東京駅から東北新幹線で約1時間20分。東北新幹線と東北本線、磐越西線、磐越東線が接続し、水郡線の列車が乗り入れる駅。郡山市は福島県の真ん中に位置する、人口約32万人の宿場町。明治時代に発展した農業に加えて、鉄道や国道や高速道路が四方から集まる立地に商工業が集積、東北地方で仙台に次ぎ福島を上回る都市圏を形成する。駅弁は明治時代から売られ、昭和時代から2010年代まで複数の駅弁屋が競った。1887(明治20)年7月16日開業、福島県郡山市燧田。
1988(昭和63)年までに郡山駅で発売か。楕円形の容器に茶飯を詰め、栗甘露煮、山菜醤油漬、かまぼこ、ゆで銀杏で覆い、椎茸や人参などの煮物と漬物を添える。栗の量と甘さがたっぷりな山菜飯。調製元の公式サイトでは期間限定または販売休止と表記される駅弁であり、現地でもスーパーやデパートの駅弁大会でも過去約20年出会えずにいて、今回は会津若松駅のコンビニで見つけて驚いた。栗飯や山菜の駅弁が親しまれた昭和時代または1990年代までの姿を、内容や掛紙の絵柄に残す、懐かしさを覚えるタイプの駅弁。
2020(令和2)年4月に郡山駅で発売し、福島駅や新白河駅でも販売。現物に直接は記されないが、NHKの連続テレビ小説「エール」の放送開始に合わせたものだろう。黄色い掛紙の表面には音符とピアノとおしながき、裏面では作曲家の古関裕而を紹介する。
中身はあさか舞コシヒカリの真っ白な俵型の型押し飯に、牛肉煮、川俣シャモのナゲット、高野豆腐と椎茸と人参の煮物、里芋と豆みそ、焼鮭とかまぼこと玉子焼、若桃甘露煮と紅白さくら漬で6区画のおかず。海苔と御飯でピアノの鍵盤を模していた。
古関裕而(こせきゆうじ)は、福島県福島市に生まれ、昭和時代の東京で活躍した作曲家。戦前、戦中、戦後にまたがり約5000曲を作曲したといわれ、当時の流行歌も多数。今もテレビで流れる高校野球のテーマソングや、プロ野球の巨人や阪神の球団歌、教科書に載った合唱曲など、名前を知らなくても聞いたことがあるような曲があるはず。
2018(平成30)年10月17日に発売。同月6日の東京都の日比谷公園での国土交通省「第25回鉄道フェスティバル」で先行販売。歌手の泉谷しげるがプロデュース。掛紙の色や柄は同氏のデザインであり、中身の選定も本人が手掛けたという。2011(平成23)年3月の東日本大震災と原子力発電所の事故から7年が経過しても、風評被害に悩む福島県民を応援するために、駅弁の開発を呼び掛けたのだそうな。
12区画の中身は、郡山産「あさか舞」コシヒカリのしめじごはん、梅と白飯、アサリと茶飯、福島県産牛肉煮ときんぴらごぼう、麓山高原豚の炙り焼、伊達鶏の酒粕味噌焼、含め海老芋から揚げ、三春三角揚げと玉こんにゃく煮、ニシン昆布巻と玉子焼、メヒカリ唐揚と焼きかまぼこ、福島県産若桃の甘露煮と白桃シロップ煮、なめこそばの実あえと赤かぶ漬。福島や郡山をたっぷり詰めた、なんでもまるごと駅弁。12月までの販売か。
2015(平成27)年4月から6月までのJRグループの観光キャンペーン「ふくしまデスティネーションキャンペーン」の開催に向けて、前年の2014年6月に予約限定で発売か。3か月のキャンペーン期間中に郡山駅で販売、以後も春と秋の販売または予約販売が続く模様。2017(平成29)年10月にはJR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2017」にエントリーされた。
中身は12区画に次の12種類。添付の冊子「別冊おもてなし女子駅弁」で、地域の名所や女性の写真が美しく紹介される。10年前であればおそらく「福島まるごと辨當」の名で売られたであろう、なんでもまるごと駅弁。おいしいお弁当であるが、買うのに抵抗感がある名前だとは思う。2017年までの販売か。
JR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2016」へのエントリーに向け、2016(平成28)年10月の発売か。掛紙のとおり、既存の仙台駅弁「鮭はらこめし」「えんがわずし」「金華さば棒ずし」「ウニめし」のセット。キャンペーンでは宮城県の仙台駅弁としてエントリーされ、私もてっきり仙台駅弁だと思ったら、調製元は仙台駅弁のウェルネス伯養軒でも、郡山支店の調製であった。
中身は上記のとおり、茶飯に焼鮭とイクラの鮭はらこめし、酢飯にカレイのエンガワとしめサバを載せたえんがわずしと金華さば棒ずし、茶飯に錦糸卵とカニほぐし身と蒸しウニを載せたウニめし、笹かまぼこと長なす漬とずんだおはぎを、松花堂弁当風に並べる仙台仕様。味も納得の仙台駅弁仕様。ところが具が少なく、鮭は1切れ、イクラは10粒、ウニは3粒程度、エンガワは1枚。1人前で4種の詰め込みは、欲張りすぎたと思う。価格は2016年の購入時で1,200円、2018年時点で1,100円。2018年頃までの販売か。
※2020年4月補訂:終売を追記2015(平成27)年4月から6月までのJRグループの観光キャンペーン「ふくしまデスティネーションキャンペーン」の開催に合わせて、同年3月の発売。掛紙の裏側は福島県中通りの春の観光案内になっている。中身はそこにイラスト入りで解説されるとおり、茶飯をタケノコや錦糸卵や菜の花や甘酢生姜で彩り、タラノメとエビの天ぷら、玉こんにゃくなどの煮物、ピーマンみそ田楽、鶏肉グリル、わさび菜おひたし、玉子焼などを添える。これといって特徴ある食材や料理を使っているように見えないのに、茶飯に様々なおかずを折り重ねて、食べてとてもおいしく感じる宝箱。2016年までの販売か。
※2019年8月補訂:終売を追記2011(平成23)年10月8日から10日までに東京駅で開催された「第14回東日本縦断駅弁大会」で販売されたお弁当で、過去の郡山駅弁を復刻したものだという。醤油の焼きおむすび、味噌の焼きおむすび、しその葉を巻いた梅干し入りおむすびを各1個、ラップで包んで漬物を添えて、竹皮で巻いて掛紙でも巻く。コンビニおにぎりのルーツはこんなところにあるのかと誤解してしまいそうな、内容と体裁だったと思う。この秋の仙台駅での駅弁大会でも販売があった模様。
竹皮製の容器に山村風景のイラストを描いた掛紙を巻いて、ひもで十字にしばる。中身はごま梅、しそ巻、しめじのおむすびが各1個に、鶏唐揚、玉子焼、カボチャ、玉こんにゃく、キュウリや赤カブの漬物など。内容も風味も由緒正しいおむすび弁当は、他駅の駅弁で見たような既視感ありあり。価格も少々高い。大宮駅限定商品と紹介する記事もある。2011年までの販売か。
※2015年8月補訂:終売を追記2008(平成20)年4月の東京駅「駅弁の日記念駅弁大会」で登場か。約17センチの高さがある黒いボール紙製パッケージには、相馬野間追の切り絵や写真が載る。これを持ち上げると、ひもで十字にしばられた黒い容器が登場、マス形のものが3段重ねになっている。
中身は1段がウニめし、1段が鮭はらこめし、1段がメヒカリ唐揚、焼イカ、蒲鉾天、きゅうり漬、栗などのおかず。分量より具の種類が勝り、味付けも濃いめなおつまみ系駅弁。調製元が郡山の駅弁屋なので、販売箇所も郡山駅だと思うが、相馬野馬追はその名のとおり相馬地区、常磐線が通る福島県の浜通りの北側で行われるもの。かつてこのような名前の駅弁が原ノ町駅にあったと思う。この姿では2017年までの販売。2018年と2019年には夏季限定の「夏駅弁相馬野馬追辨当」が、青い掛紙と12区画のなんでもまるごと弁当の形で出たらしい。
※2019年8月補訂:終売を追記山菜色の平たい円形プラ製容器に透明なふたをして、今時のデザインでない窓開きボール紙の枠にはめる。中身は薄く敷いた酢飯の上に山の幸8種類と油揚げそぼろを敷き詰め、サクランボとガリを添えるもの。淡泊な風味には渋い柔らかさがある。
この野暮な姿に昭和を感じて過去の資料を探したところ、1970年代の駅弁紹介本に名前と容器が同じで中身もほぼ共通な写真を見つけた。これは事実上の復刻駅弁。まるで試作品のようなボール紙枠が当時のものかは分からないが、駅弁も業者も昭和どころか前世紀が遠い昔になりそうな東北本線で、売り方によっては存在感を出せるような気がする。2012年頃までの販売か。
※2016年10月補訂:終売を追記東北の祭りシリーズ第4弾として、2007(平成19)年の秋頃に登場し、福島、郡山、会津若松の各駅で販売された模様。小柄な長方形の容器に木目柄のボール紙でふたをしてボール紙の太い帯を巻き、イラストや説明文や中身写真などを細々と印刷したボール紙の枠に2個並べて詰める。中身は片方の「壱香味」が鶏ゆず味噌焼きと鶏そぼろの丼に、きゅうり味噌漬や白桃わらび餅や若桃シロップ漬など、もう片方の「弐香味」がソースカツ丼にめひかり磯部揚、棒だらや椎茸などの煮物。
福島の浜通りから会津まで7者の監修が付く弁当の中身は少量だが、自然で小ぎれいな見栄えに、常温で生きるが濃すぎない風味がある。それよりも、パッケージに加えてしおり1枚とチラシ1枚にかなりの情報量があるうえ、9枚も付属するボール紙とパッケージを組み立てるとお祭りの風景が登場。7者の監修は中身ではなくこちらに付いたのだろう。中身がむしろ付属品な、読ませる作らせる駅弁という不思議な形態を演じる。2013年頃までの販売か。
2007(平成19)年2月12日に発売。「あずさ2号」で知られる二人組の歌手である狩人が2006年7月に出した新曲「磐越西線」を意識して開発したそうな。経木枠の小柄な長方形の容器に木目柄の紙でふたをして、猪苗代湖と会津磐梯山にSL列車の写真を描いた掛紙で包み、ひもで十字にしばる。
中身は郡山産あさか舞の白御飯の上に会津地鶏きじ焼、炒り卵、山菜類などを散らし、ニシンとスルメの天ぷら、きんぴら、豆味噌を添えるもの。山の幸を詰めた内容に少々の個性的はあるが、風味は平凡。一方で磐梯山を意識した間仕切りや具の置き方には、視覚的な風味に柔らかさと飾らなさが抜群。これは見て楽しむ玉手箱。1年ほどで終売か。
磐越西線は郡山から会津若松を経て新潟県の新津までを結ぶ、全長175.6kmのローカル線。しかし国鉄時代には郡山・いわき間の磐越東線と合わせて幹線格の扱いを受けていたり、1931年に上越線が全通するまでは帝都と裏日本(当時)を急勾配なしに結ぶメインルートでもあった。そのため施設は今でも立派で、特に1967年に電化された郡山駅と喜多方駅の間にローカル線の雰囲気はない。掛紙のような重量級貨物用蒸気機関車D51も、問題なく走れる。
※2015年8月補訂:終売を追記面積が広めな長方形の専用ボール紙箱を麻ひもで十字にしばる。白いトレーに入った中身は、具の少ない鮭はらこめしを中央に添え、左下からメヒカリ唐揚、桃と煮豆、鯉甘酢あんかけ、こんにゃくなどの煮物、栗と玉子焼と昆布巻、鶏照焼と山菜炒め、牛しぐれ、おしんこ天栄漬を並べる。
これらの内容はパッケージの「MENU」で確認できる。大きい容器の中身はスカスカに見えても、内容も風味も個性的な印象で、駅弁の名前をきっちり反映している。個々の食材や料理について、もっとウンチクを聞いてみたい気がした。2009年までは売られていた模様。
※2015年8月補訂:終売を追記2002(平成14)年の春頃に発売された、郡山駅の大人の休日駅弁。ミニバスケットな容器を使用、掛紙をかけてフィルム(マジックカット)で留め和紙の風呂敷で包む。プラトレーに入った中身は、ひとつが豚肉味噌焼が軽く降りかかる御飯、ひとつが鶏照焼やメヒカリ唐揚に煮物や煮豆など。少量だが味は良く、特に見栄えは価格以上の高級感を持つもの。60歳または65歳以上を対象とするジパング倶楽部JR東日本版のキャンペーンのコンセプトに、ぴったり合う駅弁だと思った。2006年までは売られていた模様。
※2015年8月補訂:終売を追記東北新幹線の車内販売でも取り扱われる、郡山の名物「薄皮饅頭」の、新幹線車内では買えない小粒版。通常版と雰囲気は共通な、包装紙で包んだ紙箱の中に、個別包装の薄皮こしあん饅頭が9個入る。福岡県大牟田の草木饅頭と性格が似ていて、味はあちらが上だと思うのは私の主観。通常版より小さい分だけ、お手軽に食べられる。
郡山銘菓のひとつ。クルミ入りこしあんをぷにょぷにょとした飴色の生地で独特の形状に包んだ饅頭が、2個組でトレーに入り袋詰めされ、これを3パックセットでさらに袋詰めする。緑茶が合う年配向け和生菓子の風味。県内の駅のキヨスクや観光売店には必ず置いてあると思うから、駅売り銘菓としてここに収蔵。
今は新幹線や飛行機でひとっ飛びの時代になったが、青春18きっぷでの鈍行旅行でゆっくり下道を行けば、薄皮饅頭、ままどおる、家伝ゆべしが駅のキヨスクに並んでいると、北への旅の、東北の、まずは福島県に来たなという気になる。