博多駅から九州新幹線で約1時間。鹿児島市は鹿児島県の中部で鹿児島湾に面する、人口約59万人の城下町で県庁所在地。活発な火山活動が続く桜島がシンボル。駅弁は明治時代からの鹿児島駅の駅弁屋が1943(昭和18)年に進出し、2006年頃に撤退、以後はキヨスクその他の駅売店で、主に出水駅の駅弁屋の商品が売られる。1913(大正2)年10月11日開業 鹿児島県鹿児島市中央町。
秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2023(令和5)年秋の新商品か。長方形のプラ容器に白飯を詰め、鹿児島黒牛の焼肉と黒豚の角煮で半分ずつ覆い、きんぴらごぼうも加えて、かりんこ漬けと高菜漬けを添える。甘い味付けのお肉がたっぷり入る、肉と茶色の強いお弁当。
このシーズンには掛紙に「頂点」と記す鹿児島中央駅弁が、少なくとも3種類は出た。公益社団法人全国和牛登録協会が5年に一度開催する黒毛和種の品評会「全国和牛能力共進会」の、2022(令和4)年10月に鹿児島県で開催された第12回で、8つの出品区と特別区のうち6部門で1位の農林水産大臣賞を得たことをもって、「和牛日本一」を獲得したことにちなむらしい。
2023(令和5)年10月に出水駅と鹿児島中央駅で発売、同月からのJR九州の駅弁キャンペーン「第14回九州駅弁グランプリ」にエントリー。犬を連れた西郷隆盛のイラストと中身のイメージ写真を使う黄色い掛紙に包まれた、平たい長方形の容器のふたを開けると、半分弱の区画に西郷隆盛の全身像の煎餅が置かれ、残りの区画に黒豚たれ焼きと豚そぼろと錦糸卵などで覆われる茶飯を配置。これは煎餅が本体で豚飯がおまけなのか、その逆なのか、弁当としての容器の使い方がおかしくて、記憶に残る。
昭和20年代から売られる鹿児島土産の定番と紹介される、文旦堂(ぼんたんどう)の西郷せんべい。せんべいといっても米菓でなく、砂糖と小麦と鶏卵と脱脂粉乳でできた、堅焼きのクッキー。西郷隆盛の焼き印と、約16センチもある長さが特徴。
秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2023(令和5)年秋の新商品として、9月に全国各地のスーパーで発売か。長方形のプラ容器に御飯を詰め、沖縄あぐー豚の焼肉と鹿児島黒豚の角煮を載せ、ごぼうも詰めて糸唐辛子で彩り、ゴーヤーの酢漬けとサツマイモの甘露煮を添える。お肉がいったいどちらのものか分からなくても、内容を見れば沖縄と鹿児島の詰合せ。スリーブに少しだけ見える写真も、鹿児島の桜島と沖縄の住宅の屋根とシーサーを並べた。
2023(令和5)年1月の京王百貨店の駅弁大会で、出水駅の駅弁として実演販売。同月の阪神百貨店の駅弁大会でも販売。長方形のプラ容器に茶飯を詰め、おそらく鹿児島県黒牛リブロースステーキと黒豚赤ワインステーキで覆い、ニンジンとインゲンで彩り、玉子焼と柴漬けを添える。さすがに味も見た目も、掛紙写真のイメージとは違うが、牛も豚も肉の赤身がしっかりしていて、ちょっと高そうな肉弁当には感じた。両駅弁大会以外で買えるかは不明。
鹿児島県黒牛でなく「鹿児島黒牛」は、公益社団法人全国和牛登録協会が5年に一度開催し、2022年10月には鹿児島県で開催された「第12回全国和牛能力共進会」にて、41道府県438頭中24頭の出品で、全9部門のうち6部門で1位の農林水産大臣賞となったという。
2013年秋の発売か。出水駅の駅弁を名乗り、調製元の公式ブログにもそう掲載されるが、実態は駅弁大会向け商品なのか、収穫報告は首都圏などのスーパーの駅弁大会ばかり。現地では事前に情報を得て予約しない限り見られないものではないかと思う。
人吉駅やかつての日田駅などの駅弁でも使われる、赤い栗型のプラ製容器を、商品名や中身の写真を印刷したボール紙の枠にはめる。中身は茶飯を豚焼肉、クリ刻み、松茸スライス、錦糸卵、レンコン、ゴボウ、ぜんまいなどで覆うもの。賑やかなちらし駅弁か、黒豚・松茸・栗で3種の味が喧嘩する雑な駅弁か。
2014(平成26)年1月の発売か。抹茶色の容器に味付飯を詰め、半分を黒豚たれ焼き、半分を錦糸卵、タケノコ、煮玉子、サツマイモのレモン煮、高菜漬、紅生姜で覆う。豚肉の分量がおかずに不足するも、鹿児島をしていると思う商品。主に駅弁催事かもしれないが、1月から5月頃か、駅弁大会シーズンが終わるまでの販売。2016年に「春収穫 黒豚筍めし」へリニューアルし、容器の色を変え、ミニ大福を加えた模様。
2021(令和3)年2月の発売か。3月のJR九州の駅弁キャンペーン「熊本・鹿児島 九州新幹線駅弁シリーズ2021」にエントリー。おそらく前月に京王と阪神の駅弁大会で実演販売された、下記の駅弁「鹿児島黒毛和牛黒豚競演牛すき焼きと黒豚炙り焼豚弁当」の、漫画作品「新・駅弁ひとり旅」タイアップを外し、掛紙を替えて名前を変えて、値段を300円も下げたものだろう。白飯を焼豚と牛肉煮とごぼうで覆い、花人参といんげんで彩り、さつま揚げとサツマイモを添える内容と、肉の固さはほとんど同じ。約1年で終売か。
※2023年4月補訂:終売を追記2021(令和3)年1月の京王百貨店の駅弁大会と阪神百貨店の駅弁大会で実演販売。漫画作品「新・駅弁ひとり旅」とのタイアップ商品であり、掛紙には中身のイラストとともにそのキャラクターが描かれる。中身は白飯を焼豚と牛肉煮とごぼうで覆い、はじかみで彩り、さつま揚げとつぼ漬けを添えるもの。牛も豚もアゴを鍛える噛み応え。2月には早くも、上記の駅弁「鹿児島の牛すき焼きと黒豚炙り焼豚弁当」(1,200円)へリニューアル。
2016(平成28)年7月に東京駅の駅弁売店「駅弁屋 祭」でデビューか。掛紙の写真も中身も、駅弁の名前のとおり、白御飯にウナギの蒲焼きと黒豚の焼肉を載せて、サツマイモと山菜ナムルを添えたもの。
これは失敗。ウナギはグミの食感で、豚肉はなぜか酸っぱい。もしこれらのメインの味が無難でも、鹿児島やそもそも日本でないナムルや、この調製元の駅弁でよく使われるレモン味のサツマイモが、この内容にミスマッチ。出水や鹿児島の現地では経験のない粗製濫造品に、がっかりした。2018年までの販売か。
※2020年5月補訂:終売を追記2016(平成28)年1月の京王百貨店の駅弁大会で、催事の目玉の駅弁対決の三番手として、実演販売で発売。白御飯を北さつま牛の牛肉と鹿児島黒豚の豚肉の、すき焼きというよりはむしろ焼肉で覆い、玉子焼と紅生姜を添える。他の出水駅や鹿児島中央駅の同じような駅弁と、雰囲気は特に変わらない。この駅や駅弁屋の、同じような中身と味で毎年のように新作を出してくる賑わいや意欲と、「えびめし」と違い肉の定番商品が生まれないもどかしさがある。事実上の京王百貨店駅弁大会限定販売。一応は翌月までの販売か。
2015(平成27)年1月の京王百貨店の駅弁大会でデビュー。目玉の駅弁対決の二番手「サブ企画の肉好きのための新作肉駅弁対決」で、新神戸駅「神戸牛めし」(1,400円)と、実演販売で対決した。長方形の容器に御飯を詰め、見た目も舌でもざらざらとした豚肉と牛肉で覆い、紅生姜を載せるだけの、とてもシンプルな内容。
確かに肉たっぷり。でも肉しかなく、食べ飽きそうな感じ。狭い催事場での実演販売に向いていたと思う。今回の駅弁大会を放送したテレビ番組で、この駅弁の開発の過程が放送された。百貨店バイヤーがダメ出しした試作品には錦糸卵が入っており、そのほうが彩りを出して食感を和らげて、良かったかもしれない。後に肉へごぼう煮を混ぜたり、錦糸卵で仕切って付合せも加えた「春の」バージョンを出したりしている。2019年までの販売か。
※2020年6月補訂:終売を追記京王百貨店の駅弁大会での八戸・高松・出水の「駅麺対決」のために、2013(平成25)年1月17日の会期後半に初登場。長方形の加熱機能付き容器に、既存の鹿児島黒豚赤ワインステーキ弁当と、新開発のラーメンを詰めて、タレとサツマイモを添える。
催事場でこれらの駅麺3種はどれも人気がないように見えた。高松はもうどうしようもなく、八戸も挑戦は無謀だったと思える味。この出水はまだ、容器がひとつで持ち運びと消費と見栄えに良いことと、少量で濃厚な塩と脂のタレが太麺に合い、豚焼肉丼も香ることで、食べて個性的だなとは感じた。京王以外で販売されたという話は聞かない。