東京駅から新幹線つばさ号で2時間強。米沢市は山形県の南端で内陸の盆地に広がる、人口約8万人の城下町。ブランド和牛の生産や、江戸時代の名君である上杉鷹山でよく知られる。駅弁は明治時代からの駅弁屋と戦後昭和の駅弁屋が激しく競い、無数の牛肉弁当があることになっている。1899(明治32)年5月15日開業、山形県米沢市駅前1丁目。
調製元が創業時から売る駅弁だとするため、すると1957(昭和32)年の発売か。長方形の発泡材枠容器に木目柄のボール紙でふたをして、中身の写真を印刷した赤系の掛紙で包む。中身は白御飯の上に牛肉煮と糸こんにゃくを詰め、高野豆腐、ふき、ゴボウ土佐煮、昆布巻、うぐいす豆、レンコン酢漬け、きゅうり漬を添えるもの。
多種多様で見栄えのする牛肉駅弁がたくさん出ている米沢駅で、こういう古い作品が現存し、容易に買えるのはなんとも不思議。価格はそれらより比較的安くて付合せは多種だが、今では牛肉の分量がどうも寂しいため、「牛肉どまん中」があるのにあえてこれを選ぶ理由が見当たらない。駅弁催事に出てくることもまずない。価格は2002年時点で710円、2010年時点で810円、2014年時点で900円、2017年時点で1,000円、2023年時点で1,080円、2024年8月から1,200円。
※2024年9月補訂:値上げを追記2002(平成14)年8月17日に購入した、米沢駅弁の掛紙。上記の2011年のものと、まったく同じに見えるが、バーコードの有無、「イメージ写真」表記の有無、右側の注意文の表現に差異がある。
駅弁の名前は「牛そぼろ弁当」とも。米沢駅で有名な駅弁「牛肉どまん中」の、牛肉煮を玉子そぼろに替えたもの。牛そぼろと合わせて、そぼろ弁当となる。牛肉の分量が少ない分、価格は牛肉どまん中より200円安い。味や肉以外の分量は変わらないため、なんとなく弁当を買い求める新幹線利用の用務客へは、この価格が訴求力を持つはず。価格は2010年時点で900円、2014年時点で950円、2017年時点で1,050円、2023年時点で1,150円、2024年8月から1,300円。
※2024年9月補訂:値上げを追記2017(平成29)年10月7日に購入した、米沢駅弁のスリーブ。アレルギー表記の有無と調製元名のマークに差異がある。容器や中身は、上記の2021年のものと同じ。
2002(平成14)年2月2日に購入した、米沢駅弁の掛紙。後の「米沢名物牛そぼろ」あるいは「牛そぼろ弁当」は、当時は「米沢牛そぼろ弁当」という名前であった。中身や味は変わらない。
米沢駅の幕の内弁当の新杵屋版。浅く平たい正方形の容器に木目柄のボール紙でふたをして、山形市街の古めかしい地図を描いた掛紙をかけて、ひもで十字にしばる。中身は俵の型押しが細長い日の丸ご飯に、マス塩焼、ウインナー、ひじき、蒲鉾、玉子焼、高野豆腐、うぐいす豆と牛肉煮など。見栄えや内容は冴えなくても、風味はしっかりしていた。
牛肉駅弁が主力で有名で人気の米沢駅において、幕の内弁当をわざわざ買い求める客など、いないと思う。購入時には売店に実物がなく、調製元で注文し作ってもらったが、普段はこうやって予約や注文で売っているのかもしれない。価格は2008年の購入時で710円、2010年時点で810円、2014年時点で850円、2017年時点で900円、2023年時点で980円、2024年8月から1,000円。
※2024年9月補訂:値上げを追記昭和の頃は牛肉モノに次いだ、米沢駅の名物駅弁。赤い栗型のプラスティック製容器に、栗と駅弁の名前を描いた掛紙をかけて、ひもでV字型にしばる。中身は茶飯に栗甘露煮と椎茸とグリーンピースを5つずつ載せ、がんもどき、玉子焼、かまぼこ、高野豆腐、しそ味噌巻などを添える。価格は2008年の購入時で630円、2010年時点で730円、2014年時点で800円、2017年時点で850円、2023年時点で950円、2024年8月から1,000円。
掛紙と中身の見栄えや風味に、昭和の駅弁がある。内容の充実度は高いと感じるが、こういう栗飯駅弁にも人気や注目があったのも昭和の頃まで。米沢に牛肉の駅弁が健在な間は、見直される時期が来ないと思う。かつては東北や九州の多くの駅でこういう駅弁が見られたが、今は調製元ごと過去帳入りしたところが多い。
※2024年9月補訂:値上げを追記円形の加熱機能付き容器を、牛肉釜飯のイラストを描いたボール紙の箱に収める。中身は白御飯の上を牛肉煮と糸こんにゃくで覆い、錦糸卵とグリーンピースで彩り、ごぼう煮と桜漬けと味噌のシソ巻きを添えるもの。つまりだいたい、上記の駅弁「特選牛肉弁当」と同じもの。発熱体が保温するか、あとで手作業で加熱するかの違いである。
パッケージのデザインからも察することができるとおり、新作ではなくそこそこの歴史がある商品であるはずが、過去に駅でも催事でも見たことがない。しかし駅前の調製元では以前から一覧に出しており、今回試しに注文したら本当に作ってくれた。待ち時間は10分ほど。
加熱機能付き容器の駅弁を出来立てで食べるほどの矛盾はないので、これは消費期限を見て翌日の消費。1個だけの注文生産だからか、具がとてもきれいに詰められていて、肉の分量や風味は十分、白御飯もなかなか多量を詰めており、良い弁当が食べられた。しかし「牛肉どまん中」の存在が強すぎて、この駅弁はどこにも出てこられないと思う。2011年の購入後、ほどなく終売か。
※2017年2月補訂:終売を追記1995(平成7)年頃に発売か。名物の駅弁「牛肉どまん中」と同じ形の容器に、駅弁の名前を大きく書いた掛紙を巻く。中身は掛紙に小さく書かれるとおりの牛焼肉弁当。白御飯を3区画に詰め、上にタレに漬けて焼いた牛ロースと牛カルビを貼って1区画、玉子そぼろで1区画、とびっこで1区画。これに玉子焼、蒲鉾、小芋、昆布煮、桜漬を添える。
駅弁の名前は調製元の社長の名前から取った。同社「牛肉どまん中」に比べて見栄えで牛肉の量が完敗しているが、この肉の味に根強いファンが付いている模様。2007年から急に東京都内の「駅弁屋旨囲門」でよく見るようになった。価格は同年の購入時で1,000円、2010年時点で1,100円、2014年時点で1,150円、2017年時点で1,250円。2021年で終売か。
※2023年4月補訂:終売を追記発熱駅弁の先駆け的存在。底が深く断熱性の良い容器に発熱材とトレーを入れ、御飯としらたきと牛すき焼き肉を詰めたうえで、銀色の断熱シートで容器を巻いてから掛紙を巻く。
駅弁大会にはひもを引いて容器を暖めるタイプの、現地では使い捨て携帯カイロの原理で熱を出すタイプの発熱材が使われている模様で、後者は駅弁では全国で米沢駅にのみ残るものかもしれない。味は他の牛肉駅弁と同等も、肉が少し多く入っている気がするし、暖かいので味も良い気がする。価格は2002年の購入時で1,050円、2010年時点で1,120円、2016年時点で1,250円。米沢駅前の調製元に商品見本が置かれ、注文か予約により買えたようだが、買ったという話は長らく聞かなかった。2021年で終売か。
※2023年4月補訂:終売を追記2016(平成28)年10月29日の調製と思われる、米沢駅弁の掛紙。これは駅や列車内で売られたものではなく、山形新幹線E3系つばさ号シルバー色をおしどり色に塗り替える前のイベントとして、JR東日本仙台支社が企画し同日に実施した団体旅行「つばさ号シルバー色(L63編成)ラストラン」で配布されたものらしい。中身は普段の特製牛肉弁当だったようだ。
米沢駅と日本を代表する有名な駅弁「牛肉どまん中」の、牛ロースと牛そぼろの代わりに牛タンを載せたもの。味付けがしっかりして、適度な厚さを持つ、牛タンのスライスがぺたぺたと、白御飯の上に敷かれる。その量と満足感は有名な仙台のものを凌ぐと思った。2005年頃までの販売か。
※2017年8月補訂:終売を追記2001(平成13)年の末頃に発売。有名な駅弁「牛肉どまん中」とまったく同じ容器に、同じ御飯と付合せを詰め、牛肉のかわりに無菌豚(天元豚)の煮物を敷いたもの。
2001(平成13)年秋のBSE(狂牛病)騒動でm牛肉の売り上げは半減したという。牛肉駅弁の売り上げも打撃を受けたようで、米沢牛のお膝元でも牛肉以外の駅弁を急いで出したと思われる。「安全な飼料で育った天元豚」などと掛紙に書かれているから、ますます確信できる。その割には味はなかなか良いのだが、やはり米沢では牛肉の駅弁が食べたい。
2010(平成22)年10月9〜11日に東京駅で開催された「第12回東日本縦断駅弁大会」で復刻販売されたかつての米沢駅弁。昆布巻とはじかみを除いて、中身も風味も容器も価格も掛紙も現役当時と変わらず、掛紙も刷り直しではなくデッドストックではないかと思う。現役当時も好きな駅弁で、今回も満足できる味。逆にこのイベントがあって、そういえば最近見なかったとんとん弁当が廃盤になっていたことを知った。