東京駅から東北新幹線で約1時間20分。東北新幹線と東北本線、磐越西線、磐越東線が接続し、水郡線の列車が乗り入れる駅。郡山市は福島県の真ん中に位置する、人口約32万人の宿場町。明治時代に発展した農業に加えて、鉄道や国道や高速道路が四方から集まる立地に商工業が集積、東北地方で仙台に次ぎ福島を上回る都市圏を形成する。駅弁は明治時代から売られ、昭和時代から2010年代まで複数の駅弁屋が競った。1887(明治20)年7月16日開業、福島県郡山市燧田。
2010(平成22)年の発売か。2008(平成20)年10月の東京駅の駅弁大会で売られたメガ駅弁「ビッグのり弁」の通常版か。2015(平成27)年8月のTBSテレビ「マツコの知らない世界」や、2016(平成28)年9月のTBSテレビ「この差って何ですか?」など、いくつかのテレビ番組や特集コーナーで駅弁マニアの1位その他高い評価を得て、今では最も有名な郡山駅弁。
長方形の容器を、駅弁の大きな名前と写真を印刷した掛紙ですっかり覆う。中身は白御飯を詰めて昆布つくだ煮をまぶして海苔を貼り、さらに白御飯を詰めておかかをまぶして海苔を貼り梅干しを載せた、二段重ねの海苔御飯に、大きな玉子焼、焼鮭、大切りのきんぴらごぼう、海老芋、かまぼこ、赤かぶなど。
ホカ弁の定番商品である海苔弁当を駅弁屋のセンスで常温に仕立てた、豪華版ながらお手頃価格でボリューム感のある佳作は、購入時からうまくいけば郡山駅弁の3番手くらいの名物になるだろうとは思っていた。ちょっとふざけた名前も、話題性の獲得に資している。価格は2010年の発売時で880円、2014年4月の消費税率改定で900円、2017年時点で950円、2019年時点で980円、2020年時点で1,000円、2023年時点で1,100円。
※2023年10月補訂:値上げを追記2021(令和3)年11月6日に購入した、郡山駅弁の掛紙。この「海苔のりべん」の掛紙そのものは、上記の2019年に栄養成分表示を加えた程度で、下記の2021年1月のものと変わらない。外圧に負けた今の世に珍しく、消費期限のラベルに製造年月日の表示が復活しており、これには驚いた。
2021(令和3)年1月10日に購入した、郡山駅弁の掛紙。法令の強化で食品表示の文字数が増えた以外は、2年前と変わらない。
2010(平成22)年7月16日に購入した、郡山駅弁の掛紙。絵柄や中身は上記の2019年のものと同じ。掛紙をよく見比べると、微妙な差はある。
2021年4月から9月までのJRグループの観光キャンペーン「東北デスティネーションキャンペーン」の開催に合わせ、2021(令和3)年4月1日に東京、郡山、福島、新白河、会津若松の各駅で発売。郡山駅を代表する駅弁「海苔のりべん」の新バージョンで、福島県郡山市産「あさか舞」の最高級米「ASAKAMAI887(アサカマイハチハチナナ)」を使い、その数字を駅弁の名前に取り入れた。漆器の木目を印刷した長方形の容器を、「海苔のりべん」のものとは対称的に落ち着いた文字や絵柄やアイコンで構成し、887の文字と調製元の新ロゴマークが金色に光る白い掛紙で包む。
中身は白飯に海苔を貼り、「松川浦産あおさ海苔」入り手焼きの卵焼きと海苔の天ぷらを載せ、さらに玉子焼、焼鮭、サトイモ揚げ、牛肉煮、きんぴらごぼう、赤かぶ漬を添える。米の風味を最大限に生かすため、海苔のりべんに入るおかかを使わなかったといい、梅干しも入らない。これは数少ない海苔弁当の駅弁、数多い御飯とおかずで構成する幕の内タイプの駅弁の、高級や高額な食材に頼らないタイプの食事向け弁当としては最高峰となろう。食べた人の感嘆がネット上に見られる。通常版も併売する。価格は2021年の発売時や購入時で1,200円、2023年時点で1,300円。
ASAKAMAI887は、郡山市が園芸畜産振興課に設置した郡山市米消費拡大推進協議会が、2017年12月に始めた郡山米「あさか舞」価値向上のため、翌2018年3月に発表した「「(仮称)プレミアムあさか舞」プロジェクト」により栽培を始めた銘柄米。88の手間がかかる米作りで、食味値88点以上など7つの厳格な基準をクリアした、郡山市産の「コシヒカリ」または「ひとめぼれ」の一等米が、これを名乗れる。明治時代の安積疏水(あさかそすい)により生産量で日本一の米どころとなった郡山市で、2011年の東日本大震災でフクシマの名が原子力発電所事故と放射線影響で悪名として広まった影響で、郡山をはじめ福島県産米の多くが産地名の出ない業務用米として安価に流通するようになったといい、この現状を打破する使命を帯びる。
※2023年10月補訂:値上げを追記駅弁の名前は新字体で「駅弁浪漫」とも。日本鉄道構内営業中央会が駅弁誕生135周年を記念して、会員のうち21社が2020(令和2)年4月10日から販売した、駅弁の原点であるおにぎりをメインとした記念弁当「駅弁誕生135周年おにぎり弁当」の、郡山駅バージョン。1,200円で5月まで販売されたのち、2022(令和4)年の4月10日から24日まで、駅弁の日に合わせ、日本鉄道構内営業中央会の会員のうち21社が、FMヨコハマのラジオ番組「FUTURESCAPE」とタイアップし、この年の4月10日から各社の駅売店などで販売した、駅弁の日記念のおにぎり駅弁の郡山駅バージョン、加えて「海苔のりべん」姉妹駅弁として、900円で再び販売された。
陸上トラック型の容器に、大正時代の郡山駅舎に商品名などを記した掛紙を巻く。中身はおかかのおむすび2個、玉子焼、ちくわ天、ささみ竜田揚、玉こんにゃくとつくね串、漬物。海苔のりべんとは、そんなに似ていないと思う。2020年のものは、おにぎりのうち1個が焼きおにぎりだった。
2016(平成28)年9月20日の発売。翌10月にJR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2016」にエントリー。その名のとおり、郡山駅の人気駅弁「海苔のりべん」の姉妹品だろう。白御飯の上におかかを載せ、海苔で覆い、白御飯を載せ、牛そぼろと海苔で覆い、牛肉煮で覆う、御飯と海苔のサンドイッチ。これに玉子焼、煮物、漬物を添える。濃いめの味は美味くても、これではただの牛肉駅弁なので、東京駅での大注目を再び、とはいかないかもしれない。価格は2016年の発売時や購入時で1,150円、2020年時点で1,200円、2023年時点で1,300円。
※2023年10月補訂:値上げを追記2018(平成30)年3月の発売。中身は東京で人気が出た郡山駅弁「海苔のりべん」と同じく、白御飯を詰めて昆布つくだ煮をまぶして海苔を貼り、さらに白御飯を詰めておかかをまぶして海苔を貼り梅干しを載せた、二段重ねの海苔御飯に、大きな玉子焼、焼鮭、大切りのきんぴらごぼう、海老芋、かまぼこ、赤かぶなど。その海苔の形状が大小の、おそらく親子のパンダ型になっている。掛紙は海苔のりべんの硬派なものとは対極的な、親子の二頭身パンダの目が垂れるゆるーい絵柄。半年間ほどの販売か。
この駅弁は、2017(平成29)年6月に生まれ、9月に名前「シャンシャン」(香香)に決め、12月に公開された経緯が東京のテレビを賑わせた、東京は上野動物園の赤ちゃんパンダにちなんでいるのではないかと思う。東京都心でのパンダの誕生に、東京のメディアつまり日本全国のメディアが騒ぎ、上野動物園には2時間から4時間待ちの大行列ができる。こうやって東京都心でも駅弁が買えた。一方で、和歌山県白浜の動物園「アドベンチャーワールド」では、ほぼ2年毎に赤ちゃんパンダが誕生し公開されていたにもかかわらず、ローカルニュースの扱いであり、少なくとも首都圏のテレビを見る人にはほとんど知られておらず、パンダの駅弁の存在はまったく知られていない。
※2019年8月補訂:終売を追記2011年3月5日と6日に東京駅で開催された「“はやぶさ”デビュー記念駅弁大会」でデビューか。赤いボール紙の長方形の容器に黒いふたをして、駅弁の名前と牛べこと宣伝文を描いた赤い掛紙を巻く。中身は郡山産コシヒカリ「あさか舞」の白御飯の上と中に福島牛のそぼろを入れ、海苔を貼り付け、玉子焼とごぼう煮と柴漬けを添えるもの。
つまり既存の郡山駅弁「海苔のりべん」のおかずを減らし、おかかを牛そぼろに置き換えた感じ。飯の上と中で2層の牛そぼろは甘辛が強いうえ分量も多く、まるでライスバーガーを食べているような感じ。東京駅の駅弁大会における郡山駅弁の主力は、海苔弁になったような。2014年までの販売か。
※2015年8月補訂:終売を追記2008(平成20)年10月12日と13日に東京駅で開催された「東日本縦断駅弁大会−秋−」で販売されたお弁当で、全8種が誕生した「メガ駅弁」のひとつ。二段重ねかと思うほどの高さがある木目調の容器にボール紙でふたをして、商品名を力強く描いた掛紙をかけて、ひもで十字にしばる。中身は白御飯を海苔ととりそぼろとカツオブシで3層に重ね、鶏ササミ唐揚、玉子焼、焼鮭、海老天、きんぴら、梅干しなどを載せるもの。具はいずれもビッグで、名は体を表す見事なガッツリ系。
分量が通常版の1.5倍というが、郡山駅の駅弁ではこういう商品を思い当たらない。それでも、地元で仕出し屋や弁当屋としても親しまれているであろう駅弁屋が、ホカ弁の定番メニューであるのり弁当について、大真面目に拡大コピーした爽快な試みは、駅弁イベントを大いに盛り上げるものだろう。現地で売られていても楽しそう。
この駅弁は後日、2010年までに通常サイズの「海苔のりべん」として発売。2015年の東京のテレビ放送により有名になり、郡山駅を代表する駅弁の礎となった。
2017(平成29)年1月の阪神百貨店の駅弁大会で売られたお弁当。「働く女子のためのOLランチ弁当」と銘打って、駅弁屋11社の社名と代表作を名前にした11種の商品を、同じサイズと価格で輸送販売した。しかし話題にならず、買う人もなく、輸送駅弁売り場の端にまとめて置かれ、輸送駅弁が売り切れる頃になるとようやく客に買われていった。
これは商品名のとおり、郡山駅の駅弁屋である福豆屋のもの。御飯を牛肉煮とニンジンやカボチャやレンコンなどで覆う、前週に京王百貨店の駅弁大会で買った「野菜畑の牛めし」と同じものだった。