札幌駅から特急列車と普通列車を乗り継いで約2時間半。北海道の南東部で太平洋に面した新ひだか町は、2006年に静内町と三石町の合併で誕生した人口約2万人の町で、昆布と競走馬の産地として広く知られる。駅弁は1947年の発売で、平成時代にはなくなり駅の立ち食いそば店になったはずが、2003年の秋に全国販売を開始、その一部が現地でも事前の予約により販売された。1926(大正15)年12月7日開業、2021(令和3)年3月31日限りで廃止、北海道日高郡新ひだか町静内本町5丁目。
下記の「寿司(いなり)」の購入から3年後、また静内駅の立ち食いそば店を訪れてみた。この手の惣菜は健在。静内駅の乗降客数は2007(平成19)年度時点で一日680人。特急列車や長距離列車の来ない駅に駅弁の需要はほとんどないだろうが、列車の発着に関係なく町のファストフードとして、駅舎内の立ち食いそば店が機能しているように見えた。2021年3月限りで鉄道が公式に廃止されても、立ち食いそば店は残るとのことで、いなりずしも引き続き売られるかもしれない。
※2021年3月補訂:駅の廃止を追記静内駅弁の真の姿。全国各地の駅うどん・そば屋で販売が見られる、プラ製パック詰めなおいなりさん。柔らかめの風味が手作り感いっぱい。その他の寿司やおにぎりも200円台で売られていたほか、地元客が数名、ベンチでそばをすすっていた。
スーパーの催事場を賑わす自称「静内駅弁」は、購入箇所にも駅舎内にも存在しなかった。こうして駅舎内でまっとうな構内営業を続けているのならば、いくぶんかの名義使用料収入と引き替えに催事屋を儲けさせて、駅弁ファンからの信用を失う疑義駅弁に手を出さなければいいと思う。
2001(平成13)年9月20日に北海道新冠郡新冠町の道の駅「サラブレッドロード新冠」で発売。北海道日高支庁が主導で設立した「日高こだわり料理開発研究会」が、2001(平成13)年2月に主催した日高オリジナル弁当コンテストのグランプリ作品「日高ロードよくばり弁当」について、これをベースとした道の駅弁を開発し、一日20個2か月限りで販売したもの。これが連日完売の人気で販売を続け、2002(平成14)年4月にオープンした静内駅の物産館売店「静内観光情報センター ぽっぽ」でも販売され、2005(平成17)年1月には京王百貨店の駅弁大会でも実演販売された。
つぶ貝と日高昆布のだし汁で炊いた御飯をつぶ貝で覆い、ホタテと昆布巻と玉子焼を並べ、レモンとれんこんとパセリも並べ、焼鮭を添える。臭みや固さが心配になる貝弁当において、これはそのいずれでもない、ほのかで控えめな香りや味付けに柔らかい口当たりでいただける、つぶ貝丼。これはきっと「日高の新名物」になっていると思う。調製元のホテルにも入口に幟旗や看板を立てている。価格は2001年の発売時で800円、2005年時点で900円、2011年時点で1,000円、2022年の購入時で1,080円。
日高つぶめしが鉄道駅の駅弁としても知られるようになった後、調製元の静内ウエリントンホテルは2013年3月に破産、静内駅には災害で2015年2月から列車が来なくなり、2021年3月限りで路線ごと廃止された。しかしこの弁当は2014年3月から今でも、静内市街で最大の宿泊施設「静内エクリプスホテル」のフロントで、注文か予約により1個から買える。加えて2016年秋からは静岡県の大井川鉄道の新金谷駅前でも売られるようになった。
上記の弁当「日高つぶめし」が、2006(平成18)年1月の京王百貨店の駅弁大会で実演販売されたもの。下記の前年の2005年のものに、「弁当」の名を加え、美しい見本写真を使うスリーブを追加し、箸袋を専用品に替えた。中身は変わらず、茶飯をつぶ貝で覆い、ししゃもの昆布巻、鮭ザンギ、帆立貝、玉子焼、ミニトマト、レモン、パセリなど。2011年までには静内駅では売られなくなったという。
※2022年8月補訂:新版の収蔵で解説文を整理上記の弁当「日高つぶめし」が、2005(平成17)年1月の京王百貨店の駅弁大会で初めて実演販売されたもの。容器と御飯は2001年の発売当時の姿であり、おかずを少し変えていた。日高が漁獲量日本一という「灯台ツブ」のお弁当。楕円形の容器に日高産米「ほしのゆめ」を日高産昆布の出汁で炊いたつぶめしを入れ、おかずは門別産シシャモの昆布巻、銀毛サケのザンギ、新冠産のカボチャ、静内産のミニトマトなど。
2004年5月現在で一日約10個が静内駅で販売され、10〜4月は予約分のみの調製とのこと。同年夏の情報では、5個以上の予約でのみ調製されるようになったらしい。
※2022年8月補訂:新版の収蔵で解説文を整理2003(平成15)年11月の大手スーパーの駅弁催事で突然に登場した「静内駅弁」4種のうちのひとつ。小さな容器に小柄ないかめしが2個入る、つまり森駅「いかめし」とまったく同じ内容。森駅と比較して、価格はやや高く味は格段に落ちるし、そもそもいかめしが日高名物であるなど聞いたことがない。
2005(平成17)年4月20日頃発売のJR時刻表とJTB時刻表の5月号は、静内駅に駅弁販売駅の記号を付けて、この駅弁の名前を欄外に掲載した。現地での販売が実際に始まったかどうかを確認していないが、駅弁大会用と異なるものをごく少数だけ取り扱っているという報告がある。価格は2003年の発売時で500円、2017年時点で550円。
日高本瀬は高波による線路の流失で、2015(平成27)年1月から鵡川駅〜静内駅〜様似駅で運休しバス代行輸送。復旧費用を誰も出さなかったことで、2020(令和2)年10月に翌2021(令和3)年3月限りでの廃線が決まった。静内駅は駅でなくなるが、駅そば屋は廃線後も営業を継続、しかし駅弁はなくなる。実際は2020(令和2)年11月頃から駅弁の注文を止めていたらしい。
※2021年3月補訂:終売を追記上記の駅弁「北海いかめし」の、現地での姿。静内駅の疑義駅弁のうち、この商品に限っていつからか駅での販売も開始されたようで、市販の時刻表にも駅弁の名前が掲載されるようになった。有名な森駅のいかめしと同じ内容かつ同じ価格であるが、味は落ちるし見栄えは悪いし汁はこぼれるしで、良いところがない。しかも今回購入したものは飯の中に折れた楊枝が2本も入っており、うっかり食べると怪我をするところであった。価格は2010年の購入時で500円、2017年時点で550円。
※2021年3月補訂:終売を追記1981(昭和56)年1月2日12時の調製と思われる、昔の静内駅弁の掛紙。路線図の絵柄や、調製元や定価の表記から、駅弁の掛紙であると思うが、駅弁の名前がないものはとても珍しい。掛紙の全面が、当時の静内町の観光案内図となっている。
1971(昭和46)年3月26日13時の調製と思われる、昔の静内駅弁の掛紙。絵柄にも、おそらく幕の内弁当だった中身にも、静内や北海道をアピールするものではない、普段使いの駅弁だったと想像する。当時の日高本線には、起点の苫小牧駅に加え、鵡川駅とこの静内駅と様似駅で駅弁が売られ、静内駅以外には名物の駅弁があった。
1957(昭和33)年8月25日午前の調製と思われる、昔の静内駅弁の掛紙。今は見る影もないが当時の北海道は鉄道が主役、国鉄や私鉄や拓殖鉄道が道内をくまなく結び、ちょっとした主要駅には駅弁があった。