東京駅から新幹線こまち号で約4時間。秋田市は秋田県の中央で日本海に面した、人口約30万人の城下町で県庁所在地。北前船以来の港町でもあり、油田を抱えた工業都市でもあり、以前は商業でも賑わった。駅弁は明治時代の末期までに関根屋が売り始め、以後は大正時代から21世紀までいくつもの業者が進出、今は関根屋と大館駅の駅弁が駅のコンビニで売られる。1902(明治35)年10月21日開業、秋田県秋田市中通7丁目。
2009(平成21)年の秋までに発売か。その前年の2008年10月に、東京駅で2日間限りのイベント向け駅弁として販売した「秋田肉三昧・大盛」の好評を受け、分量を通常の適量サイズに変更して再度発売したのだという。長方形の容器を収めたスリーブには、豚や牛や鶏のイラストとともに「十和田湖高原ポーク」「秋田錦牛」「比内地鶏」と力強く記され、その底面では写真と文章で大正時代の調製元を紹介する。
中身はあきたこまちの白飯を、豚焼肉と牛焼肉と鶏そぼろで覆い、ぜんまい、ごぼう、にんじん、みずを添えるもの。3種類のお肉に、スリーブに書かれたブランド肉が使われるのだろう。秋田で固めた肉と肉と肉の力強い駅弁と思えるか、肉三昧を名乗るには分量も風味も肉がおとなしすぎると思うか。価格は2010年頃で1,100円、2016年時点で1,150円、2022年時点で1,300円。
おそらく2022(令和4)年1月の発売で、京王百貨店や阪神百貨店の駅弁大会で輸送販売。今まで「比内地鶏」の名を付けてきた秋田駅の関根屋の鶏飯駅弁で、これを名乗らないシンプルな名前の「鶏めし」が出てきた。長方形の容器に炊込みご飯を詰め、掛紙によるとタレにじっくり漬け込み味を染み込ませ焼き上げた味噌風味の鶏肉と、自慢のだし汁で炊いた鶏そぼろで覆い、アスパラ片で彩り、玉子焼といぶり漬大根を添える。
現状で秋田駅を含め、秋田駅弁が売られる場所では大館駅弁「鶏めし」も売られる。鶏飯駅弁としては大館駅のものが、歴史も人気も知名度も上。中身こそ違えど、名前と掛紙の色彩を似せて、競合していく気がうかがえると思える。名前は没個性でも、大粒の肉とそぼろに個性がある。
東京駅の駅弁売店「駅弁屋 祭」での、2022(令和4)年の駅弁の日にちなむ4月6〜19日の「春の新作駅弁大会」において発売か。スリーブの絵柄は秋田駅と五能線を結ぶ観光列車「リゾートしらかみ」で、その25周年ロゴマークがいくつもあるので、これを記念した駅弁だろうか。白飯を秋田牛と白神まいたけとささがきごぼうの煮物で覆い、いぶり人参漬とアスパラで彩り、こごみ胡麻和えとりんごコンポートを添える。秋田駅で量がやや物足りない牛肉弁当に、マイタケで増量し水気と柔らかさを加え、食べ応えを加えた印象。値段がずいぶん張るなとは思う。
2014(平成26)年の秋に秋田駅や東京駅で発売か。駅弁の名前に「いわて」とあり、岩手県岩泉町の畜産業者がつくるブランド豚の使用をうたいながら、これは岩手県や盛岡駅の駅弁でなく、秋田県の秋田駅の駅弁屋の商品。日の丸御飯とトンカツ1枚に、ソース、玉子焼、ポテトサラダ、大根漬物などを添える。価格は2015年の購入時で1,000円、2019年時点で1,080円、2022年3月から1,150円。
盛岡駅から地元の駅弁屋が消え、地元でない駅弁屋も撤退してしまったため、東京駅の駅弁売店を賑やかすために、こういう商品が必要になったのではないかと、勝手に想像する。味はおいしかった。駅弁屋のものではないが似たような商品がかつて、盛岡駅で取り扱われていた記憶はある。
※2022年5月補訂:値上げを追記秋田駅の牛肉駅弁。駅弁屋の創業時の1902(明治35)年に発売と紹介されることがあるが、文献で確認できる駅弁の歴史を、1920年頃の鶏肉から始まる肉駅弁の歴史を鑑みると、どうも信じがたい。白飯を牛肉煮と糸こんにゃくで覆い、こんにゃく、ごぼう、昆布、がんも、ぜんまい、紅生姜、あんずシロップ煮を添える。特徴の薄さが特徴かもしれない、色の濃い、味の濃い、ちょっと古めかしい牛すき焼き丼。価格は2014年の購入時で950円、2018年時点で1,000円、2022年3月から1,100円。
※2022年5月補訂:値上げを追記2023(令和5)年12月1日に購入した、秋田駅弁の掛紙。2023(令和5)年11月10日に東京駅で、11日に秋田、大曲、角館、田沢湖の各駅で発売。日本鉄道構内営業中央会の「駅弁マーク」制定35周年を記念し、会員のうち29社が主に11月10日から期間限定で販売した31種類の記念駅弁のうち、秋田駅の駅弁屋のもの。普段の秋田駅弁「特製牛めし」のふたを、36年前の掛け紙デザインを使用したという掛紙に替え、普段の倍くらい大きな駅弁マークを印字した。容器や中身や価格は、通常版と同じ。上記の2014年のものから、付合せががんも煮、うぐいす豆、玉子焼、ぜんまい煮、紅生姜に変わったのは、通常版も同じ。当分の間販売。
上記の駅弁「特製牛めし」の、加熱機能付き容器版。四角い容器に通常版とまったく同じ中身を詰め、秋田駅でおそらく冬季限定の駅弁として販売する。
早朝の秋田駅で買えたお弁当。コンビニ弁当のプラ容器に白飯を詰め、大粒の牛そぼろと牛カルビと牛たんと、錦糸卵ときんぴらごぼうと紅生姜で覆って550円。コンビニで売っていたコンビニ弁当ではあるが、JRの子会社の売店で、秋田駅や大館駅の駅弁を売る場所で販売されていて、一応は掛紙もしっかり巻いていたうえ、小柄で安価ながら、味も内容も駅弁並みにしっかりしていた。調製元は「味どうらくの里弁当」と同じところだった。2022年時点でこの調製元の弁当は、秋田駅では売られていない。
※2022年11月補訂:駅での終売を追記2017(平成29)年12月までに発売か。駅弁の名前は「牛肉弁当(秋田の味)」や「秋田の味牛肉弁当」ともいわれ、掛紙の絵柄にはないが、食品表示ラベルに「秋田の味」という副題が見える。正方形の容器に白飯を詰め、牛肉煮で覆い、タレをかけ、フキ油炒め、揚げかまぼこ、煮豆などを添える。味は甘辛のタレが卓越。フキの油炒めは駅弁では初めて食べたと思う、全体的に普通の牛肉駅弁。赤いふたを読むと秋田駅の駅弁に見えるが、どうもこれは東京都の東京駅や上野駅でしか買えない模様。現地には以前から下記の「牛めし」がある。2022年に終売か。
※2023年4月補訂:終売を追記上記の駅弁「特製牛めし」について、2017(平成29)年のJR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2017」へのエントリーに合わせ、その40年前の掛紙とおかずを復刻したという。そこでは「明治35年発売」と紹介されたが、明治時代に牛肉駅弁は存在していなかったはず。通常版も駅売店で併売された。2022年10月には日本鉄道構内営業中央会の鉄道開業150年記念復刻駅弁企画により、同月から期間限定で販売された31社34駅弁のひとつとして、内容と1,100円の価格を通常版に戻して11月まで売られた。
※2023年4月補訂:再販を追記新型リゾートしらかみ「?(ぶな)」編成の運行開始と、JR五能線の全通80周年を記念し、五能線季節をめぐる旅シリーズの第2弾夏バージョンとして、2016(平成28)年7月に1,500円で発売。約半年後までに1,300円の駅弁へリニューアルか。掛紙には「限定弁当」「数量限定販売」の文字が見える。
世界自然遺産である白神山地の美しいブナ林の写真を掛紙に使う。中身は白御飯を白神和牛煮と、ごぼう、ぶなしめじ煮、玉子焼で覆い、きのこ味噌和えとフキ胡麻油炒めを添えるもの。同じ日に買った古い上記の駅弁「牛めし」と違い、こちらは見ても食べても今風に美しい牛肉駅弁。2019年までの販売か。
※2020年5月補訂:終売を追記「おばこ」とは秋田弁で少女という意味。秋田美人の写真がふたを飾る。その正八角形のふたを開けると、平行な対角線で3分割された真ん中に、鶏照焼・鶏そぼろ・錦糸卵が載るとりめし、その上下に焼鮭、肉団子、玉子焼、煮物や漬物などを配置する。おばこ弁当=「少女弁当」=女性向けと思うと、ボリュームがありすぎる。長い名前の販売元は、つまり以前の日本食堂。同社が2019(平成31)年3月限りで秋田から撤退し、この駅弁もなくなった。
※2020年4月補訂:終売を追記2005(平成17)年10月9日に購入した、秋田駅弁の掛紙。見た目は中身は、12年後と変わらない。当時は日本レストランエンタプライズが自ら調製していた。価格は購入時で950円、2014年時点で1,000円、2015年時点で1,050円。
2011(平成23)年5月の発売。秋田新幹線の開業15周年でも記念したのだろうか。長方形の容器に透明なふたをして、駅弁の名前を墨字で著した赤黒いふたをさらにかける。中身は白御飯の上を岩手県岩泉の短角牛の焼肉で覆い、ゼンマイやいぶりがっこなどを添えるもの。容器も中身も米沢その他の東北地方各地の牛肉駅弁と同じ感じだが、ぐにゅっとした肉の視覚と味覚での脂が印象的。価格は2013年の発売時や購入時で1,000円、2014年時点で1,050円。2014年頃までの販売か。
列車で座っているとなかなか気が付きにくいが、岩手県と秋田県の県境は奥羽山脈によりかなり険しく、北から八幡平、真昼山地、栗駒山地と横たわる標高1000メートル越えの山塊が往来を阻んできた。鉄道では横黒線、現在の北上線が1924(大正13)年に通じ、花輪線が1931(昭和6)年までに全通し、田沢湖線の全通は戦後の1966(昭和41)年にまでずれ込んだ。各路線には急行列車が設定され、東北本線と奥羽本線を結んだ。
1971(昭和46)年に東北新幹線の盛岡までの整備計画が定められると、その速達性の秋田方面への波及として後進の田沢湖線が活用されることとなり、1年間の運休で改良工事を施したうえで1982(昭和57)年11月に電化開業、特急「たざわ」が走り始めて新幹線と秋田を結ぶメインルートとなった。さらに山形新幹線に次ぐ新幹線と在来線との直通運転路線のルートにもなり、また1年間の運休で線路を敷き直し、1997年3月から秋田新幹線「こまち」が走り始めた。
後輩の躍進を尻目に、北上線と花輪線では長距離列車や急行列車が消えて、すっかりローカル線に。北上線はまだ、東北本線と奥羽本線を結べる貴重なルートとして、寝台特急列車の迂回運転などに活用されたが、東北自動車道にも踏み潰された花輪線はもはや見る影もない。
※2017年8月補訂:終売を追記2011(平成23)年7月17日の調製である、秋田駅弁の掛紙。上記の2013年のものと違い、発売当時はこんなポップな掛紙を使っていた。中身は変わらない。
秋田駅中央改札口のコンビニエンスストア「NEWDAYS秋田中央口店」のリニューアルを記念して、2013(平成25)年4月26日に発売。長方形のプラ製容器の中身は、秋田県雄勝郡羽後町産の白御飯を、同町のうご農業協同組合のブランド牛「うご牛」の焼肉で覆い、卵、太鼓かまぼこ、ネギ入りの玉子焼、ゼンマイとゴボウの煮物、昆布巻、いぶりがっこを添えるもの。
味はうまいのだが、秋田の牛肉駅弁はなぜかいつも肉の分量が寂しく、これもまた然り。そのため、値段の高さが大いに気になった。しかしこの駅弁の目玉はおそらく、萌え系イラストなパッケージなので、大き目の容器でこれを見せ、しっかり話題をつかむことが大切。
羽後という大きな旧国名を名乗りながら、秋田県南部で人口が2万人を割る、鉄道のない小さな町である羽後町の、その一部のみをエリアとするうご農業協同組合は、2008年産あきたこまちの袋に、同年夏の町内でのイベントに招かれた、主にアダルトゲームのキャラクターをデザインするイラストレーターの西又葵(にしまたあおい)による美少女のイラストを採用した。これが、インターネット上での通信販売にて1か月で通常の2年分30トンもの注文が来た、東京の大新聞に記事が載ったなどの大騒ぎとなった。萌え系の流行に乗ったのではなく、後のクールジャパンの流れを創った出来事のひとつである。
以後も羽後町や農協と西又氏との協力関係によるものか、チラシやポスターやレトルトカレーなどへの展開が始まり、こうやって秋田駅の駅弁にもやってきた。イラストの内容は同町にちなんでおり、ここでは西馬音内(にしもない)盆踊りと小野小町の美少女、そして特産のコメを描き表したという。ただ、この駅弁は半年ほどで売り止めてしまったようで、これはもったいない。
秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2009(平成21)年秋の新商品か。電子レンジ対応のプラ製釜型容器を、駅弁の名前や田沢湖の写真を載せたボール紙の箱に詰める。中身は白御飯の上に「紅の豚」の名が付いた豚肉の少々厚い薄切りを煮たものを、ささがきごぼうと混ぜて載せて、シイタケとミョウガなどを添えるもの。
容器は加熱式ではなく、電子レンジの使用が推奨されている。フタを開けると脂身だらけの肉とゴボウだらけの具が見えてガッカリするが、食べれば意外にふんわりしたもの。しかしパッケージから漂ってくる宣伝臭は消えない。もしかするとユニーと京王の駅弁大会でしか売られない商品かもしれない。価格は2009年の発売時や購入時で950円、2014年時点で1,100円、2015年時点で販売終了。
※2015年9月補訂:終売を追記2008(平成20)年10月12・13日の両日に東京駅構内で開催された「東日本縦断駅弁大会−秋−」で販売されたお弁当で、全8種が誕生した「メガ駅弁」のひとつ。長方形の容器に透明なふたをかけて、商品名と肉の名前にそのイラストを書いた掛紙で包み、ひもで十字にしばる。中身は白御飯に上に田沢湖紅の豚のスライスと、秋田錦牛のすき焼きと、比内地鶏のフレークが、それぞれ色濃く煮られて敷き詰められるもの。味付けが似ているから、肉を混ぜても混ざっても、風味に違和感はなかった。
分量が通常版の1.5倍というが、秋田駅弁でこういう商品を思い当たらない。後日の報道では、今回の駅弁大会での好評を受けて「(秋田駅で)いつでも常時販売できるよう、すでに容器や包装紙を準備した」のだそうな。鶏飯は昔から、牛丼は現代の、豚丼は最近の、それぞれ駅弁として売れ筋となっているものだが、これを3種混ぜた駅弁の先行きはいかに。
1982(昭和57)年5月2日16時の調製と思われる、昔の秋田駅弁の掛紙。かしわ弁当、つまり鶏飯ということで、食材のニワトリが勇ましく描かれる。