北海道の中心地の中央駅。札幌市は明治2年(1869年)に開拓使が置かれたことで北海道の行政の中心地として発展を始めた、人口約196万人の道庁(都道府県庁)所在地。その札幌市を代表する駅として、道内各地への特急列車や空港駅への快速列車など、多くの列車が発着する。駅弁は1階コンコースや2階ホーム上の各地に置かれる売店で、早朝から深夜まで買うことができる。1880(明治13)年11月28日開業、北海道札幌市北区北6条。
1906(明治39)年に発売された、札幌駅伝統の駅売り銘菓。十勝産の小豆と道産の餅米で作ったという、小さく丸っこいあんころもちが、箱の中に8個詰まって600円。食べてみればなんてことないが、歴史の重みがある。ただ、札幌の駅と街が発展し過ぎたり、ホーム上での立売がなくなったりで、この名物の知名度はとても低くなっている。
※2023年5月補訂:写真を更新2023(令和5)年9月1日に札幌駅で発売。札幌駅で伝統の駅売り銘菓「柳もち」について、かぼちゃ仕立ての柳もちが入った季節限定版を、9月から11月までの期間限定商品として販売。いつもの柳もちの8個のうち4個が、小豆こしあんでなく、色鮮やかなかぼちゃあんをまとう。味はそんなに変わらない。価格は通常版より80円高い。
2007(平成19)年6月17日に購入した、柳もちの包装紙。当時は10個入りで600円だった。上記の2023年のものと比べて、中身は変わらずも包装紙の絵柄はまるで異なる。
1953(昭和28)年4月1日の調製と思われる、昔の札幌駅弁の掛紙。柳の葉と札幌の時計台と商品の外観を描く。価格や調製元に旧字体を使うため、価格や電話番号を見なければ第二次大戦前の掛紙に見えてくる。
第二次大戦前のものと思われる、昔の札幌駅弁の掛紙。収集者は1919(大正8)年のものとしていた。いちごもちは上記の柳もちと同じ時期に札幌駅で立ち売りされ、名物のひとつであったらしい。調製元の所在地の札幌区は、1879(明治12)年から1922(大正11)年7月まで存在した、現在の札幌市にあたるもの。
2023(令和5)年7月21日に札幌駅で発売。市販のボール紙容器に、6種類あるというJR北海道の特急列車の写真入り掛紙を巻く。今回は「特急すずらん(785系)」で、他に「特急宗谷(261系)」「特急ライラック(789系0代)」「特急北斗(261系)」「「はまなす」編成(261系5000代)」ともう1種類あるらしい。
中身はどの掛紙でも同じ。鶏飯と鮭いくらの三角おにぎりがひとつずつと、牛肉のしゃぶしゃぶ風サラダ、ポテトサラダ、鶏唐揚、スパゲティ、帆立照焼、とうもろこし、アスパラベーコン、小松菜おひたし、柳もち、大根桜漬。海鮮とコーンと緑色と柳もちで、札幌あるいは北海道を感じられただろうか。値がやや張る、幕の内タイプの駅弁。
特急すずらんは、札幌駅と室蘭駅を結ぶ列車。1992年7月の新千歳空港駅開業に伴うダイヤ改正で、当時に室蘭・千歳空港・札幌・旭川の各駅間を結んだ特急「ライラック」から、名前を分離した。以後約30年間、一日6往復前後の運転。運転区間のほとんどを重ねて札幌駅と函館駅を結ぶ「北斗」や、名称が変遷した後に今は札幌駅と旭川駅を結ぶ「カムイ」「ライラック」に比べて、主に約30年前の古い電車を使い停車駅が多く、速度や設備などの話題のないすずらんは、地味な存在だと思う。
2021(令和3)年8月1日に札幌駅で発売。幕の内弁当において三種の神器と言われる「焼き魚」「玉子焼き」「蒲鉾」にこだわった献立で、調製元の親会社のスーパーのデリカコーナーで2020年に発売して一番人気の「魚屋の脂ののった焼き鮭!弁当」と同じ鮭焼と玉子焼を入れたという。それらの食材と舞台の定式幕カラーなどを描いた掛紙にはそんな説明でなく、昭和時代の駅弁紹介本に記されたような、幕の内と弁当と駅弁の関係が紹介された。
長方形の木質エコ容器に白飯を詰めて海苔を貼り、焼鮭、玉子焼、揚かまぼこを載せ、鶏唐揚と帆立煮と赤かぶ漬も載せ、ふきや椎茸などの煮物を添える。幕の内弁当や幕の内駅弁というよりは海苔弁を思わせる見た目と詰め方。昭和時代かそれ以前から定番の構成であるだけに、弁当あるいは駅弁として食べることに向く。昭和時代の紹介であれば、幕の内駅弁にホタテを入れて北海道らしいと書かれたかもしれない。
札幌駅のキヨスクで買えたサンドイッチ。「YOSHIMI」ブランドのこの手の商品は、日本全国の主な空港で買うことができるが、駅ではあまり見ないと思う。細長いプラ容器に、ここでは白身魚フライサンド、ベーコンサンド、タマゴサンド、カレー味ポテトサンドなどの、一口サイズで小さな正方形のサンドイッチを並べていた。
2012(平成24)年6月の発売。小柄な正八角形の容器に御飯を敷き、ズワイガニほぐし身、サーモン、イクラ、ウニ、タコ、ホタテ、トビッコを盛り付ける、または押し込める。見てのとおりの北海道丸出しの内容と風味。中身の写真を美しく掲載したボール紙製パッケージに「函館本線札幌駅」と書かれているものの、東京駅の駅弁売店「駅弁屋 祭」と駅弁大会でしか売らないのではないかという疑念はあり、実際に収穫報告は東京駅のものばかりである。価格は2013年の購入時で1,000円、2017年時点で1,030円、2020年時点で1,190円、2023年時点で1,290円。どうも2015年頃から南千歳駅の駅弁を名乗り、スリーブの「函館本線 札幌駅」の文字を「千歳線 南千歳駅」に差し替えた模様。
※2023年5月補訂:新版を収蔵日本鉄道構内営業中央会が駅弁誕生135周年を記念して、会員のうち21社が2020(令和2)年4月10日から販売した、駅弁の原点であるおにぎりをメインとした記念弁当「駅弁誕生135周年おにぎり弁当」の、札幌駅弁の札幌駅立売商会バージョン。4月10日から30日までは750円で販売され、のちに700円のこのバージョンへリニューアルされた模様。このキャンペーンに共通の駅弁マークが、掛紙に使われる。
竹皮柄の厚紙容器に、サケの混ぜ御飯とイクラ、カニの混ぜ御飯にカニ身、ホタテの混ぜ御飯の、小さな小さなおにぎりを各1個並べ、煮物、玉子焼、柳もち、漬物を添える。北海道らしさと札幌駅弁らしさを、ほんの少しだけ取り入れたように感じられる軽食。販売期間は各社に任されており、これは8月までの販売か。
2017(平成29)年4月25日に札幌駅限定キヨスクオリジナル商品として発売。売店壁面の巨大なラッピング広告で宣伝し、発売2か月で約1万個を売ったという。京都あるいは東京を発祥にメディアに乗って2015年頃から流行した玉子焼サンドイッチが北海道札幌に上陸した。中身はそれらと同じく、ふんわり卵の甘い厚焼きのみを、耳なし食パンに挟んで3切れ分あるいは6個分。これにパンの耳のラスクを添えるのが特徴に感じた。2019年までの販売か。
※2021年2月補訂:終売を追記2016(平成28)年9月17日に発売し、翌2017(平成29)年9月25日にリニューアル。同時期に全国各地で出現し東京などで売られた、既存の駅弁4種類の組合せセットの札幌駅版。リニューアル前は下記の「牛めし」が「笹寿司」だったという。
ここでは「石狩鮭めし」「牛めし」「北海道知床とりめし」「海鮮えぞ賞味」のセットとして、茶飯に錦糸卵とイクラと鮭フレークとシイタケを散らしたものと、白飯に牛肉煮とタマネギとシメジとししとうと玉子焼を載せたものと、茶飯に焼き鳥とゴボウとシメジと漬物を載せたものと、酢飯をカニほぐし身とイクラと昆布とウニで覆ったものという、それぞれのエッセンスを松花堂タイプの4区画に詰め合わせる。他駅では1区画が「〜のおかず」として御飯を使わないものが、ここでは4区画すべてが御飯物であり、分量たっぷり。おそらく2019年の春頃以降は販売休止の扱いで、そのまま終売か。
※2021年2月補訂:終売を追記2017(平成29)年8月1日に発売。昆布茶飯を蒸しウニ、焼きウニと昆布、いくら、錦糸卵のストライプで覆い、奈良漬けを添える。スリーブの絵柄は昔の列車の行先表示を少し意識していると思う。味に影響はないが、それがそう思えなかったり、飯の地肌が見えたりと、札幌駅の駅弁にしては見栄えやデザイン力が足りない感じ。2019年6月5日限りで終売。
※2020年4月補訂:終売を追記2016(平成28)年2月1日の発売。北海道新幹線開業応援弁当の第3弾という位置付けらしいが、この時には前年9月16日に開業日が発表され、同12月18日に時刻表が公表され、駅弁の名前から「開業応援」が消えて、開業日以降も販売が続く。H5系新幹線電車の先頭車を模したプラスティック製の容器を使用、中身はカニとイクラのちらし寿司、サケ昆布巻、カニ爪、ホタテフライ、イカリングフライ、フキのピリ辛炒め、夕張メロンゼリー。お子様ランチになりがちな鉄道車両型駅弁にして、そこそこ大人向けな内容になっている。2018年までの販売か。
北海道新幹線の新青森駅〜新函館北斗駅は、2016(平成28)年3月16日に、無事に開業した。しかし最近5年間のJR北海道の不祥事報道や、これによる経営難の悪化からか、北海道のメディアの特性か、過去の新幹線の開業と違い、料金が高い、本数が少ない、安全性は大丈夫か、などのネガティブキャンペーンが渦巻く中での開業となった。このような事態はおそらく、鉄道斜陽だ世界の三馬鹿ないし四馬鹿だと一部で非難された、1964(昭和39)年の東海道新幹線の開業時以来の出来事ではないかと思う。開業後も些細なトラブルが針小棒大に、道内の大新聞により世界中に発信され続ける。
それでも、過去の新幹線の開業時とだいたい同じく、乗客は前年の在来線に比べておおむね倍増し、新幹線の乗車をうたう沿線の観光地へのパッケージツアーがたくさん出現し、荒天その他で海や空の足が乱れる度に新幹線への感謝の声が聞かれ、列車の運行も在来線特急列車の当時に比べて安定しているような感じを受ける。空席の多さの指摘も、輸送力の倍増と指定席の三倍増のおかげ。さっそく5月のゴールデンウィークに、在来線特急時の超満員の苦難を解消していた模様。
※2023年6月補訂:終売を追記2015(平成27)年7月28日から5,000個を販売。こんどの北海道新幹線開業応援弁当は、店で買えば弁当代くらいしそうな、パッキンでしっかり密封できる本格的なプラ製弁当箱を出してきた。ふたの絵柄は前回の掛紙と、だいたい同じ。中身はサケとイクラのちらしずし、サーモンてまり寿司、いなりずし、サラダ太巻1切れ、焼売、玉子焼などと、これは御飯だらけ。2016年1月頃まで販売された模様。
※2017年5月補訂:終売を追記2015(平成27)年3月から3000個を販売。掛紙には北海道新幹線の路線図と車両を描く。中身はその沿線にちなんだようで、青森県の十和田バラ焼き風という牛飯、鶏肉のリンゴソース焼、イカとダイコンの煮物、イカ松前漬、道南産サクラマス焼、札幌駅弁と感じられる笹寿司とカニ稲荷とサーモン細巻きなど。とにかくなんでもまるごとぎっしり詰める、賑やかなお弁当。同年7月までの販売か。
掛紙に書かれるとおり、ついにようやく2015年度に新幹線が北海道へやって来る。この駅弁を購入した時点で、イラストの電車はH5系新幹線電車として道内に搬入され、試運転が実施されている。寝台特急列車の廃止という暗いニュースが先行したが、新幹線が開業したら、2002年12月の快速海峡の特急白鳥化で半減した青函トンネルの旅客輸送力が何倍にも上がり、狭いデッキにぎゅう詰めで2時間を過ごす苦痛が避けられるだろうことを、個人的にとても楽しみにしている。点線の区間の工事は、まだまだこれから。
駅弁誕生130周年を記念して、2015(平成27)年4月10日と11日の2日間、一日65個が「謝恩価格」で販売された記念駅弁。日本鉄道構内営業中央会がこの年の4月10日の「駅弁の日」を、駅弁発祥宇都宮駅説により1885(明治18)年から数えて130周年として祝っており、その施策の一環だとも思われる。
中身は掛紙に書いてあるとおり、大正生まれの伝統の「石狩鮭めし」と、明治生まれの伝統の「柳もち」の組合せ。前者は現行のイクラが輝くバージョンで、後者には金箔が押されていた。掛紙の写真は大正時代と戦前昭和の札幌駅での駅弁立売の風景である。当時の面影は札幌の駅にも街にもどこにもないと思うが、駅と駅弁の歴史をアピールできただろうか。
北海道とJR北海道が同年7月から9月まで実施した観光キャンペーン「プレ北海道デスティネーションキャンペーン」の協賛企画として、リクルート北海道じゃらんの雑誌「北海道じゃらん」が2011年7月20日から9月30日まで実施した「北海道駅弁選手権2011」17社18種類のひとつとして、2011年7月19日から10月31日まで販売された期間限定駅弁。
松花堂タイプの容器に、北海道じゃらんの企画で2005年に誕生した「北海道・新ご当地グルメ」18種類の写真を並べた掛紙を巻く。中身はそのうち4種類であり、オホーツク北見塩やきそば、羽幌えびタコ焼き餃子、南富良野エゾシカカレー、十勝芽室コーン炒飯が1区画ずつ収まる。常温の駅弁にするにはいずれも微妙な組合せ。不味いとは言わないが、ジャンクフード感がたっぷり。
この年夏の北海道じゃらんの駅弁企画は、企画で生んだりこれに向けて開発した新作駅弁だけではなく、既存の駅弁も多く選んでいた。対象作品は次のとおり。
藤女子大学食品栄養学科の監修により、2010(平成22)年8月5日に発売。木目柄の方法形の容器に、お品書きや厚生労働省「食事バランスガイド」のコマ、その他見た目で800文字くらいある各種の宣伝文を印刷した掛紙を巻く。中身は黒千石御飯、おから巻寿司とひじき稲荷寿司、カボチャ焼、野菜とホタテのくわ焼き、鶏香草焼、海老串、カニ焼売、ミニゼリーなど。野菜が多め、それ以上に具の品数がとても多い感じ。これがたったの880円で売られてしまうと、調製元が泣いているのではないかと心配する。2012年までの販売か。
※2017年4月補訂:終売を追記2009(平成21)年8月1日に、従前の駅弁「SL弁当」をリニューアル。北海道で観光列車向けに活躍する蒸気機関車(SL)「C11171」の写真とナンバープレートを大きく載せた黒い紙箱を使用、ふたを開けるとSLのイラストと解説が現れる。白いトレーに収まる中身は、ウニとイクラとカニの円柱形御飯が1個ずつと、鮭の笹寿司、ホタテのコーン焼、チーズフライ、カニ焼売、鮭昆布巻、牛肉のごぼう巻、鮭かまぼこなど。
SLペーパークラフトは容器の底面に印刷される。紙箱の大変化の割には、中身と価格があまり変わっていない。3つの動輪と四角いシリンダーなど、蒸気機関車の側面図にできるだけ合わせた中身の内容や形状も健在。中身にかかる透明なシートだけはC11の車軸配置「1C2」ではなく、昭和の登場時の「C623」の車軸配置「2C2」のままであった。価格は2010年の購入時で1,100円、2017年時点で1,150円。2017年までの販売か。
C11形式蒸気機関車の171号機は、1999(平成11)年に留萌本線における「SLすずらん号」の運転に向けて動態復元された、北海道のJR線では4年ぶりとなる動くSL。翌年には同じ形式の207号機も復活し、2両で北海道内各地の観光列車の牽引に活躍する。巨大で手と金がかかる幹線向けのC62と異なり、ローカル線向けのC11は小柄で手も金もかからないため、静岡県の大井川鉄道や栃木県の真岡鉄道でも主力のSLとして活躍する。
※2020年5月補訂:終売を追記北海道鉄道百年を記念して、1980(昭和55)年に発売。横長な容器を用い、掛紙には現在は動かない蒸気機関車「C623」のSL列車の写真を印刷する。中身は動輪を意識したイクラやタラコののり巻き御飯など、SLのサイドビューをイメージしたレイアウト。北海道だけあってシャケやカニ焼売やホタテフライなど海産物が多い。札幌駅は北海道の中心駅だけあって、各方面から特急列車が集結、1988(昭和63)年11月に完成した立派な高架駅は、道内一の乗降客数と駅弁の種類を誇る。
2009(平成21)年の発売か。JR北海道の特急列車の客室乗務員が企画したオリジナル弁当として生まれた、札幌駅の上等幕の内駅弁。JR北海道の路線図と、車内販売を実施している昼行特急列車の写真を掲載した専用のボール紙製容器を使用、中身は北海道米ななつぼしの白御飯に、ホタテとマイタケの混ぜ物、牛すき焼き肉、鮭昆布巻、松前煮、玉子焼、カニ焼売、鮭塩焼、ひじきなど。北海道にちなんでいてもそうでなくても、大都会の駅弁としての内容と風味と価格を備えていると思うビジネス向け。観光旅行には他の個性作を選びたいかも。価格は2009年の購入時で1,000円、2017年時点で1,080円。2020年時点で販売休止中。2019年までの販売か。
※2022年4月補訂:終売などを追記JR北海道の会社発足20周年企画「北海道の新・駅弁コンテスト2007」で夏のグランプリ駅弁に選ばれた応募作の商品化で、2007(平成19)年6月11日に発売。ぬいぐるみでも入ってそうな大きな紙箱に、割りばしとプラ製スプーンとだし汁ボトルと、ダイヤモンドカットの透明プラ容器を詰める。
中身は上段が海鮮3色寿司(鮭てまりずし、サラダ太巻、タコいなり)と水まんじゅう、下段が御飯の上に帆立貝柱、しめじ、イクラ、アスパラ、玉子そぼろなど。まず上段の寿司を食べ、次に下段に昆布茶ベースのだし汁をかけて食べ、最後に水まんじゅうを食べるのが、容器で指南される正しい食べ方。コンテスト向けの奇抜作で、食べて忙しいがいくつもの表情を持つ、個性的で現代的な創作弁当。
なお、これは発売時に新聞などで、全国初の茶漬け駅弁と紹介されてしまった。三重県の亀山駅や新潟県の長岡駅で国鉄時代からの歴史を刻む駅弁の知名度は高くないかもしれないが、JRと駅弁屋と報道屋のどこにも知識や調査がなかったのは、ちょっと不思議。2013年現在で販売されていない模様。
※2013年8月補訂:終売を追記JR北海道の会社発足20周年企画「北海道の新・駅弁コンテスト2007」で春のグランプリ駅弁に選ばれた応募作の商品化で、2007(平成19)年4月10日に発売。CGデザインが鮮やかな紙箱の中に、割りばしとプラ製スプーン、中身のしおりとDMVのカード、透明プラ製カップ3個を詰める。
カップに入る中身はそれぞれ、「北のサラダポークカップ」こと豚肉卵とじ丼、「北の海鮮カップ」こと帆立イクラカニ酢飯丼、「北の黒牛カップ」ことカボチャとホド芋を付けた牛煮込み丼。輝く見栄えと新鮮な感じを受ける風味は、奇抜だけれども不思議なほどしっくりくる。2013年現在で販売されていない模様。
この駅弁の題材となったDMVとは、鉄道の線路上も走れるように改造したマイクロバス。軌陸車と呼ばれる工事用車両や過去の試作車では、線路走行モードと道路走行モードとの切り替えに数分から数十分かかるが、JR北海道が開発したこの車両では専用走路を10秒走ればOK。報道によると製造費は鉄道車両の1/7である約2,000万円、燃費は1/4、重量は1/7の約6トン。全国の赤字ローカル線の救世主になると、大きな注目を集めている。駅弁登場4日後の2007年4月14日からは試験的営業運行も開始された。
しかし裏を返せば、製造費はマイクロバスの4〜5倍、定員はその半分で鉄道車両の1/10、法令の制約で連結運転ができず、運転には鉄道と自動車の両方の免許が必要である。道路だけを走る通常のマイクロバスに対する営業面や採算上のアドバンテージは、少なくとも日本国内では発生しないだろう。アイデアとしては面白いし、技術的には評価できるが、これでローカル線を救うなど、現時点では幻想でしかない。
これをJR北海道が苦労して開発を続ける理由は、別のところにありそうだ。同社線の約3分の1は、どう頑張っても赤字を消せない輸送密度500人以下の利用しかない。しかしこれをバス輸送に転換しても黒字化はまず無理、鉄道の廃線は国会レベルの政治問題にもなり、さらに鉄道施設の撤去が必要になる。そんな路線の維持コストを、極限を超えて低減するための技術が、安くて軽いDMVなのではないかと思う。そんな車両と道内で最も縁遠い、北海道内で最も賑わう駅に、このような駅弁ができたのは、やや皮肉っぽい。
プロ野球の日本ハムファイターズの札幌移転にちなみ、ペナントレース期間中の2004(平成16)年4月1日から9月まで販売された駅弁。「FIGHTERS」の文字が光る大きな正方形のボール紙容器に、区画で野球場のフィールドをイメージした黒いトレーを入れる。
発売前に賞金10万円で公募した中身は、内野に北海道の鮭めし、センターに札幌のジンギスカン、レフトに日本ハムのハムカツ、ライトに対戦相手として、大阪近鉄のたこ焼き、神戸オリックスの牛肉ごぼう巻、千葉ロッテの鶏落花生揚、西武のししとうを福岡ダイエーの明太子和え、バックスクリーンに花火型蒲鉾など。中身をパリーグの6球団にちなんだ。日本ハムが試合に勝った翌日にはおまけが付いたという。
長い間読売ジャイアンツと東京都の後楽園球場や東京ドームを共用していた日本ハムファイターズは、2004年から拠点を札幌ドームに移転し球団名に北海道を付けた。市場の小ささにとりわけ巨人志向の強い土地への移転は心配されたが、球団の努力に加え人気のある新庄選手の獲得やパリーグのプレーオフ制度の導入などで、ファンクラブ会員数が7倍になり観客動員数2割増、初年度は成功したと見て良いだろう。
第二次大戦前のものと思われる紙片。「明けましておめでたう御座います 皆様の新年の御旅行を祝福いたします」「札幌鉄道局管内駅構内営業組合聯合會」と読める文字と、日の丸と松林と集落に見える絵柄を持つ。古い駅弁掛紙をまとめて仕入れたら、これが入っていた。これははたして、札幌駅あたりの正月の駅弁掛紙なのか、単なるチラシか。