東京駅から電車で約45分。大船駅のある鎌倉市は、神奈川県の東部で相模湾に面した、人口約17万人の古都。13世紀に幕府と呼ばれる武家政権がここを拠点とし、農漁村に戻るも明治時代に別荘地や観光地として再興、文人や要人が好んで住んだり訪れた。東海道本線が横須賀線を分岐する大船駅では、1898(明治31)年から大船軒が駅弁を販売、鎌倉の文人や駅前の映画撮影所の関係者に親しまれた。1888(明治21)年11月1日開業、神奈川県鎌倉市大船1丁目。
2006(平成18)年の鉄道の日にちなみ、10月14日に「鉄道開業記念弁当」の名前で30個を販売。名前と容器を変えて、11月17日に改めて発売した。最近では2018(平成30)年3月のリニューアル。長方形の容器を、弁当の名前や中身の写真に富士や昔の海の風景を描いた、青いスリーブに収める。中身は白飯をシラスの胡麻油炒めで覆い、イクラ醤油漬と焼きサクラエビで彩り、煮物と漬物を添えるもの。
シラスは日本中のスーパーで買えると思うが、シラスの駅弁はあまりない。相模湾では江戸時代から特産のひとつであり、平成時代に湘南名物として人気と販売が定着したシラスが、その地域の駅弁として味わえる。価格は2018年のリニューアル時で1,000円、2019年時点で1,080円。、2022年6月から1,100円。
※2022年6月補訂:値上げを追記2022(令和4)年8月16日から9月5日まで、首都圏と長野エリアと新潟駅のJR東日本の駅のコンビニ「ニューデイズ」などで販売。2021年10月12日から11月1日までの第1弾、2022年4月19日から5月9日までの第2弾に続き、今回は鉄道開業150周年を記念して、駅弁会社が監修する「駅弁風おにぎりシリーズ」として、仙台駅「網焼き牛たん弁当」、厚岸駅「かきめし」、大船駅「しらす弁当」の3種類を、コンビニおにぎりにして販売した。今回の調製は、埼玉県さいたま市のJR東日本クロスステーションが担当か。
袋の絵柄はしらす弁当のスリーブから引用し、本物の見本写真も掲載。シラスの胡麻油炒めと焼きサクラエビを混ぜた白飯を、1個袋詰め。油で握り飯が崩壊していたが、味は駅弁の御飯と同じ。そもそも駅弁の調製元とおにぎりの製造者は、事実上同じ会社だった。
下記の駅弁「しらす弁当」を、2012(平成24)年6月1日にリニューアル。見た目は大きく変わり、駅弁売店では「新商品」と掲示していた。樽形の容器にぴったりふたをして、駅弁の名前がよく目立つ紺色の掛紙を巻く。中身は半分が御飯で、白御飯の上をシラスの炒め物で覆い、サクラエビと青のりで彩る。半分がおかずで、オクラやニンジンなどの煮物、塩ダレの蒸し鶏、玉子焼、アサリ煮、大根漬。
シラス御飯のおいしさをそのままに、おかずの増強で弁当らしくなり、掛紙と容器の見栄えも劇的に向上、初代の野暮ったさは完全に払拭された。価格は2012年のリニューアル時で880円、2014年時点で920円。2018年3月に上記へリニューアル。
※2021年3月補訂:新版と旧版の解説文を整理下記の駅弁「しらす弁当」を、2007(平成19)年2月11日にリニューアル。長方形の容器いっぱいに白飯を詰め、シラスと焼きイカタラコと玉子焼とかまぼこで覆い、サクラエビ、青のり、白ごま、ひょうたん型の漬け物で彩る。鶏照焼と焼マスが消え、かまぼことイカタラコが加わり、掛紙の絵柄が変わり、価格が50円下がった。今回の風味に、物足りなさは感じない。2012年6月に上記の駅弁「しらす弁当」へ、大きくリニューアル。
※2021年3月補訂:新版と旧版の解説文を整理2006(平成18)年の鉄道の日にちなみ、10月14日に「鉄道開業記念弁当」の名前で30個を販売。名前と容器を変えて、11月17日に改めて発売した。長方形の容器いっぱいに白飯を詰め、シラスと玉子焼と鶏照焼と焼マスと山くらげで覆い、サクラエビ、大葉、白ごま、ひょうたん型の漬け物で彩る。湘南の名物として人気のシラスが、珍しく駅弁になったのだが、中身の見栄えや掛紙の絵柄そして風味に少しずつ物足りなさを感じるのはなぜだろう。2007年2月11日に上記の「しらす弁当」へリニューアル。
※2021年3月補訂:新版と旧版の解説文を整理2019(平成31)年3月21日の発売。白飯を神奈川県三崎のマグロのカツとそぼろ、ひじきと卵そぼろで覆い、マグロの揚げ煮その他煮物やかまぼこなどを添える。変わった鶏飯のような味でもあり、中身でなく味ではマグロづくしとまで言えるかどうか。日の出の海の黄色い空にマグロが跳ねる絵柄か色使いは、大船駅弁のどこか何かで見た気がする。同年12月15日限りで終売。
三崎は、神奈川県で東京湾に突き出た三浦半島の最先端。古くからの漁港であり、第二次大戦後から昭和30〜40年代までマグロの遠洋漁業や臨海レジャーで大いに栄えたが、平成時代にすべての産業が衰退し、東京都心から1時間で行ける過疎の町となっている。京急久里浜線の油壺または城ヶ島までの延伸を拒否していなければ、まだ良かったと思うのだが。その京急電鉄が2009(平成21)年8月に発売した企画乗車券「みさきまぐろきっぷ」で、年間で500万人を割った観光入込客数が600万人以上に回復し、マグロでの町おこしに取り組み始めている。
※2019年12月補訂:終売を追記下記の駅弁「鯛めし」を、2017(平成29)年の秋にリニューアル。タイの炊込飯をタイそぼろで覆い、タイの幽庵焼を1切れ置いて、錦糸卵と紅生姜とグリーンピースで彩り、シイタケとニンジンと高野豆腐の煮物、アサリ煮を添える。東海道本線沿線で伝統的な、ボソボソとした鯛飯駅弁とは異なり、タイそぼろがまるでクリームのようにふんわりしていた。昔の鯛飯の駅弁掛紙の紹介は、前作から受け継がれた。「諸般の事情により9月17日(月)をもって製造販売を中止」とのことで、改装後約1年で終売。
※2018年10月補訂:終売を追記2015(平成27)年夏の発売か。中身の写真を掲載したボール紙製パッケージの底面には、大正、昭和、平成に販売した大船駅弁の鯛飯の掛紙を掲載する。中身は、容器にタイの炊込飯を敷き詰め、その上にタイの切り身の焼煮3切れ、玉子焼2個、シイタケに、つぼ漬、ひょうたん漬を置くもの。
タイのおぼろを混ぜたり詰めたりする、東海道本線の相模湾や駿河湾の沿岸で明治時代からの伝統的な鯛飯駅弁と違い、これは食べやすく、しかし味ではなく香りでその追体験ができるような気がした。売れるかどうかは分からないが、使いやすくて良い駅弁。2017(平成29)年の秋までに、上記の「大船軒の鯛めし」へリニューアル。
※2018年8月補訂:終売を追記2013(平成25)年3月の発売。上記の駅弁「しらす弁当」や下記の駅弁「しらす膳」とは併売されているようだが、もしかすると東京駅の駅弁売店「駅弁屋 祭」専用の駅弁かもしれない。やや深めな長方形の容器に白御飯を浅く敷き、シラス炒めをたっぷり載せ、イクラ醤油漬、サクラエビ、海藻を添え、アジフライ2個と生姜酢漬を付けるもの。このページの上や下の駅弁と同じく、駅弁では稀なタイプであり、シラスがうまい駅弁である。相模湾の湘南しらすが揚がらない時に、販売しないことがあるそうな。価格は発売時や2013年の購入時で1,000円、2014年時点で1,100円、2019年時点で1,250円。2019年12月15日限りで終売。
※2019年12月補訂:終売を追記2009(平成21)年4月の東京駅東日本縦断駅弁大会で発売、同年9月からレギュラー販売が始まった、上記の駅弁「しらす弁当」の豪華版。ただしどうも大船駅ではなく、東京駅あるいは都内の駅弁売店「駅弁屋旨囲門」での販売ではないかと思う。東海道新幹線に乗る前に買う弁当として親しまれている感じ。
商品名を大きく書いたボール紙の正方形の容器に黒いトレーを詰める。中身はサクラエビと青のりを振ってイカとタラコの炒め物を添えたしらす御飯に、エビフライ1本、薩摩揚げ1枚、サワラ西京焼、玉子焼、桜シウマイ、ホタテやサトイモなどの煮物、枝豆など。個人的にシラスはスーパーにて1パック100円で買えるという昔の固定観念が離れないため、1,200円が高価に思えるが、浜松の千円の駅弁より間違いなく豪華に作った印象はある。価格は2009年の購入時で1,200円、2014年時点で1,300円、2015年時点で1,350円。2015年頃までの販売か。
※2020年4月補訂:終売を追記2000(平成12)年の発売。発泡スチロール製長方形の容器の中身は、一面に敷き詰められた炊き込み御飯の上に、一般的な鯛めし弁当のような甘鯛そぼろではなく鯛煮のフレークが混ぜられるように載り、椎茸・里芋・人参・椎茸の煮物や大根べったら漬なども一緒に載る。
包み紙は鯛が踊る古風な賑やかさを持つデザインで、その裏面は双六を印刷、フタの裏に御飯粒が付いているところまで昔風?に仕上げている。やや造りが雑な印象も受けるが、この値段で良い味は出されている。2002年の初頭頃に終売となったが、2003年には再登場、その後も発売と終売を繰り返した模様。
2006(平成18)年1月の京王百貨店新宿店駅弁大会で発売か。小さな円形の容器に透明なふたをして、黒い掛紙をかけてゴムで枠をしばる。中身は粒フレークの鯛ごはんのみ。
分量は少ないが、粒状の鯛フレークの絶妙な塩加減や柔らかさが鯛飯と合い風味を出す、かなり久々な感じがする美味い新作大船駅弁。と思いきや、京王以外での販売がない疑義駅弁である模様。4月7日発売の「天然の真鯛ごはん」がこれに該当するのかどうか。
1941(昭和16)年8月10日5時の調製と思われる、昔の大船駅弁の掛紙。下記の1933年4月のものの、文字を活字に変えたくらいで、絵柄は変わらない。この頃の駅弁の掛紙にありがちな、戦時色が見えない。
1933(昭和8)年4月21日19時の調製と思われる、昔の大船駅弁の掛紙。下記の1929年6月のものと趣旨は同じだが、真っ赤なタイが時計回りに90度開店し、駅弁の名前の「鯛」の漢字が記されるようになった。東京鉄道局の注意書きも追加。
1929(昭和4)年6月30日11時の調製と思われる、昔の大船駅弁の掛紙。鯛の絵柄と中心の文字で「鯛めし」と読ませるデザインではないかと思う。この平仮名の絵柄が、2017年発売の駅弁「大船軒の鯛めし」に取り入れられた。