東京駅から新幹線はやぶさ号で約100分。仙台市は宮城県の中央に位置する、人口約110万人の城下町で県庁所在地。豊かな植生で杜の都(もりのみやこ)と呼ばれる、東北地方の首都として君臨する大都会。駅弁は明治時代から売られ、戦後昭和から平成時代に3社が競う日本一の激戦区であったが、JR東日本の子会社が駅弁売店を独占した2010年代からは活気がない。1887(明治20)年12月15日開業、宮城県仙台市青葉区中央1丁目。
仙台駅の駅弁屋が駅ビルに構えた店舗で買えたお弁当。丸いプラ容器に白飯を詰めて海苔を敷き、白身魚フライ、ちくわ磯辺揚、ささがきごぼう、玉子焼、豚肉炒め、タルタルソース、れんこん、青菜漬で覆う。つまり海苔弁。商品名からして、中身は一定しないものと思われる。駅弁らしさや駅弁屋の弁当らしさはなくても、ワンコインで上げ底のない弁当が買えてお買い得。
2008年10月から12月までのJRグループの観光キャンペーン「仙台・宮城デスティネーションキャンペーン」の開催を前に、2007年3月8日にシンボルマークとして誕生した、仙台・宮城観光PRキャラクター「むすび丸」をモチーフに、2010年5月1日から12月31日まで販売された「むすび丸おむすび弁当」が、そのキャラクターの存命とともに販売が継続され、2013年2月にこの「むすび丸弁当」へ改称されたもの。ふたには当然にそのキャラクターが、桜花か梅花と仙台七夕を背景に全身で描かれる。
中身は、海苔と黒豆とパプリカでむすび丸を描いたおにぎり1個、鮭はらこめし、牛肉とにんじんとれんこんなどの煮物、鶏の酒粕味噌焼き、さんま甘露煮、笹かまぼこ、仙台茄子と紅大根の漬物、仙台味噌あめ。特に紹介されなくても、中身はがっつり仙台と宮城でできていた。価格は2010年の発売時で840円、改称後の2014年時点で900円、2020年時点で980円、2021年時点で1,000円、2023年時点で1,100円、9月の購入時で1,200円。
2010(平成22)年11月1日に購入した、仙台駅弁のふた。「仙台・宮城デスティネーションキャンペーン」開催期間までの販売の予定が、上記のように改称のうえ現存し、定番の駅弁となっている。当時の中身は、白飯と雑穀米のおむすびが各1個と、牛肉炒め煮、蓮根と人参のきんぴら、銀鮭粕漬焼、さんま竜田揚、厚焼玉子、鶏照焼、ニンジンやタケノコなどの煮物、笹かまぼこ、漬物、仙台駄菓子。少なくとも2018年までは、このように「むすび丸」顔のおにぎりが2個入る姿であった模様。
2019(令和元)年5月1日から6日まで仙台駅で販売。1日と4日に限り東京駅でも販売。改元記念駅弁の、仙台駅の日本レストランエンタプライズ版。掛紙の表面には還暦から大還暦までの長寿祝いの文字が並び、裏面には大化から令和までの元号が並ぶ。おしながきに写真付きで説明された中身は、日の丸御飯と古代米入り赤飯、厚焼き玉子と笹かまぼこ、いか人参、ずんだ白玉団子、鶏肉の甘酢漬焼、サバ梅香酒焼、紅白の生姜、炊き合わせなど。
新元号の令和が万葉集から採られ、出典が大伴旅人が開いた宴会の情景を記したもので、その子の大伴家持が奈良時代に多賀城へ赴任していたという芋づるで、東北のものを詰め込んだという。宮城や仙台に福島と岩手で固めた、おつまみ向け高級駅弁。
大崎耕土(大崎耕土の巧みな水管理による水田農業システム)の国際連合食糧農業機関「世界農業遺産」登録を記念し、2018(平成30)年6月16日から9月30日まで販売。10月のJR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2018」にエントリーし、同月以降も販売が継続されている。
内容は具だくさんのおにぎり弁当。白飯と味噌焼の型押し飯を各1個に、玉子焼、かき揚げなどのおかずを細々と。宮城県大崎地方のササニシキでなく「ささ結」を使うそうで、隣県のつや姫とは対照的な、粘りも香りも薄い味もまた常温で心地よい。2019年までの販売か。
大崎耕土は2017(平成29)年12月に世界農業遺産に認定。この時点で世界で19か国45地域、日本で2011(平成23)年から9地域が認定されたという。駅でいうと東北本線小牛田駅や東北新幹線古川駅がある宮城県大崎地域は、昭和時代にササニシキで栄え、今も全国有数の稲作地帯。冷害や洪水や渇水に対抗するため、江戸時代からの水管理と栽培技術で農業システムを継承する仕組みについて認定を得たという。もっとも、稲作で栄えたくらいの平坦地であるから、列車の車窓には農地を転用した道路と商業施設と工場と駐車場ばかりが流れるようになっている。
※2021年3月補訂:終売を追記JR釜石線のSL列車「SL銀河」の運行開始に合わせて、2014(平成26)年4月に盛岡駅と新花巻駅で発売。調製元の盛岡支店の閉店により、仙台駅へ移籍した。盛岡駅でも引き続き販売される。掛紙にはその「SL銀河」が描かれる。
竹皮編み容器に透明なトレーを据え、昆布飯を詰めてウニを載せ、焼鮭、焼売、ホタテ、ムール貝のような「パーナ貝」などを添える。かつてのNRE盛岡の盛岡駅弁「釜石めのこ飯」に、味も雰囲気もよく似ている。駅での販売は2018年で終了か。「SL銀河」列車内での販売は続いたが、2023年6月に客車の老朽化という理由で列車そのものが廃止されたため、この駅弁も終売か。
SL銀河は、震災復興の名目で2014(平成26)年4月12日に運転を開始。花巻駅と釜石駅を、遠野駅で約1時間停車するなど、約4時間半もかけて結ぶ。運転期間は5〜9月の半年弱、主に土曜の釜石行と日曜の花巻行のみという運転日の少なさと、蒸気機関車が客車でなく、自走できるディーゼルカー4両を牽くという変わった編成が特徴。釜石線で最大の観光資源である宮沢賢治にちなみ、車体を「銀河鉄道の夜」の絵柄に塗ったり、車内に小物を展示したりした。
※2023年8月補訂:終売を追記掛紙に書かれるとおり、山形新幹線の開業25周年を記念し、2017(平成29)年7月1日から9日まで販売。その掛紙には、1992(平成4)年7月の山形新幹線開業当時の車両と路線図と停車駅が描かれた。
中身は、おしながきに「山形のおいしいものを盛り合わせた」と書くとおり、中央にコイ甘露煮と玉こんにゃく、一方に庄内豚の焼肉丼、他方に鮭のあごだし漬け焼きや枝豆しょうゆ漬けなどを載せた茶飯を詰めたもの。山形を少し感じる記念商品。ただし、調製元は宮城県の仙台駅弁のNRE。東京、上野、新宿、大宮、仙台の各駅のNREの駅弁売店で販売され、山形県内では売られなかった模様。
2015(平成27)年3月の発売か。饅頭かクッキーでも並べられていそうな構造の容器に、牛たん、えび、きんぴら蓮根、ほたて、笹かまぼこと梅肉、牛甘辛煮、竹炭いなりで7種類のおいなりさんと、仙台味噌あめを並べる。小粒でもピリっと新しい創作おいなりさんだと思うも、今回に買ったものは不思議とちらし寿司のようになっていた。揚げも具も味が薄い感じがしたので、もっちり御飯で小腹を満たす駅弁か。2018年度までの販売か。
※2019年8月補訂:終売を追記2014(平成26)年の発売か。掛紙に「山形駅女性スタッフコラボ企画」とあるが、山形でなく仙台で調製し仙台駅で売られる駅弁である。竹皮編みの容器に詰めた赤いボール紙のトレーに、豆と紅花の混ぜ御飯のおむすび、青菜と味噌の混ぜ御飯のおむすび、サケ幽庵焼、玉こんにゃく串、芋煮、玉子焼、さくらんぼを詰める。見て食べて美しいおにぎり駅弁。他駅の山の駅弁で既視感がある気はした。2015年までの販売か。
※2019年8月補訂:終売を追記宮城県大崎市田尻の知的障害者通所授産施設「すずかけの里」とウェルネス伯養軒との共同企画により、2009(平成21)年7月17日に発売した中華弁当。正方形の容器に木目柄のボール紙でふたをして、駅弁の名前と宣伝文を賑やかに書いた赤い掛紙で覆い、輪ゴムで留める。中身は日の丸俵飯に揚げギョーザ2個、ヌマエビ入りシューマイ4個、つみれボール、豚肉野菜炒め、赤かぶ漬など。
駅弁の名前の「までぇに」は、宮城の方言で「ていねいに」の意味だそうな。上記の施設では地元の食材を使い手作りの中華食材を製造しているそうで、これがシューマイとギョーザで駅弁に取り入れられた。購入に時には慈愛の精神を押し付けられた昭和の昔の製品とは一線を画す、単に食べてうまい焼売駅弁。一日100個の販売。
この駅弁は調製元も箸袋も伯養軒なのに、掛紙の宣伝文では日本レストランエンタプライズが販売していると明記され、食品表示ラベルにも「NRE」の3文字が記される。いまさら驚くこともない事実だが、仙台駅弁がNREの手中にあることが紙媒体でもしっかり記録されたことになる。2010年頃までの販売か。
※2017年8月補訂:終売を追記2009(平成21)年7月10日から8月31日まで販売された、仙台駅弁こばやしの季節限定駅弁。木目調で楕円形のボール紙製容器を使用、輪ゴムで留めて割りばしを置き、商品名と中身写真などを印刷したボール紙の枠にはめる。
中身は並の鰻重で、タレ御飯の上を錦糸卵で飾り、ウナギ蒲焼を刻んで置き、キュウリとニンジンの浅漬けを添えるもの。仙台との関連はないと思うが、夏の駅弁売店にはこういう商品が置かれていて欲しいなと思うところの、ドンピシャリな駅弁。見た目のきれいさも良し。以後も季節商品として販売。価格は2009年の購入時で1,000円、2017年時点で1,100円、2020円時点で1,180円。2022年に終売か。
※2023年4月補訂:終売を追記2005(平成17)年9月1日に仙台駅で発売した、韓国観光公社とJR東日本仙台支社とNREのタイアップ駅弁。正方形の紙箱を、表は韓国の観光名所写真を、裏に中身の解説とJRの韓国旅行商品案内を記した掛紙で包み、輪ゴムでしばる。中身はカルビ、キンパブ、ダッカルビ、ファヤンジョク、メミルトクとペスク、キムチチャーハン、海鮮チヂミ、ビビンバと、「I LOVE 韓流」などと焼き印がある玉子焼。一日50個が100日間販売される予定。販売は長続きしなかった模様。
この駅弁の発売は、メディアや世間では少々は話題になったが、もう流行遅れだとか、焼き印が恥ずかしいとか、鉄道ファンや駅弁ファンの評価は厳しい。しかし、韓国観光公社という、日本の戦前のジャパン・トラベル・ビューローのような国策観光振興組織が絡んだということは、第二次大戦後に駅弁文化を捨て去った朝鮮半島の少なくとも南半分に、駅弁が再登場する契機になるのではと、ほんの少しだが期待してしまう。しかしなぜ、東京ではなく仙台で駅弁になったのだろうか。
※2017年8月補訂:終売を追記仙台駅の駅弁屋さんの太巻寿司。惣菜寿司のプラ容器の中に、5分割された太巻寿司が一本入っている。風味は並も、確かにうたい文句どおり下手につまむと崩壊しそうなほど、かんぴょうや椎茸やきゅうりや玉子焼などの具がぎっしり詰まっており、これも巻く海苔で強度を確保しているし、海苔の分量が増えて味も増す。おそらく現存しないと思う。
赤黒く平たいプラ製の釜飯駅弁向け容器に、掛紙をかけて輪ゴムで止める。中身は茶飯の上に舞茸、鶏肉、錦糸卵、わらび、ぜんまい等を載せるもの。見た目はそれほど優れていない感じだが、味は仙台駅弁なので悪いはずがない。ただ、釜飯駅弁は陶器や厚手の素材など重量感のある容器も味を出すので、軽量なこの駅弁はその点で損をしている気もする。価格は2003年の購入時は不明、2010年時点で730円、2014年時点で780円。2020年までの販売か。
※2023年8月補訂:終売を追記仙台駅で数十年の時を刻む、昭和時代中期からの名物駅弁。ボール紙の箱の中に栗型容器を入れる。中身は炊き込み御飯の上にクリとシメジを載せ、ニンジンやナスや昆布巻などの煮物を添える。飯の中に栗はなく、飯との一体感はやや小さいが、良い味に低価格なので印象は良い。秋限定ではなく、一年中買えた。近年は売られていない模様。今回2013年時点で東京駅で買えたのは、復刻販売か。
2003年9月現在で、仙台駅弁はこばやし27種類、伯養軒22種類、日本レストランエンタプライズ5種類の、合計54種類が存在するという。大都市駅での一定量の需要に各業者間の熾烈な競争で、駅弁の多種類と高品質が維持されている。
※2017年8月補訂:終売を追記2003(平成15)年8月31日の調製である、仙台駅弁のスリーブ。その形状は、上記の2013年のものと同じ。絵柄も変わらないが、背景の色は違う。中身はおおむね変わらない。
1988(昭和63)年2月2日の調製と思われる、昔の仙台駅弁の掛紙。15年も後の2003年8月の栗めしのスリーブと比べて、掛紙か外箱かとロゴマークの差違はあるが絵柄は同じで、値段も同じことに驚かされる。
1975(昭和50)年1月14日の調製と思われる、昔の仙台駅弁の掛紙。基本的なデザインは1988年版や2003年版と同じ。1973年のオイルショックに伴う物価上昇の影響か、わずか2年で6割も価格が上がっている。
1973(昭和48)年2月10日の調製と思われる、昔の仙台駅弁の掛紙。現在の栗めしのスリーブと比べて、デザインの中身は異なるものの、雰囲気は似ている。
昭和40年代、1970年前後の、1月20日6時の調製と思われる、昔の仙台駅弁の掛紙。上記や現在の茶色い栗型の絵柄とは異なる、緑の背景に栗が踊る、昭和時代中期の駅弁掛紙らしいデザイン。
1975(昭和50)年2月2日の調製と思われる、昔の仙台駅弁の掛紙。調製印に大阪府大阪市東区京橋2丁目(当時)の松坂屋大阪店とあり、デパートの駅弁大会で売られたものだろう。京阪電車の天満橋駅の真上にあった百貨店。
1960年代、昭和35年前後の、11月24日6時の調製と思われる、昔の仙台駅弁の掛紙。収集者は1963(昭和38)年の調製とみなし、紙片に記して掛紙に貼り、香の物の紙も貼ってスクラップブックに貼り付けた。絵柄は下記のうなぎめしと同じ。調製元の所在地と電話番号の表記が異なる。
昭和30年代頃の調製と思われる、昔の仙台駅弁の掛紙。かすれた調製印の8年7月8日12時を、昭和28年か昭和38年と考えると、仙台市に市内局番ができた1954(昭和29)年4月から、市内局番が2桁になった1963(昭和38)年1月に収まらない。松島湾産のウナギとは、どんな味がしたのだろう。ふすま絵っぽい掛紙の絵柄も、松島を描いたのだろう。