東京駅から上越新幹線「とき」で2時間強。新潟市は信濃川の河口で日本海に面した、人口約78万人の港町。水田や漁港から新幹線や空港までなんでもある、本州の日本海側では随一の大都市。駅弁は明治時代から売られ、新発田駅や新津駅の駅弁もここに来て、駅弁売店で多種が並ぶ。1904(明治37)年5月3日開業、新潟県新潟市中央区花園1丁目。
新潟駅の幕の内弁当のひとつ。中身は日の丸御飯に焼鮭、玉子焼、とんかつ、有頭海老、鮭の昆布巻、こんにゃくやニンジンなどの煮物、お麩、すじこ、小なす、赤かぶなど。奇をてらわず標準的にしっかりした、普段使いの駅弁ないし車内弁当。古くは新潟米コシヒカリの使用を売りにしたのだろうが、今では市販の米のほとんどがコシヒカリやその子孫で占められたため、その点でも今は普通の駅弁。
コシヒカリは1944(昭和19)年に新潟県農業試験場で誕生した。当初は倒伏と病気に弱い駄作と見なされたが、福井県農業試験場で育成されて1956(昭和31)年に農水省「農林100号」登録と品種名「コシヒカリ」が付き、消費者の良食味米指向の高まりとともに徐々に勢力を拡大した。2003(平成15)年時点で全国の作付面積の37%を占め、以下9位の「つがるロマン」までその子孫が占める、稲作界の絶対君主。
2016(平成28)年10月1日に、新潟駅、東京駅、上越新幹線車内で発売。新潟県農林水産部食品・流通課とJA全農にいがたが新潟米宣伝事業の一環として、首都圏の消費者へ美味しい新潟米の喫食機会を提供するために発売したのだとか。新潟のお米農家ユニット「新潟ライスガールズ」が監修したといい、その6人組メンバーのイラストがふたの表面と裏面に描かれる。
平たく浅い正八角形の容器の、半分がその新潟県産コシヒカリの日の丸御飯で、半分が白身魚フライ、焼鮭、厚焼き玉子、貝の和え物、南蛮海老の唐揚、にいがた和牛しぐれ煮、野菜と鶏肉のレンコンはさみ揚げ、筍シュウマイ、ブロッコリー、笹よもぎ餅、栗の甘露煮というおかず類。
つまり、日の丸御飯と肉や魚のおかずを詰めた幕の内弁当。新潟米コシヒカリは全国各地のライバルの改良で、駅弁でもスーパーでも他よりうまいという印象がなくなり、値段も高め。ただ、おかずは上質より上等の雰囲気で良い感じ。後の2018(平成30)年11月11日に中身をリニューアルし、1,350円へ値上げ。
※2019年8月補訂:値上げを追記2014(平成26)年4月から6月まで開催された、JRグループの観光キャンペーン「新潟デスティネーションキャンペーン」に合わせて、同年4月の発売か。ボール紙のパッケージには、「駅弁女子」のなかだえり氏が描く旧新潟税関庁舎が使われる。中身は筆箱のように細長いプラ容器に収まり、赤いほうには日の丸御飯、ちりめん御飯、越後もち豚ロース味噌漬、玉子焼、赤かぶ酢漬、白いほうには塩引き鮭、柳がれい素揚げ、エビ素揚げ、イカゲソ天、たらこ、パンプキンサラダ、タラコ、もずくの酢の物。つまり、少量の飯に加えて、いろんな酒のつまみが詰まっていた。価格は2016年の購入時で1,180円、2022年4月から1,280円。
※2022年4月補訂:値上げを追記2002(平成14)年12月のJRダイヤ改正で新潟発着新幹線列車の列車名が「あさひ」から「とき」に変更されたことを記念して、2003(平成15)年4月17日に発売。桜色の大きめな長方形の容器を、左右から包み込むように朱鷺色ベースのボール紙で巻いて、マジックカットで留める。
中身は佐渡産食材の懐石料理風幕の内弁当ということで、干し海老と桜花が載る佐渡産コシヒカリの白御飯に、銀鮭塩焼、イカ一夜干、帆立などの煮物、菜の花などの和え物など、デザートは佐渡にもある新潟名物笹団子。蒲鉾に朱鷺が描かれ、箸袋は朱鷺を模す、佐渡と朱鷺がいっぱいの、とても上品なお弁当。価格は購入時で1,000円、2014年時点で1,050円、2015年時点で1,080円、2018年9月から1,100円、2022年4月から1,200円。
1962(昭和37)年6月1日に上野駅と新潟駅を結ぶ列車として誕生した特急列車「とき」。1982(昭和57)年11月の上越新幹線の開業に際し、この首都と越後を結ぶ代表列車の名前が当然に「ひかり」格の速達列車に引き継がれると見られていたが、経営危機の国鉄が絶滅寸前の鳥名の採用に難色を示し、結局は各駅停車の「こだま」格の列車に採用された。その後、1997(平成9)年3月のダイヤ改正でJR東日本が、新幹線の列車愛称を停車駅別から方面別に再編したことで、上越新幹線も新潟駅発着の「あさひ」と越後湯沢駅以南の「たにがわ」にまとめられ、列車愛称の「とき」は絶滅した。
しかし「あさひ」の名が東京駅と高崎駅の間で線路を共用する長野新幹線の「あさま」と混同されやすいこと、新潟県内で「とき」の復活を望む声があったこと、それにおそらく佐渡のトキが中国産の導入で順調に増えてきたことや、朝日岳や朝日連峰が由来の列車名「あさひ」がいまいち親しまれないことなどから、「とき」の列車愛称が5年ぶりに復活したもの。その約2か月前の10月10日、推定36歳のトキ「キン」の死亡により、国産のトキが絶滅した。
※2022年4月補訂:値上げを追記JR東日本「大人の休日」キャンペーンに伴い、2002(平成14)年3月1日に発売。大きな黒塗りのプラ製正方形の容器を、緑色の和紙風風呂敷で包む。中身は新潟毎コシヒカリの日の丸御飯に、鮭カマ焼や海老や煮カレイ、佐渡南蛮海老などのかき揚げやイカ焼、煮物の各種と甘い栗など。キャンペーンのコンセプトである高額高級路線を内容でも価格でも表している。価格は2002年の発売時で1,200円、2014年時点で1,500円。2017年時点で販売休止中。
新潟はかつて市街に堀が巡りヤナギの木が立ち並んでいたため「柳都」と呼ばれたが、新潟国体と東京五輪が開催され新潟地震が襲った1964(昭和39)年までにすべて埋め立てられ、今は高齢者と行政のみが使う用語。かつては一面の低湿地だった信濃川の河口に開けた新潟の都市発展の歴史は、湿地の乾燥化や市街化に河川敷の縮小の歴史でもある。新潟地震ではその地盤がやられて建物や橋梁が壊れぬままパタパタと倒れ、地盤の液状化現象が世に広く知られる契機となった。
※2019年8月補訂:現況を追記2017(平成29)年9月23日から新潟駅と上越新幹線と東京駅で、1万個の予定で発売。新潟県村上市役所の観光宣伝事業に、JR東日本の子会社が参画したそうな。2016年10月3日発売の「村上の幸まるごと弁当」に続く、村上市のオリジナル駅弁第2弾。同年秋のJR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2017」にもエントリーした。
ボール紙製の掛紙は葉書のデザインで、「十四種の幕の内」「うまさぎっしり新潟」などのフレーズを掲載する。中身は、岩船産コシヒカリの白御飯と、村上牛しぐれ煮にニンジンやサトイモなどの煮物、サケの握り寿司2個、鮭の焼漬と村上麩揚げとかまぼこと南蛮海老唐揚、枝豆シュウマイと玉子焼と漬物と笹餅で4区画のおかず。幕の内駅弁を今風に豪華化した、食べ応えのある駅弁。発売日に村上駅で駅弁立売を実施したそうな。半年間ほどの販売か。
※2019年8月補訂:終売を追記新潟の観光キャンペーン「にいがた花物語」の企画駅弁として、2007(平成19)年3月1日に発売。木目調の正八角形の容器に花びら型のボール紙製掛紙を置く。中身は桜花塩漬とグリーンピースを付けた県産赤ワイン炊き御飯と、むき海老のちらし寿司で2種の新潟米コシヒカリ御飯、おかずに越後もち豚味噌付、鮭の唐揚げ、帆立、昆布巻、玉子焼、赤かぶ漬け、かぼちゃマヨネーズ、笹団子など。
柔らかいけどしっかりした中身の見栄えも風味も美しいが、割りばしやナプキンとともに収められた紙袋がこの駅弁の特徴。7cm×5cmのミニ絵手紙が16枚も付いてきて、目を楽しませてくれる。知名度はまだまだだが、偶然に購入した旅客の気分を幸せにする実力を持つ。価格は2007年の発売時や購入時で1,050円、2014年4月の消費税率改定で1,080円。2017年までの販売か。
※2019年8月補訂:終売を追記新発田三新軒の特製幕の内弁当。広い長方形の容器をとても大きな掛紙で包み紙ひもでしばる。白いトレーに入れられた中身は、白御飯に鮭の焼漬と玉子焼とかにクリームコロッケや帆立フライ、筋子に山菜に各種付け合わせやデザート。駅弁の名前は越後と佐渡で越佐(えっさ)らしい。
内容は盛り沢山だが、品質は新津駅「鮭の焼漬弁当」の出来損ないという感じで、工業製品風に詰めた食材の風味もまるで工業製品風。調製元は現在は事実上、鮭の焼漬弁当の調製元に吸収されているようなのに、なぜこれだけの差異が出るのかは不明。あるいは大型連休最終日で悪いロットをつかんだか。
この駅弁は、普段は売られているのだろうか。近年は2007、2010、2013年と飛び飛びに、ネット上に収穫報告が上がっているように見える。2013年までの販売か。
※2019年8月補訂:終売を追記1998(平成10)年6月28日6時の調製と思われる、昔の新潟駅弁の掛紙。表面に水原の三角だるま、瓢湖(ひょうこ)の白鳥、佐渡おけさ、稲穂を描き、裏面に観光マップ「佐渡・越後路ごあんない」を載せる。掛紙には製造年月日と消費期限を記したシールに加え、何かを隠した白いシール、価格のシール、新鉄構内営業株式会社の社名と所在地と連絡先を隠した赤い「毎度ありがとうございます」シールを貼り、シールだらけの掛紙となった。
1998(平成10)年6月28日14時の調製と思われる、昔の新潟駅弁の掛紙。絵柄は下記の2月のものと変わらない。昭和時代から相変わらず大きな掛紙なので、A4サイズのスキャナに収まらない。
1998(平成10)年2月1日6時の調製と思われる、昔の新潟駅弁の掛紙。絵柄に稲穂を使いながら、抽象的なデザインになった。
昭和50年代、1980年前後の、8月27日11時の調製と思われる、昔の新潟駅弁の掛紙。今も新潟駅で買える幕の内弁当である、新潟コシヒカリ弁当。
1975(昭和50)年7月22日7時の調製と思われる、昔の新潟駅弁の掛紙。2度のオイルショックで物価が高騰した時期であるためか、掛紙で駅弁の価格が空欄となっており、そこに「500」の金額を捺印している。絵柄は何であろうか。
1960年代のものと思われる、昔の新潟駅弁の掛紙。縦に40センチくらいある、ずいぶんと長く大きな掛紙である。佐渡島と萬代橋を描く。