新潟駅から電車で約1時間。羽越本線が米坂線を分ける坂町駅には、昭和時代には国鉄の機関区が置かれ、近隣の新津ほどではないものの鉄道の要衝であり、1940年頃から1980年頃まで幕の内と寿司の駅弁が売られた。1914(大正3)年11月1日開業、新潟県村上市坂町。
2024(令和6)年1月の京王百貨店の駅弁大会で、JR米坂線の坂町駅の駅弁として実演販売。同催事の「がんばれ!ローカル線」企画で、2022年8月の豪雨で今泉駅から坂町駅までの間で運休し再開の見込みがない、JR米坂線の今泉駅と坂町駅の駅弁を名乗る弁当を、催事場で実演販売した。掛紙には商品名と宣伝文と、JR米坂線の路線図や写真を掲載した。
長方形の木質エコ容器に白飯を敷き、海苔を貼り、たっぷりの鶏唐揚で覆い、鮭ほぐし身を少し詰め、煮豆と漬物とたれを添える。日本全国のスーパーや惣菜・弁当店でおなじみの唐揚げ弁当を、元気にした感じ。実演販売ブースで配布したチラシによると、坂町駅から20kmくらい北で日本海に面した、羽越本線の線路と国道345号に沿う弁当店で、のりからあげ弁当(600円)を販売するという。
坂町駅は、羽越本線が米坂線を分ける駅。日本海に沿う北前船以来の交通路で、蒸気機関車の車庫も置かれた鉄道のちょっとした要衝として、第二次大戦前から昭和50年代まで公式な駅弁販売駅であり、幕の内弁当と助六寿司が売られた。今はすべての特急列車が止まり、SL列車が来たり観光列車が止まる駅でもあり、駅前でイベントが開かれることもあるが、駅弁を発売したり復刻したという話は、まったく聞かない。
昭和30年代頃の調製と思われる、昔の坂町駅弁の掛紙。羽越本線と米坂線の接続駅である坂町では、昭和50年代頃まで幕の内と寿司の普通弁当が細々と売られていたそうだが、今はなくなっている。