札幌駅から特急列車で約4時間。函館市は北海道の南部で津軽海峡に面した、人口約24万人の港町。1859年の開港や1908年の鉄道連絡航路開設で北海道の玄関口となり、高度経済成長期は漁港や工業港としても栄え、現在は旧市街や函館山や海産物などが観光客を魅了する。駅弁は国鉄時代からの駅弁屋の経営がJR北海道の100%子会社に引き継がれ、改札外の売店で駅弁を販売。1904(明治37)年7月1日開業、北海道函館市若松町。
東京駅から新幹線で4時間強。函館本線の小さな中間駅であった渡島大野(おしまおおの)駅に新幹線の駅を併設するにあたり、現駅名に改称。駅の位置は函館の郊外であるが、函館市内ではなく北斗市内にあるため、同市が駅名に北斗の名を入れることを強硬に要求、政治的にこのような長い駅名にされてしまった。駅弁は新幹線改札内と駅舎内の各地の売店で売られる。1902(明治35)年12月10日開業、北海道北斗市市渡1丁目。
1966(昭和41)年の発売。函館駅で定番の駅弁。長方形の経木枠の容器に木目柄のボール紙でふたをして、ニシンの漢字「鰊」を大きく描いた掛紙をかけて、ひもで十字にしばる。中身は白御飯の上をニシン甘露煮と味付けカズノコで覆い、茎わかめと大根味噌漬を添えるもの。時の洗礼を受けた味わいには、古典の安心感がある。価格は2008年時点で840円、2014年時点で880円、2018年の購入時で980円、2022年時点で1,000円。
ニシンは北海道を支えた。江戸時代に北海道から北陸地方までの日本海側でよく獲れたニシンは、保存食や肥料に加工され、北前船に乗り京都や江戸など各地へ出荷された。北海道の南部、道南の箱館(現在の函館)、福山(現在の松前)、江差は、かつて「蝦夷三湊」と呼ばれ、ニシン漁で大いに栄えた。後の開港で都市化された函館にその痕跡は薄いが、松前や、特に江差には、当時を偲ぶ建物が残されており、観光客が訪れることもある。
※2022年4月補訂:値上げを追記2008(平成20)年1月20日に購入した、函館駅弁の掛紙。東京のデパートでの実演販売で購入した。デザインも中身も味も、上記の10年後と変わらない。調製元が替わったので、社名の表記が異なる。
1980年代のものと思われる、昔の函館駅弁の掛紙。上記の四半世紀後と変わらない。当時は注意書きがこれだけシンプルで済んでいた。
2023(令和5)年6月1日に北海道四季マルシェ札幌ステラプレイス店、つまり札幌駅ビルで発売。9月には函館駅と新函館北斗駅でも発売。小函と表現する小柄な長方形の容器に、酢〆のブリに大根酢漬とゆず皮を載せた握り寿司3個と、金時生姜で彩るブリのスモーク寿司3個を詰める。そんな小道具の香りが効いて、各地のスーパーやデパートで買えるブリの握り寿司とはひと味違う感じ。函館産ブリを使うとのことで、函館の駅弁となった。
2023(令和5)年9月1日に「鮭いくらごはん」「貝の贔屓めし」とともに、函館駅と新函館北斗駅で発売。従前の函館駅弁「べこ辨」のリニューアルだという。長方形のプラ容器に白飯を詰め、はこだて大沼牛の醤油甘タレ煮と味噌タレ煮と錦糸卵で覆い、アスパラ、にんじん、パプリカ、揚げいも、レアフルりんごを添える。べこ弁で感じた身と脂の柔らかさを、さらに淡泊にしたような、爽やかな牛丼。
2023(令和5)年9月1日に「鮭いくらごはん」「大沼べこ辨」とともに、函館駅と新函館北斗駅で発売。自分の気に入ったものを特別扱いする意味を込めた「贔屓」を名前に採用し、「鮑」 「帆立」「北寄貝」「つぶ貝」の4種類の貝をご飯の上にのせた貝づくしの駅弁、が公式な紹介文。掛紙の色彩や絵柄が、かつて昭和時代に青函連絡船内で販売されたお弁当「つぶ貝弁当」に似ており、これも意識したのではないかと思える。
長方形のプラ容器の全面に白飯を敷き、きんぴらごぼうとつぶ貝煮、蒸し北寄貝、蝦夷あわび酒蒸しで覆い、岩海苔あん、茎わかめ醤油煮、会席漬で彩り、帆立の燻製、花人参煮、厚焼玉子を添える。貝と磯のちらし弁当。普段は「ひいき」と平仮名で見ることが多いと思う文字に、貝が4匹も潜んでいたことを、この駅弁が教えてくれた。
2023(令和5)年9月1日に「貝の贔屓めし」「大沼べこ辨」とともに、函館駅と新函館北斗駅で発売。過去の函館みかどで販売した人気駅弁の復刻商品という。小柄な長方形の容器に北海道産米の白飯を詰め、焼き海苔で覆い、秋鮭、いくら醤油漬け、れんこん酢漬、大根みそ漬、金時生姜を載せる。東北地方や北海道で普及するサケとイクラの駅弁も、海苔と酢の物で変化があり、味がふくらんでおいしい。
2023(令和5)年の4月10日の駅弁の日に、函館、新函館北斗、札幌、東京、大宮の各駅で発売。2021−2022年の冬まで売られた函館駅弁「はこだて四季彩幕の内」と、まったく同じ掛紙と容器を使うため、新発売ではなく復刻か復活に見える。当時は四季で中身を変えたが、これは通年で同じ中身となる模様。
中身は、スルメやゲソを入れて秘伝の出汁で炊き込んだといういかご飯にイカと紅生姜を載せ、ブリの竜田揚げ、アスパラ、厚焼き玉子、いかしゅうまい揚げ、かぼちゃのバター煮、タコ煮とにしん甘露煮と数の子、牛肉の味噌タレ煮とパプリカ、レアフルりんご。昭和30年代に函館みかどの人気駅弁だった「いか弁当」のレシピを現代風にアレンジして復活させたといい、これは以前の幕の内駅弁風の構成でない、函館と函館駅の味覚の詰合せ。
2019(令和元)年の夏に従前の駅弁「山海ほたてめし」をリニューアルか。真ん丸で真っ黒な容器に透明なふたをして、やはり真っ黒な紙帯を締める。中身は茶飯をカニほぐし身、イクラ、ホタテ2個、玉子焼、タケノコ、ニンジン、レンコン、山菜で覆うもので、リニューアル前の四角い「山海ほたてめし」から柴漬けを抜いて、カニとイクラを入れた。内容は良くなり、掛紙は紙帯に後退した。
2014(平成26)年の発売。楕円形の容器に白御飯を詰め、豚肉焼を散らし、ごぼう天揚げ、花ニンジン、柴漬けを添える。道南産のSPF豚を使うというメインの豚肉はガチガチに固く、アゴまではいかないが歯と歯ぐきを鍛える感じ。臭みのない肉と、特製のタレによる濃い味付けは、塩辛になりそうなゴボウとともに、寒い地で白飯に合うと思う。
黒く四角い小柄な容器に御飯を詰め、細かいズワイカニほぐし身の醤油煮で覆い、柴漬けを添える。今のみずみずしいカニのぶっとい脚やブロックの身を自慢するのではない、長万部駅など昭和の頃のカニ飯駅弁はこうだった、カニと飯が合う昔懐かしい感じの風味。接頭辞の「みかど」もまた、当時は駅弁屋の社名で、今はブランド名として使われる、昭和の頃からの名前。価格は2016年の購入時で900円、2019年時点で1,000円、2022年時点で1,100円。
※2022年4月補訂:値上げを追記2000(平成12)年の発売。掛紙にあるとおり、容器の9区画に左上から「ほたてめし」「鰊みがき弁当」「鮭ハラス弁当」「つぶ貝弁当」「いくら弁当」「いか飯」「香の物」「みかどのかにめし」「うに弁当」を詰める。そのほとんどが、既存や過去や名物の函館駅弁という、函館駅弁の詰合せ。そして、実に8区画が御飯物。分量十分、満腹感はもっと上。価格は2016年の購入時で1,300円、2022年時点で1,400円。
※2022年4月補訂:値上げを追記NHK連続テレビ小説「北の家族」の放送にちなんで、1973(昭和48)年に発売。長方形の容器を、函館山や修道院を描いたと思われる白い掛紙で包む。中身は日の丸御飯にタクアンと昆布巻を添え、いかめし、筋子、つぶ貝、数の子、焼鮭、ニシン、ホタテ、ポテトなどを添える、北の国の幕の内。駅舎も列車も駅前も近代的に生まれ変わった函館で、昔のまま野暮ったく生き残る。価格は2008年の購入時で1,050円、2015年時点で1,100円。
※2015年7月補訂:値上げを追記JR北海道の車内誌によると、2003(平成15)年の発売で、2019(令和元)年9月のリニューアル。長細いプラ容器に、麻の葉文様と商品名を描いたシンプルな掛紙を巻く。中身は酢飯をホタテ、カズノコ、カニ、タコ、イクラ、ウニ、サーモン、錦糸卵、甘酢生姜で覆うもの。デパートの北海道催事でよく見るような豪華な海鮮丼を、ずいぶんと素っ気なく詰める。価格は2020年の購入時で1,300円、2022年時点で1,400円。
※2022年4月補訂:値上げを追記上記の駅弁「蝦夷ちらし」の、2016(平成28)年時点での姿。名前と中身と値段は、上記の2020(令和2)年11月のものや、下記の2013(平成25)年12月のものと同じだが、見た目はずいぶんと異なり、この時は窓開きのスリーブに上げ底の容器を収める、北海道物産展の海鮮弁当のような姿をしていた。
※2020年12月補訂:新版の収蔵で解説文を手直し上記の駅弁「蝦夷ちらし」の、2013(平成25)年時点での姿。掛紙の絵柄を見ると、昭和の昔からありそうな感じ。容器は上げ底で上げふたな催事向けで、具の内容はカズノコ、ホタテ、イクラ、サケ、ニシン、ウニ、カニ、玉子焼、ワカメ、しば漬など。
函館駅の駅弁屋は、みかど函館営業所が2012年1月にJR北海道の子会社であるジェイ・アールはこだて開発へ事業を譲渡し、子会社の整理により2014年10月に北海道キヨスクへ吸収されたが、客から見たら気が付かないくらい以前と同じように、駅弁が販売され続ける。
※2016年12月補訂:新版の収蔵に伴い解説文を変更2022(令和4)年9月3日に函館駅と新函館北斗駅で発売、12月25日まで販売。その名のとおり、函館駅の開業120周年を記念した駅弁。掛紙には記念キャンペーンのロゴマークに現在の函館駅舎とメッセージが描かれ、同じ絵柄の絵葉書とお品書きを添付した。
中身は「右膳」として、森町産の箱館ポークロースグリル、栗かぼちゃの焼きチーズソース掛け、鰤(ぶり)の竜田揚げ、北斗市のホッキしゅうまい、レアフルリンゴなど、「左膳」として、いかご飯、みがき鰊(にしん)の甘露煮、数の子、厚焼玉子。「鰊みがき弁当」や「いかめし」など函館駅やその近隣の駅弁にちなんだ内容と、函館エリアや北海道の食材を備える、地元の味と雰囲気のある記念駅弁。価格が容赦ない、優れた内容のおつまみ弁当。
海鮮でない高額な駅弁が函館や北海道で売られることは、珍しいと思うし、そんな客を呼べるのは新幹線開業のおかげかもしれない。東京駅でこれを買えたのは、新幹線による荷物輸送のおかげかどうか。
2016(平成28)年6月6日の発売。昭和の頃に山形県の新庄駅で、同じ名前の駅弁が名物だったと思う。いずれも「べこ」とは牛のことで、白御飯の上で北海道産和牛のしぐれ煮とそぼろと、錦糸卵でストライプを描く。値は張るが、シンプルで今風に脂が豊かで、柔らかくておいしい牛丼駅弁。2018年のリニューアルで、中身にいかしゅうまいと漬物を加えたらしい。2023年9月に上記の「大沼べこ辨」へリニューアル。
※2024年2月補訂:終売を追記2014(平成26)年の発売か。ホタテの文字と写真を使うボール紙製容器の中身は、茶飯の上に3個のホタテ煮を対角線上に並べ、山菜とクリと柴漬けで残りを覆うもの。派手さや華やかさのない、見た目に渋めで落ち着いた一食。価格は2016年の購入時で900円、2019年時点で1,050円。2019年の夏までに「山海贅沢ごはん」へのリニューアルにより終売。
※2020年4月補訂:終売を追記北海道新幹線の新青森駅〜新函館北斗駅の開業に合わせて、2016(平成28)年3月26日に発売。おしながきを兼ねる掛紙にも「北海道新幹線開業記念駅弁」と明記される。「箱舘新景」「北斗七星」に続く、函館駅の北海道新幹線開業記念駅弁の第3弾。
中身は礼文島産むらさき雲丹の炊き込みごはんに、北海道産蝦夷鮑の酒蒸し、生海苔あん磯風味、礼文島産蝦夷ばふん雲丹、北海道産いくら醤油漬などを載せたもの。函館駅でとびっきり高価な駅弁であり、アワビとウニがふんだんに使われながら、豪華でも奇をてらわないつくり。2018年までの販売か。
北海道新幹線の開業に伴い、新青森駅と函館駅を結ぶ特急列車「スーパー白鳥」「白鳥」が廃止になり、ついでに函館駅に発着するすべての夜行列車が粛清されたため、函館駅から本州連絡の機能が消えた。函館駅の改札内やホーム上では、それを前にした2015(平成27)年9月に、すべての売店と立ち食いそば店が閉店して淋しくなり、年末年始や開業・さよなら景気の商機を逃している。一方で改札外の売店群は拡充、訪問時には駅弁売店の位置を変えずにその裏手で売り場が広がり、様々な土産物が買えるようになっていた。
※2019年8月補訂:終売を追記函館駅の北海道新幹線開業記念弁当として、2015(平成27)年5月14日に発売。函館がかつて「箱館」と表されていた江戸時代の風景図を背景に、次年に営業を開始するH5系新幹線電車のイラストを合わせたパッケージに、二段重ねの容器をぴったり収める。
中身は側面のおしながきのとおり、下段に御飯としてタラコとイカ昆布の御飯にイカ寿司、上段におかずとしてコロッケ、豚照焼、ごっこの唐揚げ、ブリのエスカベッシュ、厚焼き玉子、プチトマトやブロッコリーなど。高級タイプの駅弁として、例えば東京駅の大人の休日駅弁のつくりと同じ香りを感じる。食べていて奇抜さがないのに、イカ飯からごっこの唐揚げまで道南特有のメニューが、うまく取り入れられている。1年間ほどの販売か。
※2017年3月補訂:終売を追記「箱舘新景」に続く、函館駅の北海道新幹線開業記念弁当の第2弾として、2016(平成28)年1月7日に発売。この年の京王百貨店駅弁大会の初日と同じ年月日の発売は偶然か。北海道新幹線H5系電車の形をしたプラスティック製容器を、「青函隧道」と書かれてトンネルをイメージした紙枠に少しだけはめる。
中身は、JRの切符のような色と大きさを持つ紙片のお品書きのとおり、北斗産米ななつぼしの酢飯の上に、鮭たたき、イカ旨み焼き、イクラ醤油漬、ホタテ薫製、タコやわらか煮、はこだて和牛のしぐれ煮とそぼろなどを散らし、かぼちゃまんじゅうを添えるもの。新幹線型容器の駅弁なのに、お子様ランチではない中高年向けの味と内容。容器も子ども向けでなく鉄道に興味を持つ中高年のツボを押さえていると感じた。上の他社製品とは、見た目で同じでも、中身に加えて容器もそれぞれ独自である。2018年までの販売か。
※2020年6月補訂:終売を追記2014(平成26)年の秋までに発売か。白御飯を牛肉煮と牛そぼろで覆い、きぬさやで彩り、玉子焼と大根漬を添える。ごくごく普通の牛肉駅弁。たっぷりのタマネギと糸こんにゃくに混じる牛すきやき肉はかなり硬めで、値段も考えるとおすすめできる感じではない。おそらく2016(平成28)年6月に、「べこ辨」と入れ替わりに消えたのではないかと思う。
2019(平成31)年4月に発売の、季節の幕の内駅弁。今回は10〜12月販売の秋バージョン。掛紙は四季とも同じものを使い、写真は函館山からの夜景でなく昼景で、これを春夏秋冬の風景写真で覆う。中身は白飯に鮭ほぐしと錦糸卵を載せ、ザンギ、ホタテ、いかしゅうまい、玉子焼、かまぼこ、はじかみ、焼ホッケ、カニボール、生帆立ゆずなど。詰め方の見栄えはいまいちでも、内容や風味には函館や北海道を感じた。2021〜2022年の冬版までの販売か。
※2023年4月補訂:終売を追記2007(平成19)年4月までに発売か。持ち帰り牛丼タイプの長方形の容器を使用、駅弁屋豚の名前やマークなどを印刷した茶色い掛紙を巻く。中身は白御飯の上に森町産SPF豚ロースの焼肉をたっぷり敷き詰め、わかめしば漬を添えるもの。タレは色も味も薄く、山椒で味を増す凛々しい風味と食感に目が覚める。駅弁には珍しい、あっさりタイプの豚丼弁当。2013年頃までの販売か。
※2016年12月補訂:終売を追記2010(平成22)年7月17日に発売。「SL函館大沼号」の運転日に限り同列車内と函館駅5番ホームで販売される駅弁。竹編み風な市販のボール紙製容器に、SL列車の写真や運転日や時刻表などを印刷した茶色い掛紙を巻く。中身は「黒いダイヤ」こと海苔を巻いた焼タラコのおむすびと、「峠下の焼おにぎり」こと牛そぼろと味噌の焼おにぎりと、「機関士の雫」こと昆布をまとう白わさびごはんのおにぎりが各1個と、ホタテやニンジンなどの煮物、ホッケフライ、ワカサギのいかだ焼、漬物2種。どでかいおにぎり弁当。さらに中身入りの汽車土瓶が付いてくる。
ホーム上に本物の駅弁立売が出て、しかも中身入り汽車土瓶まで売るとは、今世紀に希な出来事である。しかし朝9時台では弁当需要がないのか、弁当が袋詰めで何を売っているのか分かってもらえなかったのか、SL列車内の売店でも同じものが買えるためか、販売の告知がSL列車運転開始日のわずか3日前のプレスリリースで出るなど広告宣伝面でのサポートがないためか、見た目でまったく売れていなかった。
SL列車の翌2011年夏の運転時には、同じ名前で容器や内容や価格が異なる駅弁が売られた模様。2012年以降は売られていないのではないかと思う。
※2016年12月補訂:終売を追記1990年代の発売だろうか。正八角形の小柄な容器に透明なふたをして、サケとイクラを描いたイクラ色の掛紙で包む。中身は白御飯の上に刻み海苔と錦糸卵を敷き、イクラの醤油煮を中央に盛り、カマボコと白生姜を添えるという、名前どおりのイクラ丼。小粒なイクラが珍しい感じ。駅弁大会でも物産展でもイクラは大粒こそが命だと競う感じがあるが、地元の駅弁であればこういうものがあっていい。2013年頃までの販売か。
※2016年12月補訂:終売を追記函館駅の本当の幕の内駅弁。全長33センチとかなり横長な容器に、商品名と中身写真を印刷したボール紙でふたをして、輪ゴムを通す。中身は日の丸御飯、ハンバーグ、スパゲティ、ウインナー、鳥唐揚、焼鮭、蒲鉾、玉子焼、ポテトフライ、ちくわなど。この構成や内容が「函館名産」と呼べるかどうかは、ちょっと疑問を感じた。現存しない模様。
※2016年12月補訂:終売を追記青函トンネルの開通を前にした、1987(昭和62)年10月に発売。青函トンネルは本州と北海道を海底下で結ぶ、当時で世界最長(53850m)のトンネル。掛紙には青函トンネルを含む鉄道路線図と、ここを通る特急列車「スーパー白鳥」のイラストを描く。発売時の掛紙には快速列車「海峡」が描かれた。
中身はトンネルをイメージしたアーチ型の区画に白飯を詰め、錦糸卵と鶏そぼろで覆い、レンコンとサワガニで彩り、その左側に青森側としてシーフードサラダやホタテ煮などを、右側に函館側としてイカ飯や焼鮭や松前漬などを詰める。函館駅で事実上の幕の内弁当であり、青函らしさがよく出ていて、風味も良い。
2011年頃まで販売された模様。2015年7月に青森駅〜函館駅で運転された団体専用列車「復活海峡号」で、参加者にこの駅弁が配られたという。
※2016年12月補訂:終売を追記商品名「かまめし弁当」。現地で季節の釜飯として売られていた駅弁。津軽海峡の対岸にもある、どうしても安っぽく見える平たいプラ製釜型容器に透明なふたをして、釜飯らしい正方形の掛紙で包んで、ひもでしばる。中身は茶飯に帆立、うに、玉子焼、高野豆腐、フキ、昆布巻など。個人旅行での特急移動での腹の足しに最適だと思う、ちょっとばかり北の味な釜飯駅弁。この駅弁の掛紙は、2000年代の函館駅弁の季節限定商品に、分け隔てなく使われていた模様。現在は使われていない。
※2016年12月補訂:終売を追記サンドイッチ用にしては大きなプラ容器に、青函連絡船のイラストや「立売」の文字が残る掛紙を巻いて、輪ゴムでしばる。中身は豚ひれ肉サンド、ハムサンド、玉子サンド、ポテトサンドを各1切れに、オレンジとキウイのスライスを添えて、プロセスチーズ1個を付ける。コンビニでは買えない、食事向けサンドイッチ。駅売りでは出会えておらず、夜行列車は消え、調製元の経営も二転したため、今は買えないのではと思う。
※2016年12月補訂:終売を追記2007(平成19)年1月の京王百貨店の駅弁大会で実演販売。かつて青函連絡船の船内で販売されたというお弁当。長方形の容器を大きな掛紙で包むが、その絵柄には惜別の雰囲気があり、鉄道連絡船廃止前の頃のものなのだろう。中身は日の丸御飯に大きな紅鮭を添え、昆布巻と枝豆を添えるだけ。
見栄えはシンプルというより安っぽいが、焼鮭をこのサイズで喰わせる駅弁は、なかなかない。催事場ではあまり人気を集めていなかったが、きっと昔の雰囲気を味わえる、地味だけど良い弁当だと感じられた。
2007(平成19)年1月の京王百貨店の駅弁大会で実演販売された、かつて青函連絡船内で販売されたお弁当。ふた付きの赤いプラ容器に、巻き貝と函館山と鉄道連絡船を描いた掛紙をかけて、ビニールひもで十字にしばる。中身は白御飯の上にきんぴらと日高産つぶ貝を載せて、グリーンピースと錦糸卵とさくらんぼを散らし、ガリを添えるもの。
青函連絡船が廃止されて約20年が経過し、駅弁屋に当時の資料はなかったそうだが、その当時に駅弁を作っていた人と、印刷屋に掛紙の製販フィルムが残っており、駅弁をかなり正確に再現できたそうだ。しかし残念ながら催事場での人気はいまいちだった。つぶ貝という食材の人気度もあるが、青函連絡船が本州と北海道を結ぶメインルートの座から外れて約40年、この弁当を懐かしむ声は、主催者が思うほど大きくなかったのだろう。
上記の駅弁「つぶ貝弁当」の、2008(平成20)年時点での姿。容器は正八角形の発泡材と透明なふたに変わり、掛紙はボール紙の枠に変わり、味付けも今と昔は異なるというし、青函連絡船も廃止後20年も経過すると知る人も減ってきただろうが、駅弁の中身はあまり変わらない。通常は無地を使う、フタに中身が付かないようにするフィルムには、調製元の名前とロゴマークだろうか、金色でこれが印刷されており、駅弁の見栄えをぐっと締めていると思う。現存しない模様。
※2015年7月補訂:終売を追記井形に組んだ正方形の容器を、中身の写真を大きく載せたボール紙の枠にはめる。中身は茶飯の上に錦糸卵を敷いて粒ウニとイクラを載せるシンプルな内容。高価なのはウニの分量に妥協がないためか。北海道の主要都市や特急列車車内販売には、こういう駅弁が必要だと思う。2013年頃までの販売か。
※2016年12月補訂:終売を追記1990年代の発売か。函館名物の朝市が駅弁になった。四角い容器に白飯を詰め、これを収めるボール紙箱に文字と写真で記すとおり、かに、いくら、数の子、ほたて、紅鮭、いか、にしんと錦糸卵を載せる。内容はそれなり、価格もそれなり。現存しない模様。
※2015年7月補訂:終売を追記1997(平成9)年3月20日10時30分の調製と思われる、昔の函館駅弁の掛紙。日の丸に北方領土を描き、駅弁の名前は「北への想い」。偶然でない政治的メッセージが強く発信されていると思う。とはいえ同じ北海道でも、北方四島と函館は北東と南西の端と端であり、本州にあてはめると東京から大阪までくらい離れている。
昭和50年代、1980年前後の、8月26日22時の調製と思われる、昔の函館駅弁の掛紙。毛ガニをまるごと描く、北海道の各地に類例があった、駅弁の掛紙としておなじみの絵柄。今も道内の各地にカニ飯の駅弁はあるが、かにずしの駅弁は残らなかった。
昭和50年代、1980年前後のものと思われる、昔の函館駅弁の掛紙。上記のものと、まったく同じ。こちらには調製印がない。
昭和50年代、1980年前後のものと思われる、昔の函館駅弁の掛紙。上記の掛紙「かにずし」2枚と、まったく同じ絵柄。600円の価格が印刷でなく押印となっている。
おそらく1920年代、大正時代末期か昭和時代初期のものと思われる、昔の函館桟橋駅弁の掛紙。絵柄はスズランか。広告枠が標準的な上中下3枠でなく、下部左右に2枠とは珍しい。函館桟橋駅は、函館駅の0.29km先にあった駅。青函連絡船の連絡待合所があり、函館駅とは別に存在し、列車は両駅に停車した。調製元の浅田屋は、函館駅の開業時からの構内営業者。こうして函館桟橋駅にも進出し、1936年8月に兵庫県神戸で構内食堂や列車食堂を営むみかどへ吸収され、その函館営業所となった。