東京駅から東北新幹線で約50分。宇都宮市は栃木県の中央に位置する、人口約52万人の城下町で県庁所在地。工業都市として栄えるほか、二荒山神社の門前町や、餃子の町としても知られる。駅弁は明治時代から一貫して健在。駅弁の発祥地はここだという説がある。1885(明治18)年7月16日開業、栃木県宇都宮市川向町。
駅弁の名前は「復刻版とりめし」とも。2022(令和4)年10月1日に宇都宮駅と東京駅で発売、11月30日まで販売。日本鉄道構内営業中央会の鉄道開業150年記念復刻駅弁企画により、同月から期間限定で販売された31社34駅弁のひとつ。さらにこの期間のJR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2022」にエントリー。昭和30年頃より看板商品だった「とりめし」を、当時のレシピと掛け紙で可能な限り再現したという。
掛け紙の元は、1960年代後半、昭和40年代前半のものだろうか。当時にない食品表示やバーコードやアレルギー表示、駅弁マークに鉄道開業150年のロゴマークが加わり、にぎやかになった。木質エコ容器の過半に茶飯を詰め、とりそぼろと海苔で覆い、錦糸卵と紅生姜で彩り、鶏照焼3個を並べ、かまぼこ、玉子焼、こんにゃくやタケノコなどの煮物を添える。
少しばかり高い値段を除き、復刻だ記念だという気張りのない、安心できる、良い意味でのただの鶏飯。過去に買った下記のとりめしと比べると、2008年までは昭和時代とあまり変わらない中身で、宇都宮駅弁のとりめしが売られていたことがわかる。なお、昭和時代の駅弁紹介本でよく取り上げられた宇都宮駅弁は、とりめしでも幕の内でも、竹の皮に握り飯2個などのおにぎり弁当でもなく、「茶めし弁当」であった。
2019(平成31)年4月に、宇都宮駅で約60年に歴史を刻んだ伝統の駅弁「とりめし」をリニューアルか。御飯を鶏照焼、鶏そぼろ、卵そぼろ、煮玉子1個で覆い、鶏肉団子とわさび菜を添える、標準に近い鶏飯弁当で、従前のとりめしに比べたら内容が豊かになり、普通に良い味。スリーブに描かれた、おっさんくさいニワトリのイラストが印象的。
2018(平成30)年4月から6月までのJRグループの観光キャンペーン「本物の出会い栃木」の開催に合わせて、同年4月1日に宇都宮駅と土休日のみ岩下の新生姜ミュージアムで、会期中の期間限定駅弁として発売。栃木県内で宇都宮駅弁の調製元と、関東地方では「岩下の新生姜」とそのTVCMで有名な岩下食品が共同開発した駅弁。鶏そぼろと岩下の新生姜入り混ぜ御飯に、岩下の新生姜を1本据え、玉子そぼろで半分だけ覆い、岩下の新生姜で味付けた鶏唐揚、鶏つくね、うずら卵、マリネを添える。
つまり何もかもが生姜風味という、刺激的な味。同年10月にはJR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2018」にエントリー、そそられ将軍(公式WEBサイトからの投票のうち、「食べたい駅弁」の投票が最も多かった駅弁)の賞を獲得した。発売以来大人気で会期後も販売を継続し、宇都宮駅ではついに買えず、東京駅でようやく買えた。東武日光駅でも販売する模様。価格は2018年の発売時や2019年の購入時で850円、2020年時点で950円。
岩下の新生姜とは、栃木市の漬物工場であった岩下食品が1987(昭和62)年に発売した食品。台湾産の本島姜(ペンタオジャン)の浅漬けで、ピンク色をした棒状生姜。首都圏のスーパーマーケットではたいてい置いていると思うし、テレビでもCMが時々流れる。関東地方以外での知名度はない模様。栃木県や宇都宮の名物とは認識されていないと思う。
※2022年10月補訂:値上げを追記2019(平成31)年4月1日に、宇都宮、大宮、東京の各駅と岩下の新生姜ミュージアムで発売。上記の駅弁「岩下の新生姜とりめし」の中身のうち、岩下の新生姜で味付けた鶏唐揚を串刺しにして、うずら卵を添えて、同じような絵柄の紙箱に詰めた、御飯のないおつまみ商品。生姜の刺激が味と香りを支配する。2020年の末頃までには駅での販売を終え、栃木県栃木市の「岩下の新生姜ミュージアム」のみでの販売となった模様。
※2022年10月補訂:現況を追記宇都宮駅で伝統の駅弁「とりめし」の、加熱機能付き容器バージョン。御飯をとりそぼろ、照焼2個、タケノコ、錦糸卵、漬物、わさび漬で覆う中身は通常版と同じ。常温での味が支持されている駅弁なので、温めたからといって味が変わったり良くなったりすることはない感じ。冬季の販売。価格は2017年の購入時で800円、2020年時点で900円、2022年時点で800円。
※2022年10月補訂:価格改定を追記2019(平成31)年4月の発売か。昭和レトロな色彩を持つスリーブに収めた紙カップに、御飯を敷き、カレーソースとチーズソースをかけ、いっこく野州どりの照焼、目玉焼き、ヤングコーン、オクラ、ミニトマトを載せる、常温販売のカレーライスで、焼きカレーかキーマカレーかドライカレーのようなチーズカレー。容器が紙なので加熱に向かず、有田駅のあれと違い、冷たい状態で食べるのは味が厳しい気はした。年内に終売か。
※2021年3月補訂:終売を追記2008(平成20)年8月22日に下記の駅弁「とりめし」をリニューアル。容器の大きさを変えないまま、本体を発泡材に、ふたを紙帯をボール紙のふたに変えた。中身は茶飯を「いっこく野州どり」の鶏そぼろのみで覆い、鶏照焼、わさび漬、ナス漬、葉とうがらしを添えるもの。全体的にシンプルになったが、風味もシンプル化、鶏そぼろであるはずのざらざらと細かい粒には味を感じられなかった。2019(平成31)年4月に上記の駅弁「いっこく野州どり弁当」へリニューアルか。
※2019年8月補訂:終売を追記1960年代までに発売。プラスティック一体成形の黒い容器に透明なフタをかける長方形の容器に、小さな掛紙をかけて箸袋をセロテープで固定し、紫色の紙ひもでしばる。簡素な容器とは裏腹に中身はヘビーで、風味の良い鶏照焼に薄味が好ましい鳥そぼろを、上げ底ならぬ下げ底でたっぷり詰めた鶏御飯の上に載せている。つまり、実は分量の多い若者向けの駅弁。
宇都宮駅は昭和末期まで多数の駅弁立売人がホームで売り上げを競っていた駅で、現在でも立ち売りで駅弁を購入できることがある。コンコースに上がれば数十種類の駅弁の選択に迷える、JR東日本エリアでは仙台や水戸に匹敵する駅弁大駅。宇都宮市役所もぎょうざだけではなく駅弁にも注目して欲しいと思う。
2003年4月現在で、松廼家では朝7時半頃から14時過ぎ頃まで、駅弁立売歴47年の坂本さんが不定休でほぼ毎日、東北本線ホーム上で「とりめし」などの駅弁を立売で販売しているとのこと。宇都宮駅に夜行列車の発着があった頃は、深夜の0時台や2時台の販売もあったそうで、現在でもコンコースの売店では22時半頃まで駅弁の販売があるという。
1983(昭和58)年1月11日の調製と思われる、昔の宇都宮駅弁の掛紙。駅弁の名前と価格、注意書き、標語、調製元、当時の国鉄のキャンペーンのロゴマークと、必要な情報が最小限に、シンプルに書かれていると思う。