千葉駅からJR外房線の電車で1時間強。いすみ市は千葉県の房総半島で太平洋に面する、人口約3万人の港町。日本一の漁獲高というイセエビにマダコと稲作を名物とする。大原駅に駅弁はなかったが、いすみ鉄道が再建策の一環として2011年から、土日曜日限定で発売した。1899(明治32)年12月13日開業、千葉県いすみ市大原。
2011(平成23)年4月に発売か。「里山弁当」に続く、いすみ鉄道の駅弁の第2弾。駅弁の名前は戦国武将で大多喜藩10万石の初代藩主である本多忠勝にちなみ、駅弁の中身はその名にちなんだトンカツ弁当。中身は日の丸御飯とトンカツ1枚とキャベツ千切りに、タコ、花豆、たくあん、プチトマト、パセリを添えたもの。つまりシンプルなトンカツ弁当。大きく適度に柔らかく、衣がサクサクの良いトンカツが印象的。単に食べるだけでも、おいしいお弁当。
※2022年7月補訂:写真を更新2017(平成29)年2月19日に購入した、大原駅弁の掛紙。上記の2022年のものと同じ。中身も同じ。当時は食品表示ラベルでの商品名は「トンカツ弁当」で、容器は紙製で「特製幕の内」と書いてあった。
2012(平成24)年11月頃の発売か。「里山弁当」「忠勝弁当」「伊勢海老弁当」に続き、「大原漁港漁師のまかない飯」とともに、いすみ鉄道の駅弁の第4弾と考えられる。発売当時に走っていた黄色いレールバス(鉄道車両)柄のボール紙枠に、容器がきっちりはめられる。
中身はカニとエビとししとうの天丼、ひじき入り玉子焼、銀ダラ西京味噌焼、ホタテ貝柱のトマトソース煮、なす田楽、鶏ごぼう巻き、ジャガイモ餅、野菜の煮物、大学芋、おはぎなど。鉄道会社公式サイトの宣伝文のとおり、確かにどれも主役になれるようなおかずの数々に満足。
2012(平成24)年11月頃の発売か。「里山弁当」「忠勝弁当」「伊勢海老弁当」に続き、「いすみの宝石箱弁当」とともに、いすみ鉄道の駅弁の第4弾と考えられる。白御飯の上を、「さんが焼」なるアジのそぼろで覆い、しその葉、サバ味噌、イカリング、玉子焼、シイタケ煮、紅生姜を添える。
太平洋に面するはずが、駅も駅前にも海が一切感じられない大原駅で、たっぷりのお魚を柔らかく、かつ御飯の友にでき、当然に酸味でなく、こんな所にこんなにうまい魚駅弁があったのかと驚くもの。他の大原駅弁と同じく、ポリ茶瓶がひとつ付いてくるが、この駅弁はお茶漬けで食べることも推奨されていることを、食べて帰った後で知った。土休日のみ販売、購入時はいすみ鉄道への予約を推奨。
2011(平成23)年までに発売か。屋台向けなヘナヘナの透明プラ製容器にタコの炊込飯を詰めて紅生姜を添える。見た目はただの惣菜だが、食べてみれば身の締まるタコのそぼろが茶飯にぎっしり混ざる、良質なB級グルメ。駅弁の容器を与えて添え物をして500円という姿を見たいと思った。調製元は大原港の干物屋さん。なお、写真のポリ茶瓶(ポリ容器入りのお茶)は別売り。
いすみ鉄道は第1次特定地方交通線つまり廃止対象路線であった国鉄の木原線を引き取るために、千葉県や沿線の市町などが出資した第3セクター鉄道会社。1988(昭和63)年の転換開業時は、通学輸送の混雑により車両の座席を撤去するくらいの乗客で賑わったが、高校生の減少と自動車の所有と使用を前提とした公共投資や行政運営という全国共通の理由で、21世紀には年間1億円以上の赤字を計上するに至る。
そこで千葉県や地元の市町では、2008・2009年度の2年間で収支が改善されなければ鉄道の廃止も辞さないという覚悟のもと、社長の公募を行い再建を託した。初代公募社長は県知事選挙への出馬でさっさと辞めてしまったが、自身で鉄道趣味関連企業を経営していた大手航空会社の重役が二代目の公募社長に就任してからは、同業者や趣味者が非常識だと叩くほど奇抜な施策を次々に打ち出し、結果として2012年8月には鉄道の存続が決定した。本業での毎年1億円以上の赤字が続いてはいるが、鉄道ファンでなくても話題にする関東近郊のローカル線へ間違いなく生まれ変わった。
※2017年4月補訂:写真を更新2017(平成29)年7月に、従前の「昭和の幕の内弁当」をリニューアル。中身はその末期とあまり変わっておらず、白御飯を海苔で覆い、焼鮭、コロッケ、玉子焼、焼売、シイタケ煮、ひじき、サツマイモなどのおかず。掛紙は菜の花畑を通るいすみ鉄道の列車へ、大きくリニューアル。引き続き土休日に大原駅で売られる。2018(平成30)年6月までは予約を推奨し、翌7月から逆に予約不可となった。2019年までの販売か。
※2022年7月補訂:終売を追記下記の大原駅弁「昭和の幕の内弁当」の、2017年時点での姿。価格も掛紙も、名前も容器も変わらないが、日の丸俵飯が海苔とおかかの白御飯に、焼売がスパゲティに替わり、端整だった見栄えが野暮ったくなった。こういうものもまた、昭和の国鉄駅の幕の内弁当に見えなくもない。この年の7月に、昭和が付かない「幕の内弁当」へリニューアル。
※2018年8月補訂:終売を追記2014(平成26)年7月5日の発売。同駅のタコ飯弁当が6月から9月まで販売できないことと、大原駅の駅弁は国鉄時代の駅弁の定義でいう特殊弁当しかないことで、いすみ鉄道が駅弁屋に昭和の幕の内弁当の制作を依頼したという。そのモデルは、肥薩線吉松駅の幕の内駅弁だという。
掛紙には、駅弁の名前と、いすみ鉄道の路線図を、シンプルに描く。中身は日の丸俵飯に、焼き魚(サケ)、かまぼこ、玉子焼の幕の内駅弁三種の神器、シイタケやレンコンなどの煮物、コロッケ、焼売、煮豆、大根桜漬など。たしかにこれは、昭和時代の国鉄駅の幕の内弁当。とてもきれいにつくられている。写真にないが、これもやはり昭和時代の国鉄駅で駅弁とともに売られていた、ポリ茶瓶がひとつついてきた。土休日のみの販売、予約を推奨。予約先は調製元でなく、いすみ鉄道(0470(82)2161)となる。2017(平成29)年7月に、上記の「幕の内弁当」へリニューアル。
下記の大原駅弁「伊勢えび弁当」の、2014(平成26)年時点での姿。中身はだいたい同じだが、サザエがなくなり、カジキマグロが入り、半身のイセエビが大きくなっていた。掛紙の表記も、少しだけ変わっている。大原駅で駅弁を買うと、ポリ茶瓶(ポリ容器のお茶)をひとつもらえた。2019年までの販売か。
※2022年7月補訂:終売を追記2011(平成23)年9月3日に発売。2010年3月の国吉駅「里山弁当」、2011年4月の大原駅「忠勝弁当」に次ぐ、いすみ鉄道で3番目の駅弁。調製元はイセエビとアワビが専門という御宿の旅館。原則は2日前まで2個以上の電話予約での土休日の販売であるが、この日はたまたま売店に置かれていた。
柔らかな正方形の容器を、跳ねるイセエビにいすみ鉄道の車両を添えた絵柄の黒い掛紙を巻く。中身は半分が御飯でヒジキやソラマメや錦糸卵などを使うちらしずし、半分がおかずでカジキ西京焼、サザエ壷焼、半身のイセエビの調製元自慢の鬼殻焼。外房の食材で固めている。
伊豆で食べた似たような駅弁を思い出し、しかしこちらはぎっしり感と食べやすさが断然に良く、そろそろ東京のテレビで「房総で豪華激ウマ駅弁を発見!」と紹介されるのではと感じた。後の2013年1月の京王百貨店の駅弁大会では目玉の「えび・かに対決」の一翼として一日600個の予定で実演販売を実施、会期当初は苦戦していたが、ほどなく行列ができるようになっていた。7月から8月まで販売休止。価格は2012年の購入時で1,500円、2016年時点で1,600円。2019年までの販売か。
※2022年7月補訂:終売を追記