旅の友「駅弁」。実際に食べた9,000個以上の駅弁を中心に、日本全国と世界の駅弁を紹介します。
シウマイ御弁當(950円)Shiumai Obento
2020年11月21日に横浜市内の崎陽軒店舗で購入 Nov. 21, 2020
駅弁の名前は「シウマイ弁当」でもOK。1954(昭和29)年4月1日に100円で発売。駅弁の枠を超えて横浜を代表する、とても有名なお弁当。市販の時刻表に掲載される横浜駅や新横浜駅や保土ヶ谷駅など横浜や東京の各駅に加えて、私鉄や地下鉄の駅、羽田空港、横浜市内や東京都内やその近隣の多くの百貨店などでも購入でき、イベントの仕出しや会議の昼食としても重宝される。一日で約2.7万個が売れる、すると年間で約1000万個が売れることになる、おそらく日本一販売個数の多い駅弁。
昔ながらの駅弁らしい底浅な長方形のエゾマツの経木折に、蒸気炊きの俵型御飯が8個に黒胡麻と小梅、シウマイが5個、マグロの漬け焼、かまぼこ、鶏の唐揚げ、玉子焼、タケノコ煮、あんず、切り昆布、千切り生姜が入る。中身は発売後12回ほど変更されており、最近では2003年11月にレンコンを玉子焼に置き換えた。東京都内や羽田空港でも買えるが、調製する工場が異なり、経木のふたと掛紙をボール紙に置き換えたものとなる。崎陽軒名物の磁器の醤油入れ「ひょうちゃん」は、シウマイ単品のものに入っており、弁当類は入っていない。
※2022年9月補訂:販売個数の更新(2.5万個/日→2.7万個/日)
※2020年12月補訂:写真を更新
※2019年8月補訂:販売個数の更新(2.4万個/日→2.5万個/日)
※2018年10月補訂:販売個数の更新(2.3万個/日→2.4万個/日)
※2018年6月補訂:写真を更新
※2017年9月補訂:販売個数の更新(2.1万個/日→2.3万個/日)
※2016年8月補訂:販売個数の更新(1.9万個/日→2.1万個/日)
※2016年6月補訂:写真の更新と震災対応追記の移動
※2011年12月補訂:写真の更新と震災対応を追記
※2007年6月補訂:中身写真2点を差替
※2006年6月補訂:販売個数と容器素材の追記
※2005年7月補訂:写真の差替と解説文の手直し
- 販売駅
- 東海道本線 横浜(よこはま)駅 1915(大正4)年8月15日開業 神奈川県横浜市西区高島2丁目
- 調製元
- 株式会社 崎陽軒 神奈川県横浜市西区高島2−12−6 0120-882-380 https://kiyoken.com/
横浜駅弁「シウマイ御弁當(シウマイ弁当)」の変遷メモ
The Circumstances of Shiumai Obento
昭和時代の内容は資料により一部異なる。
- 1954(昭和29)年4月1日
100円で発売。緑色と黄色の掛紙には空と海面を描く。
中身は白飯、タケノコ煮、ブリ照焼、エビフライ、玉子焼、かまぼこ(横浜カマボコ)、福神漬(酒悦(しゅえつ)の福神漬)、切り昆布、シウマイ4個。
- 1960(昭和35)年
掛紙の絵柄を変更(2代目)。緑地に横浜のシンボルを多数描く。
- 1963(昭和38)年頃
中身の変更。エビフライとブリ照焼をなくし、鮪の漬け焼、鶏肉、セロリ、さやいんげん、大根漬、黒胡麻、小梅を加えた。
- 1963(昭和38)年夏
価格を100円から150円に値上げ。
- 1963(昭和38)年11月
中身の変更。鶏肉と玉子焼をなくし、肉てんぷらとレンコンを加えた。
- 1964(昭和39)年
掛紙の絵柄を変更(3代目)。水晶玉に龍と横浜の建物のシルエットを描く。
- 1968(昭和43)年4月
価格を150円から200円に値上げ。
中身の変更。肉てんぷらとレンコンとセロリをなくし、鶏の唐揚げとシイタケ丸煮を加えた。
- 1969(昭和44)年頃
中身の変更。鶏の唐揚げとさやいんげんをなくし、ワカサギ揚げを加えた。
- 1970(昭和45)年6月頃
中身の変更。ワカサギ揚げとシイタケ丸煮をなくし、玉子焼を加えた。
- 1972(昭和47)年7月
価格を200円から250円に値上げ。
- 1973(昭和48)年11月
価格を250円から300円に値上げ。
- 1974(昭和49)年9月25日
価格を300円から400円に値上げ。
中身の変更。シウマイを4個から5個に増量。帆立フライとシイタケ旨煮を加えた。
- 1977(昭和52)年7月
価格を400円から500円に値上げ。
中身の変更。玉子焼をなくした。
- 1981(昭和56)年3月
価格を500円から600円に値上げ。
- 1983(昭和58)年
中身の変更。帆立フライとシイタケ旨煮とあんずと福神漬をなくし、鶏の唐揚げとふきとサクランボを加えた。
- 1988(昭和63)年9月
中身の変更。ふきとサクランボをなくし、あんずとレンコン煮を加えた。
- 1989(平成元)年4月
価格を600円から700円に値上げ。消費税の導入などのため。
中身の変更。鶏の唐揚げをなくし、エビフライを加えた。
- 1992(平成4)年4月
中身の変更。エビフライをなくし、鶏の唐揚げを加えた。3年前に戻した。
- 1995(平成7)年3月
掛紙の絵柄を変更(4代目)。水晶玉に龍と描く横浜の建物のシルエットの一部を差し替え。2022年時点で最後の絵柄変更。
- 1995(平成7)年11月13日
東京工場(東京都江東区大島)での調製を開始。本社(横浜市西区高島)での調製も継続。
- 1997(平成9)年4月1日
価格を700円から710円に値上げ。消費税率の改定のため。
- 2003(平成15)年11月1日
中身の変更。大根漬とレンコン煮をなくし、玉子焼を加えた。
- 2007(平成19)年3月1日
価格を710円から740円に値上げ。
- 2008(平成20)年10月1日
価格を740円から780円に値上げ。豚肉など原材料費の上昇のため。
- 2010(平成22)年9月1日
価格を780円から750円に値下げ。豚肉など原材料費の下落のため。
- 2014(平成26)年4月1日
価格を750円から770円に値上げ。消費税率の改定のため。
- 2014(平成26)年8月1日
価格を770円から800円に値上げ。豚肉など原材料費の上昇のため。
- 2016(平成28)年9月1日
価格を800円から830円に値上げ。原材料費の上昇のため。
- 2017(平成29)年6月23日
横浜工場(横浜市都筑区川向町)での調製を開始。本社(横浜市西区高島)と東京工場(東京都江東区大島)での調製も継続。
- 2018(平成30)年9月1日
価格を830円から860円に値上げ。原材料費の上昇のため。
- 2022(令和4)年8月17日
中身の変更。鮪の漬け焼をなくし、鮭の塩焼きを加えた。材料の調達難のため。8月24日に元へ戻した。
- 2022(令和4)年10月1日
価格を860円から900円に値上げ。原材料等の高騰のため。
- 2023(令和5)年10月1日
価格を900円から950円に値上げ。製品の原材料、包装資材、諸経費の高騰、並びに人手不足に起因する人件費上昇のため。
横浜駅弁「シウマイ御弁當(シウマイ弁当)」の情報メモ
About Shiumai Obento
シウマイ弁当は今まで、新聞や雑誌から調製元の社史まで多くの媒体で紹介されてきており、様々な情報が蓄積されている。2010年代になると、もっぱらシウマイ弁当のことだけを紹介する単行本や同人誌までが出版されるようになり、これは「ますのすし」「いかめし」「峠の釜めし」のような他の有名な駅弁でも見られないことであり、日本一愛される駅弁と呼べるかもしれない。
シウマイ弁当の容器に使う経木折(きょうぎおり:薄い木製の容器)は、北海道津別で1920(大正9)年に創業した木製品製造業者である三共が、1960年代から製造している。古くは横浜駅東口の崎陽軒ビル内に折箱の製造フロアがあったという。掛紙は1881(明治14)年に創業した横浜市戸塚の印刷業者である大川印刷が、昭和時代から印刷している。ひもで十字にしばる作業は手作業であり、崎陽軒では社長や会長以下の全社員ができるそうで、社員研修でも必ず行うという。ただし東京工場のシウマイ弁当は紙のふたをシートで留めるため紐かけが要らず、横浜工場では2017年から紐かけ機が稼働している。
シウマイの材料は、豚肉、たまねぎ、干帆立貝柱、グリーンピース、塩、胡椒、砂糖、でんぷん、小麦粉。1928(昭和3)年の発売時から変わらない。原価で最も高い材料は、隠し味に使う干帆立貝柱だという。北海道猿払の特産品であり、かつて現地の漁業協同組合には崎陽軒の看板が掲げられ、今も漁協の売店で崎陽軒の製品が買える。シウマイに使う帆立の8割は猿払産とも、崎陽軒は国内に流通する乾燥帆立貝柱の1割を買い付けるとも聞いたが、出典は不明。特注の機械で製造後すぐに冷凍し、2000年頃までは市販品の容器にも詰めていたプラ製のトレーで保管し、使う時に蒸気で蒸して解凍する。この「昔ながらのシウマイ」を単品で販売する際の消費期限は、製造から17時間、ただし12時間以内に冷蔵保存した場合は40時間。赤い包装紙には製造年月日(上記の解凍時と思われる)を含め3段書きの年月日時が記される。
シウマイ弁当の白飯は、企業秘密の特注機械で蒸気炊きされる。その産地や銘柄は、1954年の発売当時に等外米と表記した以外には明らかにされておらず、おそらく標準的な国産米を使うのだろう。普通の(上質や銘柄でない)米を、常温の弁当向けにおいしく炊き上げる旨の考察がなされることがある。
シウマイ弁当の中身である白飯、シウマイ、マグロ、かまぼこ、鶏唐揚、玉子焼、筍煮、あんず、切り昆布、千切り生姜には、それらのそれぞれにファンが付いていると思う。しかし弁当より歴史の長いシウマイを除き、単品で買うことができない。赤飯は予約で買えるが白飯は買えない。例外は筍煮で、東京八重洲と横浜中華街の軽食堂「シウマイBAR(シウマイバル)」で注文できる。
シウマイ弁当は1954年の発売時、今でいうシウマイも入る幕の内駅弁であり、シウマイに加えて横浜カマボコと酒悦の福神漬を入れたことも売りにしていた。経木折や掛紙の使用と、折箱の大きさや形状は、当時の駅弁として標準的なものであり、100円や150円の価格も当時に政府や国鉄が定義した「普通弁当」の枠内とし、上等や特殊な駅弁ではなかった。その姿を70年以上維持したことにより、今ではイベント向けの復刻駅弁を除き唯一の姿をしているのではないだろうか。もっと老舗の弁当となると、経木折の角を丸めないため、ここでも類例を思い当たらない。