東京駅から新幹線で3駅35分。小田原市は神奈川県の南西部で相模湾に面する人口約19万人の城下町かつ宿場町。関東地方の西の出入口として、戦国時代や江戸時代に歴史の舞台となった。駅弁は明治時代に国府津駅で創業した、東海道本線では最古の駅弁屋が健在だが、実態はJRや小田急の子会社が近隣のものを含めた駅弁を集めて売る。1920(大正9)年10月21日開業、神奈川県小田原市栄町1丁目。
その名のとおり、凍らせた温州みかんが、ビニール袋に4個入って400円。当たり前だが氷点下の冷たさで、カチカチに固くて歯にしみて、一方で表面から氷が溶けて水になっていき、手と周囲を湿らせた。訪問時は2個入り220円のものは売り切れていた。昭和の時代の昔懐かしいアイテム。
冷凍みかんの発祥地は、現在のJR小田原駅だという。1955(昭和30)年または1956(昭和31)年に、冷凍食品会社と小田原のみかん業者が商品化し、鉄道弘済会がここを始めに全国の国鉄の駅で販売することで普及した。高度経済成長期の昭和40年代にはよく売れたが、その後はアイスクリームや冷房の普及で廃れたという。東海道本線の主要駅のキヨスクには必ず備え付けられていたと思う、もっぱら冷凍みかんを販売した冷蔵什器も、20世紀中に見なくなった。
しかし冷凍みかんそのものの需要は、学校給食やみかん産地の努力で健在だったようで、21世紀に入ると昔懐かしいアイテムとして復活、この発祥駅でも新幹線の売店で積み上げるようになった。アイスやスイーツや他のフルーツより美味いとは思わないが、「冷菓」がほんとうの冷たい菓物であった半世紀前を昔懐かしむ体験。
真っ黒な容器に白飯を敷き、固めの牛焼肉と牛たん焼で覆い、花れんこんで彩り、ビビンバと煮豆と漬物とタレを添える。真っ黒な掛紙の絵柄を含め、どこの駅弁か判別が付かないシンプルさ。掛紙に記される肉の高橋本店とは、つまり調製元のことである。価格は2020年時点で1,230円、2024年時点で1,450円。
※2025年2月補訂:値上げを追記竹皮柄の寿司向け紙容器に、海老天むすびを4個並べ、きゃらぶきを添える。つまり天むす。天むすとしてとくに変わるところはなく、一般的な見栄えと分量と味と値段を持つと思った。「箱根越え弁当」とあるが、これはこの調製元の弁当群に共通する表記なので、これが箱根にちなむものではないと思う。価格は2011年時点でおそらく480円、2012年時点で550円、2014年時点で570円、2025年時点で680円。
※2025年2月補訂:値上げを追記上記の商品「海老天むすび」の、2011(平成23)年時点での姿で、箱根湯本駅で購入。掛紙での調製元の表記と価格を除き、上記の2020年のものと何も変わらない。
2000年代までには小田原駅で発売か。明治時代に国府津駅で生まれた小田原駅の名物駅弁「小鯵押寿司」に似た、JR駅の公式な駅弁屋でない調製元がつくるアジ寿司。平たい長方形の折箱に、酢飯にアジを合わせた握り寿司を9個並べ、わさびとガリを添える。
アジ寿司は、サクラの葉をかけた「桜の香り」3個、昆布の帯を締めた「とろろ昆布」3個、具と飯の間にしそふりかけを仕込んだ「梅じそ」3個。昆布と甘酢でしめたというアジに、小田原レモンを混ぜたという酢飯で、今では酸味の塊となってしまった駅弁の小鯵押寿司よりは、いただきやすく、見た目の輝きもあると思う。「特選」や「PREMIUM」の付かない商品は、見たことがない。JR小田原駅の改札内にない駅弁売り場や箱根湯本駅で、小田原駅弁と並べて販売される。
※2022年10月補訂:写真を更新し解説文を全面改訂2018(平成30)年5月13日に購入した、小田原駅弁の掛紙。上記の2022年のものと、絵柄も中身も同じ。価格と、食品表示ラベルの記載量が異なる。
新幹線小田原駅の改札外高架下でJR東海の子会社が運営するコンビニエンスストアで、「駅弁」として陳列し販売されていたお弁当。竹皮柄のボール紙箱に、メンチカツサンド2切れ、海老天の天むす2個、白胡麻いなり1個とガリを詰める。カツサンドも天むすも稲荷寿司も、駅弁としても定番の商品であるが、これらをひとつにまとめたものは初めて見た。進化したおにぎり弁当。「箱根」とは全然関係ないと思うが、こんな道中食もアリ。価格は2012年時点で750円、2014年4月の消費税率改定で770円、2025年時点で880円。
※2025年2月補訂:値上げを追記新幹線小田原駅の改札外高架下でJR東海の子会社が運営するコンビニエンスストアで、「駅弁」として陳列し販売されていたお弁当。真っ黒な紙箱に、商品名を今風に描いた掛紙を巻く。半透明のプラ製トレーに収まる中身は、白御飯を海老天で覆い尽くし、天つゆをたっぷりかけ、紅白の蒲鉾とわさび漬と柴漬けを添えるもの。厚めの衣はふわふわで、常温でも油くさくなく、これはなかなか強力なお弁当。価格は2011年時点で950円、2014年4月の消費税率改定で980円、2025年時点で1,080円。
※2025年2月補訂:値上げを追記小田原駅でしぶとく残る駅売り焼売に、赤い紙箱の通常版に加えて黒い紙箱の特製版が出たのかと思って購入したら違った。かつて横浜市内で買えた焼売の名を名乗っており、しかし調製元が小田原の蒲鉾屋であり、しかも製造者固有記号が付いているという、属地が不詳な商品。
ボール紙のトレーに6個の、横浜駅の崎陽軒にたとえれば特製サイズの焼売が6個、ボール紙のトレーごと真空パックされて収まっていた。豚とその脂の臭みが強く、どうも常温ではなく加熱しないとうまくない商品のよう。
上記の「ヨコハマ博雅(特)シウマイ」の、8個入りバージョン。3年前と同じ売店で、小田原名物として売られていた。黒い箱が赤くなり、ふたを開く構造がただの箱になり、焼売が6個から8個に増えて、価格は25%増し。臭みのあるふわふわした肉焼売を、竹皮柄の紙トレーごと真空パックする、要冷蔵の土産物である点は変わらない。名前がまた変わった調製元の所在地は、JR藤沢駅前のデパート「さいか屋」と同じ。
上記の「ヨコハマ博雅(特)シウマイ」の、12個入りバージョン。箱の大きさと内容量が1.5倍になり、価格が1.4倍になっただけ。横浜でシウマイが有名な崎陽軒より古く、明治時代からシウマイを売った「博雅」は、どうも昭和40年代から当時までの横浜一の繁華街であった伊勢佐木町で閉店や分裂を繰り返したようで、現時点で少なくとも横浜市神奈川区とこの小田原にその名と商品があるらしい。調製元の玖弦舎(きゅうげんしゃ)は、小田原蒲鉾の老舗「丸う田代」の“別窓”と紹介される。
小田原駅の駅弁売店で買えた稲荷寿司。ふたに宣伝文を印刷したボール紙製の紙箱に黄色い掛紙を巻いている。中身は黒ゴマや黒ミツを混ぜて黒くなった酢飯を海苔と油揚げで巻いた、棒状のおいなりさんが3本、それぞれ4切れにカットしてぴったり収めるもの。風味はふんわり、適度なサイズと水気で口にポンポン入っていく。
調製元は鎌倉に近い横浜市南部の住宅街にある寿司屋で、鎌倉の駅前と市街に売店を出している模様。鎌倉は街弁としてのおいなりさんが地元限定で親しまれている。しかしこれがなぜ鎌倉ではなく、小田原と熱海の駅弁売店で売られるのだろうか。
小田原駅の橋上自由通路で台売りされていたお弁当。商品見本では色紙に墨書きしたデザインの掛紙を巻いていたが、実物はこのとおりの惣菜弁当。中身は白御飯の上にしらすをたっぷり敷き詰めて、厚焼き玉子や里芋や鶏唐揚を添えるもの。素っ気ないけど、かわいらしい。
前回(2004年)に初めてこの調製元の弁当を駅で収穫した時と比べて、売店も商品も完全に変わっていた。駅弁とそうでない弁当との大きな差異のひとつが、ここにある。
小田原駅の橋上自由通路で、台売りされていたお弁当。黒く分厚い容器に、こちらは同時購入の「しらすご飯」と違い商品見本どおり、色紙に墨書きしたデザインの掛紙を巻く。中身は白御飯の上にキャベツ千切りを敷いて、写真のとおりソースで真っ黒になったアジフライを3切れ載せて、煮物と厚焼き玉子を添えるもの。
アジフライは見た目に反してさっくり爽やかな風味で、調製元が人気者と紹介する厚焼き玉子もほのかにふんわり甘く、旧国鉄駅の駅弁屋とは見栄えも内容も風味もひと味違うもの。アジフライ弁当に千円も払うのは抵抗感があるから、うまく宣伝して調製元の個性を反映した駅弁だと認識してもらうとよさそう。
小田原駅の橋上自由通路でブース販売されていたお弁当。プラ製の惣菜容器に、弁当名を大きく記した掛紙をかけて、濃緑色の輪ゴムでしばる。中身は日の丸御飯に豚生姜焼やナスや小魚や玉子焼など、内容も味も格別なものはないし地域色もない。
弁当名の由来を中身に求めると、確かに御飯は山盛りだったが全体の分量は決して多くはなく、明らかに名前負け。あるいは中身の配置が雑然としているから男なのか、小田原の男はこの分量で音を上げてしまうのか。価格を上げてでも掛紙の力強さが生きる中身になれば、東京のメディアにアピールできると思う。
小田原駅の橋上自由通路でブース販売されていたお弁当。枠は木材の円形わっぱ容器をボール紙の枠にはめる姿は駅弁らしい。中身は各種あるが購入したものは「唐揚げ」とあり、御飯の上に鶏そぼろと錦糸卵を敷き詰め、小指サイズのサイコロ鶏唐揚を十数個散らして、きくらげやぜんまいなどを添える。
購入時に加温を勧められたが、駅弁としての収蔵を考えて断った。しかし常温で食べると鶏唐揚の脂と油と醤油か塩の刺激味が口と胃に物凄く重く、暖めればそれが少しは軽くなるのだろう、これは駅弁ではない感じ。
黒いトレーをふたつ入れたボール紙のパッケージは、手に持つだけで重量感がある。中身は柔らかくたっぷりの茶飯、分量のある焼き魚、分厚い紅白の蒲鉾に玉子焼、五目巾着や煮物類など、分量と品質の両方を同時に満足できる内容。ただ、食品表示ラベルに「保存温度10℃以下」とあり、駅弁らしくなく常温に弱いらしい。価格は2004年の購入時で1,000円、2015年時点で1,230円、2024年時点で1,350円。
※2025年2月補訂:値上げを追記細長い容器に掛紙の見本写真のとおり、稲荷寿司3個、アジ寿司2個、昆布カップ、玉子焼を並べる。おいなりさんは個々に見た目が異なる3色稲荷に見えて、中身はすべて同じ牛しぐれ煮だった。駅弁らしい見た目とつくりと値段を持つ、軽食と一食の中間品。2023年頃までの販売か。
※2025年2月補訂:終売を追記2017(平成29)年の発売か。小田急電鉄の孫会社の「さがみ庵」ブランドの弁当で、小田原駅に限らず、小田急電鉄の駅売店「Odakyu OX」各店で売られる模様。長方形の容器に透明なふたをして、商品名に神奈川県と豚のシルエットをデザインしたスリーブに収める。白御飯を9切れの豚バラ焼で覆い、玉子焼と小松菜と金時豆を添える。水気の少なさも常温の味も、JRの公式な駅弁屋の駅弁と同じような感じ。豚は薄くて柔らかく、タレの味が出て臭みのない、今風の豚丼。2019年までの販売か。
※2020年12月補訂:終売を追記2011(平成23)年か、それ以前の発売か。細長い容器に、しめさば、サーモン、アナゴの押寿司が2切れずつ収まる。それぞれの単品の商品も併売されていた。見た目でてっきり、かつてはNREが、今は大船軒が調製する東京エリアの駅弁かと思ったら、調製元に小田急食品とある。小田急電鉄の100%子会社である小田急商事の100%子会社。スーパーとデパ地下の間、駅弁の位置にある味と分量と価格を持つ感じ。
この姿での販売は、2015年頃までか。どうもこの「さがみ彩寿司」は、スーパーマーケットチェーン「ODAKYU OX」で販売する、酢飯を使う惣菜の総称であり、稲荷寿司でもちらし寿司でも同じ名前を使う模様。
※2020年12月補訂:現況を追記イカ飯のスライスと、玉子焼と、ニンジンや高野豆腐などの煮物を、浅く小さな箱に詰める。ただのお惣菜に見えて、中身は確かなオリジナルだと思うし、駅弁も多く扱う弁当売店で売られるので、これもきっと小田原駅弁。現存しないと思われる。
※2020年12月補訂:終売を追記2008(平成20)年までに発売か。長方形の容器に、駅弁の名前をシンプルに書いた赤い掛紙を巻く。中身は混ぜ御飯の上にキンメダイの切り身の焼き物を2枚貼り付け、ニンジンやサトイモなどの煮物、菜の花、柴漬け、川エビなどを添えるもの。御飯や魚はとってもとろける感じ。価格は2010年の購入時で980円、2015年時点で990円。2015年までの販売か。
※2019年8月補訂:終売を追記2009(平成21)年の発売か。木目柄で正方形の容器に商品名を書いた掛紙を巻く。中身は大きな梅干しが載るだし味の御飯に、野菜の煮物、煮玉子、桜花漬け入り稲荷寿司、えび天、鶏揚げつくね、梅みそなど。駅弁の名前では世にも珍しいおでんの弁当に聞こえるが、中身でおでんっぽいものは飯の味付けと糸こんにゃくくらいで、野菜煮物や稲荷寿司やロールキャベツや菜の花など、常温でも味が生きている大粒で印象の良い駅弁だった。価格は2010年の購入時で1,000円、2014年4月の消費税率改定で1,030円。2015年頃までの販売か。
小田原おでんとは、21世紀が始まる頃に売り出し始めた町おこしフード。2010年現在で小田原駅の中と前を中心とした食堂5軒と売店5軒が「小田原おでん会」を構成しているに過ぎないが、蒲鉾で二百年の歴史を持つなど小田原と魚の練り物との結び付きは古く、全国各地の町おこしフードにありがちな浮き足立った違和感はここにはない。
※2020年12月補訂:終売を追記2008(平成20)年に発売か。竹皮を模したボール紙の容器に、商品名の一部を記した茶色の掛紙を巻く。中身は餅米を混ぜておこわのようになった茶飯に梅とじゃこを載せて、鶏唐揚、玉子焼、あさり煮、しば漬ひょうたんなどを添えるもの。梅嫌いなので味を評価してはいけないと思うが、安いのにしっかりしていると思う。また、梅とじゃことは小田原らしい選択。2011年頃まで売られた模様。
※2016年9月補訂:終売を追記2005(平成17)年までに発売か。竹皮を模したボール紙の容器に、商品名の一部を記した茶色の掛紙を巻く。中身は餅米を混ぜておこわのようになった牛肉五目飯に、鶏唐揚、玉子焼、あさり煮、しば漬ひょうたんなどを添えるもの。この値段なのに味も腹持ちもいい線いっているため、安いのに良かったという感想がブログに散見される。2014年頃までの販売か。
※2020年12月補訂:終売を追記小田原駅のホーム上にあるコンビニで買えた箱入りサンドイッチ。窓開きの青い紙箱に透明なトレーに収まるキャベツ入りロースカツサンド3切れ。風味や内容に特段の感想はない、羽田空港の空弁のような商品。
「濱くら」とは、製パン最大手の山崎製パンが神奈川県内限定で販売する、1斤が350円もする高級食パン。「厳選された小麦粉とバター・卵を贅沢に使用し、ふんわりソフトに焼き上げ」たそうな。カツサンドにすると具の味に負けてしまうが、そう言われると確かに、潰れたり乾燥していることも少なくないカツサンドのパンが、これはふんわりしっかりしていたような。横浜開港150周年の記念商品ということで、そのロゴマークが貼られている。横浜の駅構内コンビニでは見たことがない。このシリーズは2009年頃までの販売である模様。
※2016年10月補訂:終売を追記竹皮柄の厚紙を組み立てて輪ゴムでしばり、箱根旧街道のイラストマップな掛紙を巻く。中身は鮭と梅干しの海苔巻握り飯に鶏唐揚など。中身のグレードや品質に格別のものはない割に、いい値段を取る気はするが、シンプルで分かりやすいコンセプトには見るべきものがある。調製元が小田原市内の食肉店兼惣菜屋である駅弁風のお弁当で、小田原駅の自由通路で駅弁を山積みする売店で購入。その体裁と販売形態から、駅弁と見なして良いと思う。現存しない模様。
※2015年9月補訂:終売を追記トレーを入れたボール紙パッケージの中に、日の丸御飯ととても柔らかな国産豚ロース肉生姜焼に、ポテトサラダやフライドポテトや生野菜などを詰める。小田原駅自由通路内の駅弁山積売店で入手した、小田原市内の食肉店兼惣菜屋の駅弁風弁当で、肉屋と惣菜部門で使い分けるのか、同じ調製元の「箱根めぐり道中おにぎり」と比較して、調製元の電話番号が1番だけ異なる。価格は2004年の購入時で800円、2015年時点で980円。2021年頃までの販売か。2024年までに「箱根山とん焼&蕎麦つゆしゃぶ弁当」(1,180円)を発売。
※2025年2月補訂:終売などを追記