茨城県の行方(なめがた)市で霞ヶ浦に面した道の駅「道の駅たまつくり」の店舗「行方市観光物産館こいこい」で買えたお弁当。商品名は「しらすめし」。もちろん鉄道の駅の駅弁ではないが、掛紙には「行方駅弁」とばっちり記載されている。中身は生のしらうおを炊き込んだというシラスの混ぜ御飯に、海苔とネギと紅生姜を載せたもので、飾りのないシラス丼。
行方市は茨城県で霞ヶ浦と北浦に挟まれた、人口約3万人の市。2005(平成17)年に麻生町と玉造町と北浦町の合併で生まれ、常陸国風土記にも記される当時の郡名が市名となった。市域の北端にはかつて鹿島鉄道の玉造駅があり、道の駅は玉造町があった合併前の2001(平成13)年3月にオープンしたため、鉄道ファンにはおなじみの「たまつくり」の名が道の駅名で残り、なじみのない行方の名が道の駅弁の名前に入る。両駅間は2kmほどの距離。
2015(平成27)年10月に下館駅前のホテルが発売。真岡鐵道のSL列車「SLもおか号」の車内販売弁当として2000(平成12)年4月に発売し、2015(平成27)年の調製元の廃業により失われた「野立御膳」や「御弁当幕の内」の後継。ネット上ではSLの車内販売でも買えると紹介されるが、今回現地に行くと真岡鐵道を介しての予約限定販売だった。
市販の仕出し弁当向けボール紙容器を、桜と菜の花に包まれたSLもおか号の走行写真を使う掛紙で包む。中身は俵飯、とんかつ、玉子焼、焼鮭、ハム、ポテトサラダ、漬物、甘味など。つまりだいたい、ミルフィーユカツのトンカツ弁当。かつてのSL車内弁当とは、まるで雰囲気が違う。SLもおか号、真岡市、真岡鐵道は主に栃木県だが、下館駅や調製元は茨城県なので、こちらに収蔵。2018(平成30)年10月に、価格を据え置いて曲げわっぱのそぼろ弁当へ全面リニューアルし、7月から9月までは販売を休止。
※2018年10月補訂:リニューアルを追記これは駅弁ではなく、2008年頃から水海道のお祭りや関東鉄道のイベントなどで売られる、北水海道の割烹のお弁当。焼き物の釜に、弁当の名前を記した掛紙をかけて、ひもで十字にしばる姿は、まるで釜めし駅弁。中身は茶飯をエビ、サトイモ、うずら卵、シイタケ、とりそぼろ、ニンジン、ギンナン、タケノコなどで覆うもの。常温の弁当として特段の美味や特徴を感じなかったが、上品さを備えていたと思う。町おこし弁当か関東鉄道唯一の駅弁として、何かできないかと思った。調製元の割烹には、各種の釜飯がメニューにあるそうな。
茨城県内で取手駅と下館駅を結ぶ関東鉄道の常総線は、古くは湖沼や荒れ地であり、後に水田や工場になった、鬼怒川や小貝川のそばの平坦な地域を南北に走る。水海道は江戸時代に両河川を結ぶ物流の拠点として栄え、昭和時代まで商業都市として地域に君臨した。今は水運や商業で栄えた時代をしのぶ建物が中心市街地に点在する、東京のベッドタウン。水海道市の市名も2006年の合併で失われた。
2016(平成28)年4月17日に購入した、水海道のお弁当の掛紙。容器も中身も価格も半年前と同じだが、掛紙をよく見比べると文字の形が異なる。掛紙を刷り直すくらい、よく売れているようだ。駅での販売はないので、購入には調製元の食堂へ出向くか、団体予約で届けてもらうか、これを売るイベントに行く必要がある。
茨城県猿島郡五霞町の、新国道4号春日部古河バイパス沿いにある「道の駅ごか」で、2010年6月19日から土休日限定で販売されているというお弁当。赤いホカ弁容器に、商品名を書いたオレンジ色の掛紙を巻く。中身は白御飯の上を牛すき焼き肉とタマネギ炒めで覆い紅生姜を添える、ファストフードでおなじみの牛丼で、筋の利いた牛肉が昔懐かしいジャンクフード。道の駅のスナックコーナーに山積みな惣菜の中で、これだけが駅弁風の見栄えを持っていた。
五霞町は茨城県の西端部、利根川と江戸川の分流部に位置する人口約9千人の町。太平洋に面する茨城県で唯一、利根川の右岸に位置するため、生活圏や交通網は現在の埼玉県の幸手市や久喜市の側を向いており、いわゆる平成の大合併の頃は埼玉県への越境合併の話も出ていたそうな。国道4号や駅はないが東北新幹線も町域を通過するため、北隣の古河市とともに茨城県という感じがしないエリアである。
上野駅から特急列車で1時間ちょっと。笠間市は茨城県の真ん中あたりに位置する、人口約3万人の門前町(鳥居前町)あるいは城下町。稲荷神社や焼き物で知られる笠間市に、友部町と岩間町が2006年に合併してできた。歴史的にはJR水戸線がJR常磐線を分岐した駅では、駅弁が平野屋と山口弁当部のものが、1900年代から1980年代まで売られたが、名物になるものはなく、今は無い。1895(明治28)年7月1日開業、茨城県笠間市友部駅前。
昭和30年代、1960年前後のものと思われる、昔の友部駅弁の掛紙。常磐線が水戸線を分ける、歴史的には水戸線が先に開通し常磐線が分岐した友部駅では、明治時代から駅弁が売られたというが、知られることなく1977(昭和52)年頃になくなった。
上野駅から特急ひたち号で2時間弱。高萩市は茨城県の北部で太平洋に面した、人口約3万人の都市。1890年代に炭鉱が興り鉄道が通じ、1954年に市制を敷き、今はどちらかというと工業が盛ん。駅弁は1897(明治30)年の駅の開業時から1970年代まで吾妻館が販売した。1897(明治30)年2月25日開業、茨城県高萩市大字高萩。