秋田駅から特急列車で1時間半弱、奥羽本線が花輪線を分ける駅。大館市は秋田県の北部で大館盆地と米代川を持つ、人口約7万人の城下町。明治時代から昭和時代にかけて鉱山で栄えた。駅弁は国鉄時代からの駅弁屋が今も調製する「鶏めし」が有名で、駅前にビルを構えるほか、改札外駅舎内のコンビニに駅弁を卸す。1899(明治32)年11月15日開業、秋田県大館市御成町1丁目。
1947(昭和22)年に大館駅で発売。大館と言えば鶏めし、鶏めしと言えば大館。物資がなく全国の駅弁が販売休止に追い込まれていた終戦直後の1945(昭和20)年8月に、米や砂糖や醤油などの支給を受けた駅弁屋さんがこれをまとめて炊いてみたことが、この「鶏めし」の原型になったという。
長方形の容器に透明なふたをして、この駅弁の目印となる真っ赤な掛紙を巻く。中身は秋田米あきたこまちを鶏ガラスープと醤油などで炊いた御飯の上に、甘辛な比内地鶏のぶつ切り煮と炒り卵やくりなどを置き、煮物や漬物を添えるもの。飯にも鶏にも甘みがあり、全国にその名を轟かす味はなんとも奥が深い。
2002(平成14)年1月には日本最大規模の駅弁大会を開催する京王百貨店で、鹿児島本線小倉駅「特製かしわめし」とともに実演販売で主役を演じ、13日間で16,630個を売り切った。2003(平成15)年12月から秋田空港での販売が開始され、「空弁」の一員にもなった。駅弁催事などでの輸送販売や夏場には、炒り卵が錦糸卵に差し変わることがある。
2015(平成27)年にはJR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2015」で最優秀賞の「駅弁大将軍」に選定。年に47万個が売れるという。価格は2003年時点で850円、2014年時点で880円、2019年6月から900円、2023年時点で920円、8月時点で950円、2024年時点で980円。
※2024年9月補訂:写真を更新し値上げを追記大館駅の新駅舎開業を祝い、ハチ公生誕100周年を記念し、2023(令和5)年10月1日に大館駅や秋田新幹線各駅に青森、新青森、盛岡、東京駅などで発売、11月まで販売の予定。表面に大館駅舎のイラスト、ハチ公生誕100年のロゴマーク、有浦小学校6年生大館新駅舎開業応援プロジェクトのロゴマーク、そのプロジェクトの紹介文などを描き、裏面ではおしながきと大館駅の年表を記す、情報量の多い掛紙を使う。
容器は普段の大館駅弁にない、木と紙を貼り合わせた楕円形。大館駅弁の鶏めしに、100周年かまぼこを貼り、いんげんとしば漬けを添え、枝豆入りしゅうまい、中山そばと鶏ささみのごまドレッシング和えのカップ、比内地鶏のハンバーグ、とんぶり入り鶏唐揚、かまぶく、いぶり大根のクリームチーズ添えを詰める。中身にも情報量が多いと思う、鶏めしベースの記念駅弁。
大館駅の駅舎は老朽化のため、大館市の駅周辺整備事業で建て替えられることになった。1955年12月築の鉄筋コンクリート造2階建の駅舎から、2022年1月14日にプレハブの仮駅舎へ移転し、2023年10月29日に鉄骨造2階建ての新駅舎に再移転。そのいずれにもJR東日本の駅のコンビニ「ニューデイズ」が入居し、大館駅弁はそこで買える。かつて大館駅舎と対面していた忠犬ハチ公像は、この事業の影響で2019年2月に、駅から少し離れて新設された大館市観光交流施設「秋田県の里」の敷地内へ移設された。
2015(平成27)年11月に大館駅前の調製元で発売。2011年4月に発売した「わっぱ鶏めし」の、緑色の掛紙と丸い容器を、朱色の掛紙と四角い容器に変えたものか。二段に重ねた正方形の容器の、下段が鶏飯に炒り卵を載せた大館と駅弁で名物の鶏めし、上段がおかずで鶏肉のパン粉揚げ、れんこんの竜田揚げ、サツマイモのレモン煮、みずの生姜和えなど。駅弁の鶏めしの、鶏飯を減らしておかずを増やした感じで、値段は破格の550円という出血大サービス。わっぱ鶏めしの頃と同じく、前日朝までの要予約で、駅でなく調製元で受け取る。
2020(令和2)年1月29日に日本の大館駅などとフランス・パリの弁当店「1899 ToriMeshi」で発売。掛紙は大館駅の名物駅弁「鶏めし」の文字や絵柄と、フランス国旗の三色旗(トリコロール)でできている。中身は口を開けて具を見せたおいなりさんが3個と枝豆入りかまぼこ。稲荷皮に鶏めしを詰め、むきエビと大館産枝豆、鶏の甘辛煮とそぼろ玉子、サーモンとわかめを載せた。真ん中の親子いなりでは定番を、左右の具と伝統の飯ではミスマッチを味わえる、おいなりさんや稲荷寿司駅弁の固定概念を少し覆した構成は、外国での販売を意識したものか。安価で小柄で食べやすい。価格は2020年の発売時や2021年の購入時で590円、2023年時点で630円。
※2023年8月補訂:値上げを追記2016(平成28)年10月1日に、11月30日までの期間限定駅弁として発売。同じ期間でJR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2016」が開催され、ここにエントリーしているため、そのための駅弁でないかと思う。上の通常の「鶏めし」の、赤い掛紙を黒と金色に変え、鶏を比内地鶏にして、ナスや練り物などのおかずを増やした上等品。そのはずが、たまたまかどうか、鶏がとても固くて塩辛く、甘めの飯ともミスマッチで、これならば通常版のほうがうまいのではないかと思ったところ。
12月以降も販売を継続し、下記のとおり「特上鶏めし」が終売となった。価格は2016年の発売時で1,200円、販売の継続後に1,180円、2020年時点で1,200円、2023年時点で1,300円。
※2023年8月補訂:価格の改定を追記2020(令和2)年6月に期間限定で発売、7月以降も販売を継続。調製元は8月23日に「第一回大食い大会」を開催し、2回で8名ずつの挑戦者が制限時間30分で完食に挑んだ。大館駅の駅弁「鶏めし」の8人前。直径40センチの大皿に、1.6キログラムの鶏飯を敷き、鶏肉の甘辛煮を約280グラム載せ、炒り卵といんげんと栗甘露煮と飾り麩で彩る、内容量約2キログラムの巨大な駅弁。
その発売は地元のテレビや新聞で紹介され、この種の駅弁では福岡県の折尾駅「鉢盛かしわめし」に次ぐ知名度を得たと思う。掛紙に代えて透明なふたに貼り付けたシールは、「鶏めし」の掛紙よりも小さかった。事前の予約がなくても、大館駅前の調製元で注文できることがあるという。価格は2020年の発売時や2023年の購入時で4,320円、同年8月時点で4,500円。
※2023年8月補訂:値上げを追記2020(令和2)年1月に発売、同月の京王百貨店の駅弁大会で実演販売。1970年代に大館駅で売られ、2014年に復刻販売された大館駅弁「鶏樽めし」の、プラ製樽形の容器を金色にして、掛紙も同じような色に変えた。中身は通常版の鶏めしの、炊込飯と鶏肉煮と炒り卵、枝豆入蒲鉾と椎茸と麩と漬物に、クリと金箔を追加して金色を増やした。この年の夏に東京で開催を予定していた、五輪の金メダルにちなんだとは言われていない。2月か3月には終売。3月30日には東京五輪の1年延期が発表された。
※2021年3月補訂:終売を追記2020(令和2)年1月18日に購入した、大館駅弁の掛紙。今回の京王百貨店の駅弁大会での実演販売では、通常版の鶏めし、上記の「金の鶏樽めし」と、この1964(昭和39)年当時の掛紙をかけた通常版の鶏めしを販売した。前回の東京五輪の開催年にちなんだとは言われていない。
大館駅の名物駅弁「鶏めし」の、2017(平成29)年10から11月まで販売された復刻版。30年前の1987(昭和62)年のものを再現したそうで、メインの鶏飯の部分は同じながら、ホタテ、「いそあげ」、奈良漬など、現行版にないおかずが入る。この2か月間は、通常版の販売を休止した。
公式サイトによると『掛け紙はもちろん箸袋・お手拭きまで当時のデザイン』だそうだが、掛紙には「東北大陸から」という、1987年でなく1995(平成7)年から1998(平成10)年頃までのJR東日本のキャンペーン名が、しっかり入っていた。JR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2022」の開催に合わせ、加えて日本鉄道構内営業中央会の鉄道開業150年記念復刻駅弁企画により、同月から期間限定で販売された31社34駅弁のひとつとして、おかずを昭和60年当時のいそ揚げ、ホタテ甘露煮、なら漬、紅生姜にして、1,100円で2022年10月から11月まで1,100円で再販した。
※2023年4月補訂:再販を再追記2016(平成28)年1月の京王百貨店の駅弁大会でデビュー。その前月に盛岡駅の駅弁売店で売られたそうで、2014年2月の地元のお祭り「大館アメッコ市」でも同じ名前で似た内容の弁当が売られたらしい。京王百貨店駅弁大会の終了とともに終売と思ったら、同年6月に「モンドセレクション2016」で優秀品質銀賞というニュースが流れ、以後は販売されている模様。
中身は、通常版の鶏めしから鶏肉を省いた御飯に、骨なし鶏むね肉の竜田揚2個と、骨付き鶏手羽先の竜田揚1本を付け、タケノコ漬物と柴漬けを添えるもの。安価なこともあり、分量は通常版の鶏めしの半分くらいで、鶏肉はまるで焼き鳥のサイズ。パッケージの宣伝文「やわらかくジューシー」とは一線を画す、きつく締まるが固いわけでない鶏唐揚に、大館駅弁の特長を感じた。2018(平成30)年3月限りで終売。
※2018年8月補訂:終売を追記2016(平成28)年1月7日に購入した、大館駅弁のパッケージ。「からあげ鶏めし」の発売当初は、掛紙でなくボール紙枠を使い、モンドセレクションの表記がなかった。中身や味や容器や価格は、翌2017年に購入したのものと同じ。
2014(平成26)年10月に、翌年3月までの期間限定で発売。昭和45年頃から51年頃に大館駅で売られていた駅弁を、秋田県での国民文化祭などの開催に合わせて復刻し販売した。今回のために復刻した、赤いプラ製の「樽」を名乗る容器に、大館駅弁名物の鶏めしを詰め、鶏肉煮、ホタテ甘露煮、玉子焼、かまぼこ揚げ、シイタケ、クリ、漬物を載せる。
添付のチラシには、販売と復刻の苦労話がしっかり記される。容器を作る金型が壊れたため販売を取りやめた、掛紙は当時と変わらないクラフト紙に印刷、容器の樽のふたが社内で見つからなかったため新聞広告で呼び掛けた、など。容器や掛紙や中身に加えて、おてふきや箸袋も40年前を再現した、質の高い復刻駅弁。味も現行の鶏めしと変わらないおいしさ。予定どおり2015(平成27)年3月限りで売り止めたが、2015年9月の東京駅や2016年11月の新大阪駅など、ごくまれに復刻駅弁の復刻販売が行われている模様。
大館駅の駅弁「鶏めし」の、おかずが増量されたもの。揚げ物やなすの煮付けなどが加わり、鶏飯に劣らない味を出しているが、掛紙の上質な肌触りは指が覚えてしまうもので、立派な旅の記念品になると思う。予約制で、駅前の駅弁販売所で購入が可能。「比内地鶏の鶏めし」の発売により、2016年10月に販売を休止、同駅弁の販売継続により、12月に終売となった。
※2016年12月補訂:終売を追記2008(平成20)年10月11日から13日までの大館駅での予約販売と、同12・13日の両日に東京駅構内で開催された「東日本縦断駅弁大会−秋−」で、合計400個が販売された特製弁当で、前年の「曲げわっぱ『黒』鶏めし」に次ぐ第二弾。秋田杉の間伐材を使った大きな大きな木製容器に、おはし、しおり、おてふき、購入証明書申込ハガキを入れた封筒を置き、秋田の山の風景を印刷した掛紙を巻いて、ひもでしばる。
中身はマイタケ御飯に比内地鶏、しめじなどのキノコ炊込飯、クマ肉の角煮、ヤマイモの片栗揚げ、アユの塩焼き、ししたけの天ぷらなど17種が列記される盛り沢山。原材料はすべて地元産で、キノコは天然であることも、おしながきに記される。価格も内容もコンセプトも完璧な、おなかいっぱいの限定記念商品。クマ肉は脂身豊かな角煮で、色彩は黒くワイルドだったが、臭みは感じられなかった。
東京駅では前回が大人気であったため、今回も整理券対応で人気に備えていたが、12日も13日も昼下がりで客待ちをする空振りに終わっていた。JR20周年、大館曲げわっぱ、比内地鶏とイメージが付きやすいキーワードを持っていた前回と異なり、今回のキーワードは「マタギ」=クマ猟師であったため、その意味を解説する必要があった東京では苦しかったのだろうし、あるいはクマ肉が避けられてしまったのだろうか。
2019(平成31)年1月13日に購入した、大館駅弁の掛紙。京王百貨店の駅弁大会で購入。掛紙も容器も中身も、下記の2011年のものや、上記の2024年のものと、だいたい同じ。調製元の創業年の表記が和暦から西暦に変わり、「新おかずが仲間入り!!」の表示がある。
2016(平成28)年2月13日の調製と思われる、大館駅弁の掛紙。天正16年(1588年)から続く伝統行事で、毎年2月の第2土曜日とその翌日に行われ、この年は2月13〜14日に開催された地元のお祭り「大館アメッコ市」で販売されたもの。つまり駅弁ではないが、掛紙には駅弁マークがついている。中身は鶏めしにコロッケを添えたものだったようだ。
2011(平成23)年9月23日に購入した、大館駅弁の掛紙。絵柄は2006年のものと変わらないが、調製元の創業年月日が加わり、食品表示が強化された。現地で購入すると消費期限がシールでなく判子になるのかどうか。
2010(平成22)年10月9〜11日に東京駅で開催された「第12回東日本縦断駅弁大会」で販売された、大館駅弁「鶏めし」の復刻版。ただし復刻されたのは掛紙の絵柄だけであり、中身や価格は通常版と同一。
2010(平成22)年10月9〜11日に東京駅で開催された「第12回東日本縦断駅弁大会」で販売された、大館駅弁「鶏めし」の復刻版。中身は現在のものと同じ。食品表示ラベルを貼らず別のしおりにしたのは粋だが、いつのものを復刻したのかはどこかに書いて欲しかった。
2010(平成22)年10月9〜11日に東京駅で開催された「第12回東日本縦断駅弁大会」で販売された、大館駅弁「鶏めし」の復刻版。中身は現在のものと同じ。国鉄分割民営化以後の掛紙も、こうやって復刻の対象になる時代になった。
2006(平成18)年6月18日7時の調製である、大館駅弁の掛紙。2003年のものと比べて、調製印がシール貼りに変わったが製造年月日の記載が復活し、JR東日本のキャンペーンのロゴマークが消え、容器包装リサイクル法に基づく識別表示と、ホームページとiモードのURLが加わった。
2003(平成15)年3月2日の調製である、大館駅弁の掛紙。1990年代の下記のものに比べて、日本鉄道構内営業中央会の駅弁マークが入り、JR東日本のキャンペーンのロゴマークが変わり、調製印が消費期限印に変わり、バーコードや食品表示や調製元所在地の情報も書き加えられた。価格は50円の値上げ。
1990年代のものと思われる、昔の大館駅弁の掛紙。意匠は2012年現在のものと変わらないが、法令等の違いにより表示がとてもシンプルであると感じる。
昭和40年代のものと思われる、昔の大館駅弁の掛紙。大館の駅弁といえば、最近は赤い掛紙の「鶏めし」一本で知られていると思うが、駅弁や駅弁名や掛紙の変遷はけっこうあるようで、調製元の公式サイトでも様々な絵柄を楽しめる。