東京駅から上越新幹線「とき」で2時間強。新潟市は信濃川の河口で日本海に面した、人口約78万人の港町。水田や漁港から新幹線や空港までなんでもある、本州の日本海側では随一の大都市。駅弁は明治時代から売られ、新発田駅や新津駅の駅弁もここに来て、駅弁売店で多種が並ぶ。1904(明治37)年5月3日開業、新潟県新潟市中央区花園1丁目。
2019(令和元)年12月11日から24日まで東京駅の駅弁売店「駅弁屋 祭」で行われた「新潟駅弁フェア」で実演販売。つまり、新潟駅でなく東京駅で発売した模様。丸い容器にコシヒカリの酢飯を詰め、イクラ醤油漬、鮭ほぐし身、スライス椎茸、錦糸卵で覆い、味付け蒸しウニと茎めかぶ梅酢漬けを添える。下記の駅弁「鮭はらこ弁当」を酢飯にして、具にめかぶとウニを加えたようなものであり、旭川か釧路か新潟かどこかで既視感のある内容だった。
2021(令和3)年10月4日に購入した、新潟駅弁のスリーブ。上記の2019年のものと、容器や中身を含めて同じ。アレルギー物質表示に見出しが付いたほか、よく見比べるとなぜか中身の写真が撮り直されている。
新潟駅の小さな売店で売られていた燻製卵。写真のとおり、PET製の玉子パックに焦茶色の鶏卵がふたつ入り、商品名と宣伝文と食品表示を印刷した掛紙を巻いている。駅弁でもなんでもないが、調製元がかつて鉄道を持っていたバス会社であったため、ここに収蔵。少々の薫りが付いた、カチカチの固ゆで卵。
新潟交通は新潟市に本社と拠点を置くバス会社で、第二次大戦中の戦時統合により1943(昭和18)年12月に成立した。かつて白山前駅から燕駅まで全長約36キロメートルの鉄軌道を営業し、新潟市と燕市の都市間輸送や都市圏輸送を担っていたが、赤字のため1999年4月までに全線を廃止した。
この路線は信濃川を渡り新潟駅まで延伸する計画があり、その幅員と荷重を見込んで1929(昭和4)年に架け替えられた橋が現在の萬代橋(ばんだいばし)である。この橋に鉄軌道車両が通ることはなかったが、その備えにより後の道路交通にも耐え、1964(昭和39)年6月の新潟地震にも耐え、2004年7月には国の重要文化財に指定、新潟のランドマークとなった。
フタに新潟県木の雪椿を描く、漆塗り風のプラスティック製容器を使用、これを鮭を描いたボール紙のパッケージにはめる。中身はコシヒカリの御飯の上に鮭フレークとイクラと椎茸と錦糸卵を載せるだけ。イクラと刻み椎茸は塩気がすさまじく、鮭と錦糸卵は工業製品の風味。白御飯に新潟米コシヒカリの旨みの片鱗を感じた程度で、あまりうまくない。空腹を満たし、空き容器を何かに転用するためだけの駅弁。価格は2005年の購入時で920円、2009年時点で980円、2015年時点で1,050円、2019年時点で1,100円。
※2020年1月補訂:値上げを追記上越新幹線開業30周年に合わせて、2012(平成24)年11月に発売か。2013年3月ダイヤ改正による新幹線200系電車の引退にもちなむと見える。その車両の先頭車をイメージしたボール紙箱に収めた、細長い容器の中身は、鉄道車両形駅弁の常である冷凍食品の香りがするお子様ランチで、白御飯を錦糸卵、鮭フレーク、ミートボール、チキンナゲット、ウインナー、ポテトサラダなどで覆うもの。発売を記録すべき駅弁ではあるが、食べ物としてはやっぱりチープでうまくない。
1982(昭和57)年6月の東北新幹線の大宮駅から盛岡駅までの開業と、同年11月の上越新幹線の大宮駅から新潟駅までの開業で、営業運転を開始した新幹線200系電車は、1992(平成4)年7月の山形新幹線400系電車や、1994(平成6)年7月のE1系新幹線電車Maxのデビューまで、東北・上越新幹線のすべての列車で使われていた。「あさひ」はその開業時から1997(平成9)年10月ダイヤ改正まで、上越新幹線で使われた列車愛称である。
東海道・山陽新幹線の0系を緑色にして、その先頭車のボンネットを少し盛り上げた姿は、デビュー当時には鼻高美人と呼ばれたもの。ボディマウントや雪切り室などの耐寒耐雪構造と、スプリンクラーなどの施設側の対応で、豪雪により在来線のダイヤが滅茶苦茶になっても定時運行を誇る、頼もしい存在でもあった。21世紀に入り、青い0系電車が追われて山陽新幹線こだま号で細々と過ごしている時にも、塗色や内装をリニューアルして確かな存在感を保っていたが、製造後20年から30年という新幹線電車では長寿の域に入ると、さすがに新車へ置き換えられた。
SLばんえつ物語10周年記念に伴う駅弁販売イベントに合わせて2009(平成21)年4月29日に発売された、新潟駅で最高額の駅弁。2009年に新潟県の湯沢町や新潟市などで開催された第64回国民体育大会「トキめき新潟国体」、2009年放映のNHK大河ドラマ「天地人」、2009年10月から12月までのJRグループ「新潟デスティネーションキャンペーン」も、駅弁を開発した理由だという。
正方形をリボン型に合成した赤黒い容器を二段重ねて、その正方形サイズの小さな掛紙を置いて、赤いひもと食品表示ラベルでうまく留める。中身は下段が「愛の膳」として、けんさん焼き、豆御飯、マイタケ煮、カモ肉のスモーク、かぼちゃサラダ、イカ一夜干し、みかんなど。上段が「毘の膳」として、焼き鮭、豚肉の味噌漬け、玉子焼、ウナギ蒲焼き、カボチャやホタテなどの煮物、笹団子など。
食べる前に見るからに巨大で豪華な感じ。その中にうまい食材がこれでもかっ、と詰まっている、新潟の旅館での夕食か定食を駅弁にしてしまった超重量級。今回は駅弁大会で買って朝飯にしようとしたが、これは朝飯や昼飯にすべきではない。2009年中に終売か。
※2014年8月補訂:終売を追記JR東日本発足20周年記念駅弁の新潟駅新潟三新軒版として、2007(平成19)年8月1日に発売。小柄な長方形の容器に透明なふたをして、中身の写真を色鮮やかに印刷したボール紙の枠にはめる。中身は白御飯の上にイクラとブリ焼漬を載せて、鮭昆布巻、蒲鉾、アンズなどを添える。
ブリの焼漬は新津駅弁で定評のある鮭の焼漬に比べて、風味が濃厚な焼き魚というか、ジャーキーのなり損ないというか、けっこう奥深い味。イクラも大粒プリプリで申し分なし。例えばこれを外して少量廉価にした「鰤の焼漬弁当」でも出せば、朝飯駅弁に最適だと思う。2012年頃に終売か。
※2014年8月補訂:終売を追記2006(平成18)年の秋頃に発売。真円形の容器に割りばしとおてふきを置き、商品名と宣伝文を書いた掛紙をかけて、紙ひもでしばる。中身は白御飯の上に舞茸とわさび菜と玉子焼を刻んで、ウナギ蒲焼6切れとともに放射状に並べる。
なんとなく、名古屋のひつまぶし風。少量のウナギ蒲焼を舞茸その他で増量したと言えなくもないが、ワサビ菜のピリ辛と風味がとても合う。それでも「うな…重」で千円以上でこの分量では、苦情が先に出るかも。それ以上に、もはや駅弁販売の実態がないであろう新発田駅の名を、箸袋やナプキン袋でうたい続けるのはどうかと思った。2011年までの販売か。
※2015年9月補訂:終売を追記2003(平成15)年12月6日に発売した、新発田三新軒と菊水酒造との共同開発駅弁。原則として要予約で駅で見ることがほとんどなく、公式にも非公式にも紹介例や収穫報告が少ないため、事実上幻の駅弁なのだが、これが大宮駅に置いてあってびっくりした。
面積も高さもある大きな黒い正方形の容器に、掛紙を巻いてプラ帯で留める。掛紙にも容器にも穴が開き、そこに「ふなぐち菊水一番しぼり」200ml缶が収まる。フタを開けるとこれを取り囲むように現れる中身は、いかげそ、豚味噌漬、玉子焼、枝豆天、薩摩揚、なめこ等の和え物、生姜味噌焼おにぎり2個など。
幕の内駅弁が酒のつまみに使われることは少なくないが、この駅弁は発想が逆、酒蔵と駅弁屋がこの酒に合うと認めたおつまみを詰めたのだから、酒に合わないはずがない。出張帰りの上越新幹線でひとり祝杯を挙げるために、予約されたり買われそうな商品。2012年頃まで販売された模様。
※2016年10月補訂:終売を追記下記の駅弁「焼たらこトロ鮭弁当」を、2005(平成17)年にリニューアルか。容器と中身と価格は同じで、パッケージのデザインが変わった。よく読むと駅弁の名前がちょっと変わり、さらによく見ると前版写真の山菜が、前回も今回も炒め物に変わっている。
駅弁の中身は材料調達の都合等で変わることがあるため、パッケージに中身の写真を載せる場合には(イメージ)とか(中身が変わることがあります)旨の注記を付ける。それでも、写真にひかれて買った人が「中身が違う」と苦情でもしたのだろう。メインの食材のイメージイラストならば、間違いがない。価格は2005年の購入時で950円、2009年時点で1,000円、2015年時点で1,050円。2018年11月に終売か。
※2020年1月補訂:終売を追記2001(平成13)年9月に発売。小柄で背の高い四角形の生分解性樹脂製の赤い容器を使う。その高さのうち下1/3は上げ底で上1/3はふたなので、中身に充てられたスペースはかなり小さくなるが、白御飯の上には正に「トロ」な焼鮭と、真ん中にサクッとした歯ごたえのタラコ、そしてウニのように見えるのはつぶ貝とタラコの和え物で、それぞれがとてもおいしくいただけた。すでに人気駅弁の地位を確保した感がある。
総プラスティック製の釜飯容器を、ボール紙のパッケージに入れる。中身は茶飯の上に鶏や海老や帆立に山菜やごぼうや錦糸卵などを載せる、ごくふつうの釜飯駅弁。具の種類は多いのだが、飯も具も醤油や塩気がきつすぎる感じ。2000年代の駅弁はこうであってはいけない。現存しない模様。
新潟県は上越新幹線の終着地。高崎線と信越本線で結んでいた、首都と越後をショートカットするために建設された新前橋〜宮内間の在来線が、上野(こうずけ)国と越後国を結ぶので上越線と名付けられ、これが新幹線の路線名にもなった。一方で越後の国は京都に近い地域から上越・中越・下越の順で呼ばれており、1971年に高田市と直江津市が合併して誕生した新潟県上越市はそれが由来なので、ややこしい。「越の国」とすれば越中富山や越前福井も含まれるのでは。
※2015年9月補訂:終売を追記2003(平成15)年の秋に発売。蒸気機関車型の重く黒い陶製容器を、大きな輪ゴムでしばり、ボール紙のパッケージに入れる。中身はボール紙のトレーに入っており、御飯の上に海苔を敷いてニシン・カズノコ・海老・ホタテ・鶏肉などが載る。新潟米コシヒカリと思われる御飯を含め風味は良かったが、容器に凝った分だけ高価格で少量となるし、その容器もかなり重い。SL列車乗車用と考えても持て余しそうで、近所のスーパーの駅弁大会で買うのが正解か。価格は発売時や2005年の購入時で1,200円、2015年時点で1,250円。2015年頃までの販売か。
※2024年9月補訂:終売を追記磐越西線のSL列車「SLばんえつ物語」の運転開始に合わせて、1999(平成11)年4月に発売。竹皮を編んだ容器に、蒸気機関車の側面図を描いた色紙を掛紙としてかけて、赤い紙ひもでしばる。ボール紙の箱をトレーにして収められる中身は、御飯の上に錦糸卵やひじきなどを敷いて、エビフライと鮭焼漬を載せるもの。コンセプトはよく分からないが、飯と鮭は美味い。新津駅の「SLばんえつ物語弁当」とは別物。2009年過ぎまで売られた模様。
※2015年9月補訂:終売を追記小判型の固いプラ容器をボール紙の枠にはめる。中身はコシヒカリの御飯の上に錦糸卵と山菜を敷き、帆立貝や磯貝とともに小さな松茸スライスと金箔を載せるもの。松茸弁当と考えると松茸の量や風味の少なさにがっかりするが、普通のお弁当と考えればとても美味く、容器も美しい。駅弁大会の常連さん。価格は2002年の購入時で970円、2011年時点で1,000円、2015年時点で1,050円。10月から3月までの販売。2015年までの販売か。
※2017年8月補訂:終売を追記2002年サッカーW杯の会場として、新潟県新潟市に建設された陸上競技場「ビッグスワン」の完成を祝って、2001(平成13)年に発売。容器の不安定さでは白浜駅の「紀州てまり弁当」に次ぐ、サッカーボール型で底がわずかに平坦な容器を、ボール紙のケースに入れる。中身は帆立フライに海老フライが載ったコシヒカリの鳥そぼろ混ぜ御飯と、中高生のお弁当のようなスタイル。
W杯の名前やイメージの使用は、超高額の権利を購入したスポンサーと多額の費用を支出した会場の地方自治体に限られるため、この駅弁のパッケージには苦し紛れの表現が見られる。現在は売られていないものと思われる。
2002(平成14)年12月15日8時の調製と思われる、昔の新潟駅弁の箱。トキ色の横長な箱は、左右から羽のように開くことができ、これには添付されていないが箸袋もトキの形をしていた。中身はサケやイクラなどのちらし寿司。2001(平成13)年4月の駅弁の日の発売で、2014年頃までの販売。