東京駅から新幹線つばさ号で2時間強。米沢市は山形県の南端で内陸の盆地に広がる、人口約8万人の城下町。ブランド和牛の生産や、江戸時代の名君である上杉鷹山でよく知られる。駅弁は明治時代からの駅弁屋と戦後昭和の駅弁屋が激しく競い、無数の牛肉弁当があることになっている。1899(明治32)年5月15日開業、山形県米沢市駅前1丁目。
2024(令和6)年3月16日に、山形、新庄、かみのやま温泉、赤湯、郡山の各駅で発売。宇都宮、大宮の各駅でも販売。同日の山形新幹線E8系電車のデビューを記念し、かつて山形新幹線の車内販売限定で売られた弁当「加熱式すきやき弁当」、のち「パワーアップすきやき弁当」を復刻し、沿線や東京で販売した。長方形の加熱機能付き容器を収めるスリーブにはもちろん、E8系新幹線電車が写真で描かれ、路線図や中身の写真も掲載する。
中身は山形県産米はえぬきの白飯を、山形牛の牛肉煮で覆い、ごぼう、しいたけ、糸こんにゃく、米沢小野川温泉こだわりの温泉玉子を添え、グリーンピースと紅生姜で彩るもの。今回は過去の米沢牛でも黒毛和牛でもなく「山形牛」を使い、美味しさをパワーアップさせたとする。どれもこの値段と内容の駅弁にしてしまえば分からない。新幹線と電車を、新幹線と電車でアピールできる、輸送販売や催事に向きそうな加熱機能付き駅弁。調製元は米沢駅の駅弁屋だが、同社が発表した販売駅に米沢駅は含まれない。山形新幹線の車内販売は終了したので、列車内でも売られない。
E8系電車は、1992年の開業時の400系、1999年の延伸時のE3系1000番台、2008年の置換時のE3系2000番台に次ぐ、山形新幹線4代目の新幹線車両。新幹線区間の最高運転速度を時速275kmから300kmへ向上し、ばねの改良で揺れを抑え、最新のバリアフリー基準や荷物スペースや車内録画機能に対応した。とはいえ気付くほどの差異でなく、座席と車体の色が変わっただけに見えるかもしれない。電車の寿命に合わせて、7両編成の座席数を394から352に減らし、17本と発表した製造数はコロナ禍を理由に15本に減らされ、後ろ向きの置き換えにも思える。新庄駅から酒田駅か鶴岡駅かという山形新幹線の延伸の話も聞かれなくなり、道路トンネル工事で陸羽西線の全列車を2年間止める絶好の工事機会を無為に見送ってしまった。
1964(昭和39)年10月の発売だそうな。資料により昭和20年代の発売とも、1959(昭和34)年の発売ともされる。掛紙では牛の顔を黒く描く。中身は白飯を牛すき焼き、牛肉煮と糸こんにゃくとタケノコ、しいたけ、ごぼう、ふき、にんじんで覆い、グリーンピースで彩り、玉子焼とふきみそとたくあん漬を添える。今回は不思議と千葉駅で売られていて、懐かしく思えて買ってみたら、牛肉の量があまりにも少なすぎてがっかり。同じ調製元でもう300円出せば牛肉煮をたっぷり載せた駅弁が手に入る。こんな昭和の旧作でなく、2010年代の新作を買えと言われた気がした。
価格は2002年時点で「米沢牛すき焼き弁当」710円、2010年時点で800円、2014年時点で850円、2017年時点で「米沢名物すきやき弁当」900円、2019年時点で950円、2020年時点で1,000円、2022年時点で1,200円、2023年時点で1,230円。
※2023年8月補訂:値上げを追記上記の駅弁「米沢名物すきやき弁当」の、2002(平成14)年時点での姿。白飯の上を米沢牛の牛肉煮と糸こんにゃくで覆い、様々な付合せを添えた。当時はこの駅弁にもっと存在感があり、ライバルの新杵屋の「元祖牛肉弁当」と真っ向勝負の駅弁であり、駅弁では冷めて白く脂の浮いた牛肉がよく見られた時代に、常温でおいしい牛すき焼き駅弁であった。
※2022年8月補訂:新版の収蔵で解説文を手直し2022(令和4)年10月1日に米沢駅と山形駅と東京駅で発売。鉄道開業150年にちなみ、JR東日本仙台支社管内の仙台、米沢、山形、郡山の各駅では、6社で7種類の駅弁が発売された。日本鉄道構内営業中央会の鉄道開業150年記念復刻駅弁企画により、同月から期間限定で販売された31社34駅弁のひとつ。さらにこの期間のJR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2022」にエントリー。昭和30年代に米沢駅構内で販売していた駅弁を、加熱機能付きの容器に入れて復刻したものだという。
四角い加熱機能付き容器を収めたボール紙のスリーブには、1964(昭和39)年に米沢駅で販売していた駅弁の掛紙のデザインがアレンジされた。中身は白飯を、米沢牛の牛肉煮とグリーンピース、糸こんにゃく、タケノコ、しいたけ、ごぼう、にんじん、ふきで覆い、ふきみそとたくあんを添えるもの。たしかにこんな構成は、平成でも令和でもない、昭和の牛肉駅弁に思える。
2011(平成23)年10月8日から10日まで東京駅で開催された「第14回東日本縦断駅弁大会」で販売されたお弁当で、過去の米沢駅弁を復刻したものだという。長方形の発泡材枠容器を、牛と肉をなんとなく描いたおそらく過去のデザインの駅弁掛紙で包む。中身は上記の現行版とほぼ同じで、白御飯の上を牛肉煮と糸こんにゃくで覆い、がんもどき、酢れんこん、ニシンの昆布巻、高菜の醤油漬、ふきみそ、紅生姜などを添えるもの。現行版より価格が高い分だけ、肉が多く入る気がして、スキヤキの雰囲気がより感じられた。
2020(令和2)年1月の京王百貨店の駅弁大会で輸送販売された、復刻版すきやき弁当。掛紙の絵柄は下の1980年代のもの、あるいは催事のテーマからしてもしかすると1960年代のものを使った。中身は過去のものの復刻のはずが、上の8年前のものと異なるような気がする。飯を少量の牛肉と、同等のしらたきと多量の煮物で覆い、うぐいす豆と漬物を添える、今風でない牛肉駅弁。価格は2020年の購入時で1,200円、2022年時点で1,300円。
※2022年4月補訂:値上げを追記1980年代のものと思われる、昔の米沢駅弁の掛紙。上記の駅弁「復刻版米沢牛肉すきやき弁当」で使われたものと、色合いはまったく異なるが、絵柄はだいたい同じ。
秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2019(令和元)年秋の新商品か。白飯を牛肉煮と、煮物と糸こんにゃくと煮玉子で覆い、野豆腐と切り干し大根と大根桜漬を添える、ごく普通の牛肉駅弁。その名前から、2010年頃に出現した東日本各地の駅弁屋がつくる大宮駅弁「私の好きな…」シリーズを思い出したが、関連が見つからない。これはいったい誰が好きな駅弁なのだろうか。2020年春頃までの1シーズンの販売か。
※2022年4月補訂:終売を追記山形新幹線車内限定販売商品として、2005(平成17)年より前に発売か。といっても、似たような米沢駅弁は、いくらでも米沢や東京で売られている。長方形の加熱機能付き容器を、中身写真や商品名を派手に印刷したボール紙の枠にはめる。中身は白御飯の上に黒毛和牛の味付肉、糸こんにゃく、ごぼう、しいたけ、半熟卵、グリーンピース、紅生姜などを載せたもの。
加熱式駅弁でこういう詰め方をすると、ふたを開けたら紅生姜の強烈な臭いが鼻に付くので嫌いなのだが、スキー場帰りで冷えた体にアツアツの牛肉弁当がとても合った。なお、パッケージからは読み取りづらいが、調製元は「パワーアップすきやき弁当」と呼ぶ模様。つばさ号の車内販売は2019年3月限りで終了したが、この駅弁は予約販売で存続した。2021年までの販売か。
山形新幹線は東京駅から山形駅まで3時間弱。全国の新幹線や特急列車の中で、特別に乗客が多いとか所要時間が長い短いということはないのだが、このような車内販売限定弁当が出たり、牛肉どまん中がたくさん売れたり、峠の力餅を持ってきたり、売り上げの良い車内販売員が著書を出して講演に呼ばれたり、不思議と車販に力があった。山形県民は車販好きなのだろうか。
※2022年4月補訂:終売を追記秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2004(平成16)年秋の新商品か。長方形の加熱機能付き容器に、文字の多い掛紙をかけて、焦茶色の紙ひもでしばる。中身は御飯の上に「米沢名物黒毛和牛」のすき焼き肉に、ごぼうやしらたきや椎茸と、細竹や紅生姜を載せる、牛肉弁当とすきやき弁当との合の子タイプ。味はともかく、肉がそれほど多くなくても1,300円も取るのには割高感がある。現地で売られていれば通常の牛肉弁当を選択するのが良いかと。2016年時点で「伝統の味すきやき弁当」1,350円の駅弁となり、2019年までの販売か
※2023年8月補訂:終売を追記2008(平成20)年3月1日に釧路、八戸、米沢、都城の4種が誕生した、駅弁屋の監修によるレトルト弁当。パック御飯とレトルトを、調理例の写真や監修元や商品名などを掲載したボール紙の箱に詰める。パック御飯とレトルトを電子レンジで暖めて、レトルトの中身を御飯の上にかけて、パッケージの枠に収めてできあがり。
中身は味付飯の上に、暖めたレトルトに入っていた牛肉、シラタキ、ゴボウ、タマネギ、ニンジン。米沢駅弁の「米沢牛すき焼き弁当」とは中身が少々異なるが、牛すき焼き駅弁の雰囲気は出ていると思う。見栄えさえ気にしなければ、味は一丁前。2010年3月にリニューアルされ、ほどなく終売か。
※2017年8月補訂:終売を追記