東武鉄道の東京都心のターミナル。明治時代にまずは北千住駅から北関東へ鉄道網を築き始めた東武鉄道が、再三の苦心の末に当時の東京で最大の歓楽街であった浅草にデパート付きターミナルを構えたものの、第二次大戦後に東京の都心は西へ移動、駅は狭隘で長編成化する電車に対応できず、今も鉄道の起点であるものの中心でなくなった。駅弁は2010年代に4度の撤退を繰り返し、2022年10月に羽田空港の空弁を売る店舗を設けて「駅弁復活!」とした。1931(昭和6)年5月25日開業、東京都台東区花川戸一丁目。
2023(令和5)年7月12日に東武浅草駅で発売。同月15日の東武鉄道の新型特急電車「スペーシアX」の運行に合わせて発売。東武日光駅でも同じ容器を使う駅弁が発売された。スペーシアXの先頭車の形状を模したプラ容器を、スペーシアXでデザインしたスリーブにはめる。中身はチキンライス、鶏唐揚、ミニハンバーグ、ミニアメリカンドッグ、スマイルポテト、玉子焼、ケチャップ、フルーツゼリーというお子様ランチ。調製元は東武鉄道の100%子会社である販売元の東武商事の100%子会社で、ゴルフ場レストランや東武駅ホームのラーメン店などを運営する。
東武鉄道N100系電車、愛称「スペーシアX」は、東武鉄道で実に33年ぶりとなるフラッグシップ特急車両。東京と日光・鬼怒川を結ぶ特急列車として、1960年デビューの1720系デラックスロマンスカー、1990年デビューの100系スペーシアに続き、東武鉄道の鉄道車両として最上級の設備を備えて、まずは6両編成2本が投入された。今回はスタンダードシート、ボックスシート、プレミアムシート、コックピットラウンジ(1・2・4人掛けソファー)、コンパートメント、コックピットスイート(7名用個室)と6種類もの座席を用意、限定的ながらカフェカウンターでの飲料等の提供も実施する。
2021(令和3)年の夏までに羽田空港で発売された空弁。東武浅草駅1階売店「ACCESS+浅草店」に、2022年10月に「浅草駅弁大祭」の看板を掲げ、「東武浅草駅に駅弁復活!」と称して、羽田空港の空弁を売り始めた。「ひろしま駅弁当監修」とあるが、広島空港や広島県や広島市で作ったり売るのでなく、東京の空弁屋が調製し羽田空港などで売る東京の弁当である。
小柄で上げ底のプラ容器に茶飯を詰め、穴子煮で覆い、玉子焼、タケノコ煮、甘酢生姜、あなごのたれを添える。脂の抜けた穴子は醤油味のタレをかけても、監修者である広島駅のアナゴ駅弁のどれにも似ない。このあっさりとした感じが特徴なのかどうか。とはいえ、土曜午前は全便満席になる人気の日光・鬼怒川行き東武特急に乗る前に、松屋浅草の開店前にもコンビニ弁当でもファストフードでもない弁当が買えるようになって、良かったのではないかと思う。
2012(平成24)年までに上野駅構内のスーパーマーケットや羽田空港第2旅客ターミナルビルで売られ始めた模様。調製元が創業当初の味を、かつて人気だったチキン弁当の内容を復刻したのだという。コンパクトにまとめた二重折の中身は、下段が日の丸御飯、上段がおかずで小粒な焼き鳥、つくね串、鶏唐揚、山椒煮、玉子焼、かまぼこ、煮物など。これはまるで、おつまみ弁当のよう。2022年1月に浅草駅と北千住駅の駅弁販売店が閉店し、すべての駅弁が終売となった。
※2023年11月補訂:終売を追記東武鉄道の浅草駅や北千住駅では2018(平成30)年の発売か。やや小柄な長方形の容器に炊込飯を敷き、その半分をアサリ煮で、半分を鶏胸肉の山椒煮、ニシン昆布煮、漬物で覆い、れんこんきんぴら、玉子焼、こんにゃくやシイタケなどの煮物を添える。アサリなどの貝類のぶっかけめしという深川飯の要素がほとんどないように見える。味は普通。2022年1月に浅草駅と北千住駅の駅弁販売店が閉店し、すべての駅弁が終売となった。
※2023年11月補訂:終売を追記1963(昭和38)年の発売というが、浅草駅の駅弁売店に来たのは少なくとも2011(平成23)年以降、この名前や見栄えになったのは調製元のツイッターの情報によると2018(平成30)年3月からと思われる。ふたには浅草雷門や浅草の観光イベントが賑やかに描かれる。中身は茶飯を鶏そぼろときんぴらごぼうとごま昆布佃煮で覆い、チキンシュウマイ3個、玉子焼、タケノコとニンジンとコンニャクの煮物を添えるもの。飯も焼売もおかずも、JR駅の駅弁よりも水気があり柔らかくなっている。2022年1月に浅草駅と北千住駅の駅弁販売店が閉店し、すべての駅弁が終売となった。
※2023年11月補訂:終売を追記東武鉄道の子会社が特急列車内で予約販売したお弁当。これは東京駅弁の日本レストランエンタプライズが「日本ばし大増」ブランドで販売する仕出し弁当のひとつ。過去に駅弁になったり東京総合車両センターで売られた、そんなかつてのNREの宅配弁当(delivery@お弁当)のうち、この「渡月」のみがなぜかこうして東武鉄道で予約でき、しかしこの販売元の駅売店では取り扱わないという不思議な役回り。東京駅弁「大人の休日弁当」のような、雰囲気の高級仕出し弁当だった。東武では2020年限りで取り扱い終了か。
上記の駅弁「浅草鶏シュウマイ弁当」の、2015(平成27)年時点での姿。当時は駅弁として知られたり紹介されることは、ほとんどなかったのではないかと思う。見た目も中身も後のものとはだいぶ違い、ボール紙のふたにはスマートなデザインで宣伝文を書き、中身は俵飯、チキンシュウマイ5個、タケノコやニンジンなどの煮物、ポテトサラダ、かまぼこ、玉子焼、きんぴらごぼう、生姜昆布漬だった。
1954(昭和29)年発売の横浜駅弁「シウマイ弁当」によく似ていると思うが、どちらもつまりシウマイを入れた幕の内弁当であるから、不自然ではないと思う。その伝統の駅弁に比べると、こちらは飯も焼売もおかずも、水気があり柔らかくなっている。
※2019年8月補訂:新版の収蔵で解説文を手直し2011(平成23)年頃から売られている模様。2011年3月頃に撤退または廃業した以前の浅草駅弁の調製元からも、同じ名前で似たような駅弁を販売していた模様。駅弁の名前は浅草神社の三社祭から採られたのだろう。購入日はその祭の日であったが、この駅弁は一年中変わらぬ姿で販売されている。
竹皮柄のボール紙製容器には、駅弁の名前をゴム印で押しただけの白紙が掛紙として巻かれる。中身はアサリ飯、白飯+ごま、白飯+ゆかりで3種類のおいなりさんが各1個と、玉子焼、かまぼこ、煮物、大福をいずれも小さなサイズで詰めたもの。見た目も価格もおにぎり駅弁タイプ。この調製元の浅草駅弁は2015年頃までの販売か。
※2019年11月補訂:終売を追記2011(平成23)年の発売か。同年3月頃に浅草駅の駅弁屋が消えた後、ほどなく出てきた模様。ネット上には、その駅弁屋の元従業員が作っているとの情報あるいは噂がある。葛飾北斎の浮世絵「冨嶽三十六景」の「深川万年橋下」や中身の写真などを印刷した掛紙に巻かれた長方形の容器の中身は、茶飯をアサリ煮とアサリ串で覆い、小女子と大根桜漬を添え、タケノコとシイタケとニンジンの煮物と、かまぼこと玉子焼と煮豆を付ける。
国鉄やJRの東京駅弁で有名になった深川めしと違い、かつての浅草駅弁の深川めしと同じく、アナゴではなくアサリの弁当。この駅弁の掛紙で深川飯の始まりとして書かれる「アサリのむき身入り味噌汁をごはんにかけて食べた」ものが、常温の弁当の範囲で再現されているのだろう。実は国内各地を探しても、千葉駅や木更津駅くらいにしかない、アサリの駅弁。この調製元の浅草駅弁は2015年頃までの販売か。
※2019年11月補訂:終売を追記2012(平成24)年の発売か。掛紙や添付のチラシで「牛すき弁当」、食品表示ラベルで「牛すき焼き弁当」、売店の掲示で「浅草牛すき弁当」と名前が異なる。長方形の容器に白御飯を詰め、割り下で真っ黒になった牛肉煮で覆い、タマネギ、シラタキ、玉子焼、お麩を添えたり散らすもの。明治の初め頃に浅草で牛鍋屋が一時的なブームになったことにちなみ、この駅弁ができたという。常温で昼飯にモリモリ食べられる牛鍋丼。調製元の2017年頃の撤退により、今は売られていないはず。
※2019年8月補訂:終売を追記東武浅草駅で駅弁も売る売店にて購入。わっぱ型の木製エコ容器の全面に白御飯を敷き詰め、焼き鳥や鶏肉団子をゴロゴロと撒いて外周を固め、長ネギ焼、レンコン、玉子焼、ピーマンなどを詰める。掛紙その他のパッケージがないため、コンビニ弁当か惣菜弁当にも見えるが、分量の多さ、容器の深さ、味の濃さ、常温での風味は、駅弁のそれである。鶏肉は分量に加えてタレの塩気や辛味の強さもあり、くどいほどの鶏丼。これはかつて「焼き鶏丼」の名で、浅草駅や北千住駅の駅弁として売られていたのではないかと思う。調製元の2017年頃の撤退により、今は売られていないはず。
※2019年8月補訂:終売を追記2017(民国106)年7月21日から24日まで、台湾の台北市内のコンベンション施設「台北世界貿易中心(台北世界貿易センター)」で開催された展覧会「2017台灣美食展」での「第3回鐵路便當節(鉄道弁当祭)」で販売された商品。日本の鉄道会社10社と、韓国、スイス、台湾2社の駅弁が、ここで展示販売されていた。
東武鉄道は、この1種。内容も分量も容器もおおむね、浅草駅弁「焼き鳥丼」と同じ。これに、中身と浅草寺と特急電車「リバティ」とSL列車「大樹」の写真を載せた掛紙をかけて販売していた。後に浅草駅の駅弁にも、この掛紙と似たものをかけ始めたらしい。ここでの調製元は、台北市内の歓楽街にある日本人向けの海鮮居酒屋。
東武鉄道の浅草駅で、以前から販売されていた駅弁。トレーを接着した長方形の容器に、江戸時代の田舎を描いたと思うボール紙でふたをして、輪ゴムで留める。中身は御飯の上に刻み海苔を振り、鶏肉を載せてグリーンピースを散らし、タクアンと柴漬を添える。
鳥飯など市販品では下手に作りようがない分野だと思う。しかしこの鳥肉板はパサパサで醤油臭く、彩りのためだけに散らしたグリーンピースで一般受けを削ぎ、雑に付けたタクアンとしば漬けの着色は毒々しい。こんな市販弁当が高度経済成長期までならともかく、平成の21世紀の首都ターミナル駅で現役なことに驚くばかり。掃除が行き届いていない電車内で、割り切りながらかき込んだ。
東武鉄道は、路面電車や電気鉄道で生まれた他の多くの私鉄と異なり、蒸気機関車が客車や貨車を牽引する路線で生まれたため、節々に旧国鉄との共通点が垣間見える。駅弁もそうで、私鉄唯一の駅弁立売駅があったり、戦前の駅弁掛紙が出てきたり、このような他の私鉄にない弁当が浅草、下今市、東武日光、鬼怒川温泉その他の駅で販売されている。
調製元が2011年3月頃に撤退または廃業したようで、この駅弁は今では買うことができない。駅弁売店は残存しているが、シャッターを降ろしたまま営業していない。
※2012年7月補訂:終売を追記東武鉄道の浅草駅で、以前から販売されていた駅弁。角を落とした正方形の容器に木目調ボール紙のふたをして、葛飾北斎「冨嶽三十六景 深川万年橋下」を描き直した絵柄のボール紙枠にはめる。中身はあさりごはんとエビフライ、焼鮭、焼売、玉子焼、煮物など。どこも寂しく、風味や風情や雰囲気のない、悪い昔のお弁当。
「浅草駅」はこの地に4つある。開業順に、東京メトロ銀座線(1927年)、東武伊勢崎線(1931年)、都営地下鉄浅草線(1960年)、つくばエクスプレス(2005年)。しかし直接接続するのは、銀座線と伊勢崎線、銀座線と浅草線の2パターンのみ。他は地上の街を歩く必要があり、つくばエクスプレスの駅は他の3駅とまるで異なる立地にある。鉄道はこれだから不便だ、と言われかねない欠陥だと思う。
調製元が2011年3月頃に撤退または廃業したようで、この駅弁は今では買うことができない。駅弁売店は残存しているが、シャッターを降ろしたまま営業していない。
※2012年7月補訂:終売を追記評判も価格も浅草駅弁のフラッグシップであった駅弁。容器に書いてある「名代」「江戸前」「手造り」の接頭辞付きで呼ばれることもある。木目柄で円筒形の容器を、商品名を描いたボール紙の枠にはめる。中身は江戸前つまり東京湾で獲れたアナゴを柔らかく煮たものを握り酢飯と合わせたあなごずしが6切れと、玉子焼、菜の花など。
形はしっかりしているのに、食べれば抵抗感なく溶けていくアナゴは、姫路駅や東京駅の穴子棒寿司駅弁の上を行くかもしれない。私鉄の駅弁であることと駅弁大会に出ないことで紹介例は多くないが、味とコンセプトで全国有数の駅弁と呼んで良いことは確かだろう。一日30個限定のため、午前中でないと買えないことが多かった。
調製元が2011年3月頃に撤退または廃業したようで、この駅弁は今では買うことができない。駅弁売店は残存しているが、シャッターを降ろしたまま営業していない。
※2012年7月補訂:終売を追記2012(平成24)年7月25日に「東京スカイツリー御膳」(1,300円)「東京スカイツリー弁当」(1,200円)「東京スカイツリー丼」(1,200円)「東京スカイツリー三段重」(2,400円)が東武緑地から一斉に発表された、東京スカイツリー公認お弁当4種類のうちひとつ。
高さ634メートルの塔体を2頭身にデフォルメした、銀色の分厚いプラスティック製容器の中に、ケチャップライスを詰め、スクランブルエッグをかけ、エビフライを置き、グリーンピースと星形のニンジンを振り、タルタルソースを添える。容器を収めるボール紙の枠には、ポストカード向けの切り取りを付けた。味は見たまんま。持ち運びにくさと複雑さがこの上なかった前作とは違い、使いやすく、分かりやすくなったのに、催事場では夜まで連日居残りという人気のなさであった。
市中で買えたのは2013年までか。以後は団体予約限定の商品として取り扱われたが、2020年までにそれもなくなった模様。
※2021年2月補訂:終売を追記パッケージも容器も中身も価格も、上記の駅弁「東京スカイツリー弁当」と同じ。違いは販売元が「東武緑地」か「満天商事」かだけ。製造者固有記号が同じ「TT1」であり、名が出ない調製元も同じであると考えられる。なぜ同じ弁当を別の会社が取り次ぐのか、これらの会社は鉄道会社や駅弁屋とどのような関係にあるのか、謎に満ちた弁当や存在である。
2012(平成24)年3月8日から東武鉄道の浅草駅と北千住駅と浅草駅発の特急列車5本の車内と、東京、上野、新宿、大宮の各駅のNRE駅弁売店などで1万個を販売。同年5月22日の東京スカイツリータウンのグランドオープンを記念し、日本テレビの情報番組「スッキリ!!」と東武鉄道が共同で、日本ばし大増の総料理長の監修により開発された。
東京スカイツリーに頑張って見立てたボール紙製容器の弁当箱と、ミネラルウォーター入りペットボトルのセット。この中にはツリーの鉄骨をイメージしたと思う絵柄の正八角形の容器が、風呂敷に包まれて二段重ねで収まる。東京と栃木にちなんだという中身は、下段が鰻丼と牛丼と漬物、上段が菜の花、コマツナ、玉子焼、湯葉きんぴら、ニンジンやレンコンなどの煮物など。味はえらく無難で、この発売はテレビなどで話題にされたが、容器が巨大でキワモノすぎるし値段も高く、見るからに売れていなかった。
東京スカイツリーは東京タワーの代わりとなる高さ634mの自立式電波塔。東京のテレビ局6局が打ち上げた、高層ビルの増加で電波が届きにくくなった東京タワーに代わる新タワー構想に対して、東武鉄道が業平橋駅の貨物駅跡をもって、さいたま新都心や東京タワーやとしまえんなどのライバルに打ち勝ち、その立地を勝ち取った。事業会社の筆頭株主として総事業費650億円を注ぎ込んだ東武鉄道は、足元には商業施設「東京スカイツリータウン」を併設し、最寄りの業平橋駅を「とうきょうスカイツリー駅」に改称、伊勢崎線にも「東武スカイツリーライン」の愛称を付与して、この新名所に激しく入れ込んでいる。