大阪駅から特急列車で約2時間。福井市は福井県の北部に位置する県庁所在地で、人口約26万人の城下町。戦国時代以降、朝倉氏の一乗谷、結城氏の北ノ庄城、松平氏の福井城、明治時代の福井県庁と、地域の行政の中心地となってきた。駅弁はホーム上、改札外コンコース、高架下の商業施設で売られ「越前かにめし」が有名。1896(明治29)年7月15日開業、福井県福井市中央一丁目。
秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2022(令和4)年秋の新商品。正方形の小箱に酢飯を詰め、若狭牛の時雨煮とごぼう、炒り玉子、タケノコの山椒煮のストライプで覆う。具と飯の合わせ方が個性的な牛肉駅弁。そんな個性がうまいかどうか、この値段で納得できるかは別として。
2021(令和3)年2月の鶴屋の駅弁大会で、980円にて実演販売。2022年の春頃には福井駅で売られたか。2023年1月の京王百貨店で、駅弁大会会場でなく中地階の食品売り場で891円にて輸送販売。ごくまれに、催事向けに出荷されたり、福井駅で売られる駅弁と考えられる。
白いプラ製の丼に白飯を詰め、福井名物のソースかつで、薄いロースの豚肉を揚げて、醤油のように粘性のないソースに浸けたトンカツで覆い、紅生姜を添えるだけ。2008年から売られる加熱機能付き容器の駅弁「福井が一番ソースカツ丼」の、加熱機能のないバージョンにみえるが、こちらは中身に加えてスリーブの絵柄もシンプル。うまそうにみえない冷めたカツ丼ではあるものの、福井のソースかつ丼は食堂ではいただけても弁当では買いにくいと思うので、こんな駅弁があってよいと思う。今の駅弁としては、値段も控えめでお買い得。
2016(平成28)年9月18日に1,280円で発売。2017(平成29)年12月1日に、外観を変えて中身を変えず1,050円で再発売した模様。16世紀に朝倉氏の城下町があった一乗谷の伝承料理「朝倉膳」からヒントを得たという9区画の中身は、古代米、うなぎめし、小鯛の手まり寿司、ししとうなどの揚げ物、若鶏旨煮と玉子焼など、豚西京焼やタケノコ煮など、たらの子旨煮、ダイコンやシイタケなどの煮物、ごま里芋と紅白なます。おしとやかな風味と構成を感じる、おつまみ弁当。
外装が凝っている。掛紙はフィルム素材。上面に日本語表記のない英文での宣伝文を記し、側面や底面に注意書きや調製元の由来を日英表記する。多くの駅弁に見られる、ふたに中身が付かないようにするシートには、9区画それぞれのお品書きに個別の栄養成分表示を記し、これにも英語を併記する。インバウンド時代の駅弁は、こうなっていくのだろうか。価格は2019年時点で再び1,280円になった模様。
※2019年8月補訂:値上げを追記2007(平成19)年1月の発売か。全国にありふれて、福井にはなかった牛肉の駅弁。白飯を若狭牛と輸入牛を半分ずつブレンドした牛肉煮で覆い、紅生姜で彩り、切り干し大根、玉子焼、かまぼこ、梅干しを添える。米沢駅弁「牛肉どまん中」を筆頭とした、今では全国どこにでもあるタイプの牛肉駅弁なので、普通においしくも、個性は無し。価格は2018年の購入時で1,050円、2020年時点で1,100円。
※2020年12月補訂:値上げを追記2012(平成24)年1月の阪神百貨店の駅弁大会で初登場か。外は真っ黒、内は橙色のボール紙製容器に、甘酢に漬けて焼いたというスルメイカに梅ちらしずしとへしこちらしを詰めたイカ飯が各1本横たわり、イカゲソの揚げ物を添える。飯の酸味とシソ味は苦手なのできつかったが、イカの身には今はなき豊岡駅弁に次ぐプリプリ感があり、京王でも阪神でも実演販売に行列ができる森駅弁と対決できるのではと思った。ゲソもこれで飯が食えそうなB級感がいい感じ。価格は2012年の購入時で850円、2015年時点で880円。
※2015年9月補訂:値上げを追記秋冬の駅弁大会シーズンに向けて、2008(平成20)年の秋に発売。円形の加熱機能付き容器を使用、中身のイメージ写真と駅弁の名前を強調したボール紙の箱に詰める。中身はそのイメージと同じく、白御飯の上にソース漬けのロースカツが載るだけ。紅生姜は袋入りが別添される。福井名物のB級グルメとして近年その名を広めつつあるソースカツ丼が、加熱式駅弁で再現された。価格は2009年の購入時で1,000円、2015年時点で1,050円、2020年時点で1,100円。
会津や伊那でも名物とされるソースカツ丼、福井県民に言わせれば、福井出身の高畠増太郎がドイツ留学帰りの1913(大正2)年に創案し東京で売り出したものが元祖なのだという。関東大震災により郷里の福井に移転、現在も「ヨーロッパ軒」として地元や旅行者の心を引き付けている。味や好みはどうであれ、こういう駅弁は今の福井に必要だ。
※2020年12月補訂:値上げを追記福井駅の駅弁屋がつくり、福井駅の駅弁売り場で売る、駅弁に見えないお弁当。スーパーかコンビニの惣菜弁当向け容器の発泡材トレーに、日の丸御飯、ソースカツ、日の丸御飯、ソースカツ、きんぴらとカボチャ、ポテトサラダを盛る。冷蔵で駅弁のしっかりした味がするが、駅弁大会で買った上記の駅弁「福井が一番ソースカツ丼」と違い、やっぱり見た目は駅弁でなし。なぜ福井駅で名物ソースカツの駅弁がこんな姿になったのか、不思議に思う。
2004(平成16)年の新作だろうか。経木枠の長方形の容器に和紙墨絵風の白い掛紙をかける。中身は日の丸御飯とかにめしがひとつずつ、海老にカボチャに薩摩芋に椎茸と分量の多い揚げ物に、玉子焼や蒲鉾に煮物や漬け物、デザートにオレンジといろいろ入る欲張り弁当。
掛紙によると煮物と魚と福井のお米にこだわったそうで、たしかに素材は良さそうなのだが、御飯が透明のプラ製トレーに詰められたり、揚げ物の油が多すぎて底敷きの紙が浸っていて、風味と雰囲気がやや殺がれた気はする。それがなければかなり華やかな幕の内駅弁だ。価格は2005年の購入時で1,050円、2020年時点で1,080円。
※2020年12月補訂:値上げを追記2022(令和4)年4月10日から5月31日まで、福井駅や東京で販売。駅弁の日に合わせ、日本鉄道構内営業中央会の会員のうち21社が、FMヨコハマのラジオ番組「FUTURESCAPE」とタイアップし、この年の4月10日から各社の駅売店などで販売した、駅弁の日記念のおにぎり駅弁の、福井駅バージョンとして販売。今回のキャンペーンで各社に用意された「駅弁カード」が1枚付いてきた。
掛紙にはおにぎり3個の形と中身に、山と海の模式的な景色を描く。中身はおぼろ昆布福井梅おにぎり、ホタテ入名物かにめしおにぎり、もみわかめ鯖味噌煮おにぎりで、ビニールに包まれた3個のおにぎりと、里芋の竜田揚げ、菜の花漬け、奈良漬け。これは福井の山と海と里の味なのだろうか。福井駅の駅弁で使われる食材を少しだけ取り入れた、過去の福井駅弁になかったと思うおにぎり弁当。
2018(平成30)年に2回あった土用の丑の日の1回目に、東京駅の駅弁売店「駅弁屋 祭」で実施された「土用丑の日 うなぎ駅弁大会」で買えた弁当。調製元が福井駅の駅弁屋なのでここに収蔵したが、福井駅では売られたのだろうか。写真のとおり、惣菜向けトレーにぶっとく短い太巻きを1本置き、透明なふたをして、商品名のスリーブに収める。その太巻きは芯も外側もウナギ蒲焼で、「中国産・養殖」の柔らかいもので、十二分に食べ応えがあった。旧来のウナギ駅弁にないタイプ。この年の7〜9月のみの販売か。
※2020年12月補訂:終売を追記福井駅の幕の内弁当格。やや深めな木目調の容器に、菱川師福の屏風絵を載せた大きな掛紙を巻く。中身は福井の井だという井形の仕切りの中に御飯を詰め、その両脇を焼鮭や玉子焼や蒲鉾や海老や焼豚などと、鯛や鰻蒲焼や牛肉や大学芋などで固めるもの。おかずが盛り沢山で御飯が足りなくなる、ボリューム感のある駅弁。同じ価格帯のカニ飯駅弁がどちらかといえば分量控えめなので、満足感が欲しければこちらがよい。
「駅弁の達人」駅弁ブックによると、人気が高いため発売休止後に復刻したというが、人気があれば休止はないだろうし、復刻が切望されたという話も聞いたことがない。ともあれ、価格に見合う満足感がある駅弁だ。2004年度JR西日本「駅弁の達人」対象駅弁。2013年頃までの販売か。
※2015年9月補訂:終売を追記入手状況から1994(平成6)年1月3日11時の調製と思われる、昔の福井駅弁の掛紙。下記の11年前や上記の11年後と絵柄は異なるが、名前と位置付けは同じ、福井駅の幕の内弁当だろう。
1983(昭和58)年4月3日12時の調製と思われる、昔の福井駅弁の掛紙。福井駅の上等幕の内駅弁として、わかめをふりかけた白飯に、魚、煮物、玉子焼、カニ、鶏、山菜などの海の幸と山の幸を添えたという。福の井と福井の地名に関する説明文が掛紙の右側にある。
1979(昭和54)年1月10日10時の調製と思われる、昔の福井駅弁の掛紙。日本海に東尋坊と、カニとエビとタイやウニの写真が賑やかだが、これは幕の内弁当の掛紙だと思うので、これらの海の幸を詰めていたものではないと思う。
2004(平成16)年9月頃に発売された珍駅弁。透明なトレーを入れた紙箱の中に、おこわのようにもちっとした御飯に大葉と薄いカツを巻き、揚げてソースに漬けたと思われる「ソースかつ棒」が2本入り、レモンとエリンギとオレンジと生姜とマヨネーズを添える。少量の割に高価だとは思うが、他では味わえない独特の風味を楽しめるから、一度は試してみても良いし、個人的には気に入った。どうも福井のソースカツ丼は名物だそうな。見た人や買った人の中では話題になっていたと思うが、残念ながら2012年頃に終売か。
※2015年9月補訂:終売を追記1994(平成6)年1月2日10時の調製と思われる、昔の福井駅弁の掛紙の一部。食品表示には「幕の内弁当」とある。あすわとは、福井市内の地名や山の名、ここを流れる河川名である足羽のことか。掛紙の絵柄は、川の流れと小山のように見える。
1965(昭和40)年4月14日15時の調製と思われる、昔の福井駅弁の掛紙。今ならば「甘えびずし」と名付けるであろう、エビ寿司の駅弁だと思う。
昭和10年代、1940年前後の調製と思われる、昔の福井駅弁の掛紙。収集者は1941(昭和16)年10月12日の調製とみなし、掛紙に数字を書き入れた。銃を持つ兵士の絵柄も、旅客に食料の節約を呼び掛ける文章も、価格停止品を示すマル停マークも、これが戦時のものであることを示す。