東京駅から新幹線で約1時間40分。名古屋市は愛知県の西部で伊勢湾に面する、人口約230万人の城下町。日本国内第三の大都市圏として、製造業や商業で大いに栄える。駅弁は改札外コンコースや新幹線改札内で3社約50種が積まれ、地元や近隣の弁当なども加えて、こちらも大いに栄える。1886(明治19)年3月1日開業、愛知県名古屋市中村区名駅1丁目。
2020(令和2)年12月に名古屋駅で発売。1954年に名古屋で創業し、名古屋駅前の百貨店で焼売や餃子を販売した寿屋を名乗る焼売弁当。同社が2019年に名古屋駅弁の松浦商店の子会社へ事業譲渡されたことで、この弁当が名古屋駅に誕生したという。長方形の容器に、生姜昆布を載せた日の丸御飯を詰め、惣菜としては通常サイズ、駅弁としては大きめなえび焼売、焼売、かに焼売を2個ずつ入れ、かまぼこ、玉子焼、煮物、醤油と辛子を添える。白い肉と皮の球に手作り感のある弾力があり、弁当の姿と内容を持ちながら焼売のみの惣菜を食べている感じ。この調子で餃子の弁当も見てみたい。
2017(平成29)年11月に名古屋駅で発売。長方形のプラ容器に白飯を詰め、牛肉煮で覆い、青菜としば漬けを添える、日本全国の牛肉駅弁に共通のつくり。タレの多さが個性か。醤油ベースで煮込んだ、やわらかな肉質の愛知県産「あいち牛」を使うそうな。価格は2017年の発売時で1,100円、2022年時点で1,140円、2023年時点で1,200円、9月の購入時で1,250円。
2023(令和5)年1月の京王百貨店と阪神百貨店の駅弁大会で輸送販売。「鉄道開業150年記念」を名乗るが、2022年10月の日本鉄道構内営業中央会の鉄道開業150年記念復刻駅弁企画その他、その秋に発売された鉄道開業150年記念駅弁ではない。その時に調製元の松浦商店では、既存の790円の復刻弁当をこれに充てた。
掛紙には1937(昭和12)年の名古屋汎太平洋平和博覧会の記念掛紙の絵柄を取り込んだ。名古屋駅の幕の内駅弁より小柄な容器に白飯を詰め、しらす、桜えび、豚ステーキ、みそカツ、松阪牛焼肉、飛騨牛焼肉で覆い、スパゲティとウインナーを添え、赤かぶらとわさび漬カップも入れる。東海地方の静岡県と岐阜県と愛知県の名物を盛り付けたという。肉が高価なのだろうが、それにしても高額な弁当。
2016(平成28)年の発売か。白飯を牛焼肉で覆い、こんにゃくの梅和えとワサビ菜お浸しを添える、シンプルな牛丼。名古屋駅の松阪牛駅弁でブランド牛を思わせる風味や品質を備えたものに当たったことがなく、今回も同じ印象。ごくごく並の牛肉駅弁だった。価格は2016年の発売時で1,300円、2020年の購入時で1,340円、2022年時点で1,390円、2023年時点で1,480円。
※2023年10月補訂:値上げを追記2018(平成30)年7月に発売。松阪牛の焼肉を芯に、タレ御飯と海苔を二重に巻き、玉子そぼろをまとわせた細身の太巻きが1本、金銀のフィルムに巻かれて金色の紙容器に収められる。飯も肉も玉子も、なかなか甘い味付け。類例を思い当たらない不思議な商品に思えた。価格は2018年の発売時で1,000円、2020年の購入時で1,080円、2022年時点で1,100円、2023年時点で1,150円。
※2023年10月補訂:値上げを追記2018(平成30)年の発売か。窓開きスリーブに収めた小柄なプラ容器に、白飯+牛肉+玉子焼+わさび菜。松阪牛とする牛肉が、タレ焼きと牛肉煮の二色で御飯を覆う。薄いのに脂が豊かでも、最高級ブランド牛を名乗るほどの味でもないような、構成を含めて普通の牛肉駅弁という感じ。価格は2018年の発売時や2019年の購入時で1,350円、2022年時点で1,420円、2023年時点で1,580円。
※2023年10月補訂:値上げを追記2012(平成24)年の秋までに発売。白御飯を牛肉煮で薄く覆い、タケノコとシイタケとゴボウとニンジンの煮物で彩り、玉子焼、かまぼこ、生姜昆布、わさび菜おひたしを添える。本来は玉子焼でなく半熟卵が入るようで、駅弁大会への輸送対応でこうなったのだろう。そんな輸送販売の影響か、少量の牛肉の脂が白く固くなり飯に浸み、ブランド牛の味がどこかに行ってしまっていた。なぜ名古屋駅で松阪牛なのかという疑問を感じさせながら、JR名古屋駅と近鉄名古屋駅での販売が続く。価格は2012年の発売時や2015年の購入時で1,100円、2016年時点で1,200円、2018年時点で1,250円、2019年8月から1,280円、2021年時点で1,340円、2022年時点で1,390円、2023年時点で1,480円。
※2023年10月補訂:値上げを追記2021(令和3)年1月の京王百貨店の駅弁大会で実演販売。名前は掛紙で単に「松阪牛」、食品表示ラベルでは「松阪牛めし弁当」、他に店頭で何か書いてあった気がするが失念した。中身は白飯を牛肉煮で覆い、タケノコとシイタケとニンジンとゴボウで彩り、 菜の花と昆布を付け合わせるもので、名古屋駅の駅弁「松阪牛めし」から半熟卵または玉子焼を抜いたものだった。名古屋駅で買えたかは不明。上記のとおり、同じような駅弁はいくらでもある。
2019(平成31)年1月の京王百貨店の駅弁大会で実演販売。白御飯を牛焼肉と牛肉煮と牛そぼろで覆い、小松菜お浸しと玉子焼を添える。これらの肉が松阪牛ということでこんな高価になったが、食べればブランド牛でなく外国産の赤身牛のような味で、催事場では集客に苦戦していたように見えた。ブランド牛を意識しなければ、赤身が柔らかくおいしい牛肉弁当だった。
2017(平成29)年の発売か。名古屋駅弁らしい大きな容器に、飛騨牛のメンチカツ2枚、俵型の型押し飯、玉子焼、山菜、カボチャやタケノコなどの煮物、守口漬と柴漬けとハリハリ漬け、黄桃とチェリーを詰める。メインのメンチカツはまるで工業製品のように身が詰まり形が整い、白飯の型押しもプレス機械の製品のよう。冷蔵での販売であり、品質でなく味わいの点では疑問を感じた。2019年頃までの販売か。
※2021年3月補訂:終売を追記2015(平成27)年9月12〜24日にナゴヤドームのプロ野球中日ドラゴンズ戦で販売。以後は限定的かつ断続的に、スーパーの駅弁大会や名古屋駅で売られる模様。長方形の容器の右側で、白飯を愛知牛しぐれ煮ときんぴらごぼうと錦糸卵で覆い、左側で白飯をみかわ豚生姜焼きで覆い、ひじき、山菜、漬物で仕切る。中身の見た目と味で、肉質の悪さと業務用冷凍食品の多用で、これはがっかり。2017年までの販売か。
※2019年8月補訂:終売を追記2015(平成27)年1月の京王百貨店の駅弁大会や阪神百貨店の駅弁大会で輸送販売。それ以前から駅弁大会に出ていたかもしれない。大規模な駅弁催事でしか出会えない疑義駅弁だと考えられる。三河安城駅の駅弁と紹介されることがある。長方形の容器に茶飯を敷き、尾張牛どて煮という牛スジ煮込みのみそだれ和え、煮玉子、錦糸卵で覆い、山菜と紅生姜を添える。名古屋あるいは愛知県で独特の味だと思うどて煮の風味は、まるでコンニャクの八丁味噌漬け。駅弁で何度食べても慣れないものの、これはそこにしかない味。実物の暖かい丼の風味とは、異なるかもしれない。以後に売られることはなかった模様。
2013(平成25)年の秋から、主に東急ストアの駅弁大会で売られる、駅で売らない疑義駅弁。杉本食肉産業の「尾張牛」を使う牛丼。白御飯を牛しぐれ煮で覆い、煮玉子、ニンジン、紅生姜、きしめんサラダを添える。牛丼の部分は普通の味で、きしめんに名古屋を感じた。価格は2014年の購入時で880円、2017年時点で910円。どうもなぜか初秋に限り東京で売られる模様。2018〜2019年の駅弁大会シーズン限りで終売か。2020年時点で中部国際空港の空弁になっている模様。
※2021年3月補訂:現況を追記2011(平成23)年6月22日に中部国際空港で、メディア上で暴れる花畑牧場と名古屋の駅弁屋でもある調製元との「コラボ商品」として発売。赤いプラ製トレーを接着した長方形の容器に透明なふたをして、商品名を書いた黒いボール紙の枠にはめる。中身は白御飯の上を豚焼肉と錦糸卵で覆い、山菜醤油漬と落花生煮と柴漬けを添えるもの。
ホエー豚ブランドの弁当はもはや、各地の空港や催事でおなじみ。バターのような脂が多くを占める豚焼肉が柔らかくもしつこい。一方で千葉の駅弁ではないのにピーナツ煮を詰めるのはユニーク。この催事場では近鉄名古屋駅の駅弁を名乗ったが、そんな販売実態はない模様。ここではいつものことだから諦めるしかない。現存しない模様。
※2017年5月補訂:終売を追記2006(平成18)年の春頃に発売か。ちょっと大きめな長方形の容器に透明なふたをして、商品名をしっかり書いた黒いボール紙の枠にはめる。中身は白御飯の上に味噌だれを絡めた尾張牛の焼肉を貼り付け、煮玉子半分、キムチもやし、青しそ高菜、つぼ漬けを添えるもの。2011年頃までの販売か。
尾張牛とは、杉本食肉産業株式会社が2006年から商標を持つ愛知県産の牛肉。だからこの駅弁には「お肉の専門店スギモト」のマークがパッケージに記される。
※2015年10月補訂:終売を追記2009(平成21)年の秋までに発売か。長方形の容器に透明なふたをして、商品名を書いたボール紙の枠にはめる。中身は白御飯の上にもやし炒めを敷き、「とんテキ」なる豚焼肉を載せて、落花生煮と春雨酢の物を添えるもの。味噌カツだらけの名古屋駅弁の中で、珍しい醤油系のたれをまとう豚肉駅弁。固く歯応えのある豚肉も、全国各地で柔らかさを競う昨今としては珍しい感じ。価格は2010年の購入時で780円、2014年4月の消費税率改定で800円。2015年までの販売か。
とんてきは、三重県四日市市がご当地グルメを名乗る豚肉料理。コミュニティ放送局「エフエムよっかいち」内にある「四日市とんてき協会」のウェブサイトによると、「豚のロースを使い、分厚く切った肉を、ニンニクとラードで焼きあげ、 ソース味のタレがかかっているもの」が定義だそうな。四日市は名古屋から近鉄電車で約30分の近さであるが、決して名古屋のベッドタウンではなく、国土交通省の統計上も独立した都市圏を持つ工業都市。しかし近鉄やJRの四日市駅に駅弁はなく、近隣の駅弁販売駅は名古屋か松阪か亀山となるため、名古屋の駅弁になってしまうのは仕方がない。
※2019年8月補訂:終売を追記2004(平成16)年までに発売か。長方形の容器に赤い掛紙を巻いて、食品表示ラベルを貼りプラ帯で留める。中身は白御飯に飛騨牛すき焼き肉を載せ、赤かぶ漬や数点の煮物を添える。
柔らかさと風味が生かされ、薄さや分量の少なさを感じさせない牛肉に、新幹線の駅弁として評価が高い。一方で、容器の安っぽさや付け合わせのスカスカな見栄えは要改善点。いっそのこと牛丼に絞れば、みそかつ・エビフライ・ひつまぶしが人気で注目な名古屋駅弁に、クサビをひとつ打ち込めるかも。2010年頃までの販売か。
飛騨牛は「岐阜県内で14ヶ月以上肥育された黒毛和種で、日本食肉格付協会が実施する枝肉格付で肉質等級A・Bで5等級、4等級、3等級のもの」と定義される。肉質等級「B−3」までOK、美濃で育ててもOKと、ブランド牛にしては条件が緩いような。1980(昭和55)年に兵庫県で生まれ、翌年に岐阜県が購入し、1993年に亡くなるまでに4万頭で抜群の成績を残した種牛「安福(やすふく)号」が、岐阜県の肉牛生産を大きく底上げした。
※2015年10月補訂:終売を追記名古屋の豚肉駅弁なのにミソカツでない、珍しい存在。無駄な広さを感じさせるデザインの紙箱に赤いトレーを入れて、食品表示のシールで封をする。中身は白飯と、なぜか宮崎産地鶏の鶏飯の俵飯を中央に配置、その左右にザーサイ等の付け合わせを添え、上方に愛知産豚肉の角煮、愛知産奥三河鶏の照焼、鶏つくねやベーコンアスパラやブロッコリーフライを置く。
味は良いが、価格と中身のバランスやパッケージのアピール度は他の名古屋駅弁に劣るので、近いうちに消えそうな感じ。そうでなくても名古屋の駅弁は新陳代謝が激しいので、美味い駅弁や評判を集めた駅弁でも、数年後に再訪すると影も形もないことが当たり前である。これも2004年には終売か。
ホカ弁やコンビニではありふれているが、駅弁ではなかなかお目にかかれないハンバーグ弁当の名古屋版。洋風建築と海外風地図をセピア色で印刷した白い紙箱を真っ赤な帯で締める。中身はしそ御飯に目玉焼、スパゲディ、エビフライ、ポテトフライとハンバーグ。
その味について、パッケージでは「老舗洋食店にも引けを取らない絶妙な味!」と強気なものの、特にハンバーグやスパゲティあたり、ホカ弁と大して変わらないと感じられた。あるいは名古屋の老舗洋食屋のレベルはこの程度なのかどうか。名古屋の駅弁で同じ肉なら鶏を選択したほうが無難。現存しない模様。