東京駅から東北新幹線で約50分。宇都宮市は栃木県の中央に位置する、人口約52万人の城下町で県庁所在地。工業都市として栄えるほか、二荒山神社の門前町や、餃子の町としても知られる。駅弁は明治時代から一貫して健在。駅弁の発祥地はここだという説がある。1885(明治18)年7月16日開業、栃木県宇都宮市川向町。
宇都宮の丘の上の住宅団地にある和食店「中村庵」のメニュー「ふじみの釜めし」が、2018年までに持ち帰り用の釜飯料理にもなり、2020年までに「うつのみや釜めし」の名になったものか。後に百貨店の催事に出たり冷凍食品での販売が始まり、2023年8月の宇都宮ライトレールの開業の頃までにはこの掛紙や記念の掛紙をかけた冷凍食品が駅前の商業施設で売られた。今回2024年8月の訪問で、駅でのそのまま食べられる姿での販売に初めて出会えた。その姿は群馬県横川駅の有名な駅弁「峠の釜めし」に、とても似ていると思う。
ふたまで焼き物である益子焼の陶器に、お釜や商品名を描いた黄色い掛紙をかけ、ひもで十字にしばる。ここでの中身は、茶飯を鶏肉、鮭、帆立、穴子、うずら卵、たけのこ、しいたけ、くり、錦糸卵などで覆うもの。すべてが茶色いお弁当でも、風味や食感に冷たさも強さもない、なかなかのおいしさ。おぎのやブランドが強力な釜飯駅弁というレッドオーシャンに、アリの一穴を開けることができるかどうか。
駅弁の名前は「復刻版とりめし」とも。2022(令和4)年10月1日に宇都宮駅と東京駅で発売、11月30日まで販売。日本鉄道構内営業中央会の鉄道開業150年記念復刻駅弁企画により、同月から期間限定で販売された31社34駅弁のひとつ。さらにこの期間のJR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2022」にエントリー。昭和30年頃より看板商品だった「とりめし」を、当時のレシピと掛け紙で可能な限り再現したという。
掛け紙の元は、1960年代後半、昭和40年代前半のものだろうか。当時にない食品表示やバーコードやアレルギー表示、駅弁マークに鉄道開業150年のロゴマークが加わり、にぎやかになった。木質エコ容器の過半に茶飯を詰め、とりそぼろと海苔で覆い、錦糸卵と紅生姜で彩り、鶏照焼3個を並べ、かまぼこ、玉子焼、こんにゃくやタケノコなどの煮物を添える。
少しばかり高い値段を除き、復刻だ記念だという気張りのない、安心できる、良い意味でのただの鶏飯。過去に買った下記のとりめしと比べると、2008年までは昭和時代とあまり変わらない中身で、宇都宮駅弁のとりめしが売られていたことがわかる。なお、昭和時代の駅弁紹介本でよく取り上げられた宇都宮駅弁は、とりめしでも幕の内でも、竹の皮に握り飯2個などのおにぎり弁当でもなく、「茶めし弁当」であった。
2016(平成28)年までに「JR宇都宮駅限定」の弁当として1,600円で発売か。市販の加熱機能付き容器に、名前と中身の写真を使う掛紙を貼る。中身は白飯を牛肉煮で覆い、ネギで彩り、日光サーモン味噌焼、きんぴら、ゆば豆腐ナゲットを少々添える牛丼。
とちぎ和牛の牛肉煮は、加熱機能により温められ、赤身と脂身の香りをたっぷり楽しめ、同じく栃木県産という御飯が進んだ。宇都宮駅の本物の駅弁より高価な分だけ、肉の量も味わえる。調製元は現在の宇都宮の中心市街地で江戸時代の中頃に旅籠屋として創業した宿泊施設。
※2024年12月補訂:写真を更新上記の駅弁「とちぎ和牛すき煮弁当」の、2022(令和4)年時点の姿。容器も中身も値段も風味も変わらず、加熱機能付き容器のスリーブに掛紙を巻く姿も変わらないが、その絵柄はよく変わる。
秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2006(平成18)年秋の新商品か。調製元では公式サイトで「2008年9月より販売」と紹介したが、下記のとおりその前の販売実績があるため、この姿になったのがその時期かもしれない。長方形の容器に、牛の鋭い顔を描いた赤い掛紙を巻く。中身は白飯を牛肉とごぼうの煮物で覆い、煮玉子と新生姜を詰め、タケノコと唐辛子の和え物に、小松菜と人参と椎茸の漬物を添えたもの。肉の形に丸みがあり、柔らかいようなごわついたような、牛丼チェーン店とも他の牛肉駅弁とも違うような、独特の雰囲気。同じ名前でも2015年や2007年に食べたものとは異なる牛肉駅弁のような気がした。
※2023年9月補訂:写真を更新し解説文を手直し2015(平成27)年7月18日に購入した、宇都宮駅弁の掛紙。大宮駅〜宇都宮駅の開業130周年と駅弁130周年により、2015年7月16日にリニューアル。当時の掛紙は赤くなく緑色だった。内容はおおむね同じだが、黒く固く締まった肉の印象はまるで異なる。2007年のものでは栃木名物を並べた付合せが、小松菜やタケノコ煮といった、どこにでもあるものに替わってしまった。
2007(平成19)年4月8日に購入した、宇都宮駅弁の掛紙。同じ名前を持つ上記の2015年や2023年のものとまったく違う。この発売当時の姿は、とちぎ霧降高原牛のモモ肉、肩肉、バラ肉を使った牛丼に、かんぴょう、ゆば、なすを添えていた。掛紙にはJR20周年のシールと、駅弁催事業者による「駅弁の達人」マークがある。
上記の駅弁「とちぎ霧降高原牛めし」の、加熱機能付き容器バージョン。御飯を牛肉のしぐれ煮か焼肉かと煮玉子1個、タケノコ煮、青菜類、生姜で覆う中身は、通常版と同じ。常温での味が普通に食べられる駅弁なので、温めたからといって味が変わったり良くなったりすることはない感じ。冬季の販売。
上記の駅弁「あつあつとちぎ霧降高原牛めし」の、2008(平成20)年時点での姿。中身は「とちぎ霧降高原牛めし」の、発売当時の姿と同じ。他の駅では通常版と加熱機能付き容器版で200円前後の差が付く価格までも、ここでは同じにしていた。コストの差を肉の量で調整したのだろうか。容器で中身を暖めることができるが、風味も同じである。
2019(平成31)年4月に、宇都宮駅で約60年に歴史を刻んだ伝統の駅弁「とりめし」をリニューアルか。御飯を鶏照焼、鶏そぼろ、卵そぼろ、煮玉子1個で覆い、鶏肉団子とわさび菜を添える、標準に近い鶏飯弁当で、従前のとりめしに比べたら内容が豊かになり、普通に良い味。スリーブに描かれた、おっさんくさいニワトリのイラストが印象的。
2018(平成30)年4月から6月までのJRグループの観光キャンペーン「本物の出会い栃木」の開催に合わせて、同年4月1日に宇都宮駅と土休日のみ岩下の新生姜ミュージアムで、会期中の期間限定駅弁として発売。栃木県内で宇都宮駅弁の調製元と、関東地方では「岩下の新生姜」とそのTVCMで有名な岩下食品が共同開発した駅弁。鶏そぼろと岩下の新生姜入り混ぜ御飯に、岩下の新生姜を1本据え、玉子そぼろで半分だけ覆い、岩下の新生姜で味付けた鶏唐揚、鶏つくね、うずら卵、マリネを添える。
つまり何もかもが生姜風味という、刺激的な味。同年10月にはJR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2018」にエントリー、そそられ将軍(公式WEBサイトからの投票のうち、「食べたい駅弁」の投票が最も多かった駅弁)の賞を獲得した。発売以来大人気で会期後も販売を継続し、宇都宮駅ではついに買えず、東京駅でようやく買えた。東武日光駅でも販売する模様。価格は2018年の発売時や2019年の購入時で850円、2020年時点で950円。
岩下の新生姜とは、栃木市の漬物工場であった岩下食品が1987(昭和62)年に発売した食品。台湾産の本島姜(ペンタオジャン)の浅漬けで、ピンク色をした棒状生姜。首都圏のスーパーマーケットではたいてい置いていると思うし、テレビでもCMが時々流れる。関東地方以外での知名度はない模様。栃木県や宇都宮の名物とは認識されていないと思う。
※2022年10月補訂:値上げを追記2019(平成31)年4月1日に、宇都宮、大宮、東京の各駅と岩下の新生姜ミュージアムで発売。上記の駅弁「岩下の新生姜とりめし」の中身のうち、岩下の新生姜で味付けた鶏唐揚を串刺しにして、うずら卵を添えて、同じような絵柄の紙箱に詰めた、御飯のないおつまみ商品。生姜の刺激が味と香りを支配する。2020年の末頃までには駅での販売を終え、栃木県栃木市の「岩下の新生姜ミュージアム」のみでの販売となった模様。
※2022年10月補訂:現況を追記宇都宮駅で伝統の駅弁「とりめし」の、加熱機能付き容器バージョン。御飯をとりそぼろ、照焼2個、タケノコ、錦糸卵、漬物、わさび漬で覆う中身は通常版と同じ。常温での味が支持されている駅弁なので、温めたからといって味が変わったり良くなったりすることはない感じ。冬季の販売。価格は2017年の購入時で800円、2020年時点で900円、2022年時点で800円。
※2022年10月補訂:価格改定を追記2019(平成31)年4月の発売か。昭和レトロな色彩を持つスリーブに収めた紙カップに、御飯を敷き、カレーソースとチーズソースをかけ、いっこく野州どりの照焼、目玉焼き、ヤングコーン、オクラ、ミニトマトを載せる、常温販売のカレーライスで、焼きカレーかキーマカレーかドライカレーのようなチーズカレー。容器が紙なので加熱に向かず、有田駅のあれと違い、冷たい状態で食べるのは味が厳しい気はした。年内に終売か。
※2021年3月補訂:終売を追記2008(平成20)年8月22日に下記の駅弁「とりめし」をリニューアル。容器の大きさを変えないまま、本体を発泡材に、ふたを紙帯をボール紙のふたに変えた。中身は茶飯を「いっこく野州どり」の鶏そぼろのみで覆い、鶏照焼、わさび漬、ナス漬、葉とうがらしを添えるもの。全体的にシンプルになったが、風味もシンプル化、鶏そぼろであるはずのざらざらと細かい粒には味を感じられなかった。2019(平成31)年4月に上記の駅弁「いっこく野州どり弁当」へリニューアルか。
※2019年8月補訂:終売を追記いわき駅などの駅の駅弁でも見たことがある、黒くて硬い正方形のプラ容器に、昭和の頃からありそうな絵柄の掛紙をかける。中身は白御飯の上に粒子の細かい牛そぼろと薄手の牛焼き肉が載り、ピーマン、ポテトフライ、人参、紅生姜を添えるもの。やや貧相な感じはあるものの、牛も飯も風味はいい感じで、食材の組み合わせも王道を行くので、B級グルメとして最上品。2008年に調製元が駅弁から撤退したため、この駅弁も終売となった。
※2009年3月補訂:終売を追記井形のプラ容器に、春に関連する駅弁以外にはあまり使われないピンク色の掛紙をかける。中身は宇都宮駅弁名物の茶めしに、鶏そぼろと鶏もも肉を載せたもの。茶めしとチキンの一体感はまるでなくても、茶めしもチキンも高品質で美味い。多くの駅弁屋さんが店を畳む夕刻の時間帯にホーム上での駅弁立売で購入できたことも嬉しい。2008年に調製元が駅弁から撤退したため、この駅弁も終売となった。
※2009年3月補訂:終売を追記1960年代までに発売。プラスティック一体成形の黒い容器に透明なフタをかける長方形の容器に、小さな掛紙をかけて箸袋をセロテープで固定し、紫色の紙ひもでしばる。簡素な容器とは裏腹に中身はヘビーで、風味の良い鶏照焼に薄味が好ましい鳥そぼろを、上げ底ならぬ下げ底でたっぷり詰めた鶏御飯の上に載せている。つまり、実は分量の多い若者向けの駅弁。
宇都宮駅は昭和末期まで多数の駅弁立売人がホームで売り上げを競っていた駅で、現在でも立ち売りで駅弁を購入できることがある。コンコースに上がれば数十種類の駅弁の選択に迷える、JR東日本エリアでは仙台や水戸に匹敵する駅弁大駅。宇都宮市役所もぎょうざだけではなく駅弁にも注目して欲しいと思う。
2003年4月現在で、松廼家では朝7時半頃から14時過ぎ頃まで、駅弁立売歴47年の坂本さんが不定休でほぼ毎日、東北本線ホーム上で「とりめし」などの駅弁を立売で販売しているとのこと。宇都宮駅に夜行列車の発着があった頃は、深夜の0時台や2時台の販売もあったそうで、現在でもコンコースの売店では22時半頃まで駅弁の販売があるという。
1983(昭和58)年1月11日の調製と思われる、昔の宇都宮駅弁の掛紙。駅弁の名前と価格、注意書き、標語、調製元、当時の国鉄のキャンペーンのロゴマークと、必要な情報が最小限に、シンプルに書かれていると思う。