東京駅から東北新幹線はやぶさ号で3時間強。青森市は本州北部で陸奥湾に面した、人口約27万人の港町。明治時代に入り県庁が置かれ、帝都からの鉄道が開通して北海道への航路が拓かれたことで、県内一の都市として発展した。駅弁は新幹線の改札内や高架下のコンビニで売られるが、完売していることが多いと思う。1986(昭和61)年11月1日開業、青森県青森市大字石江字高間。
2011(平成23)年の7月までに発売。スーパーの惣菜弁当のようなプラ容器に、駅弁の名前をしっかり書いた掛紙を巻く。中身は青森米つがるロマンの白御飯、御飯、シマホッケの漬け焼き、味付身欠き鰊、イカメンチ、もっこり卵のだし巻き卵、煮物、なすのしそ巻き、すじこ、きゅうりの漬物、ホタテ黄金焼き、ホタテ唐揚。
見た目と構成は幕の内弁当をおおむね踏襲するが、これはふつうでないボリュームのお弁当。魚介類を味わえて、常温でうまく、味こいめ水気すくなめな駅弁の味。これだけ骨太な普通弁当には、そうは出会えない。価格は2015年時点で900円、2017年9月から1,100円。2020年の春頃までの販売か。2021年10月のJR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2021」にエントリーされたので、再発売されたのだろう。
※2022年2月補訂:写真を更新2018(平成30)年8月17日に購入した、新青森駅弁の掛紙。中身は下記の2015年や上記の2021年と同じ。絵柄も同じ。新青森駅近くの三内丸山遺跡を含む「北海道・北東北の縄文遺跡群」がユネスコの世界文化遺産に登録されたのは2021年7月のことなので、これに関する表記は当然に無い。
2015(平成27)年12月に購入した、新青森駅弁の掛紙。上記の2018年のものと、食品表示の記載も含めてまったく同じ。中身も当然に同じ。価格は200円安かった。
2021(令和3)年3月6日に新青森駅と青森駅で発売。同年4月からのJRグループの観光キャンペーン「東北デスティネーションキャンペーン」に向けて、JR東日本の盛岡支社が、津軽線の魅力を知ってもらう目的で発売した。掛紙には表面に津軽線の略図と津軽弁を、裏面に中身の説明と津軽半島北端のみどころを掲載する。
3区画の中身は、右側で白飯を青森トラウトサーモンの酢漬けと青森県産ベニズワイガニのほぐし身とイクラと錦糸卵で覆い、左側で白飯を長谷川自然牧場の自然熟成豚の味噌炒めで覆い、中央に陸奥湾産ホタテ照焼、ニンジンやレンコンなどの煮物、東北ピクルス、玉子焼、ナガイモ酢漬けを据える。海と陸をぎゅっと合わせたお弁当。津軽線がどんな路線なのか、どうやったら使えるのかは、ここでは分からない。
津軽線は、青森県内で青森市の青森駅から東津軽郡外ヶ浜町の三厩(みんまや)駅まで55.8kmを結ぶ、JR東日本の鉄道路線。青森駅〜蟹田駅では陸奥湾を眺め、蟹田駅〜三厩駅では小国峠越えの山中の細道となる。1951(昭和26)年12月の開業や1958(昭和33)年10月の全通後は長らく、各駅停車のディーゼルカーが1〜3時間おきに走るローカル線であった。青森駅側で通学生の利用が多く、昭和40年代や昭和50年代に廃止対象線となることはなかった。
青函トンネルが在来線として開業することになると、1988(昭和63)年3月に青森駅〜蟹田駅〜中小国駅が本州と北海道を結ぶルートの一部になり、特急列車に快速「海峡」や貨物列車が頻発するようになった。2015(平成27)年3月に北海道新幹線の新青森駅〜新函館北斗駅が開業すると、時刻表上では各駅停車のディーゼルカーが2〜4時間おきに走るローカル線に戻った。普通の時刻表に載らない貨物列車は引き続き、一日で約40本が行き交う重要なルート。乗客は青函トンネル開通前に比べても8割減、特に中小国駅から三厩駅までは利用者がほぼいない状況ながら、廃止やその検討が公になったことはなく、逆に活用や利用促進という話も聞かれない。
2012(平成24)年までに新青森駅や弘前駅で発売か。掛紙にはまるで寿司屋の湯飲みのように、さかなへんの漢字がたくさん並ぶ。普通のプラ容器の中で、白飯をホッケ、鮭とサーモン、黄身焼と唐揚で2種のホタテ、寿司と焼きと唐揚とメンチで4種のイカで囲む、魚に限らずも、確かな海だらけ。それでも調製元の「だらけ」駅弁群の中では、ずいぶんおしとやかな印象を受ける。2019年の秋までの販売か。JR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2022」の開催に合わせて、2022年10月に再販か。
※2022年9月補訂:再販を追記2005(平成17)年頃に発売か。正方形の酢飯に小さな具を載せて笹で包む、北陸タイプの笹寿司を鮭が3個に鯛が2個、竹皮柄のボール紙製容器に並べて、商品名と中身の写真を掲載した掛紙を巻く。こういうタイプの商品だから、鮭や鯛は味を感じるのではなく、酢飯の風味付けになっている。十字の笹が水気と油気でぐっしょり。価格は2013年の購入時で800円、2014年時点で850円、2019年時点で900円、2020年時点で1,080円、2022年3月から1,200円。
前回の購入から5年を経て、掛紙には駅弁マークが入った。つまり、調製元が旧国鉄〜現JRグループの駅弁屋などの団体である日本鉄道構内営業中央会へ加盟した。これは実はすごいことである。青森県内では東北新幹線の全線開業に向けて、今までのようにJR東日本の100%子会社であるNREが自社の駅弁を売り始めるのではなく、NREが地元の弁当屋などを指導して自社売店の納入業者になってもらうことにしたらしい。
※2022年4月補訂:値上げを追記2008(平成20)年9月14日の調製である、青森駅弁の掛紙。商品名と宣伝文、笹寿司の外観と中身の写真という、分かりやすい姿。
この商品はフェリー乗り場で買ったが、掛紙にはNREの盛岡駅弁で見た「北国駅弁シリーズ」のマークが付いており、ついに青森にまでNREが攻めてきたのかと思ったら、調製元は駅弁屋ではない青森市内の弁当工場だった。八戸駅や青森駅や特急列車の車内販売に加えて東京駅の「駅弁屋旨囲門」でも売られているそうな。
JR東日本の「大人の休日」キャンペーンに伴い、2002(平成14)年に発売。高級志向のキャンペーンに合わせて、通常の駅弁より高価に設定した駅が多いなかで、発売当時の価格は900円と、青森駅は逆に安価となっていた。
帯状の掛紙をかけて輪ゴムでしばった、小ぶりな長方形の二段重ねの容器を使う。「壱の重」は青森県産米を使用した岩木山の若竹御飯と下北半島のウニ御飯、「弐の重」は八戸の蒲鉾、平内の帆立、野辺地の若鶏唐揚、軽米の厚焼玉子、七戸の長芋、八甲田の山ごぼう、という具合に県産食材をていねいに煮て焼いて見栄え良く詰める。価格は2002年の発売時で900円、2014年時点で1,000円、2019年の購入時で1,200円。調製元の青森からの撤退により、2019年9月限りで終売。
※2019年11月補訂:写真を更新し終売を追記2002(平成14)年6月9日に購入した、青森駅弁の掛紙。容器や中身は、上記の2019年のものと同じ。この当時は調製元が日本鉄道構内営業中央会の会員だったので、掛紙に駅弁マークがあり、さらにJR東日本「大人の休日」のロゴマークも付いていた。
2009(平成21)年2月に地元の「津軽料理遺産プロジェクト」で開発され、ゴールデンウィーク期間中の試験販売を経て内容を見直しのうえ、弘前駅の新駅舎開業5周年記念行事に合わせて、同年12月12日から弘前駅2階自由通路での販売が開始された駅弁のひとつではないかと思う。
快晴の岩木山の写真を使う包装紙で、折箱をすっかり包む。中身は添付のお品書きにマッピングされるとおり、「若生(わかおい)のおにぎり」なる昆布の細巻き、「いなり寿司」なる紅生姜でピンク色に染めた手まり寿司、鮭の飯寿司(いずし)という和え物、身欠きニシンやかぼちゃ餅、イカメンチなど、駅弁で見たことがない料理が満載。2019年の秋までの販売か。
※2020年12月補訂:終売を追記太宰治の生誕110周年を記念し、2019(令和元)年7月から9月まで、新青森駅と青森駅と八戸駅のコンビニ「ニューデイズ」で販売した駅弁だそうな。掛紙には太宰治の生家である斜陽館と、五所川原の立佞武多の写真が使われる。中身は津軽ならではの若生おにぎり2個と紅生姜で赤いいなりずし、津軽らしい「いがメンチ」にニンジンとシイタケの煮物と大根漬、鶏照焼とわさび菜醤油漬とタラ味噌焼とりんごプレザーブ、帆立玉子味噌煮、ワラビやふきなどの野菜煮。
これのどこが幕の内弁当かと思うくらい、内容が尖っている。一方で、10年前から青森で売られるつがる惣菜の駅弁「津軽」と多くの中身が共通するため、これが青森や津軽が考える幕の内弁当なのだろう。だから、そんな内容について、掛紙やしおりなどでお品書きが欲しかった。何も知らなければ、分からなければ、賑やかなおつまみ弁当。
2016(平成28)年7月から9月までのJRグループの観光キャンペーン「青森県・函館デスティネーションキャンペーン」の開催に合わせて、同年7月1日の発売。青森&みなみ北海道の女性による町おこしグループ「津軽海峡マグロ女子会」が監修し、JR東日本盛岡支社と共同で食材を選定し、新青森駅の駅弁屋が調製し、新青森・青森・盛岡・八戸の各駅で販売する。
駅弁の解説は、新聞のような紙質とレイアウトを持つ掛紙「マグ女新聞」にすべて書いてある。中身は右の青森県「にぐ」(肉)でスタミナ源たれの牛焼肉丼、左の北海道道南「さがな」(魚)でニシンやイクラなどの海鮮ちらしずし。その狭間に置かれたタラ甘露煮と酢いかとアンズとリンゴは、津軽海峡と青函トンネルに見える気がした。味が良い以上に、地理を感じるこの中身の構成に唸った。2020年の春頃までの販売か。
※2020年12月補訂:終売を追記2016(平成28)年11月3日に購入した、新青森駅弁の掛紙。この駅弁の発売当時の掛紙「マグ女新聞」は2016年7月1日付で、見出しは「津軽海峡をつなぐマグ女弁当誕生」であった。
2006(平成18)年までに、青森駅や特急「スーパー白鳥」車内で発売か。上記の駅弁「ふつうの津軽の幕の内弁当」と名前が似るが、見た目が別物なので混同しない。赤い掛紙には、青森ねぶたの写真と「青森県ふるさと産品全国ランキング」の文字が賑やか。松花堂弁当のように仕切られた4区画の中身は、海苔とイクラを載せた白飯、山菜飯、ホタテ煮と焼鮭と身欠きニシンと鶏照焼、ヤリイカと煮物と玉子焼。中身も掛紙に負けず、賑やかな駅弁。2016年までの販売か。
※2019年8月補訂:終売を追記2014(平成26)年の夏までに発売か。東北新幹線「はやぶさ」誕生の2011(平成23)年3月や、翌2012年にも販売された可能性がある。青い竹皮か笹の葉か何かを成形した容器に、透明なトレーを介してホタテの炊込飯を詰め、ホタテ煮、きゅうり漬、ニンジンとゴボウと高野豆腐の煮物、玉子焼を添える。ホタテの滋味がとても強く、それでいて味が強いわけでもなく、旅先で出会いたい田舎の味。大きな玉子焼も力強い味。2019年頃までの販売か。
※2020年5月補訂:終売を追記2010(平成22)年の春頃に発売か。A6判ほどしかない木目柄で長方形の容器を二段に重ねて、同じ木目柄のボール紙でふたをして、A5サイズのおしながきと割りばしを置き、商品名しか書かないクリーム色の掛紙をかける。中身は下段が御飯でつがるロマンの白御飯に紅生姜入りいなりずし、太巻き、すしこ、上段がおかずでホタテ焼、リンゴのベーコン巻、ナガイモ味噌焼、ヒメマス西京焼、いがめんち、鶏肉やニンジンなどの煮物、ミニトマトなど。いろいろ入って事欠かない。
桃色のお品書きによりと、「女将の誂え」とか「女将さんが厳選」などの宣伝文が書かれる。JR東日本エリアでは高崎駅や仙台駅などで、旅館の女将やその団体が監修した駅弁がヒットしており、青森でもその延長で駅弁になったのだろうと想像する。しかしどこの女将のものなのか、肝心なことが書かれていない。価格は2010年の購入時で1,100円、2017年時点で1,200円。2018年までの販売か。2014年までに3日前までの予約販売となっていた。
※2019年8月補訂:終売を追記青函トンネルの開通を記念して、1988(昭和63)年に発売。海峡を貼り絵のように描く、長方形の専用ボール紙箱のふたの裏には、青函トンネルの横断面図や紹介文に妖しい列車が記される。白いトレーに収まる中身は、エビ・ホタテ・サケ・イクラが乗る茶飯に、帆立貝柱風フライと肉団子、昆布巻に玉子焼、五目煮にリンゴ甘煮などが入る。快速「海峡」時代の北の味には安心感がある。価格は2008年の購入時で1,020円、2014年時点で1,200円。調製元の青森からの撤退により、2019年9月限りで終売。2014年以降はほとんど売られなかったかもしれない。
着工から27年を経て1988年3月13日に開通した青函トンネルには、上野・札幌間の寝台特急列車「北斗星」2往復、大阪・函館間の寝台特急列車「日本海」1往復、青森・札幌間の夜行急行「はまなす」1往復、盛岡・函館間の特急「はつかり」が2往復、青森・函館間の快速「海峡」8往復と貨物列車が設定された。その前年に国鉄が解体されたくらいの厳しい状況の中、これらの列車に使われる車両はすべて中古車の改造でまかなわれた。
開業ブームが去ると青函間だけで3時間もかかる快速列車の旅は敬遠され、旅客は航空やフェリーに戻っていく。そこで2002年12月の東北新幹線の八戸駅までの延伸開業に合わせて全列車の特急化を実施、JR北海道は新型特急用電車を23両も製造して青函間を2時間強に短縮した。利用者の増加により3年後には電車をもう11両増備、一方で青函トンネルを走る普通列車がゼロになったため、蟹田・木古内間に乗車券だけや青春18きっぷで特急列車の自由席を使える例外を設けている。
2002(平成14)年に発売。青森ねぶたの勇壮なねぶたを描いたパッケージに、これまたしかめっ面なプラスティック製容器が鈴付きで収められる。酢飯の上に帆立・カズノコ・鮭・ウニ・タラコを散らすちらし寿司で、鮭が身薄で輸送の影響かウニの部分がスカスカだったり、具材の質や量や味には申し分ないが価格を考えると見栄えは少々寂しい気がした。とはいえ、間違いなく地域色豊かな駅弁。2018年までの販売か。2011年頃から東京駅や駅弁催事向けの商品になっていた模様。
※2019年8月補訂:終売を追記1991(平成3)年に発売。あるいはJR東日本の観光キャンペーン「LOOK EAST」のオリジナル駅弁131種類のひとつとして、1989(平成元)年3月に発売か。細長い長方形の容器の中にさらにトレーを入れ、茶飯を敷き詰めた上に甘いタレをたっぷりからめたヤリイカを5〜6ハイ規則正しく並べる、見た目に楽しい駅弁。青森駅弁にしては値段がやや高い気はする。伯養軒の清算とともに消えたのか、現存しないものと思われる。
※2020年1月補訂:過去情報を追記1980年代のものと思われる、昔の青森駅弁の掛紙。昭和50年代のあまり長くない期間に売られた駅弁である模様。ねぶたに描かれるような人物画が、掛紙に描かれる。