大阪駅から特急列車「スーパーはくと」で約2時間半。鳥取市は鳥取県の東部で日本海に面する、人口約18万人の城下町。日本最大級の砂丘、梨やラッキョウや煙草などの農業、カニやイカなどの漁業、駅や名所に近い温泉などで知られる。駅弁は第二次大戦前から売られ、戦後にカニの駅弁が人気となり、今も様々な駅弁が駅で買える。1907(明治40)年4月28日開業、鳥取県鳥取市東品治町。
2004(平成16)年の8月頃に、ひっそりと発売。過去には竹のせいろだった円筒形の容器を、商品名を力強く記した真っ黒なスリーブで留める。この容器にイカスミで炊いた黒い御飯を詰め、イカを醤油煮、炒り煮、つみれ醤油煮で4種類の姿にして2個ずつ置き、漬物を添える。名前と見た目の奇抜と黒に違い、内容を文字で表した生臭さはなく、涼感をもってイカの味と香りを楽しめる、個性的でも普通においしいイカ弁当。
2005年6月のTBS系列のテレビ番組「日本列島 駅弁88ヶ所」で日本一の駅弁に選ばれて知名度を上げ、2009年1月の京王百貨店の駅弁大会では「イカvsタコ対決」でイカ駅弁の代表として諸先輩をさしおいて実演販売された。鳥取駅弁としての紹介例での存在感は、駅弁の歴史に残る代表格「元祖かに寿し」に匹敵するものの、スーパーやデパートの駅弁大会で見る機会は少なく、現地でも一日で5個から10個くらいしか売れないという。
価格は2004年の発売時で1,000円、2009年時点で1,100円、2014年4月の消費税率改定で1,140円、2019年時点で1,400円、2023年時点で1,450円、2024年までに竹のせいろをやめて中身のイカの姿を2種から4種にするリニューアルをしたようで1,380円。
※2024年9月補訂:写真を更新し解説文を手直し2009(平成21)年1月8日に購入した、鳥取駅弁のスリーブ。絵柄は上記の2024年のものと変わらない。容器や中身もだいたい同じだが、当時の容器は竹のせいろであり、飯の上にイカが4ハイ分並んでいた。イカ墨でほのかに黒く染まった、げそ混じりで水気の多い柔らか御飯の上に、地元業者に作らせる専用の醤油で煮た、やはり柔らかい小イカの半身が4ハイと、イカ団子が2個に山ごぼうが数本。
2005(平成17)年3月5日に購入した、鳥取駅弁のスリーブ。絵柄は上記の2009年や2024年のものと変わらず、容器や中身は2009年のものと同じで、これが2004年の発売当時の姿。写真のとおり、イカと飯を除く付合せは一定しない模様。
2018(平成30)年までには鳥取駅で発売か。市販の時刻表にも調製元の公式サイトにもその名がない、隠れた商品。おそらく既存の駅弁「さば寿し」のハーフサイズで、白ごま混じりの酢飯に焼かない締めサバを合わせて黒板昆布で巻いたサバ寿司を4切れ、小さな発泡材の容器に醤油とガリとともに詰めて、竹皮柄のボール紙のスリーブに収める。値段も半分になった、お手頃な商品。価格は2018年時点で1,000円、2022年時点で1,100円、2024年時点で1,200円。
2001(平成13)年の発売か。駅弁の名前は「山陰鳥取の味さば寿し」とも「山陰鳥取贅沢な逸品さば寿し」ともされる。白ごま混じりの酢飯に焼かない締めサバを合わせて黒板昆布で巻き、ラップで巻いて竹皮で包み、紙箱に収めて掛紙を巻く。西隣の駅弁である米子駅の吾左衛門鮓とよく似た内容と値段を持つ、20世紀タイプのおいしいサバ棒寿司。価格は2010年時点で1,680円、2014年時点で1,730円、2019年時点で1,850円、2023年時点で2,100円、2024年時点で2,300円。
※2024年9月補訂:写真を更新上記の駅弁「さば寿し」の、2014年時点での姿。異なるのは紙箱だけ。その紙箱が木目柄で、まきすのような段ボール調であり、真っ白な商材よりも暖かみがあり、それだけで初対面の印象がずいぶん異なると思う。
※2021年2月補訂:新版の収蔵で解説文を手直し2020(令和2)年11月に発売。11月から3月までの冬季限定駅弁。2014年9月の有名テニス選手のインタビュー記事以来、北陸や山陰や大都会にノドグロの棒寿司や弁当や土産物が普及し始めたが、鳥取駅の駅弁になるまでに、ずいぶん時間がかかったと感じる。正六角形の容器に酢飯を敷き、大葉の刻みと白ごまを振りかけ、ノドグロの切り身の炙りを貼り付けて覆い、練り梅と甘酢生姜を添える。淡泊にしても常温では風味がなく、これは温めたほうがよかったのだろうか。
2018(平成30)年に2回あった土用の丑の日の1回目に、東京駅の駅弁売店「駅弁屋 祭」で実施された「土用丑の日 うなぎ駅弁大会」で買えた弁当。調製元が鳥取駅の駅弁屋なのでここに収蔵したが、鳥取駅では売られたのだろうか。長方形の容器に白飯を詰め、ウナギの蒲焼きを置き、玉子焼とわさび漬とタレを添付。
昔ながらの鰻重タイプの駅弁。身より皮が厚いのではないかと思う弾力感(皮肉)もまた、四半世紀前に漫画などで描かれた昔ながらのウナギ駅弁だった。ウナギの産地は記載せず。下記の4年前の「うなぎ弁当」に比べて、掛紙の絵柄が変わり、玉子焼が増え、300円の値上げ。
鳥取駅で買えたウナギ駅弁。中身が白飯とウナギ蒲焼とわさび漬とタレ袋しかない、とても潔いウナギ弁当。ウナギはかなりの極薄で、そのために柔らかい食感にタレと焼きが香り、価格面で最高級食材の使い方として、美味さというより巧さを感じた。弁当そのものに、鳥取はまったくない。
2016(平成28)年10月2日に購入した、鳥取駅弁の掛紙。上記の2014年の現地のものと、容器や中身を含めてまったく同じ。掛紙に価格の表記はないが、200円の値上げ。
いつ出た商品だろうか。酢飯にオオバと白ゴマを振り、炙ったシメサバを貼り付けた棒寿司を、カットして6切れを細長い小柄な箱に詰め、ふたをして黒と炎のボール紙製パッケージに収める。このような商品は、各地の駅や空港やデパートやスーパーにあると思うが、このサバ寿司の焼サバからは紙をすり固めたような味しかせず、そのまずさに驚いた。これはどうしたことか。価格は2013年の購入時で950円、2014年時点で980円。
全国で唯一のトビウオ駅弁を名乗るが、飯の駅弁としては米子駅や佐世保駅にもあるので、寿司として唯一が正当。鳥取地方では「あご」と呼ばれるトビウオを、昆布をかけた棒寿司にして笹の葉で包み、長方形の容器に入れてボール紙のパッケージに収める。
トビウオを出汁にするのではなく身を食べるのは正に「名物にうまいものなし」を表現するものだと思うが、これは酢や昆布に胡麻や海苔を動員して、程良い歯応えと旨味を持つ、山陰や佐世保に縁もゆかりもない人でもまったく気にならない風味に仕上げられた。現地では一日15〜20個限定販売だそうな。価格は2004年の購入時で850円、2014年時点で880円。
※2014年12月補訂:値上げを追記2013(平成25)年1月の京王百貨店の駅弁大会でのみ販売された疑義駅弁である模様。名物「イカ」寿し、元祖「かに」寿し、炙り「鰆」の押寿しを足して、いかにさわら。小柄な容器に、イカの輪切りに酢飯を詰めたイカ寿しが1ハイ分で3個、鳥取の名物駅弁である元祖かに寿しと同じもの、サワラをあぶった押し寿司が握りサイズで3個入る。遠くに運ばれる鳥取駅弁はいつも酸味と臭みが強く、これもそうであったので、もし可能であれば現地での風味を味わってみたかった。
小柄で昔ながらの駅弁らしい形状な経木折を、駅弁の名前を書いた空色の掛紙で包む。中身は酢飯を敷いて錦糸卵をまぶし、ボイルエビ、カマボコ、シイタケ、奈良漬、甘酢生姜、桜でんぶ、さくらんぼなど。
これはいつの時代の作品だろうか。このおかずで御飯を食べろというのは、個人的にはちょっと酷。しかし誰かに買われているから売られているものだと思うし、酢飯そのものは食べてふんわり、のちに酸味、最後に甘味が出る、おそらく同じ調製元の看板駅弁「元祖かにずし」と同じもので、これは良い味だった。価格は2010年の購入時で410円、2014年4月の消費税率改定で430円。2018年頃までには終売か。
※2022年8月補訂:終売を追記小柄で昔ながらの駅弁らしい形状な経木折に、駅弁の名前を書いた小さな掛紙を置く。中身は食品表示における品名「巻といなり」のとおり、太巻きが6切れにおいなりさんが2個。細巻きが入らないため助六寿司を名乗っていないが、機能としてはそのもの。現代人の嗜好に係わらず生きる、安心感の塊である。価格は2010年の購入時で410円、2014年4月の消費税率改定で430円。2018年頃までには終売か。
※2022年8月補訂:終売を追記2009(平成21)年か、それ以前に発売。駅弁の名前のとおり6〜8月限定の駅弁。薄い木でできた楕円形の容器に、シンプルで涼しげな色彩の紙帯を締める。中身は五目飯の上を刻みアナゴ、わさび菜、イカの輪切り、みょうが、イクラ、枝豆、刻んだ玉子焼などで覆うもの。アナゴの味が濃いほかは、夏らしく丼らしくおいしい駅弁だった。
この駅弁を購入した朝7時台の鳥取駅では、改札を出て左側の駅弁売店で、なんと見た目で18種もの駅弁を数個ずつ積んでいる状況。1社1駅で実際にこれだけの種類の駅弁を駅売りしているのは、他には東京都内の日本レストランエンタプライズ(NRE)くらいでないかと思った。季節のわっぱシリーズは、2019年の春までの実施か。
※2020年4月補訂:終売を追記2009(平成21)年8月8日に発売。有田焼の茶碗に透明なふたをして、水木しげるの漫画作品「ゲゲゲの鬼太郎」を描いたボール紙で固定する。中身は鳥取県産米を使った茶飯の上をホタテ、ゆでエビ、刻みアナゴ、焼き鮭、イカ、鬼太郎を描いたカマボコ、わさび漬けで覆い、柴漬けを刻んで添えるもの。
食べ終わると有田焼の容器の内側底部に見つかる「ゲゲゲの鬼太郎」のキャラクターは、2010年1月の購入時では第1弾の目玉おやじと鬼太郎。同年の春頃に第2弾の一反木綿になり、2011年2月時点で近日中に第3弾のぬりかべに変わるという。2013年には「ゲゲゲの鬼太郎風呂茶漬け牛まぶし」に変更、2015年には「ゲゲゲの鬼太郎丼」に変更。
「悪魔くん」「ゲゲゲの鬼太郎」で知られる漫画家であり妖怪研究家の水木しげるは、現在の鳥取県境港市で育ったため、境港市では地域おこしの一環として商店街に139体ものブロンズ像を立てるなど「鬼太郎のまち」をアピールする。同じ鳥取県でも鳥取市と境港市は鉄道で2〜3時間を要するほど離れているが、鬼太郎の駅弁は駅弁のない境港駅はともかく、近隣の米子駅ではなくこうやって鳥取駅に登場した。
※2022年8月補訂:終売を追記智頭急行の開業15周年を記念して、2009(平成21)年7月23日に発売。鳥取県東部の名産や名所を表面にたくさん描き、裏面に兵庫県南部のそれを少し描いたボール紙の箱を使う。白いトレーに収まる中身は、チキンライスにオムレツ、ハンバーグ、鶏唐揚、玉子焼、ソーセージ、スパゲティ、ナチュラルチーズ。ふたの裏にはケチャップとともに、特急列車「スーパーはくと」の先頭車のペーパークラフトが差し込まれている。可食部分は風味も内容も分量も大人受けしないお子様ランチ。2014年までの販売か。
智頭急行は、1994年12月3日から智頭線を営業する第3セクター鉄道会社。兵庫県の山陽本線上郡駅と鳥取県の因美線智頭駅を結び、京阪神地区と鳥取地方を短絡する目的で1966年に国鉄新線として着工された智頭線の工事が、1980年の国鉄再建法に基づき中止されたため、この路線が経由する兵庫、岡山、鳥取の各県などが出資して受け皿を設けたもの。
特急列車「スーパーはくと」は智頭線の開業に合わせて、新大阪駅〜鳥取駅・倉吉駅で運行を開始。従来は4時間程度を要した大阪と鳥取の間が2時間半程度に短縮され、航空路線を休止へと追いやった。運行開始の翌月には阪神・淡路大震災により約2か月半の運休を余儀なくされたが、以後は京都駅への乗り入れや増発や増結やリニューアルを経て、このような駅弁が出るほどに定着している。カーブで車体を傾ける振り子機構と、先頭車の前面展望が自慢。
※2021年2月補訂:終売を追記2008(平成20)年4月29日の発売。既存の駅弁「いかすみ弁当黒めし」をイカ飯に仕立てたものだろう、黒いボール紙の容器の中に、見た目は特段に黒くないイカ飯を2個、ビニール袋に包んで収める。イカを割ってみると、御飯は少々黒く染まっていた。あの偉大な駅弁に比べて、食味は少々柔らかめか。調製元は鳥取空港の空弁として紹介しているが、JR鳥取駅でも買える。2013年までの販売か。
※2015年9月補訂:終売を追記