博多駅から特急列車「リレーかもめ」と新幹線「かもめ」を乗り継いで約1時間半。長崎市は九州の西側で東シナ海に面した、人口約40万人の港町で県庁所在地。江戸時代に海外へ唯一開かれた貿易港であり、三菱重工業長崎造船所の企業城下町であり、異国情緒の観光地であり、世界唯二の被爆都市である。駅弁は日本食堂の支店からJR九州の子会社を経て、現在は駅のコンビニに地元や鹿児島の弁当が入荷する形態。1905(明治38)年4月25日開業、長崎県長崎市尾上町。
駅弁の名前は「角煮めし弁当」とも。長崎駅弁の全面リニューアルに伴い、2005(平成17)年4月1日に駅弁デビュー。長崎市街で創業明治27年の料亭・御宿「坂本屋」が名物とする、長崎名物の卓袱料理(しっぽくりょうり)に入れる豚角煮「東坡煮(とうばに)」や、これとその煮汁を使い竹皮に包む、ちまきのようなもの「角煮めし」を、お弁当にしたもの。
四角い容器に五目おこわを詰め、豚角煮を散らし、マンゴー寒天、生姜酢漬、干し大根しょうゆ漬を添える。常温でとろける角煮が印象的な、食べやすい丼ものタイプ。価格は2005年の発売時で750円、2014年時点で800円、2020年時点で850円、2023年時点で980円。
原子爆弾で焼失した駅舎に代えて、長崎で戦後長らく親しまれた教会風の大三角屋根の駅舎は、JR九州が2000年4月の日蘭交流400周年に向けて建て替えようとしたが、政府機関と見なされるJRの大型工事なのに国際入札を実施しなかったとアメリカが文句を言い、再入札で日米韓の共同企業体が落札、それで完成が2000年9月にずれ込んでしまった。この年に九州新幹線長崎ルート、のちの西九州新幹線の長崎駅の位置が定まり、在来線の連続立体交差事業を加えた長崎駅周辺再整備事業により20年もの歳月をかけて西方へ約200メートル移転、2020年3月に駅舎の機能を失い商業施設のみとなった。
※2024年9月補訂:値上げを追記2005(平成17)年10月28日に購入した、長崎駅弁の掛紙。掛紙も容器も、中身も風味も、上記の2022年のものと同じ。当時も掛紙には「坂本屋角煮めし」と書いてあるが、JR九州の駅弁ランキングなど対外的に使用される商品名は一貫して「角煮めし弁当」であった。
2022(令和4)年7月31日に、長崎駅の高架下の商業施設「長崎街道かもめ市場」のテナント「長崎焼小籠包チャイデリカ」で、「紫陽花」「つばき」「阿茶さん」の3種が駅弁を名乗り発売。9月23日の西九州新幹線の開業で「つばき」「阿茶さん」が改めて駅弁を名乗りデビューし、10月からのJR九州の駅弁キャンペーン「第13回九州駅弁グランプリ」にエントリー。販売の実態はエキナカの惣菜、惣菜店のお弁当であるため、駅弁を求めて長崎駅へ行っても、見つからないのではと思う。
見た目もプラ容器に御飯とおかずを詰めた惣菜。これに長崎県の花木にちなむ商品名と、長崎新地中華街の玄武門を描いた掛紙を巻く。中身は白飯、青椒肉絲(チンジャオロース)、海鮮野菜塩炒め、春巻き、特製唐揚げ、皿うどん(細麺)。デパ地下の中華惣菜のおいしさ。加えて皿うどんがこの姿と内容で入ることに、長崎を感じ取れる。
2022(令和4)年7月31日に、長崎駅の高架下の商業施設「長崎街道かもめ市場」のテナント「長崎焼小籠包チャイデリカ」で、「紫陽花」「つばき」「阿茶さん」の3種が駅弁を名乗り発売。9月23日の西九州新幹線の開業で「つばき」「阿茶さん」が改めて駅弁を名乗りデビューし、10月からのJR九州の駅弁キャンペーン「第13回九州駅弁グランプリ」にエントリー。販売の実態はエキナカの惣菜、惣菜店のお弁当であるため、駅弁を求めて長崎駅へ行っても、見つからないのではと思う。
見た目もプラ容器に御飯とおかずを詰めた惣菜。これに長崎における中国人の呼び名「阿茶さん(あちゃさん)」とした商品名と、登り竜を描いた掛紙を巻く。中身は炒飯、海鮮野菜塩炒め、酢豚、海老チリ、特製ハトシ、皿うどん(細麺)、フレッシュ野菜、フルーツとしてライチ。デパ地下の中華惣菜のおいしさ。炒飯の駅弁と考えれば、他には横浜駅と東京駅くらいにしかない珍品。
2022(令和4)年9月10日に長崎駅のファミリーマートで、17日に諫早駅のファミリーマートで発売。その頃には全国のスーパーの駅弁大会や、東京駅などでも発売か。調製元は鹿児島の駅弁屋で、売り場によって博多駅や鹿児島中央駅など、いろんな駅を名乗り売られる商品。ここでは2022年9月9日JR九州ニュースリリースに従い、長崎の駅弁とみなした。岡山駅でも同じコンセプトの駅弁が出た。
2022年9月23日に開業した西九州新幹線を走る、JR九州N700S系8000番台電車の先頭車の形を模したプラ容器を、その絵柄を持つスリーブにはめる。中身はとりめしを牛すき焼きと黒豚角煮で覆い、錦糸卵、紅大福、きんぴらごぼう、いんげん、花人参を添えるもの。調製元が得意な内容なのだろうが、正直うまくない。新幹線かもめ号が走る長崎や佐賀にちなんだ中身でなくても、容器と名前で売れるのだろう。
2019(令和元)年の夏までに発売か。もとは出水駅の駅弁屋で、鹿児島中央駅や熊本駅へ進出し、別会社で博多駅にも進出し、新大阪駅や東京駅でも駅弁が輸送販売される松栄軒が、この頃までに大分駅や長崎駅へも駅弁を送るようになった模様。掛紙には中身のイメージと長崎新地中華街を写真で掲載。中身は白飯を錦糸卵と豚角煮で覆い、紅生姜とサツマイモと高菜を添えるもので、そのつくりは鹿児島県内では黒豚で売られる商品にそっくり。豚角煮は薄めにスライスされており、角煮丼というよりはむしろ豚バラ丼であり、長崎で料理としても駅弁としても先輩である「坂本屋角煮めし」とは異なるものになっていた。
長崎駅の駅弁は政府の新型コロナウイルス感染症対策を理由に、2020年4月から販売を休止、2022年4月に駅のコンビニで復活した「ながさき鯨カツ弁当」と「坂本屋角煮めし」を残し、そのまま消えてしまった。
※2022年7月補訂:終売を追記長崎駅の駅弁売り場で買えたサンドイッチ。エビとタラのすり身をパンに挟み、パン粉で揚げたサンドイッチを、透明な容器に小さく3切れ収める要冷蔵商品。かすかにプリプリ、サクサクして、エビカツサンドをとても軽くヘルシーにしたような、不思議とクリーミーな、どこにでもありそうで、ここにしかない惣菜パン。
ハトシとは中華料理の一品だそうで、エビなどのすり身を食パンに挟み、油で揚げた料理。つまり名前に「サンド」を付けなくてもよいのだが、この杉蒲のハトシサンドが長崎名物あるいは駅売り名物として、ファンが少しずつ増えているようだ。
長崎駅の駅弁は政府の新型コロナウイルス感染症対策を理由に、2020年4月から販売を休止、2022年4月に駅のコンビニで復活した「ながさき鯨カツ弁当」と「坂本屋角煮めし」を残し、そのまま消えてしまった。
※2022年7月補訂:終売を追記惣菜用の正方形の容器に、透明なふたをして輪ゴムでしばり、商品名を書いた緑色のボール紙の枠にはめる。中身は商品名のとおり、大村名物という角ずしが4ブロック入る。酢飯の上にシイタケやカンピョウやゴボウを細かく刻み、錦糸卵で覆う押寿司。おにぎりの代わりにおかずいらずでいただける、手軽な御飯物。価格は2009年の購入時で504円、2014年時点で570円。
文明6年(1474年)に島原の有馬氏に敗れて大村を明け渡した大村純伊(すみこれ)が、同12年(1480年)に大村を奪還した際に、喜んだ領民達が侍を迎えるにあたり、各家庭にあったもろぶたと呼ばれる木箱に御飯と錦糸卵とありあわせの材料を詰めて押し寿司をこしらえ、侍達がこれを脇差で縦横に切って食べたのが、大村寿司の由来だそうだ。だから押寿司なのに円形でも棒状でもなく、正方形の形をしている。
しかし大村で500年以上の歴史を刻む本来の大村寿司は、白身の魚の酢締めも入る2層構造であり、この商品のような魚のない1層構造ではないようだ。ただ、大村市街に店を構えるやまとの角ずしは評判が高く、これが長崎駅や長崎空港の売店ほか県内各地で販売され、県民に親しまれている。
長崎駅の駅弁は政府の新型コロナウイルス感染症対策を理由に、2020年4月から販売を休止、2022年4月に駅のコンビニで復活した「ながさき鯨カツ弁当」と「坂本屋角煮めし」を残し、そのまま消えてしまった。この商品は、鉄道の駅以外では健在。
※2022年7月補訂:終売を追記九州の駅弁ランキング第2弾の実施に伴い、2005(平成17)年の秋頃に発売か。従前にも同じ名前の駅弁があったが、内容も調製元も異なる。折尾など他駅の駅弁でも見かける、駕籠型の二段重ねの黒い紙箱に、汎用の掛紙をかけて事務用輪ゴムでしばる。中身は下段に胡麻御飯、上段に豚角煮や揚げ海老団子やイカ焼売などのおかず多種を詰める。
味は単純にうまいが、これは街弁であり駅弁ではない。駅弁キャンペーンに名を連ねてはいるが、調製元も駅弁や駅弁屋を名乗らないし、商品外観も販売形態も駅弁らしくない。他駅も含め、九州では駅弁と街弁の境界が曖昧になりつつあると思う。価格は2005年の購入時で1,050円、2014年4月の消費税率改定で1,080円、2020年時点で1,100円。
長崎街道は小倉と長崎を、現在の鹿児島本線・筑豊本線・再び鹿児島本線・長崎本線・佐世保線・JRバス嬉野線・大村線・再び佐世保線のルートで結び、山陽道などを介して江戸や京都と唯一の開港場であった長崎を結んだ、江戸時代の九州最重要街道。折尾と鳥栖でも駅弁になっているが、街道は食材や料理ではないので、各調製元を代表する商品に見合う食材を詰めている。
長崎駅の駅弁は政府の新型コロナウイルス感染症対策を理由に、2020年4月から販売を休止、2022年4月に駅のコンビニで復活した「ながさき鯨カツ弁当」と「坂本屋角煮めし」を残し、そのまま消えてしまった。
※2022年7月補訂:終売を追記下記の駅弁「御飯の鯛めし」の、2006(平成18)年1月京王百貨店駅弁大会実演販売版。掛紙と容器を変えて、中身と価格は変わらず、そして全体的に駅弁らしくなった。今回は目玉商品扱いではなくなり、見た目に販売は苦戦していたが、一方で大量生産の弊害もなくなり、よりおいしくいただけた。
以後の京王百貨店駅弁大会に、この商品は来ていない。また、長崎駅での販売も、2010年より前には終えた模様。調製元の長崎市内の鯛飯屋での販売は続いており、百貨店の催事にも時々現れる模様。
※2017年8月補訂:現況を追記2005(平成17)年1月の京王百貨店の駅弁大会で長崎駅弁として出品された、市内の鯛飯屋さんのお弁当。その店名が「御飯」なので、不思議な弁当名が付いている。市販のプラ製の惣菜容器に商品名と自社ロゴマークを記した掛紙をかけ、中身は焼いた鯛を混ぜて鯛の出し汁で炊いた御飯の上を、3切れの焼鯛と錦糸卵や高菜などで彩る鯛飯。これを出すのにえらく苦労したという白身魚の淡い風味が、常温の弁当で生きている。しかし購入時には実演販売での大量生産の影響か、魚のウロコがけっこう混じっていた。
長崎駅は国鉄時代に日本食堂の長崎営業所が駅弁も手掛けたため調製元が地元業者でなく、国鉄分割民営化で日本食堂も解体された後にもその状態が続く。駅弁販売というよりデパートやスーパーの弁当コーナーな状態なのか、都市の規模や観光地としての知名度と比較して駅弁の存在感が薄いのは、ここに原因があると思う。
2012(平成24)年10月のJR九州「九州駅弁グランプリ(第9回)」へのエントリーまでに発売か。ホカ弁や屋台でも使われる容器に白御飯を詰め、高菜炒めと錦糸卵と紅生姜を敷き、天草梅肉ポークの肩ロースを使うピリ辛の豚肉味噌焼を載せて、根菜の煮物とダイコンなどの酢の物を添える。容器も内容も分量も価格も、遠慮せずモリモリとかきこめるタイプの駅弁。価格は2013年の購入時で780円、2014年4月の消費税率改定で800円。2014年までの販売か。
天草梅肉ポークとは、熊本県上天草市で同じ名前を称する養豚会社のブランド豚。九州地区で初めてのSPF豚を、抗生物質ではなく地元の梅肉エキスを飲ませて育てる。2000年と2001年の熊本県農業コンクールで表彰されたり、養豚に留まらず自社で加工品の製造や販売を手掛けたり、畜産の成功事例として農林水産省の資料でも紹介されている。
※2017年8月補訂:終売を追記九州新幹線全線開業記念駅弁22種のひとつとして、2011(平成23)年1月1日から8月31日まで販売。その後もこのとおり、販売が続いている。仕出し弁当向けの容器に、日の丸俵飯、太巻き、いなり、おこわで4種の御飯と、豚角煮、根菜の煮物、焼き魚、エビチリ、鶏肉、煮豆、高菜炒め、フルーツなど。
卓袱(しっぽく)料理風の駅弁ということだが、つまりいろいろ入っているということで、幕の内駅弁と同じように使える。長崎駅では昭和後期から「卓袱弁当」という駅弁が1,500円前後で断続的に出ていると思うが、これを千円でうまくまとめたという感じもする。価格は2013年の購入時で1,000円、2014年4月の消費税率改定で1,030円。調製元の撤退により、2018年限りで終売か。
※2019年8月補訂:終売を追記2005(平成17)年4月1日の長崎駅弁全面リニューアルに伴い発売。市販のボール紙製の仕出し弁当容器に、中身のイラストを描いた掛紙を置く。中身はピラフとスパゲティとトンカツに、ミニトマトとポテトサラダとオレンジと福神漬を添えるもの。由来を知らなければ、ジャンクフードの組合せに卒倒するだろう。調製元の撤退により、2018年限りで終売か。
長崎におけるトルコライスとは、この駅弁あるいはその掛紙のイラストのように、トンカツとピラフとスパゲティとサラダを一皿にまとめた郷土料理だそうな。他に大阪と神戸に内容が異なる同じ名前の料理があるそうな。名前の由来は「東洋の焼飯と西洋のパスタをカツでつなぐ」など諸説があるそうだが、トルコ料理とはほぼ無関係な模様。
※2019年8月補訂:終売を追記JR九州の2011(平成23)年度の駅弁キャンペーン「第8回九州駅弁グランプリ」の実施に向けて、2011年10月1日までに発売か。中身のスナップ写真と商品名などを印刷した掛紙を巻くスーパー向けの食品トレーに、豚角煮を丸いパンで挟んだサンドイッチを2個詰め、野菜スティックとオレンジを添える。これが駅弁なのか、長崎なのかは微妙だが、豚角煮は中華街のある街ではおなじみの食材ではあるし、パンと考えると安くはない価格に見合う肉の分量がある。味はみたまんま。キャンペーン期間中のみの販売か。
※2017年8月補訂:終売を追記2010(平成22)年のNHK大河ドラマ「龍馬伝」の放映を前に、2009(平成21)年9月下旬に発売。市販のボール紙製の弁当用容器に、お龍の顔写真を大きく印刷した掛紙をかける。9区画分のプラ製トレーに収まる中身は、日の丸御飯、赤飯、鶏飯、大村寿司(ちらし寿司)で4区画の御飯と、鶏照焼、豚角煮、焼き鮭、ハトシ(海老すり身の食パン揚げ)、竜眼(ゆで卵の魚すり身揚げ)、クジラの肉じゃがなどで4区画のおかずと、メロンとカステラで1区画のデザート。龍馬夫婦にちなんだ内容なのだという。2011年頃までの販売か。
坂本龍馬の妻であるお龍こと楢崎龍は、日本最初の新婚旅行と言われる慶応2年(1866年)3〜6月の旅行の後から、翌年2月まで長崎に滞在したという。龍馬自身も元治元年(1864年)に長崎を訪れ、薩摩藩の名義で外国から武器を買い長州へ横流しをしたり、慶応2年8月の訪問は海援隊の結成につながったそうな。1960年代に司馬遼太郎が小説に描いてから続き、2010年のNHK大河ドラマで再燃した龍馬ブームにより、こうやって長崎と結び付けられて、駅弁にもなった。
※2017年8月補訂:終売を追記以前の長崎駅で、ほぼ唯一の有名駅弁。かつては出島のような形状の容器を使用、長崎の高級料理「卓袱」をコンセプトにした中身は、鳥そぼろと玉子そぼろの御飯に、長崎天ぷらや豚角煮に焼き魚やクラゲ中華和えなど。これが全国駅弁紹介本に出たり、2004年の九州駅弁キャンペーンに出たりした。
しかしおそらく2005年4月1日のリニューアルにより、市内のパチンコ屋の仕出し部門がつくる、写真のような高級仕出し弁当に変更された。味や内容はともかく、特急列車のテーブルに収まらない特大容器が使われ、持ち運び時にうっかり傾けると汁物の汁がこぼれてくる弁当は、駅弁として不適当。旅行者に駅弁として認識されることは、なくなったと思う。現存しない模様。
卓袱料理とは、江戸時代に長崎で生まれた和洋中折衷の郷土料理。とはいえ最初に鯛のお吸い物が出る以外に食材や料理や作法の制約はなく、上座も下座もないひとつの円卓で大皿の料理をめいめいに自分の箸でじかにつつく、気取らない宴会料理のスタイルを表すものらしい。
なお、2006年10月時点の商品は、価格が1,300円に下がり、容器に掛紙が付き、中身も小変化した模様。調製元が変わったかどうかは不詳。
※2015年8月補訂:終売可能性を追記