東京駅から新幹線で3時間弱。神戸市は兵庫県の南東部で大阪湾に面する、人口約150万人の港町。古代からの湊は1868年の開国開港で関西を代表する港湾都市となり、異国情緒や夜景で有名な観光地でもある。駅弁は第二次大戦後に神戸へ移転した駅弁屋の、肉や洋食や新幹線型など、様々な駅弁が賑やかである。1972(昭和47)年3月15日開業、兵庫県神戸市中央区加納町。
2022(令和4)年10月1日から31日まで、新神戸駅や西明石駅など関西各地と東京駅で販売。駅弁の名前は「むかしの駅辨當」とも。日本鉄道構内営業中央会の鉄道開業150年記念復刻駅弁企画により、同月から期間限定で販売された31社34駅弁のひとつ。昔懐かしの掛け紙を用いた幕の内弁当ということで、外食券の文字と百円の定価表示から、1950年代前半、昭和20年代後半のものと思われる駅弁掛紙の絵柄を取り入れたのだろう。
中身は、たくあんを添えた日の丸御飯に、焼サワラ、かまぼこ、玉子焼、そして牛肉煮、タコ煮、れんこんとにんじんとこんにゃくの煮物、昆布巻など。容器が今風のチープなプラ製なので雰囲気がなく見逃されそうだが、この内容は昭和20年代あるいは第二次大戦前の、鉄道駅で売られた並等のお弁当、のちの普通の幕の内駅弁の姿が、大きさも内容も具材の詰め方でも、なかなか再現されたように思える。団塊の世代の親世代か、研究者レベルの駅弁ファンでないと、きっと気が付かないこだわり。これを経木折で立ち売りでもしたら、隣の姫路駅の元祖幕の内弁当に並ぶ、注目に値するイベント向け駅弁になりそう。
1990年代の発売か。正方形の容器にかかるふたには神戸の名所が描かれ、2021(令和3)年11月からは「神戸名所20巡り」として20種類ものイラストを描き、そのすべてに解説が付いて分かりやすくなった。中身は和洋の幕の内弁当タイプで、中央に日の丸俵飯を据え、その周囲の12区画に玉子焼と焼鮭、昆布巻などの煮物、牛肉煮、海老煮とレンコン煮、刻みアナゴ、さつまいも、サトイモなどの煮物、鶏つくね、鶏肉煮、タコ天、いかなごくぎ煮、小松菜おひたしなどのおかずを配置。おかずが豊富で、ワインよりビールか日本酒が合いそう。価格は2005年時点で1,100円、2014年4月の消費税率改定で1,130円、2022年3月から1,150円。
※2023年1月補訂:写真を更新2021(令和3)年12月3日に購入した、新神戸駅弁のふた。上記の2022年9月のものと、イラストや内容は同じ。容器も中身も味もほぼ同じ。不思議なことに、イラストの位置が微妙に異なる。
2017(平成29)年2月5日に購入した、新神戸駅弁のふた。新神戸駅弁「神戸食館」について、2017(平成29)年の神戸開港150年を記念し、同年中は神戸市役所に設置された神戸開港150年記念事業実行委員会の公式ポスターと同じ絵柄を、駅弁のふたの絵柄とした。中身や価格は通常版と同じ。
2005(平成17)年8月1日に購入した、新神戸駅弁のふた。神戸の名所を描く新神戸駅弁「神戸食館」のふたについて、当時は「中央区北野町 異人館通り」として、旧ディスレフセン邸やシュウエケ邸あたりの洋館を描いた。現在の神戸市の北野町山本通には、江戸時代末期の開国により、当時は「異人(いじん)」と呼ばれた外国人がここに住み始め、以後に開発や戦災を受けなかったことで、明治時代から戦前昭和までに建てられた外国人向け住宅が100棟以上も残された。1980(昭和55)年4月には国の重要伝統的建造物群保存地区に選定。三宮駅や新神戸駅の徒歩圏という利便性による開発や1995(平成7)年の阪神淡路大震災による被災で、その数を何割も減らしているが、神戸を代表する名所として観光客が多く訪れる。
入手状況から1994(平成6)年4月23日8時の調製と思われる、昔の神戸駅弁の掛紙の一部。神戸の名所は描かれていない。当時のバブル経済に浮かれていない、シンプルな絵柄だと思う。
「旅の幕の内弁当」の名前で、2012年より前に発売か。調製元は神戸の駅弁屋だが、神戸エリアでなく主に大阪エリアで売られる弁当と考えられる。ふたには神戸に限らず京阪神エリアの名所が8点描かれる。正方形の9区画に収めた中身は、日の丸御飯、赤飯、たこ飯、牛肉煮、焼鮭とかまぼこと玉子焼、きんちゃくとかぼちゃとにんじんの煮物、鶏つくね串と菜の花、海老の包み揚げとサツマイモ天、煮豆としば漬け。内容の4割くらいが幕の内弁当という、車中食に向いたなんでもまるごと弁当。
詳細不詳。新神戸駅弁の淡路屋が、駅弁と見なさないが駅弁売店でも売る季節弁当ではないかと想像する。仕出し弁当向けにも見える、ボール紙箱にプラ製トレーを入れた折り箱に、カニ飯、牛すき焼きと煮玉子、タコやダイコンなどの煮物、玉子焼と小松菜おひたし、五色豆煮、餡入り餅などを詰める。そんな内容はまったく幕の内弁当でなく、御飯もおかずも内容どおりの美味。駅弁であれば、他の駅弁屋であれば、気の利いた名前を付けて売るのではないかと思う。
経木枠の正八角形の容器を二段に積み、経木でふたをして、「お弁当」と書かれた正方形の掛紙で包む。中身は下段が日の丸俵飯に箸休め、上段がおかずでサトイモやタケノコなどの煮物、キス天ぷら、海老串団子、タコ旨煮、有頭海老、ホタテ照焼、サケ焼、牛肉煮、菜の花煮、煮豆など。おかずがずいぶん盛り沢山であり、味は確かな神戸駅弁だが、本品はいったい昔ながらの幕の内駅弁なのか、駅弁らしくない仕出し弁当なのか。調製元の公式サイトでは「名物駅弁」ではなく「お重弁当」のページに掲載されている。
1990年代、または2005(平成17)年の年末までに発売か。ふたの絵柄は2021年11月のリニューアルで、「神戸食館」とともに地元のイラストレーター・都あきことのコラボによる神戸のデザインとなった。中身は白ごまの日の丸俵飯、焼サバとかまぼこと玉子焼、牛肉煮ときんぴらごぼう、ハンバーグとブロッコリー、かぼちゃコロッケと焼ビーフン、スコッチエッグと鶏つくねとウインナー、サトイモやれんこんなどの煮物など。調製元はこれを幕の内弁当に分類し、確かに幕の内駅弁の俵飯と三種の神器を備える。価格は2010年の購入時で900円、2020年時点で920円、2022年3月から950円、2023年時点で980円。
※2023年10月補訂:値上げを追記2010(平成22)年5月2日に購入した、神戸駅弁のふた。上記の駅弁「神戸デリカ」のとおり、2021年11月にふたの絵柄が変わるまで、この神戸の街並みをペン画で描くデザインが、長らく使われた。容器は上記の2022年のものと同じ、中身もほぼ変わらない。
2017(平成29)年10月14日の発売は、JR発足30周年記念駅弁であり、JR西日本のJR発足30周年記念企画「西日本駅弁ランキング」の開催に合わせたもの。平たく広い正方形の容器に、型押し日の丸俵飯、たこやき、串カツ、牛肉煮、焼サバ、玉子焼、たこボールなどの煮物、いかなごくぎ煮などを詰める、幕の内弁当の変わり種。ただ、「西日本」といいながらパッケージの地名は京都・大阪・兵庫・岡山・広島しかなく、その5地点5種で「味めぐり」とまで主張できるかどうか。2019年頃までの販売か。
※2021年3月補訂:終売を追記2007(平成19)年1月12日に発売か。長方形の容器に透明なふたをして窓開きのボール紙枠にはめるという、この駅弁屋の空弁で見たような大きさと構造の、中身が見える容器を使う。中身は鮭ちりめんおにぎりと胡麻振りおにぎり、蒲鉾と干サンマと牛肉煮に、煮玉子と煮物数点に梅干しなどで、つまり小さな和朝食。
それよりも何よりも、パッケージでおにぎりがあわてた顔で「とっくに朝ー。」「またしても…。」としゃべることに、とても身につまされる思いがして、これが印象に残る。商品ストーリーに遊び心がいっぱいな、朝食用駅弁。現在は販売されていない模様。
※2013年5月補訂:終売を追記山陽新幹線の車内で、幕の内弁当と案内されて購入した神戸駅弁。枠と仕切りに経木を使用した正方形の容器に、ふたと掛紙を兼ねたボール紙を載せてワイン色のひもでしばる。中身は幕の内なんてとんでもなく、イカナゴ釘煮を添えたいりこと菜の俵飯とタコ入りいなりずしの御飯に、鱧(はも)のフライ、鰆(さわら)の焼き魚、海老団子、タコ焼に蛸足にイイダコという具合に海産物の風味豊かな内容。ふたを開けるだけで香るタコの旨さと柔らかさが特に良かった。容器内の隙間も個々の食材の形の良さにより高級感を生み出す方向に働く。現在は販売されていない模様。
※2013年5月補訂:終売を追記淡路屋創業百周年記念百種弁当シリーズの第4弾とある。このキャンペーンの情報は公式サイトにもないため詳細は不明だが、おそらく幕の内弁当の掛紙を百種作り順次置き換えているものと思われる。
ふたと枠が経木の長方形の容器に掛紙をかけて紙ひもでしばる駅弁らしいスタイル。中身は日の丸御飯が俵飯でないのが昔の駅弁当らしくない気はするが、焼き魚(サワラ味噌漬焼)・蒲鉾・玉子焼の3種を押さえ、煮物が折り重なる姿はいい感じ。価格も良い。ビーフの風味が濃厚な牛肉煮を入れて、掛紙とともに神戸をアピールしている。2013年までの販売か。
※2019年8月補訂:終売を追記洋風な名前で実は純和風の駅弁。経木枠の長方形の容器に、戦前の駅弁の掛紙を転写した紙のふたをかけて麻ひもでしばる。丹後地方の郷土料理を詰めたという中身は、真ん中に笹を載せた山菜御飯が入り、周囲を煮物や鮭塩焼や玉子ロールや合鴨味噌漬焼や揚団子やポテトサラダなど、書き列べるとやはり洋風な気もする具で囲む。現在は販売されていない模様。
※2013年5月補訂:終売を追記1988(昭和63)年1月10日9時の調製と思われる、昔の神戸駅弁の掛紙の一部。その絵柄は、下記の1979(昭和54)年のものと同じ。JR西日本のロゴマークが付くが、JR西日本が調製したものではない。1987(昭和62)年の国鉄分割民営化の頃は駅弁の掛紙に加え、JR各社が出したものではない市中の地図や広告などに、このJRマークが広く使われていた。
1980年代のものと思われる、昔の神戸駅弁の掛紙。神戸が誇るウォーターフロント「ポートアイランド」の第1期分が、背景の市街地や六甲山とともに描かれる。
入手状況から1979(昭和54)年7月の調製と思われる、昔の神戸駅弁の掛紙の一部。神戸の市街地や異人館街などが、ぼんやりと描かれる。
昭和40年代頃の調製と思われる、昔の神戸駅弁の掛紙。須磨浦公園ロープウェイの写真が載る。この画像や調製元の所在地に市外局番などから、調製年が特定できないであろうか。
昭和40年代頃の調製と思われる、昔の神戸駅弁の掛紙。1963年竣工で現在も神戸名所のひとつである神戸ポートタワーのイラストが載る。右端に駅弁「肉めし」の誕生が伝えられるので、その発売年である1965年頃のものであろうか、右上部記載の受賞歴から年代を特定できないかと思う。
昭和40年代頃の調製と思われる、昔の神戸駅弁の掛紙。当時の神戸名所のイラストがスタンプ調にシンプルに描かれる。画像からは切れてしまっているが右端に1970年開始の国鉄の旅行キャンペーン「DISCOVER JAPAN」のマークがあること、1972年に開業した「新神戸駅」の記載があることから、同年以降の調製であると思われる。
1974(昭和49)年の調製と思われる、昔の神戸駅弁の掛紙。1874(明治7)年の大阪〜神戸間の鉄道の開通から100年を記念して、その印を付したうえで、神戸に何らかのゆかりがある蒸気機関車の側面イラストを5点掲載する。国鉄の蒸気機関車が全国各地で引退を続け、その光景を新聞や雑誌がさかんに報道、SLブームが最高潮に達した頃の掛紙。
1973(昭和48)年の調製とされる、昔の神戸駅弁の掛紙。デザインはふたつ上のものと同一であるが、調製印の位置や調製元の表記に差異が見られる。
第二次大戦前の調製と思われる、昔の神戸駅弁の掛紙。絵柄は下記ものと同じで、色が異なる。何らかの使い分けがあったのだろうか。
第二次大戦前の調製と思われる、昔の神戸駅弁の掛紙。調製印と思われる扇形のスタンプが押されているが、その内容は読み取れない。掛紙では神戸駅北徒歩3分の湊川神社を描いている模様。日本の鉄道開業と同じ年の明治5年(1872年)に創建された。