東京駅から北陸新幹線で3時間強から4時間弱。敦賀市は福井県の中部で日本海の敦賀湾に面した、人口約6万人の港町。古代から大陸へ開かれた貿易港であり、明治時代には日本海側で初めて鉄道が通じ、今も港町の機能と雰囲気を備える。現在の駅弁屋は1903年から構内で営業、駅舎で棒寿司や押寿司などを販売する。1882(明治15)年3月10日開業、福井県敦賀市鉄輪町1丁目。
2024(令和6)年1月の京王百貨店の駅弁大会で実演販売。昔の敦賀駅の幕の内駅弁の復刻のようにも思える掛紙には、「越前若狭の味めぐり御膳」と「北陸新幹線敦賀開業記念」の文字があり、3月16日になれば敦賀駅でも売られるのだろうか。正方形の容器を対角線で仕切り、一方に酢飯をカニの棒肉とほぐし身で覆うカニ寿司を、他方に酢飯を小鯛ささ漬ととろろ昆布と昆布佃煮で覆う小鯛ささ漬寿司を詰める。昭和時代には若狭地方の駅弁になっていたふたつの味が、ひとつの駅弁に合体したのは、新幹線敦賀駅開業という出来事のおかげか。値が張る分、具の量と厚みは申し分なし。
敦賀駅の幕の内弁当。薄く平たい正方形のプラ容器を、角鹿の由来を記し氣比神宮(けひじんぐう)や市街を描いた空色の掛紙で包む。中身は俵飯に、焼サバとかまぼこと玉子焼、鶏肉煮、焼売、有頭海老、白身魚フライ、あさりと山せりの煮物、高野豆腐、三色煮豆、しば漬、いも茎の佃煮。プラ容器の風体を除き、昔ながらの幕の内駅弁がここに生き残る。価格は2003年時点で900円、2014年4月の消費税率改定で930円、2023年時点で950円、11月の購入時で980円。
角鹿(つぬが)とは、日本書紀に出てくる敦賀の古地名だと、掛紙に記載される。その当時はツノガと読み、後にツヌガとなり、現在は漢字を変えてツルガという具合に変化したという。敦賀は京と日本海を結ぶ要衝で、鉄道も日本最初のものが新橋駅から横濱駅まで開通してからわずか10年でこの地に達している。
※2023年12月補訂:写真を更新2003(平成15)年3月22日に購入した、敦賀駅弁のふた。上記の2023年の掛紙と、絵柄も説明文もまったく同じ。中身もおおむね変わらない。駅弁の体裁そのものはむしろ、こちらのほうが新しく現代的に思える。
秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2021(令和3)年秋の新商品か。容器の構造は「ふくいサーモンの宴」と同じく、木製で井形の容器を巻くように掛紙代わりのふたをしたもの。この容器に金色のボール紙を敷き、茶飯を詰め、松茸のスライス、牛肉煮、きんぴられんこん、ガリで覆い、もみじ型にんじんで彩る。少量で高価を嘆くか、小柄で分量控えめで良しとするか。スーパーやデパートの駅弁催事でしか売られない模様。
秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2018(平成30)年秋の新商品か。これを含めて敦賀駅の駅弁を名乗る釜飯は、駅で売られることはほぼ無いようで、もっぱらデパートやスーパーの駅弁大会向けに出荷される。今回は真っ黒なプラ製の釜飯向け容器に、茶飯を詰め、鶏そぼろや山菜に加えて、マツタケのスライスと刻みをごろごろと載せる。松茸駅弁のマツタケ量は、この5〜10年でかなり増えた気がする。価格は2018年の発売時や2021年の購入時で1,070円、2022年時点で1,080円。
※2023年9月補訂:値上げを追記2004(平成16)年5月1日に発売。予約して北陸本線の特急列車「サンダーバード」「雷鳥」「しらさぎ」の座席に届けてもらわなければ買えない特急車内専用弁当と発表されたが、実際には駅で受け取ることも可能だったので、敦賀駅の駅弁として掲載する。
缶入りおかき級の大きな容器が和紙風風呂敷に包まれる。それを解いて観音開きのフタを開けると二段重ねの折り箱が出現、それぞれが松花堂風に4区画に分かれ、手まり御飯や桜御飯に若狭牛ローストビーフ・越前ウニ・かにしんじょう・若狭ぐじ西京焼など、若狭地方の食材がふんだんに使われたという食材が入る。おみやげとして汽車土瓶をひとつ添付。
中身あるいは高額駅弁の存在自体に好き嫌いはあると思うが、手間と繊細さの塊に価格以上の満足感は持てるはず。しかし少なくとも鈍行列車で開くのは場違いだった。2004年度のJR西日本の駅弁キャンペーン「駅弁の達人」の対象駅弁で、予約用の電話番号は「0770(23)3484」。価格は2004年の発売時で3,000円、2014年時点で3,100円、2020年時点で3,900円。収穫報告はほぼ見られないが、ラインナップとしては残されている。
※2020年5月補訂:値上げを追記現状は駅弁催事専用商品と考えられる。小ぶりで真っ赤な紙箱に、イカの中に飯を詰めて煮たもの、つまりイカ飯をふたつ詰める。函館本線森駅の有名な駅弁「いかめし」と、同じものと考えてよい。価格は2002年の購入時で600円、2007年頃で650円、2011年頃で580円、2014年時点で500円、同年4月の消費税率改定により520円、2016年時点で540円、2017時点で630円、2018年時点で670円、2019年時点で700円、2020年時点で770円。
※2021年2月補訂:値上げを追記秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2016(平成28)年秋の新商品か。キノコ飯を錦糸卵で覆い松茸スライスを並べ、昆布佃煮と紅葉型ニンジンで彩り、山菜と漬物を添える。スリーブにはなぜかJR小浜線の路線図や、鯖街道や御食国(みけつくに)に関する記述があり、キャンペーンか観光振興か何かがあったのだろうか。2016(平成28)年12月には、北陸新幹線の建設ルートが小浜経由に決定している。現地で売られているかどうかは分からない。2020年までの出荷か。
※2021年2月補訂:終売を追記2015〜2016年シーズンのデパートやスーパーで販売された疑義駅弁か。円形の加熱機能付き容器に茶飯を詰めて、焼サバのフレークを散らし、炙りサーモン、小鯛塩焼き、有頭海老を並べ、アサリ昆布を添付。塩気や水気がなくても、加熱によりそんな味わいが出てくる、豪華な海鮮弁当とは違うタイプの海の幸が感じられる商品。敦賀駅では出会えない味。
敦賀駅の並等幕の内駅弁か。専用のボール紙容器に黒いプラ製トレーを入れ、型押しの白飯、焼サバ、かまぼこ、玉子焼、エビフライ、鶏肉煮、高野豆腐やニンジンなどの煮物、煮豆、山菜あさり、柴漬けを詰める。いまどき720円で買える幕の内駅弁は多くないし、常温の味に優れる駅弁ではあるものの、中身がすき間だらけで冷凍食品の詰合せに見えておかずに困ったり、御飯の型押しが無機質だったり、これでよいのだろうかとは思う。2020年頃までの販売か。駅舎を建て替えてホーム上の駅弁売店を撤去してからの敦賀駅では、車中で食べるのではなく土産物として持ち帰るタイプの駅弁が数種類だけ売られるようになった。
※2022年4月補訂:終売などを追記下記の駅弁「若狭牛松茸弁当」の、2013年時点での姿。名前も価格も中身も変わらないが、ボール紙のパッケージが掛紙の使用に変わった。この頃までの販売か。
※2016年12月補訂:終売を追記秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2010(平成22)年秋の新商品か。陶製の釜型容器にプラスティック製のふたをして、中身の写真や商品の名前を描いたボール紙を巻いて留める。中身は白御飯の上を牛肉煮で覆い、ニンジンとクリとギンナンで彩るもの。
薄手の牛肉の甘辛煮が見た目に高級っぽく御飯を覆い尽くしており、冷蔵に近い冬の常温でも旨みと柔らかさが感じられる。同じ日に同じ場所で買ったこれとかこんな1,100円の牛めしより、安いのにうまい。しかし、魚の鮨の敦賀駅では注目も売り上げも期待できないのだろう、これはどうも駅弁催事業者の手による催事専用商品である模様。翌年のシーズンの駅弁大会にも出てきた。
2015年9月補訂:終売を追記2010(平成22)年1月の京王百貨店の駅弁大会に向けた投入か。長方形の容器に透明なふたをして、大きな窓を開けて商品名を書いたボール紙の枠にはめる。中身は茶飯の上を牛肉煮とマツタケ煮で覆い、インゲンとクリとニンジンとギンナンを付け、山菜とレンコンと柴漬けを添えるもの。三原駅弁のような内容と風味を、率直に書けばパクリを感じたが、味は確か。翌年の京王にも同じものが来ている。2013年頃までの販売か。
※2016年12月補訂:終売を追記おそらく2004(平成16)年秋のリニューアル。2年半前の「越前四季の釜飯 松茸」と比べて、掛紙がボール紙の枠に変わり、中身はタケノコと蒲鉾がなくなり海老が加わった。掛紙な頃は駅弁催事で積み重ねて輸送されると、陶器と擦れて掛紙が痛んでいたので、これで商品の見栄えは改善されたが、駅弁掛紙のコレクターから見れば改悪だと見られると思う。2012年頃までの販売か。
※2021年3月補訂:終売を追記2002(平成14)年の発売か。黒い漆器風のプラスティック容器をボール紙の枠にはめる。中身は茶飯の上に帆立・甘海老・ヤリイカ・紅ズワイガニのはさみなどを載せるもの。焼酎漬梅が入るのがユニークなところ。2014年時点で現存しない模様。
※2015年2月補訂:終売を追記全国的に見られるあの陶製釜飯容器に、プラ製のふたをかける。中身は味付け御飯の上に松茸スライスその他を置いたもの。駅弁の名前では松茸を名乗るが、この価格ではやはりその量は少なく、むしろ大き目にカットされた鶏肉が御飯とともに良い味を出す。鶏肉の入った松茸飯ではなく、松茸の入った鶏飯。この駅弁の駅弁マークは不思議と、縦横の線が太いオリジナル?版である。
※2021年3月補訂:終売を追記2000年代のものと思われる、敦賀駅弁の掛紙。中身はアヒル肉でなく、玉子そぼろと鶏そぼろのお弁当だった模様。敦賀駅のマスコットであった2匹のアヒル「ラッキー&ハッピー」にちなんだそうな。
1975(昭和50)年3月29日10時の調製と思われる、昔の敦賀駅弁の掛紙。後に「つぬが」と読まれる角鹿は、ここでは「つるが」の読み仮名を振り、その由来を記す。北陸越前気比の浦を、浮世絵のように描く。
1950年代、昭和30年前後の、4月6日10時の調製と思われる、昔の敦賀駅弁の掛紙。鉄道に関する記述がないため、駅売りでなく仕出しなどの弁当向けの掛紙かもしれない。駅名の他に特徴のない表記と絵柄を持つ。
1926(大正15)年5月7日7時の調製と思われる、昔の敦賀駅弁の掛紙。駅弁の上等弁当の価格は、大正11年から昭和5年まで35銭で、昭和恐慌により30銭に下げられた。敦賀湾の風景が描かれているように見える。
1920(大正9)年11月12日の調製と思われる、昔の敦賀駅弁の掛紙。夕暮れの日本海に浮かぶ舟を写実的に描いた感じ。駅弁の上等御辨當の価格が40銭だったのは、1920年前後の数年間に限られ、以後は不況とデフレで35銭、30銭と値下げされていく。
おそらく1920年代、大正時代末期か昭和時代初期のものと思われる、昔の敦賀駅弁の掛紙。絵柄は鳥居に夕日と鳥か。その形状と名所案内の一覧から、今は国の重要文化財である氣比神宮の大鳥居にみえる。
おそらく1920年代、大正時代末期か昭和時代初期のものと思われる、昔の敦賀駅弁の掛紙。絵柄は氣比神宮と氣比の松原に、日本海へ沈む夕日だろうか。
おそらく1920年代、大正時代末期か昭和時代初期のものと思われる、昔の敦賀駅弁の掛紙。掛紙に記す文字の半分、右上は英字でできている。
おそらく1920年代、大正時代末期か昭和時代初期のものと思われる、昔の敦賀駅弁の掛紙。上記の掛紙「サンドウヰッチ」と 、絵柄はまったく同じで、価格が5銭違う。