東京駅から電車で約45分。大船駅のある鎌倉市は、神奈川県の東部で相模湾に面した、人口約17万人の古都。13世紀に幕府と呼ばれる武家政権がここを拠点とし、農漁村に戻るも明治時代に別荘地や観光地として再興、文人や要人が好んで住んだり訪れた。東海道本線が横須賀線を分岐する大船駅では、1898(明治31)年から大船軒が駅弁を販売、鎌倉の文人や駅前の映画撮影所の関係者に親しまれた。1888(明治21)年11月1日開業、神奈川県鎌倉市大船1丁目。
最近では2012(平成24)年7月1日のリニューアル。大船駅の伝統の駅弁であり、従前に比べて価格と中身と味は変わらないが、従前の「鯵の押寿し」をこの「鯵の押寿し中鯵」に、「特上鯵の押寿し」を「伝承鯵の押寿し」に改称したうえで、包装を掛紙からボール紙枠に切り替えた。いずれも合理的ではあると思う。寿司の作り方や詰め方もなんとなくきれいに、ていねいになったと思う。価格は2012年当時で920円、2014年時点で960円、2018年時点で980円、2022年9月から1,080円。
※2022年9月補訂:値上げを追記2022(令和4)年10月に発売か。同月からのJR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2022」にエントリー。大船駅弁の小アジを使う「伝承鯵の押寿し」4個と、中アジを使う「鯵の押寿し」4個を、半透明のプラ製トレーに詰め、この年の1月に発売した鯵の押寿し「桜」「梅」「桃」「李」シリーズの紙箱に詰めて、1914(大正3)年の駅弁掛紙の絵柄を使う掛紙で包む。同時に発売の「お志すし」と違い、これは復刻駅弁でないが、同じようにしか見えない。2種類の食べ比べというほど、酸味の強い味に変わりはないような。
2012(平成24)年7月19日に購入した、大船駅弁のスリーブ。中身は上記の2020年のものと、まったく同じ。スリーブの見た目も同じだが、よく見ると駅弁マークの位置や百年駅弁の有無、底面の解説文の詳しさといった違いがある。
2023(令和5)年1月2日に購入した、大船駅弁の掛紙。年末年始の短い期間、今回は12月31日から1月7日まで、大船駅弁の鯵の押寿しは普段のスリーブでなく、この新春掛紙あるいは迎春掛紙で販売される。この令和5年版は、赤富士を背景に七福神を描いた。加えて裏面には過去14年分の迎春掛紙を縮小印刷。昨年8月に大船軒のJR東日本クロスステーションへの合併と鎌倉市大船の製造拠点の操業終了が発表されており、これが最後の迎春掛紙になるのではないかと、不吉に思える目出度い掛紙。
2022(令和4)年1月2日に購入した、大船駅弁の掛紙。年末年始の短い期間、毎年12月31日頃から1月4日頃まで、大船駅弁の鯵の押寿しは普段のスリーブでなく、この新春掛紙あるいは迎春掛紙で販売される。この令和4年版は、今回は鶴岡八幡宮と記した神社を背景に、旧年と同じ七福神が立ち位置を変え、真ん中に干支のトラを据えて勢揃い。
2021(令和3)年1月3日に購入した、大船駅弁の掛紙。年末年始の短い期間、毎年12月31日頃から1月4日頃まで、大船駅弁の鯵の押寿しは普段のスリーブでなく、この新春掛紙あるいは迎春掛紙で販売される。この令和3年版は、干支の黒い牛に旧年と同じ七福神が、鶴岡八幡宮と思われる神社を背景に勢揃い。今回が12年目で、5,000個の販売だそうな。
2020(令和2)年1月2日に購入した、大船駅弁の掛紙。年末年始の短い期間、今回は12月31日から1月4日まで、大船駅弁の鯵の押寿しは普段のスリーブでなく、この新春掛紙あるいは迎春掛紙で販売される。以前は各地の駅弁屋がそうしていたが、今ではとても珍しい。中身は通常版と同じ。絵柄は毎年変わる。
大船軒の創業120年を記念し、2018(平成30)年5月16日から20日まで1,700個を120円で販売、後に380円で売られるようになっていた、大船駅の名物駅弁「鯵の押寿し」の3個入りバージョン。鯵の押寿しをたった3個だけ詰めた小箱を、通常版と同じ絵柄のスリーブに収める。価格は2020年時点で450円、2024年時点で480円。
※2024年9月補訂:写真を更新し値上げを追記2020(令和2)年5月9日に購入した、大船駅弁のスリーブ。上記の2024年のものと、書いてあることは同じ。容器と中身はまったく同じ。当時は大船駅前で調製される大船駅弁であり、2023年6月からは埼玉県で調製される大船軒ブランドの商品であり、記載内容をよく見比べるとその差異が現れている。
2019(令和元)年5月3日に購入した、大船駅弁の掛紙。鯵の押寿しの3個入りのレギュラー発売当時は、スリーブでなく掛紙を使用していた。容器や中身は、上記の2020年のものと変わらない。
2019(平成31)年2月の発売か。大船駅弁のマスやサバなどと同じ、棒寿司カットの押寿しの身を鎌倉ハムにして、野菜ピクルスのカップを添えたもの。前年の秋にフランスのパリで販売された「幕の内9の彩り弁当」の中身のひとつである「ハムの押寿し オリーブオイル ミックスペッパー」が、単独の駅弁になったと考えられる。大船駅で伝統の駅弁「サンドウィッチ」と「鯵の押寿し」を、百年以上の時を経て融合させたような、興味深い作品。1年間ほどの販売か。
※2021年2月補訂:終売を追記2019(平成31)年2月の発売か。上記の駅弁「鯵の押寿し(中鯵)」4個と、「ハムの押寿し」2個の詰合せ。これもまた大船駅で伝統の駅弁「サンドウィッチ」と「鯵の押寿し」が、百年以上の時を経て合体させたような、興味深い作品。掛紙の絵柄も両者が合体している。1年間ほどの販売か。
※2021年2月補訂:終売を追記大船駅の名物駅弁である「鯵の押寿し」のパッケージ違い。お惣菜用の黒いプラ製トレーに透明なふたをはめて、割りばしを添えてボール紙の掛紙の載せて、ひもで十字にしばる。調製元の公式サイトによると、通常のものが9個入り960円で「駅売タイプ」、こちらが8個入り920円で「発送可」と紹介されている。中身は同じはずだけれども、こちらはスーパーの惣菜のようで、なんとなく味気ない。2012年7月に「鯵の押寿し中鯵」へリニューアル。
※2013年12月補訂:リニューアルを追記1913(大正2)年4月に大船駅で発売された、伝統の駅弁。実際には「特上鯵の押寿し」がその原型であり、こちらは相模湾でアジが当時ほど獲れなくなってからの廉価版として後年に出てきたのではないかと思う。軽食から酒のつまみまで、2013年現在で一日あたり約1,500個が売れているという。
薄く平たい長方形の容器に、九州で水揚げされたマアジのLサイズ「中あじ」をスライスしたものを酢飯に巻き付ける押し寿司というか握り寿司が一口サイズで8個整列し、甘酢生姜と醤油の袋を詰める。
その味はかなり酸っぱいと思うが、これも伝統の味であるし、隣の国府津生まれの小田原駅弁「小鯵押寿司」よりは酢が軽いと思う。価格は2001年の購入時で850円。2006年4月から960円。2012年7月に「鯵の押寿し中鯵」へリニューアル。
※2013年12月補訂:リニューアルを追記2008(平成20)年1月のさいか屋藤沢店の駅弁大会で復刻販売された、大船駅伝統の駅弁。昭和40年代の掛紙を復刻したそうで、確かにDISCOVER→JAPAN(1970年)のマークや鉄道100年(1972年)の表記がある。しかし掛紙をよく見ると、法定の容器包装識別表示や食品表示ラベルはともかく、当時になかった駅弁マークや公式サイトURLまで印字しており、これでは復刻ではなく創作になるような。その他の部分、容器や中身や価格などは、当時の通常版と同じ。
1990(平成2)年5月5日16時の調製と思われる、昔の大船駅弁の掛紙。1987(昭和62)年4月の国鉄分割民営化で、国鉄構内営業中央会の名称が日本鉄道構内営業中央会に変化した。JR東日本の観光キャンペーン「LOOK EAST」のロゴマークを重ね、船、藤沢、茅ヶ崎、戸塚、鎌倉、東戸塚、逗子の駅名を列記する。
1980年代前半、昭和50年代後半のものと思われる、昔の大船駅弁の掛紙。かつて正方形だった掛紙が長方形に変化。この絵柄は2012(平成24)年まで受け継がれた。国鉄の旅行キャンペーン「いい日旅立ち」のロゴマークを重ね、大船、藤沢、茅ヶ崎、戸塚、鎌倉、本郷台、東戸塚、逗子の駅名を列記した。
1973(昭和48)年3月7日13時の調製と思われる、昔の大船駅弁の掛紙。下記の1962年のものと比べて、茶色が緑色になった感じ。これは経年による劣化や退色でなく、色合いを変えたものだろう。大船駅に加えて、藤沢、茅ヶ崎、戸塚、鎌倉の駅名も列記され、扇の中の「大船名物」を「湘南名物」と改めた。
1962(昭和37)年7月1日17時の調製と思われる、昔の大船駅弁の掛紙。下記の同年5月のものと同じ。「大船御辨当」と「名物サンドウイッチ」とこれが、当時の大船駅弁の主力であったことが感じられる。
1962(昭和37)年5月26日5時の調製と思われる、昔の大船駅弁の掛紙。縞模様の上で松と砂浜と島、おそらく湘南海岸と江ノ島を描く扇に駅弁の名前を重ねる絵柄は、少なくとも昭和30年代から現在まで、おおむね受け継がれる。