東京駅から上越新幹線で約1時間20分。湯沢町は新潟県の最南部の山中に位置する、人口約8千人の宿場町。温泉やスキーで観光客を集め、上越新幹線と関越自動車道の開通によりバブル経済の頃には高層マンションが林立するリゾート都市へと変貌し、バブル崩壊とスキー人口の激減で痛手を負った。駅弁は昭和40年代までに石打駅の駅弁屋が進出、今は改札外の土産物店や新幹線改札内外のコンビニで売られる。1925(大正14)年11月1日開業、新潟県南魚沼郡湯沢町湯沢。
1998(平成10)年の発売。その頃の駅弁によく使われたと思う、丸くて硬くて上げ底のプラ容器を、イクラやタラコや稲作などを賑やかに描いたスリーブに収める。中身は魚沼産コシヒカリの白飯を、いくら、錦糸卵、刻み海苔、刻みシイタケで覆い、たらことタクアンを添えるもの。白飯の涼感と香りが印象的で、具の印象がなくなる感じ。2000年代には4〜5人前の分量がある「ジャンボいくらたらこめし」が予約により売られた。
魚沼産コシヒカリは、日本の米のトップブランド。2021年時点で国産米の相対取引価格が玄米60kgで約1万3千円となる中、「コシヒカリ(魚沼)」は118銘柄で唯一2万円台に乗せるなど、おおむね平均価格の5割増で取引される。魚沼市・南魚沼市・十日町市・小千谷市・長岡市のうち旧川口町・湯沢町・津南町の5市2町で収穫されるコシヒカリ(BLを含む)がこれを名乗れるが、収穫量の何倍あるいは何十倍の偽物が出回るというから、本物の入手やこれを味わうのは難しそう。
2003(平成15)年3月16日に購入した、越後湯沢駅弁の掛紙。丸いプラ容器と中身は、上記の2021年のものと変わらない。当時は掛紙を使い、稲穂と案山子(かかし)を描いていたほか、具ではタラコの分量が多かった。
2004(平成16)年までに発売か。長方形の発熱式容器を、豚とすき焼き鍋でデザインした、加熱機能付き容器の駅弁としては控えめなデザインのボール紙にはめる。中身は白御飯の上に豚肉を、糸こんにゃくや椎茸やごぼうなどとともに貼り付けるもの。すき焼きをイメージさせる割には、中身の豚肉はトンカツやステーキになるような厚みがあり、なんとなくもちっとした感触。価格は2005年時点で900円、2015年時点で1,050円、2023年時点で1,150円。
※2023年6月補訂:写真を更新し値上げを追記2005(平成17)年8月11日に購入した、越後湯沢駅弁のスリーブ。上記の2023年のものと同じ。容器も中身も変わらない。
かつての越後湯沢駅弁「特製かにずし」改め「かにずし」を、2019(令和元)年に「特製どかんとかにずし」へ改称。水色で正方形の掛紙には、ズワイガニのようなカニが描かれる。頑丈そうに見えてペラペラに薄いプラスティックの容器に、魚沼産コシヒカリの酢飯を敷き、ズワイガニのほぐし身を載せ、椎茸のスライスと錦糸卵で彩り、紅生姜を添える。シンプルなカニ寿司で、現存するカニ駅弁では最も見栄えが淋しいと思う。何を「どかん」としたのだろうか。新幹線と高速道路の時代とはいえ、海からの遠さは日本一級の越後湯沢にて、海のカニが駅弁になっている。
2014(平成26)年9月27日に購入した、越後湯沢駅弁の掛紙。掛紙の形と大きさに、容器と中身は、下記の2005年や上記の2023年のものと変わらない。暖かみのある赤い地柄に、ズワイガニでなくタラバガニに見えるカニが小さく2匹載る。駅弁屋には最高のURL「ekiben.jp」は、2023年時点でおそらく調製元が保有しているようだが使われていない。
2005(平成17)年8月11日に購入した、越後湯沢駅弁の掛紙。掛紙の形と大きさに、容器と中身は、上記の2014年や2023年のものと変わらない。表面に青地とカニを描き、裏面でしおざわコシヒカリを紹介した。
越後湯沢駅で「駅弁」の名を掲げたコンビニで買えた箱入りサンドイッチ。赤黒いボール紙箱に収めた半透明のトレーに、カツサンドが3切れ入る。ロースカツのソースカツサンドに使う無臭で柔らかな肉は、インジェクション加工(脂肪の注入)と明記。食品表示ラベルに全国チェーンの製パン業者「ヤマザキ」の名があり、調製元の連絡先は「山崎製パン相談室」で、これは越後湯沢や駅弁ではないのだろう。紙箱には3連の窓が開き、駅で買えば電車風かと思える。
昭和50年代に越後湯沢駅で発売か。その名のとおり、クルミと山菜の寿司駅弁。白い酢飯をクルミ、ゼンマイ、錦糸卵、シイタケで覆い、ヒメタケ、くり、紅生姜で彩り、糸こんにゃく、きゃらぶきを添える。おかずのない内容。そういえば越後湯沢は山の中、三国街道で寺泊の日本海まで100km以上離れた内陸にあることを思い起こさせる内容。御飯のおかずには困る。
2009(平成21)年11月22日の新潟駅での「天地人駅弁合戦」で、新潟・福島・山形の各県で10軒の駅弁屋による新作駅弁のひとつとして誕生か。長方形の容器に、魚沼産コシヒカリを使うという白御飯を詰め、新潟県産牛を使うという真っ黒な牛肉煮で覆い、はじかみを載せ、玉子焼と蒲鉾と大根つぼ漬を添える。そんな構成は全国各地の牛肉駅弁と同じでも、これは肉も飯も締まる、濃く強い牛飯。価格は2009年の発売時で1,000円、2014年時点で1,050円、2017年時点で1,100円、2024年時点で1,200円。
※2024年9月補訂:値上げを追記2014(平成26)年9月27日に購入した、越後湯沢駅弁のスリーブ。上記の2021年のものと、絵柄も中身も同じに見えて、縦横比が少し異なり、この当時のほうが細長い。
2010(平成22)年7月24日に購入した、越後湯沢駅弁の掛紙。名前と内容は、上記の2014年や2023年のものと同じ。当時は掛紙を使い、牛と米をシルエットに、稲の収穫風景のイメージを描いていた。
越後湯沢駅の上等幕の内駅弁か。この名前では、JR東日本の観光キャンペーン「LOOK EAST」のオリジナル駅弁131種類のひとつとして、1989(平成元)年3月に発売か。女性がにじむ絵柄の大きめなボール紙製正方形の容器を使用、そのふたの裏ではしおざわコシヒカリを宣伝している。白いトレーに詰めた中身は、その日の丸ご飯ととんかつ、やきそば、伊達巻など。
茶色い色のおかずの構成や品質はジャンクフード級、うまいはずのしおざわコシヒカリは水気でべちゃべちゃ。お盆休みの繁忙期で雑なつくりになったと思うことにする。それでも中身は年中変わらないだろうから、上で紹介した並等幕の内も含め、この駅で駅弁を買うときには幕の内を選んではならない。価格は2007年の購入時で920円、2015年時点で950円。
※2020年1月補訂:発売年を追記演歌歌手のプロデュースにより、2007(平成19)年7月9日に発売。円形の加熱機能付き容器を入れる大きなパッケージに、駅弁の名前と田園風景に歌手の名前と顔写真が描かれる。中身は魚沼産コシヒカリのもちっとした炊込飯の上を、豚肉や鶏肉や舞茸やレンコンなどで覆うもの。ひもを引いてフタを開けると紅生姜の刺激臭が飛び出してきて迷惑だったが、中身は豚スライスも鶏スライスも茶飯もうまい秀作。ボリューム感もある。
これのどこが歌手とつながるのか、現物には何も書かれていないが、スポーツ新聞の記事などによると次のとおり。2007年2月7日に新曲「越後湯沢駅」を発売した演歌歌手の香田晋が、そのプロモーションのためか越後湯沢で挨拶回りに行った際に、町長が駅弁のプロデュースを持ちかけたらしい。発売日には本人自ら80個を駅売りし、5分で完売したそうな。価格は2007年の購入時で1,000円、2015年時点で1,050円。演歌歌手は2012年に引退したが、駅弁の販売は続いている。
※2015年9月補訂:値上げを追記越後湯沢駅の並等幕の内駅弁。正方形のボール紙パッケージの中に白いトレーが入り、その中身は越後米コシヒカリの日の丸御飯に焼鮭、蒲鉾、伊達巻、ハム、煮物類、山菜、クルミ、漬物類。購入時にアツアツな御飯のうまさに救われるが、越後湯沢駅弁らしいクルミの添付を除けば、見た目や内容はふた昔もさらに前の古めかしい、昭和時代や国鉄時代につながるような姿の幕の内駅弁だと思う。価格は2005年の購入時で800円、2015年時点で840円。
※2015年9月補訂:値上げを追記山菜醤油飯を使った、幕の内タイプの駅弁。シンプルで目立つ長方形ボール紙容器を使用、白いトレーに入った中身は、クルミ混じりの山菜醤油飯と、大きな焼鮭や細長い玉子焼、蒲鉾とチキンナゲットとぜんまいその他の付け合わせ。駅弁の名前は1997(平成9)年10月開業の北越急行ほくほく線にちなむものだと思う。
飯・鮭・玉子焼までは美味いと思う、幕の内駅弁タイプの並等弁当。世間の評価も主に可もなく不可もなしという感じ。容器を変えて御飯を前面に出した商品に変えてみたい気がした。価格は2005年の購入時で850円、2015年時点で900円。
※2015年9月補訂:値上げを追記越後湯沢駅の中の商店街で「駅弁」の看板を出した寿司店で買えた商品。商品名にみえるものが実物になく、レシートでの表記から採った。店舗内外の掲示を見て「駅弁」注文すると、回転を止めた回転寿司店のカウンター内で作り始め、約10分待つとこれが出てきた。したがって、駅弁でも弁当でもなく、店内で食べる代わりに持ち帰る商品であった。惣菜向けプラ容器にシャリを詰め、寿司ネタで覆い、醤油とわさびの袋と、割りばしとおしぼりを添付。詰めたてなのでおいしいちらしずしかと思いきや、越後湯沢は山の中であり、ネタの厚みも鮮度も可もなく不可もない感じの、エキナカかデパ地下で作り置きの寿司惣菜と同じ水準。駅弁と呼べる点は、どこにもないと思う。
冷凍食品かコンビニ弁当のようなプラ製パッケージを、商品名や各種イラストを描いたボール紙の枠にはめる。中身は茶飯の上にとりそぼろ、たけのこ、にんじん、しいたけ、きぬさや、錦糸卵などを載せるもの。電子レンジを使っていつでも温かい弁当を提供しようとした作品なのだろうが、見栄えも味もまるで懐かしの「O−bento」。普段の軽食であればともかく、旅先で買って食べた駅弁と思うとガッカリしてしまう。価格は2010年の購入時で700円、2015年時点で750円。2015年または2012年頃に終売か。
※2016年10月補訂:終売を追記1997(平成9)年3月22日の北越急行ほくほく線の開業に合わせて、越後湯沢駅での駅売りが開始された押寿司のお弁当。酢飯に野菜を乗せて笹を敷き、その上に酢飯とシソと玉子を乗せて笹を敷き、さらに酢飯とアミエビを乗せてまた笹を敷き、しっかり押したものを紙箱に収めてボール紙のパッケージに入れる。とても目立つ注意書きのしおり入り。狭い車内では非常に食べ辛いものの、具と米の自然な甘さが口の中に広がる味はなかなかのもの。価格は2002年の購入時で800円、2005年6月現在で750円。
頸城地方の伝統食を村おこしに使おうと、1990年代に地元の主婦5名が農業組合法人をつくり製造販売を始めた。駅弁としての販売希望をJRに断られたものの、開業イベントでの販売の盛況を目の当たりにして、ようやく駅弁の仲間入りができたとか。その後は注文の増加で主婦の副業では対応できなくなり、組織は第3セクターの有限会社に拡大、地域振興の成功例として、法人代表に講演の声がかかった。
この商品は2010年かそれ以前に、越後湯沢駅での販売を終えたようで、その頃には越後湯沢駅の駅弁と紹介されることはなくなった。商品そのものには、直江津駅、長岡駅、上越妙高駅など、新潟県内の主要駅で見たり買ったりしたという報告が見られた。調製元が政府の新型コロナウイルス感染症対策の影響により、2020(令和2)年5月25日に閉店し廃業、この商品も失われた。
※2020年5月補訂:終売を追記1964(昭和39)年1月3日12時の調製と思われる、昔の石打駅と越後湯沢駅弁の掛紙。魚野川鮎釣という、年末年始輸送や冬季のものとしては季節外れの絵柄となった。調製元の川岳軒は石打駅で創業した駅弁屋であり、今も石打駅前にあるが、この頃までに湯沢へ営業所を出して越後湯沢駅でも駅弁を売り始めたことが、調製元の表記から想像される。