博多駅から九州新幹線で約1時間。鹿児島市は鹿児島県の中部で鹿児島湾に面する、人口約59万人の城下町で県庁所在地。活発な火山活動が続く桜島がシンボル。駅弁は明治時代からの鹿児島駅の駅弁屋が1943(昭和18)年に進出し、2006年頃に撤退、以後はキヨスクその他の駅売店で、主に出水駅の駅弁屋の商品が売られる。1913(大正2)年10月11日開業 鹿児島県鹿児島市中央町。
九州新幹線全線開業記念駅弁22種のひとつとして、2011(平成23)年1月1日から8月31日まで販売。9月以降も販売を継続し、同年10月のJR九州の駅弁キャンペーン「九州駅弁グランプリ(第8回)」にエントリー。2016年まで販売した後、中身の一部と掛紙を変えて、秋冬の駅弁大会シーズンに向けた2023(令和5)年秋の新商品として再登場、同年10月のJR九州の駅弁キャンペーン「第14回九州駅弁グランプリ」にエントリー。
掛紙にカラー写真で紹介される9区画の中身は、黒豚めし、鹿児島のちらしずし「さつますもじ」、とりめしで3種の御飯と、さつまいもなどのかき揚げ「がね」、煮物「薩摩うま煮」、ぶり照焼と玉子焼、さつまあげとかりんこ漬、牛すき焼、お茶ゼリー。掛紙に「女性に親しみやすいお弁当です」とあるけれど、おっさんか中高年向けのおつまみ弁当に思えた、具だくさんのお弁当。容器が平たく浅いため、多種でも多量でなくつまみやすい。価格は2011年の発売時で1,100円、2014年4月の消費税率改定で1,140円、2023年の再発売で1,200円。
どうも2023(令和5)年10月に東京駅で発売し、鹿児島中央駅の駅弁を名乗りJR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2023」にエントリーした模様。既存の博多駅弁「KYUSHUTRIP弁当」と、名前と実質的な調製元と9区画のトレーの形が同じだが、リニューアルでなく博多と東京でそれぞれ売られ、中身と容器と価格が異なる。JR東日本の駅のコンビニ「ニューデイズ」各店へ出荷された日もあり、どうもこちらは催事向け商品か。
平たく浅い正方形のプラ容器に、九州各地のアイコンとおしながきを印刷した掛紙をかける。中身は博多辛子めんたい、熊本高菜漬け、博多がめ煮、佐賀牛焼肉、大分中津風唐揚、沖縄ゴーヤ、長崎焼売、鹿児島黒豚角煮、熊本あか牛すき焼、宮崎鶏炭火焼と記される。玉子焼、焼サバ、焼売、サツマイモも入る。お肉が強くて優勢な、忙しいお弁当。容器がコンビニ弁当並みに薄いので、分量は見た目ほどでない。味もそんなに効いてない。
下記の記念駅弁「鉄道開業150年記念九州巡り旅弁当」と同じもの。実際には少なくとも2023年9月までは売られたその記念駅弁と入れ替えて、12月までには鹿児島中央駅で発売か。長方形の容器は黒くなり、掛紙は中身の写真を使うスリーブに変わった。中身は福岡県かしわめしの上を、福岡県辛子明太子、大分県中津風唐揚、長崎県焼売、佐賀県佐賀牛焼肉、熊本県高菜漬け、宮崎県鶏炭火焼、鹿児島県黒豚角煮で覆うもので、表記は変わっても内容は宮崎県以外は変わらない。引き続き雑多な、あるいは賑やかな肉丼。
2022(令和4)年10月1日に鹿児島中央駅、熊本駅、博多駅、小倉駅、新大阪駅、名古屋駅、新横浜駅、東京駅で発売、12月31日まで販売。日本鉄道構内営業中央会の鉄道開業150年記念復刻駅弁企画により、同月から期間限定で販売された31社34駅弁のひとつ。さらにこの期間のJR九州の駅弁キャンペーン「第13回九州駅弁グランプリ」にエントリー。実際には2022年1月までにスーパーの駅弁大会などで売られ始めた「九州巡り旅弁当」を、9月に鉄道開業150年記念で一新して、やはりスーパーの駅弁大会などで売られ始めたもの。西九州新幹線の開業を前にした9月10日の長崎駅や諫早駅でも、現地の駅弁としてコンビニに出てきた。
掛紙には昭和初期の出水駅弁の掛紙の絵柄が取り入れられた。中身はおしながきによると、福岡の辛子明太子ととりめし、大分の中津風からあげ、長崎のシュウマイ、佐賀の佐賀牛焼肉、熊本の辛子高菜、宮崎の宮崎牛すき焼き、鹿児島の黒豚角煮。長方形のプラ容器に味付け飯を詰め、これらの具を並べ、山菜とごぼうを加えた。雑多な、あるいは賑やかな肉丼。翌2023年の1月以降も各地で売られ、駅弁大会では盛大に売られ、少なくとも9月まではこの姿で買えた。以後は上記の「九州巡り旅弁当」へチェンジ。
※2024年3月補訂:終売を追記2016(平成28)年12月10日に鹿児島中央駅で発売。鹿児島大学で研究者や地元企業などを集めて2014(平成26)年5月に発足した黒膳研究会による、2015(平成27)年に「黒膳」「薩摩黒膳」の商標を登録して販売を開始した黒膳弁当が、掛紙をかけて駅へ進出した。「わっぜぇうまか」とは、ものすごくおいしいという意味の鹿児島弁で、「ごわす」は鹿児島などの方言でございますを意味する。
正方形の容器は二段重ね。上段が御飯で、黒米混じりの御飯に黒豚角煮の小片を載せて、黒豆やレッドキャベツ酢の物やサツマイモを添える。下段がおかずで、さつま鶏照煮、かんぱち照焼、さつまあげ、きんぴらごぼう、こんにゃくやしいたけなどの煮物、かぼちゃ、玉子焼など。会が定める黒膳条件に則って、黒を特徴とする鹿児島の食材と、ポリフェノール豊富な黒野菜を組み合わせた。分量の多い惣菜弁当。調製元は鹿児島市内のスーパーマーケットチェーン。価格は2021年の購入時で980円、2023年10月のJR九州の駅弁キャンペーン「第14回九州駅弁グランプリ」エントリー時で、鹿児島中央駅では1,100円、博多駅では1,300円。
※2023年11月補訂:値上げを追記2016(平成28)年12月10日に鹿児島中央駅で発売。鹿児島大学で研究者や地元企業などを集めて2014(平成26)年5月に発足した黒膳研究会による、2015(平成27)年に「黒膳」「薩摩黒膳」の商標を登録して販売を開始した黒膳弁当が、掛紙をかけて駅へ進出した。「わっぜぇうまか」とは、ものすごくおいしいという意味の鹿児島弁で、「ごわす」は鹿児島などの方言でございますを意味する。
長方形の容器に、黒米混じりの御飯と白飯とひとかたまりずつ詰め、カンパチの照焼、黒豚角煮、さつま鶏照煮、さつまあげ、きんぴらごぼう、こんにゃくやしいたけなどの煮物、玉子焼、レッドキャベツ酢の物などを散らしたり詰める。力強いような、雑然としたようなお弁当。調製元は鹿児島市内のスーパーマーケットチェーン。価格は2021年の購入時で750円、2023年10月のJR九州の駅弁キャンペーン「第14回九州駅弁グランプリ」エントリー時で、鹿児島中央駅では880円、博多駅では1,080円。
※2023年11月補訂:値上げを追記2015(平成27)年までに発売か。掛紙には鹿児島県の地図と食材のイラストが、おそらく産地と関連付けられて描かれる。中身は俵飯に漬物やサツマイモ、茶飯を覆う豚焼肉、鶏酢あんかけと枝豆、エビフライと煮物、サバ照焼とダイコンなどの酢の物と玉子焼。鹿児島でいろどりたくさん、もりだくさん。値段は2016年時点で1,080円、2019年10月から1,100円、2023年時点で1,280円。
※2024年3月補訂:写真を更新2016(平成28)年10月22日に購入した、鹿児島中央駅弁の掛紙。上記の2023年のものと比べて、法改正で記載事項が増えてレイアウトが変わったが、絵柄は同じ。容器も同じ。中身もだいたい同じ。
2012(平成24)年9月に鹿児島中央駅で発売。同駅の駅弁売店で、8か月連続で売上ナンバーワンになったそうで、2013年度のJR九州の駅弁キャンペーン「第10回九州駅弁グランプリ」で同着3位を獲得した。小柄でえらく細長い容器に御飯を詰め、桜島の火山灰に食材を挟む「灰干し」加工をしたシイラの塩こうじ焼、「寅焼」なる玉子焼、「ぼっけチビ」なる鶏ゆずこしょう焼、黒豚の塩こうじ焼、きんぴらごぼう、鶏唐揚、シイタケ旨煮、赤キャベツの甘酢漬で覆う。そんな内容は掛紙にて、写真付きでしっかり説明される。このようにいろんなものが載る、他にはないタイプの駅弁である。価格は2013年時点で680円、2014年時点で750円、2019年時点で890円、2022年時点で1,000円、2023年時点で1,100円。2021年現在で、鹿児島空港や鹿児島市内のデパート「山形屋」(やまかたや)でも買えるという。
桜島は鹿児島県の錦江湾に浮かぶ、標高1,117メートルの火山島。年に1,000回も噴火する活火山であり、鹿児島の風景と観光のシンボルであり、湾岸へ常に火山灰を撒き散らす迷惑者であり、世界中の火山学者を魅了する研究対象である。鉄道の車窓としては、日豊本線の鹿児島駅から重富駅までの間で海越しに美しく見える。
※2023年7月補訂:写真を更新し値上げを追記2013(平成25)年12月1日に購入した、鹿児島中央駅弁の掛紙。絵柄も容器も中身も、上記の2023年のものと同じ。語句が微妙に異なるほか、当時はピンク色がもっときつかった。
2022(令和4)年4月10日から5月10日まで、鹿児島や大阪や東京で販売。駅弁の日に合わせ、日本鉄道構内営業中央会の会員のうち21社が、FMヨコハマのラジオ番組「FUTURESCAPE」とタイアップし、この年の4月10日から各社の駅売店などで販売した、駅弁の日記念のおにぎり駅弁の、鹿児島中央駅バージョンとして販売。同会のリリースでは「九州うまかもんおむすび弁当」と発表し、その写真と実物には「九州うまかもんおにぎり弁当」と書いてある。今回のキャンペーンで各社に用意された「駅弁カード」が1枚付いてきた。
ふたが透明で中身が見える正八角形の容器を留める紙帯には、九州各地の名所のイラストが8点描かれる。中身はかしわめしおにぎり、炙り辛子明太子おにぎり、「あか牛すき焼き」でなく熊本あか牛しぐれ煮、中津唐揚げ、きびなごの甘酢あんかけ、さつま揚げで、九州各県の名産を味わえるものとしたという。調製元にとっての九州、自社の駅弁の出荷先が、雑然と詰められたような印象。
秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2021(令和3)年秋の新商品か。中身と桜島の写真を使うスリーブに収めた正八角形の容器に、酢飯を詰め、とびっこを載せたかんぱちの酢締めと錦糸卵で覆い、薩摩揚げ、かまぼこ、しめさば、タコ、刻みしいたけ煮、ガリを添える。酸味でいただく魚の弁当。催事にしか出てこない、ごくまれにしか出てこない、幻の弁当かもしれない。このシーズンの半年間のみの出荷か。
すもじとは、寿司の古語や京言葉であり、鹿児島や島根県でちらしずしを指すもの。スリーブの記述によると、薩摩すもじとは、身近でとれる季節の食材を使ってつくる、祝いの席で食べる料理として親しまれてきた、いわゆる「ちらしずし」「ばらずし」であり、地酒を使うのが鹿児島県の特徴であるという。
※2023年7月補訂:終売を追記2012(平成24)年までに鹿児島中央駅で発売か。小さな梅干しの日の丸御飯を中央に据え、その周囲をゴーヤー、玉子焼、とんこつ、カレイ白醤油焼、さつま揚げと高野豆腐などの煮物、きびなご南蛮とれんこん揚げ、肉団子とカボチャ揚げ、漬物と紫芋などのおかず8区画で囲む。幕の内弁当を名乗り、幕の内タイプの構成ながら、鹿児島や薩摩がたっぷり詰められていた。2022年までに終売か。
※2023年4月補訂:終売を追記2020(令和2)年の2月までに発売か。現地でなく駅弁催事向けに出荷される商品かもしれない。茶飯をくじらカツとくじら大和煮と錦糸卵で覆い、インゲンで彩り、サツマイモと紅生姜を添える。長崎駅で「ながさき鯨カツ弁当」が生まれて定評を得てから約15年、この業界では珍しいことに、どんな駅弁屋も追わなかった、追えなかった、クジラの駅弁がついに出現した。しかし常温のくじらに臭みがひどく、他社が追わない理由を垣間見た気がした。それでも1年間は作られた模様。
※2022年6月補訂:終売を追記鹿児島県鹿児島市をホームタウンとするプロサッカークラブ「鹿児島ユナイテッドFC」が、2016年度にJリーグ(日本プロサッカーリーグ)のJ3リーグ(3部リーグ)に新規加盟したことを記念し、調製元と鹿児島純心女子短期大学との共同開発により、「ユナィテッ丼」(650円)とともに2016(平成28)年3月に発売。スタジアムでの販売を想定しているが、現物には全国と九州の駅弁マークが付き、こうやって駅で買える駅弁でもある。
掛紙に写真とお品書きが記される9区画の中身は、白飯、えびめし、肉巻おにぎり、鮭の西京焼き、鶏肉の甘酢あんかけ、肉巻きフライ、煮物、さつまあげと玉子焼き、紅大福。タイアップ商品のわりには、取り立てて特徴のない印象で、弁当や食事として安心していただける。桜島が爆発するエンブレムや、「祝J3参入」の記載もあった。
鹿児島ユナイテッドFCは、2013(平成25)年12月の設立。サッカーJリーグのチームがなかった鹿児島に、1959年からの歴史を持つヴォルカ鹿児島と、1994年からの歴史を持つFC KAGOSHIMAというふたつのチームが立ち上がって競合し、Jリーグからクラブの一本化を求められたため、事実上合併して発足した。だから「ユナイテッド」であり、離島の協力や県外の団結の意味も込めてクラブ名としたという。駅弁が出た年は16チーム中5位の成績となった。
2017年シーズンは中身を変えて販売。2018年シーズンには「鹿児島黒豚W弁当」という豚丼に一変し、年内に「鹿児島黒豚弁当」へ変化した。以後は市販されていないと思われる。
※2021年3月補訂:終売を追記2012(平成24)年10月の発売で、同年のJR九州の駅弁キャンペーン「九州駅弁グランプリ(第9回)」にエントリー。商品名のとおり、見た目のとおり、松栄軒の出水駅の駅弁「極黒豚めし」と「牛めし」がひとつずつ。箸は一膳なので、ひとりで食べ比べる。2017年までの販売か。
※2020年4月補訂:終売を追記2008(平成20)年の発売か。同年度のJR九州の駅弁キャンペーン「九州の駅弁 あなたが選ぶ駅弁ランキング2008」で第4位を獲得。掛紙の「第45回農林水産祭内閣総理大臣賞」というのは、2006(平成18)年度の第45回農林水産祭において枕崎市漁業協同組合が産物(水産加工品)「枕崎ぶえん鰹」で内閣総理大臣賞を得たものであり、この弁当が受賞したわけではない。
中身はカツオとコンブの茶飯の上に、そのカツオの照焼を置き、カツオのフライ、薩摩揚げ、シイタケやタケノコなどの煮物、インゲンおひたし、ナスとシメジの和え物、玉子焼、大根桜漬などのおかずを添えるもの。パサパサあるいはサクサクした醤油味のカツオが印象的で、たっぷりのおかずで食事として完成したが、よそ者から見れば、味や中身にもっとえぐさがあってもよかった。発売当初は月に千個が売れる人気商品だったそうな。価格は2013年の購入時で850円、2014年4月の消費税率改定で875円、2018年時点で1,080円。2020年頃に駅では売られなくなったらしい。
内閣総理大臣賞を受賞して、この駅弁にも使われた「枕崎ぶえん鰹」とは、枕崎市漁業協同組合が開発した、一本釣りしたカツオを船上にて活き〆(血抜き)したあと急速冷凍し、弾力性のあるモチモチとした新食感の歯ごたえ生臭さのないさわやかな味と鮮やかな赤みを実現したブランド魚。そんなことを言わなくても枕崎は漁業で有名であると思うが、全国の大小の漁港と同じく、魚価の低迷や燃料費の高騰に悩んでいることが、この魚を紹介する公式サイトでの記述でうかがえる。
※2022年6月補訂:終売を追記九州新幹線全線開業記念駅弁22種のひとつとして、2011(平成23)年2月1日から8月31日まで販売、その後も販売を続けた。小箱を2段に重ねた容器の中身は、下段が日の丸御飯に笹団子、上段が骨付きの豪快なとんこつ、ガネ、薩摩揚、有頭海老、たっぷりのキビナゴ揚げ、煮玉子など。これも同じ日に食べた上記の駅弁「黒豚チャーシュー弁当」と同じく、味は見た目よりだいぶあっさりしており、昼食でも夕食でも夜食でも大丈夫な感じ。価格を考えても、お得な駅弁。価格は2013年の購入時で840円、2014年4月の消費税率改定で864円。2016年以前に終売か。
※2019年8月補訂:終売を追記九州新幹線(鹿児島ルート)の全線開業1周年を記念して、2012(平成24)年3月1日に発売。中身は掛紙の写真のとおり、半分が芋焼酎「石の蔵から」、半分の上下段で俵飯3種、キビナゴ甘酢あんかけ、黒豚炭火焼、さつま揚げ、鶏唐揚、芋レモン煮、玉子焼、ダイコンなます、マグロ角煮、ミートボール、根菜の煮物、辛子明太子など。
度数17度の焼酎が300ミリリットル。アルコール量では日本一の酒付き駅弁ではないかと思う。新幹線の起終点である福岡と鹿児島の味を詰めたという中身は、御飯におかずという普通の駅弁にも、酒に合わせたつまみを好んで詰めたようにも見えるし、風味もそれらを併せ持つ感じ。1年ほどで売り終えた模様。
2010年のNHK大河ドラマ小説「龍馬伝」の放送に向けた2009(平成21)年12月に発売。内側が赤く外側が黒い長方形の容器に、桜島や坂本龍馬やお龍のシルエットなどをデザインして、駅弁マークと九州駅弁マークと大河ドラマの公式ロゴマークを付けた掛紙をかける。
中身は味付飯の上に伊達巻、桜島とりの照焼き、黒豚の照焼き、高菜漬け、紅生姜を載せて、煮物といこもちを添えるもの。龍馬とお龍が鹿児島へ新婚旅行で訪れた時のイメージを駅弁にしたというが、何がそれに該当するのか分からない。伊達巻といこもちが印象的な、食べて良い味のする駅弁であった。出水駅の駅弁とされるが、実際は鹿児島中央駅で売られる模様。価格は2011年の購入時で1,050円、2014年4月の消費税率改定で1,080円。2014年までの販売か。
坂本龍馬とその妻であるお龍は、新暦換算で1866年(慶応2年)4月14日に京都から旅行に出発、18日に大坂から西郷隆盛や小松帯刀らとともに薩摩藩の蒸気船「三邦丸」に乗り、20日に下関に、22日に長崎に寄港ののち、24日に鹿児島に到着する。30日からは夫婦ふたりで日向山温泉に泊まり、5月1日から塩浸温泉に11泊、12日に吉井友美の案内で硫黄谷温泉に泊り、13日に霧島連峰の高千穂峰に登り霧島神宮に宿泊、14日に硫黄谷温泉に戻って泊り、15日に吉井友美とともに塩浸温泉へ戻り7泊、22日から日当山温泉で3泊、25日に1泊ののち26日に鹿児島へ戻ったという。西郷隆盛や小松帯刀が招待したものだそうだが、龍馬の知名度の向上とともに、これが全国初の新婚旅行として紹介されるようになった。
※2020年5月補訂:終売を追記九州新幹線全線開業記念駅弁22種のひとつとして、2011(平成23)年1月1日から8月31日まで販売。販売はその後も継続された。松阪駅や大船駅や阪神百貨店の駅弁大会における姫路駅と同じく、双葉社「漫画アクション」の連載漫画「駅弁ひとり旅」とのタイアップ駅弁。調製元は出水駅の駅弁屋だが、JR九州、京王百貨店駅弁大会、阪神百貨店の駅弁大会とも鹿児島中央駅の駅弁としたため、こちらに収蔵する。出水駅と川内駅も販売駅として記される。
内側が赤く外側が黒い長方形の発泡材製容器を、中身のイラストに牛肉や新幹線の宣伝文を書いたボール紙の枠にはめる。中身はイラストのとおり、御飯の上を鹿児島産曽於(そお)さくら牛のすき焼、錦糸卵と紅生姜と花形ニンジン、鹿児島産黒豚たれ焼で3分の1ずつ覆い、桜島大根といこもちを添えるもの。甘い甘い牛肉と、スッキリした豚肉と、少量も肉の味を生かす御飯と、桜島大根といこもちの組合せが興味深い。価格以外には不満なし。価格は2011年の購入時で1,100円、2014年4月の消費税率改定で1,130円。2014年頃までの販売か。
曽於とは鹿児島県のうち大隅国の北半分、つまり鹿児島県の北東側一帯の地域を指す古くからの郡名。1972(昭和47)年3月まで「囎唹」の漢字を使っていた。いずれにしても大阪はもちろん、九州の人にとってもなじみの薄い地名なのだろう、パッケージでも振り仮名が付く。2005年7月にはいわゆる平成の大合併により3町の合併で曽於市が誕生、これから読まれるよう、読めるようになっていくのだろうか。
※2021年3月補訂:終売を追記2008(平成20)年のNHK大河ドラマ「篤姫」の放送にちなみ、同年3月頃に発売か。長方形の容器に透明なふたをかけ、島津家の家紋やNHKの公式ロゴマークも付いた掛紙ですっぽり包み、ひもで十字にしばる。中身は松型に固めた白御飯にとんこつ、薩摩揚、いこもち、アユ甘露煮、タケノコやニンジンなどの煮物、鮭昆布巻、キンカンなどを詰めるもの。いろんな食材と個性を詰め込んでいる、催事場内では理解を得られないだろうが九州の駅弁らしい特殊幕の内。2014年時点で売られていない模様。
平均視聴率が24.5%と、過去12年で最高の数値を記録した「篤姫」。その主人公である篤姫(あつひめ)こと天璋院(てんしょういん)は、天保6年(1836年)に現在の鹿児島県鹿児島市で生まれた。島津家に入った後に江戸に上り、22歳で江戸幕府第十三代将軍の徳川家定と結婚して以降、1883(明治16)年に49歳で亡くなるまで、二度と薩摩の地を踏むことはなかったという(年齢はいずれも数え年)。
結婚生活は家定の死去により2年弱で終わり、そのうち島津家は倒幕運動に参加して徳川家と対立することになるが、篤姫改め天璋院は徳川家に尽くし、大奥となって幕府と将軍家の維持に奔走した。鹿児島にとって篤姫は薩摩を捨てた敵なのか、それとも政府の中枢で活躍したヒーローなのか、いずれにせよ観光特需にはありつけるということで、2008年の鹿児島は篤姫で賑やかだった。
※2014年6月補訂:終売を追記2004年3月の九州新幹線部分開業に合わせて発売。内部が銀色のボール紙を立体的に組み立てた中に、胡麻混じり酢飯の上や周囲にキビナゴの酢塩締めと昆布を貼る、鹿児島名物きびなご寿司を詰めて、商品名シールと針金入り紙帯で封をする。よそ者からすれば珍味に該当するだろう。普段見慣れない食材を見るだけで、旅の気分が盛り上がるし、品質も良いと思う。
個人的にきびなご寿司は、どの業者の製品でも同じ味がするような気がする。しかしこの商品はパッケージに駅弁らしさがあり、意図的かどうかは知らないが空弁やスーパーの商品との差別化が図られている。2014年時点で駅弁としては現存しない模様。
※2015年2月補訂:終売を追記2004(平成16)年3月の九州新幹線部分開業と同時か、その少々後に発売か。黒い長方形の容器に、よく見ると文字と車両と鳥でツバメが踊る掛紙を巻く。掛紙で980円の価格は、ゴム印で850円に訂正。中身は豚肉の太巻、鶏の細巻、きびなごの押寿司という珍味系。なんとなく主観的にも客観的にも印象に残りにくいような。調製元は鹿児島市内の出前専門寿司屋。2007年頃までに売り止めた模様。
西鹿児島の駅弁は国鉄時代から一社独占だったが、九州新幹線の開業に伴い多社乱立に変わった模様。しかし果たして何種類の駅弁がありどこの売店に行けば買えるのかが、よく分からない。駅弁の定義が曖昧なことも合わせ、ここに店舗を構えるか弁当を卸せば、駅弁のブランドを手っ取り早く入手できそう。
※2015年2月補訂:終売を追記大柄でがっちりした長方形の経木枠の容器に木目調のふたをして、お品書きと割りばしとおしぼりを添付して輪ゴムで留め、特急つばめ号ロゴマーク柄の掛紙で包んで紙ひもでしばる。中身はどんどん変わるようだが、購入時には梅花形日の丸御飯、高菜巻、薩摩豚冷しゃぶ、博多筑前煮、カレーコロッケ、ウナギ入り玉子焼、煮サバ、黒胡麻もちなどが入っていた。
これはもともと、博多駅と西鹿児島駅を結んだ在来線特急「つばめ号」の車内販売用弁当。同じ価格と容器と掛紙で、博多の駅弁屋と鹿児島の業者が競作していたし、当時からそれぞれ博多駅と西鹿児島駅での販売もあったらしい。2004年の九州新幹線部分開業後も同様だが、新幹線つばめ号に車内販売はなく、在来線つばめ号改め「リレーつばめ号」は新八代駅より南に来ないので、鹿児島版は事実上、西鹿児島改め鹿児島中央駅の駅弁となった。
2005(平成17)年の春頃に発売か。フタも本体も黒く細長い容器に、割りばしとおしぼりを乗せて、郷中教育を描いた掛紙で巻いて、ビニールひもでしばる。中身は手前の5区画が御飯物で、左から栗めし・えび押寿司・うなぎ寿司・玉子の握り・サバ押寿司、奥の5区画にはとんこつ・きびなご・薩摩揚などという、多種中量の詰め合わせ。中身の解説は語られないが、自然に鹿児島にこだわった感じをちゃんと受け、鹿児島発着の列車で食べて風味が生きるもの。
添付の紙片はお品書きではなく、郷中教育十八学舎の一覧表。掛紙左下に郷中(ごじゅう)教育の解説が記される。江戸時代薩摩藩の教育体制から輩出された人材が、明治維新の過程で大きな役割を果たしたが、その後の薩摩あるいは薩長土肥が特段の発展や求心を見せずに一地方の枠に留まるのは、どうしたことか。2007年頃までに売り止めた模様。
※2015年2月補訂:終売を追記大きめの正方形な容器を、鮎と鶴を描いた大きめの正方形な掛紙で包みビニールひもでしばる。中身は日の丸御飯に煮物や薩摩上げや玉子焼とともに、鮎甘露煮が二匹入るもの。鮎がなければこんなに味気ない駅弁は他にないだろうと感じたのは、おかずを乗せる白い食品トレーのせいか。出水駅にえびめしを買いに行って、しかし売り切れていたのでこちらを買ったという報告がいくつもある。
出水駅の駅弁は、九州新幹線の工事や開業に伴い廃業するのではないかという噂が21世紀初頭に駆け巡ったが、2004年3月に新幹線が部分開業し、在来線特急「つばめ」が廃止された後も盛業中。肥薩おれんじ鉄道に引き継がれた在来線駅舎を調製所として、新幹線出水駅構内の物産館で駅弁が販売されたそうな。
なお、2006年10月時点の商品は、価格が900円に上がり、容器が竹皮製の長方形の容器になり、中身の見栄えが変わった模様。駅弁の名前も「あゆ物語」に変化。それも2017年頃までの販売か。
※2023年7月補訂:終売を追記鹿児島中央駅の東隣。明治時代の鉄道開通時には鹿児島市街の玄関口であったが、市街の西方への拡大により西隣の武(たけ)駅のほうが鹿児島の中央駅となり、1927(昭和2)年10月の西鹿児島駅への改称や1960(昭和35)年6月国鉄ダイヤ改正以後の優等列車の西鹿児島駅発着への切り替えなど、昭和時代に地位を譲り渡した。駅弁はかつての西鹿児島駅、現在の鹿児島中央駅と同じものが売られることがある。1901(明治34)年6月10日開業、鹿児島県鹿児島市浜町。