を加えた。中身は普段の牛肉どまん中の牛肉を米沢牛に置き換えたのではなく、白飯を太めの錦糸卵で覆い、牛焼肉とパセリを載せ、昆布巻、にんじん、かまぼこ、玉子焼、大根漬、タレを添えて、通常版より骨太な感じ。日本の高級ブランド牛にしては、脂身が少なく赤身とその歯応えが勝ると思うが、これも米沢牛牛肉どまん中という駅弁の個性だろうか。価格は2021年の発売時や購入時で2,000円、2023年3月頃から2,160円。
花の慶次は、集英社の漫画雑誌「週刊少年ジャンプ」に1990(平成2)年から1993(平成5)年まで連載された漫画作品。戦国時代末期の傾奇者(かぶきもの)である前田慶次郎の生き様を描いた。この時点で約30年前の作品であるが、以後も単行本や文庫本でいくつもの出版社から何度も刊行され、長く読まれ親しまれる作品となっている。
※2023年8月補訂:値上げを追記2010(平成22)年4月までに発売した、米沢駅の有名駅弁「牛肉どまん中」の別バージョン。以後は一部の駅弁大会や多くの百貨店催事場での実演販売で、その姿を見掛けている。通常版に比べてパッケージの色が青くなったほか、牛肉の味付けが塩味に変更されている。価格は2010年の購入時で1,100円、2014年4月の消費税率改定で1,150円、2016年6月から1,250円、2023年3月頃から1,350円、2024年8月から1,480円。
牛肉の駅弁はこれまで何百個も、米沢の牛肉駅弁も何十個も食べてきたが、塩味は記憶にない。しかしこうやって出てみれば、例えば焼肉や焼き鳥の味付けもタレか塩かを選べるのだから、奇抜な感じはまったくしない。甘辛なタレの通常版よりこちらのほうが、ビーフの味が引き出ていると感じた。ただ、米沢駅の中で売られることは、ほとんどない模様。
※2024年9月補訂:値上げを追記調製元の公式サイトでは「2014年新発売」と紹介。実際には2013(平成25)年の初頭から、デパートの駅弁催事や物産展での「牛肉どまん中」の実演販売で併売されていた。通常版に比べてパッケージの色が赤味噌色になったほか、牛肉の味付けがみそ味に変更されている。通常版とそんなに変わらない、無難で定番の味。米沢駅の中で売られることは、ほとんどない模様。価格は2014年の購入時で1,150円、2016年6月から1,250円、2023年3月頃から1,350円、2024年8月から1,480円。
※2024年9月補訂:値上げを追記2013(平成25)年2月10日に購入した、米沢駅弁のスリーブ。1年半後とまったく同じものだと思ったら、上面右下の楕円形イラストの大きさが、この時は少し小さい。
2015(平成27)年9月の発売。その前の8月8日に、東京駅の駅弁売店「駅弁屋 祭」でデビュー。醤油味(通常版)、しお味、みそ味に続く、4種類目の「牛肉どまん中」。白飯を覆う牛肉煮と牛そぼろとカレー粉で味付け、パセリで彩り、かまぼこ、玉子焼、サトイモ、にんじん、にしん昆布巻、大根桜漬を付け合わせる。駅弁に関する過去の文献から、肉駅弁のカレー味は臭み消しという先入観があるため、味に定評のあるこの駅弁でのこの味はもったいないと思うところだが、肉の味が残る程度に淡い風味付けで、味は守られている。
価格は2015年の発売時で1,150円、2016年6月から1,250円、2023年3月頃から1,350円。販売は継続的ではないようで、2017年度時点で現存不詳であり、2020年には終売したと思われ、2022年に復活し、今回の2024年は久々に東京駅で見られた。
※2024年9月補訂:写真を更新2015(平成27)年9月23日に購入した、米沢駅弁のスリーブ。上記の2024年のものと変わらないように見える。電子レンジの案内がない、食品表示が印字でなくラベルである、パセリでなくグリーンピースが載る、付合せが容器に直に詰められて内容が玉子焼、しば漬、カレー風味のきんぴらごぼうだった、の差異がある。
2016(平成28)年1月の京王百貨店の駅弁大会での実演販売で生まれた駅弁。その後も要予約や輸送販売の商品として売られた模様。同年10月のJR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣」で、米沢駅弁としてデビューした。内容は上記の駅弁「牛肉どまん中」「牛肉どまん中しお」「牛肉どまん中みそ」と、これらとおなじ付合せの組合せ。3種の駅弁を食べくらべるなど、テレビ番組や駅弁マニアでしかやらない、やれないだろうから、普通の方々向けにこんなセット販売があってもよい。価格は2016年の発売時で1,300円、2019年時点で1,350円、2023年3月頃から1,500円。
※2023年8月補訂:値上げを追記2020(令和2)年11月21日に、駅前の調製元と道の駅米沢で発売。この年の新型コロナウイルス感染症の流行により、鉄道の利用者やイベントが激減して駅弁の売り上げが落ち込み、契約農家から仕入れた米の新たな活用先として企画したという。その発売は新聞記事になった。
山形米「どまんなか」の米粉を100%使う白く四角い生地に、牛そぼろとチーズを載せて、駅弁の牛肉どまん中に似た絵柄の袋に詰めて冷凍する。自然解凍の状態でいただくと、ふんわりしっとりした生地に味の濃い具が合った。分量に比して高額な印象はある。製造者は米沢市街の持ち帰りピザ屋「PIZZA Ktarou」。
2022(令和4)年10月11日に、JR東日本の駅のコンビニ「ニューデイズ」で、「チキン弁当風サンド」(380円)とともに、一斉に発売。鉄道開業150年記念Newdays「鉄道の日フェア」の一環で、限定鉄道グッズ販売、駅弁風おにぎり販売、これらの駅弁風サンドイッチの販売、駅弁大会などが行われた。
これは米沢駅弁の新杵屋が監修し、埼玉県の食品会社が製造し、駅のコンビニで販売。鶏そぼろ、チーズソース、牛肉たれ和え、きんぴら、たまご焼き、ピクルスマヨを詰めたピタサンドを、コンビニおにぎりかコンビニサンドのように透明な袋に詰めて、商品名などのシールを貼った。食べれば確かに、牛肉どまん中の牛そぼろ味がした。シールには鉄道開業150年のJRグループ共通ロゴに、今ではもはや謎の記号となった、牛肉どまん中の山形大学工学部とC・H・ダラスのマークもある。
山形新幹線開業30周年記念弁当として、2022(令和4)年9月9日から10月31日まで、福島駅〜山形駅の山形新幹線停車駅6駅と、東京、上野、大宮、仙台の各駅で販売。これと7〜8月の第1弾の米沢駅松川弁当店「米沢牛焼肉弁当」(1,500円)や、11〜12月の第3弾の山形駅もりべん「The山形弁当」(1,500円)は、JR東日本仙台支社山形統括センターと各調製元との連携により企画された。
人気の駅弁「牛肉どまん中」と同じ形をした黒いプラ容器を、表面に新幹線電車を、底面におしながきと年表「山形新幹線30年のあゆみ」を記したスリーブに収める。中身は白飯を玉子そぼろで覆い、米沢牛の秘伝タレの焼肉、天元豚の西京焼き、山形さくらんぼ鶏の特製塩ダレの蒸し焼き、つまり牛豚鶏の焼肉を載せ、煮物、玉子焼、かまぼこ、赤かぶ、若桃の甘露煮を添えるもの。肉三昧を名乗るには肉の量が足りなくても、「牛肉どまん中」の250円増しで済み、そもそも期間限定の記念駅弁だから賑やかでよい。
2021(令和3)年10月12日から11月1日まで、JR東日本の駅のコンビニ「ニューデイズ」で販売。10月14日の鉄道の日にちなみ、駅弁会社が監修する「駅弁風おにぎりシリーズ」として、山形県の米沢駅「牛肉どまん中」、兵庫県の西明石駅「ひっぱりだこ飯」、東京都の東京駅「チキン弁当」の3種類を、コンビニおにぎりにして販売した。調製は地域ごとの取引先の食品会社と思われる。
袋の絵柄は牛肉どまん中のスリーブに似せ、本物の見本写真も掲載。牛そぼろ入り御飯に牛肉煮を載せて海苔で巻いたものを1個袋詰め。確かにその風味と内容は、牛肉どまん中になんとなく似ていた。本物にはミニサイズがないので、こんなコンビニおにぎりが米沢駅などにあってもよいと思う。
上記の商品「牛肉どまん中(牛肉どまん中風おにぎり)」と同じもの。東北地方では絵柄入りの袋でなく、白い袋に絵柄のシールを貼ったものが売られていた。中身や値段は同じ。
2020(令和2)年1月の京王百貨店の駅弁大会で実演販売。米沢と日本を代表する駅弁「牛肉どまん中」について、具をビビンバに替えたもの。白飯を牛肉煮と牛焼肉とナムルで覆い、付合せは普段と同じ煮物とかまぼこと玉子焼と漬物とし、コチジャンを別添する。甘みも辛さも固さもほどほどの、無難にうまい牛焼肉弁当だった。2021年で終売か。
※2023年4月補訂:終売を追記2019(平成31)年1月の京王百貨店の駅弁大会での実演販売で生まれた駅弁。3年前の「三味牛肉どまん中」では、「しょうゆ(通常版)」「しお」「みそ」の3種の牛肉どまん中を入れたが、今回は「カレー」を加えて4種の牛肉どまん中を詰め合わせた。玉子焼と大根桜漬の付合せはセンターに配置。催事場内ではそこそこの人気を得ていたと見えた。以後も米沢駅前の調製元での注文販売で入手できた。1年間ほどの販売か。
※2021年3月補訂:終売を追記2011(平成23)年の春頃におそらく山形新幹線「つばさ」車内販売向けに発売か。通常版と同じ形で色が黒い容器に透明なふたをして、窓付きの黄色いボール紙枠にはめる。中身は山形米どまんなかの白御飯の上を牛肉煮と牛そぼろで覆い、煮玉子、シイタケ、ニンジン、とうふ、糸こんにゃく、インゲンを載せ、漬物と白玉を添えるもの。
200円安い通常版と見比べれば間違いなく、牛肉煮が多く大きく、すき焼きの具が増えている。しかしこれ単体で食べてしまえば、通常版との大きな差は感じにくい。それでも、ふたが閉まらないほど中身が詰まるのは常陸大子駅弁以来の体験であるし、山形新幹線車内での注文販売は大人気であった。駅売りがあるかは分からない。2011年内に終売か
※2016年10月補訂:終売を追記中堅コンビニエンストアチェーンのスリーエフが、2007(平成19)年9月12日から25日まで販売したコンビニ弁当。全国の人気駅弁をモチーフにした2週替わり弁当6種の第一弾で、米沢のものを参考にしたという。参考品の具体名は出ていないが、おそらく「牛肉どまん中」だろう。
本物の駅弁でも使われる、トレーを接着した容器に透明なふたをして、商品名を書いた掛紙を巻く。中身は白御飯の上に牛そぼろと牛しぐれ煮を敷き詰めて、これに玉子焼とカマボコと昆布巻と人参煮を付けるもの。内容も見栄えも駅弁を再現できていると思うが、味はやっぱりコンビニ弁当。以後、北海道の「豚めし」(600円)、東京の「深川めし」(530円)、仙台の「牛タン弁当」(590円)、横川の「鶏と牛蒡のわっぱめし」(530円)、高崎の「山の恵みわっぱめし」(520円)と続いたそうな。
2008(平成20)年7月に、埼玉県の大宮駅限定の駅弁として発売。大宮駅で駅弁を売る日本レストランエンタプライズ(NRE)の営業所長が、当時存在しなかった大宮駅限定の駅弁を売るために、東北各地の駅弁業者に声を掛け、6駅7社各1種の「みちのく日和」シリーズが生まれた。掛紙にはその6駅と大宮駅を路線図で示す、みちのく日和のロゴマークが見える。「数量限定販売」や「米澤〜大宮」の表記もある。
中身は牛肉の混ぜ御飯と上を半分ずつ、牛すき焼き肉と牛焼肉で埋め、玉子焼、かまぼこ、赤カブ酢漬などを添えるもの。名前のとおり、有名駅弁「牛肉どまん中」の姉妹品だろう。容器と肉と飯に差異があるので、雰囲気はそこそこ異なる。分量を抑えて千円を切った価格にも好印象。後に米沢駅でも売られたらしい。2010年頃までの販売か。
※2021年3月補訂:解説文を手直し2018(平成30)年7月15日に購入した、米沢駅弁のスリーブ。上記の2024年のものと同じにみえる。上面の牛のシルエットがまだある、商標登録について書かれていない、中身の付合せがトレーでなく容器に直に詰められる、などの差異はある。
2016(平成28)年9月16日に購入した、米沢駅弁のスリーブ。上記の2018年のものと同じにみえて、容器側面の注意書きが少し違う。
2011(平成23)年1月10日に購入した、米沢駅弁のスリーブ。米沢ゆかりの戦国武将である前田慶次の400年忌にちなむ記念事業の一環として、2011年1月から6月頃までこのパッケージを採用した。パッケージ表面下部にも「慶次400thメモリアルパッケージ」と書かれている。中身や価格は普段と変わらない。これに描かれたキャラクターそのものは、1990年代に集英社の漫画雑誌「週刊少年ジャンプ」で連載された「花の慶次」の主人公。1980年代に社会現象となった「北斗の拳」と同じく、原哲夫氏の作画による。
2006(平成18)年11月19日に購入した、米沢駅弁のスリーブ。細かな記述の差異はあるが、このデザインは1993年の発売時から2018年のものまで変わらない。窓の上部のイラストについて、当時は側面に解説があり、山形大学工学部とC・H・ダラスであることがわかる。
2002(平成14)年1月26日の調製である、米沢駅弁のパッケージ。4年後との差異は、タイトルが「米沢牛丼弁当」か「米沢名物 牛丼弁当」かの違いのみか。
2021(令和3)年4月に新発売。米沢駅弁の調製元と茨城県真壁の米菓製造販売業者との共同開発商品。米沢駅と日本を代表する有名な駅弁「牛肉どまん中」を揚げ煎餅にした。その袋の絵柄は駅弁のスリーブと同じで、よく見ると「米沢名物牛丼弁当」の箇所を「米沢名物揚げ煎餅」に書き換える。中身は小粒の揚げ煎餅。牛肉どまん中の調製で牛肉を煮たタレと山形県産のお米を使うというが、味は普通のスーパーで買える普通の揚げ煎餅と変わらない。小粒で固くなく食べやすいとは思う。価格は2021年時点で350円、2022年時点で380円。
※2022年11月補訂:値上げを追記