東京駅から新幹線つばさ号で2時間強。米沢市は山形県の南端で内陸の盆地に広がる、人口約8万人の城下町。ブランド和牛の生産や、江戸時代の名君である上杉鷹山でよく知られる。駅弁は明治時代からの駅弁屋と戦後昭和の駅弁屋が激しく競い、無数の牛肉弁当があることになっている。1899(明治32)年5月15日開業、山形県米沢市駅前1丁目。
秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2023(令和5)年秋の新商品か。調製元の公式サイトには2020年10月に掲載された痕跡がある。調製元が米沢駅の駅弁屋なのでここに収蔵するが、おそらく米沢駅ではなく東京や催事へ出荷する商品なのだろう。これも千葉駅の駅弁売店で売られていた。
楕円形の容器に炊き込み御飯を詰め、くり、肉団子、さつまいも、タケノコ、マイタケ、野沢菜、ごぼう、しいたけ、ふき、にんじんを散らす。にぎわいや、わっぱめしというよりは、まるで山菜が入っているような栗飯という印象。ひと昔前に東北地方で「山菜栗ごはん」の名前で売られた秋限定の駅弁だと言われれば信じてしまいそうな雰囲気を覚えた。
2022(令和4)年10月1日に米沢駅と山形駅と東京駅で発売。鉄道開業150年にちなみ、JR東日本仙台支社管内の仙台、米沢、山形、郡山の各駅では、6社で7種類の駅弁が発売された。同月からのJR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2022」にエントリー。2012年に埼玉県の鉄道博物館で発売し、駅弁催事や東京駅や仙台駅などでも売られた「1号機関車弁当」の、リニューアルだろうか。
従前の1号機関車弁当と同じ、鉄道博物館に収蔵される1872年の日本の鉄道開業時の蒸気機関車を模したプラ容器を、ここでは商品名と蒸気機関車を描いた黒いスリーブにはめる。中身は白飯を、錦糸卵と糸こんにゃくと牛肉煮で覆い、しいたけ、ごぼう、紅生姜、グリーンピース、牛角切を載せ、スモークチーズとさくらんぼを添えるもの。牛角切と紅生姜は、蒸気機関車の燃料である石炭と、その燃える炎をイメージしたのだと。鉄道車両型容器の駅弁にありがちなお子様ランチではないけれど、「大人の」というほど大人向けでもなく、だれでも食べられそう。
以下、1号機関車弁当の紹介文を転記する。鉄道博物館で静態展示される「1号機関車」、後の国鉄150形蒸気機関車は、1872(明治5)年の日本の鉄道開業の際にイギリスから輸入された蒸気機関車5形式10両のうちのひとつである。日本へ最初に到着したので「1」の番号を付けて新橋と横濱を結び、しかし性能や状態があまり良くない車両だったようで、関西や中京を転々とし、1911(明治43)年に長崎県の島原鉄道へ払い下げられた。
昭和時代に入ると、かつての1号機関車がまだ生き残っているぞと新聞記者が発見し、1930(昭和5)年に島原鉄道と蒸気機関車を交換することで当時の鉄道省に戻され、1936(昭和11)年に当時の鉄道博物館の東京駅付近から万世橋への移転に合わせて収められた。2006(平成18)年の交通博物館の閉館と翌2007(平成19)年の鉄道博物館の開館により、さいたまの現在地へ移転し展示が続く。車体には島原鉄道から去る際に取り付けられた「惜別感無量」の銘板が残る。
2021(令和3)年4〜9月のJRグループの観光キャンペーン「東北デスティネーションキャンペーン」の開催に合わせ、同年4月1日に東京駅や仙台駅などで発売か。既存の米沢駅弁「プレミアム焼肉弁当」と同じ二段重ねの容器の、下段にゆかりめし、いも煮、焼鮭、上段の6区画に牛肉焼売、煮物、玉子焼と黒豆、牛肉団子、きのこ和え、漬物。これは駅弁屋のなんでもまるごと弁当で、食べ応えのある分量。結果的に政府の新型コロナウイルス感染症対策で散々な結果に終わった、東日本大震災の10年後に東北6県すべてを対象にした観光キャンペーンが終わっても、この駅弁は引き続き売られる。
秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2020(令和2)年秋の新商品か。米沢駅でなくこのように、東京などにある各地の駅弁を売る売店か、駅弁大会で売られる弁当だと思う。真ん丸の容器に炊込みご飯を詰め、多くの山菜やきのこと、少々の鮭塩焼と栗で覆い、錦糸卵と大根桜漬で彩る。秋の弁当かと問われれば、そうだとは思う。価格は2020年の発売時で1,100円、2022年時点で1,130円。
秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2020(令和2)年秋の新商品か。正八角形の容器に炊込飯を詰め、鮭フレークで覆い、いくら醤油漬を散らし、柴漬けを添える。仙台駅で1980年代以来の人気駅弁「鮭はらこめし」を、名前と風味で模倣した。だからおいしくても、宮城県や亘理地方の郷土料理が、なぜ山形で米沢なのか、誰もが不思議に思う商品だと思う。また不思議なことに、栃木県の那須塩原駅のコンビニ「ニューデイズ」で、常に売られている。
2018(平成30)年に2回あった土用の丑の日の2回目に、東京駅の駅弁売店「駅弁屋 祭」で実施された「土用丑の日 うなぎ駅弁大会」で買えた弁当。その1回目のこの売店は、この調製元のウナギ弁当で埋め尽くされていた。調製元が米沢駅の駅弁屋なのでここに収蔵するが、今の米沢駅にはたしてウナギの駅弁など存在するのだろうか。2014年や2017年にも売られた模様。
寿司惣菜向けプラ製トレーに、8切れにカットした細身の太巻きを横たえ、透明な上げ蓋をして、商品名を書いた掛紙で巻く。細身の太巻きの具のごく一部がウナギ。最近のウナギ弁当としては比較的廉価でも、味や香りもそれくらい細い感じ。
2014(平成26)年の夏までに、下記の駅弁「山形新幹線つばさ弁当」をリニューアル。中身や価格を変えず、実物の車両の塗り替えを反映し、容器の色を変えた。山形新幹線E3系電車の先頭車両を模したプラスティック製の容器にチキンライスを詰め、ハンバーグ、エビフライ、ウインナー、フライドポテト、スクランブルエッグ、鶏唐揚、チーズ、ぶどうゼリーなどを詰める。
新神戸駅を除く各地の新幹線車両型容器の駅弁と同じく、食べればまるで冷凍食品を多用したようなお子様ランチ、見れば子供や鉄道ファンに楽しい駅弁。容器を収める箱を透明にしたことで、売り場でより目立つ。E3系の平面顔がよく再現されていると思う。旧版も併売するため、こちらはカタログ上で「(ニューデザイン)」の接尾辞を付けて区別されている。価格は2014年のリニューアル時や購入時で1,300円、2021年時点で1,350円、2022年時点で1,380円。
※2022年4月補訂:値上げを追記上記の駅弁「山形新幹線つばさ弁当(ニューデザイン)」の、2022年時点での姿。おそらくこの年の8月から、新幹線電車型のプラ容器を、透明プラ箱に入れるのでなく、ボール紙のスリーブに収める姿に替えた。価格はこの年に、1,380円から1,400円に値上げ。旧版の併売も続く。
2013(平成25)年の夏までに発売。上記の駅弁「山形新幹線つばさ弁当」と、値段や内容は同じ。容器の色が、当時の山形新幹線のE3系電車の先頭車両のものであった。新版の登場でこちらは終売と思ったら、実車の消滅にかかわらず2022年時点でも併売され、中身は同じで値段はこちらが少し安い。価格は2013年の購入時で1,100円、2014年時点で1,200円、2015年時点で1,300円、2022年時点で1,350円、同年中に1,380円。
※2022年11月補訂:値上げを追記1899(明治32)年の発売という、伝統の駅弁。2000年頃で一日に5個限定や注文販売とされていて、2020年頃で2日前までの要予約とされる。記載の内容から1980年代の昭和時代や国鉄時代から変わらないと思われる掛紙が、大事に使われる。中身は、米沢の伝統食である養殖鯉を甘露煮にして入れ、あとは白御飯に里芋や椎茸やタケノコの煮物と切り干し大根など。価格は2002年の購入時で1,050円、2010年時点で1,250円、2014年時点で1,300円。
米沢の名産品A(pple、リンゴ),B(eef、牛肉),C(arp、コイ)の一角を占める米沢鯉。1802年に上杉藩主の上杉治徳公、つまり鷹山公が導入したそうで、現在も米沢城のお堀には鯉が泳ぎ、市内には鯉料理の店がある。臭みはないがレバーのような癖はあるから、万人向けするものではない。
※2015年2月補訂:値上げを追記2023(令和5)年は4月10日から16日まで、米沢駅でなく山形、仙台、東京の各駅で販売。今回も駅弁の日に合わせ、日本鉄道構内営業中央会の会員のうち26社が、この年の4月10日から各社の駅売店などで販売した、駅弁の日記念のおにぎり駅弁の、松川弁当店バージョンとして販売。他社とのタイアップはないが、駅弁カードは付いてきた。
小さな長方形の容器に、ふき味噌、うめ、弁慶めしで各1個の三角おにぎりと、玉子焼、牛肉煮、漬物。千円+消費税の高価格は、1週間限りの記念商品であり、仙台駅や東京駅で千数百円の駅弁群に囲まれれば目立たない。解説なく詰めた「弁慶めし」とは。山形県内で米沢のある置賜(おきたま)地域でなく日本海側の庄内地域の郷土料理だそうで、握り飯に味噌を塗り青菜漬で巻いて焼いたもの。和歌山のめはりずしのような感じ。
2022(令和4)年4月10日から5月10日まで、米沢、山形、仙台、東京、上野、大宮の各駅で販売。駅弁の日に合わせ、日本鉄道構内営業中央会の会員のうち21社が、FMヨコハマのラジオ番組「FUTURESCAPE」とタイアップし、この年の4月10日から各社の駅売店などで販売した、駅弁の日記念のおにぎり駅弁の、米沢駅バージョンとして販売。今回のキャンペーンで各社に用意された「駅弁カード」が1枚付いてきた。
中身と商品名を描く掛紙の絵柄は、発売30年の米沢駅弁「牛肉道場」に似る。中身は俵飯に海苔を締めた牛そぼろおむすび、牛肉煮おむすび、塩おむすびが各1個と、玉子焼き、しそ巻、煮物、漬物であり、「牛肉道場」に少し似る。味も同じだと思うが、牛肉の分量が何倍も違うから、印象は異なる。
日本鉄道構内営業中央会が駅弁誕生135周年を記念して、会員のうち21社が2020(令和2)年4月10日から販売した、駅弁の原点であるおにぎりをメインとした記念弁当「駅弁誕生135周年おにぎり弁当」の、米沢駅弁の松川弁当店バージョン。
おにぎり弁当らしからぬ大きさを持つ、普通サイズの黒い正方形の容器に、中身の写真やこのキャンペーンに共通の駅弁マークを載せた掛紙を巻く。中身はめはり、サーモン、混ぜ御飯で3個のおむすび、いも煮と漬物、玉子焼、うぐいす豆、さくらんぼ、水まんじゅう。分量たっぷり、お値段ひかえめでお買い得。1年間の販売か。
※2022年4月補訂:終売を追記2012(平成24)年11月3日に米沢駅と食品スーパー「ヤオコー」でデビュー。調製元と法政大学経営学部の小川孔輔研究室との共同開発したコラボ弁当の第3弾だという。ただし2012年の発売時と2017年の購入時で、中身の見た目がまったく違う。法政大学のニュースリリースによると、発売時は竹皮編みの容器を使い850円だった模様。
焼き鳥のイメージ写真が美しい掛紙に包まれた長方形の容器に、生姜飯を詰め、ゆず胡椒で味付けた焼き鳥を並べ、肉団子と柴漬けも載せ、ニンジンやタケノコなどの煮物と玉こんにゃくを添える。柑橘系プラスαの香りがする、視覚では感じ取れない所にある個性が印象的だった。
この駅弁はどうも、2018年に「炙り鶏めし」へ改称し、大学コラボを外して980円に値下げのうえ、山形駅のもりべんの駅弁になった模様。米沢駅の松川弁当店は、2017年にもりべんの経営を引き継いでいる。2020年までに予約限定商品となり、2022年に終売か。
※2023年4月補訂:終売を追記2016(平成28)年の11月から翌年2月までの販売か。当時に各地の駅弁屋の名前で登場していた、既存の4駅弁の組合せ商品の、米沢駅の松川弁当店バージョン。ここでは「華」と「彩」の2種類が出た。この「彩」は同社の駅弁「黒毛和牛牛肉焼売弁当」「山菜栗おこわ」「米沢のまかない牛めし弁当」「まつたけ弁当」の詰合せで、実物を思い当たらないまつたけ弁当を除き、それぞれの駅弁の中身の特徴が取り入れられた。「黒毛和牛牛肉焼売弁当」以外はすべて飯を詰めているので、分量は多めに感じる。2021年時点で季節限定かつ要予約の商品として、公式サイトに掲載されていたが、2022年には消えていた。
※2022年4月補訂:販売を追記2016(平成28)年の11月から翌年2月までの販売か。当時に各地の駅弁屋の名前で登場していた、既存の4駅弁の組合せ商品の、米沢駅の松川弁当店バージョン。ここでは「華」と「彩」の2種類が出た。この「華」は同社の駅弁「黒毛和牛牛肉焼売弁当」「網焼き牛焼肉弁当」「黒毛和牛すきやき牛肉重」「網焼き牛たん弁当」の詰合せで、それぞれの駅弁の中身の特徴が取り入れられた。「黒毛和牛牛肉焼売弁当」以外はすべて飯を詰めているので、分量は多めに感じる。
2012(平成24)年1月の京王百貨店の駅弁大会で輸送販売されたお弁当。既存の米沢駅弁「戦国幕の内弁当」とまったく同じ容器を、山形の花笠まつりを描いた掛紙で包む。中身は牛肉太巻、栗山菜おこわにぎり、牛肉団子、牛焼肉、根菜などの煮物、かまぼこ、玉子焼など。駅弁の名前から、てっきり山形駅の駅弁だと思った。駅弁の名前や掛紙からは思い付かぬ力強い内容と風味だった。価格は発売時で1,100円、2015年時点で1,200円。2015年頃までの販売か。
2012年1月の京王百貨店の駅弁大会と同年7月の仙台駅での「祝・東北新幹線開業30周年記念駅弁まつり」での販売実績があるようだが、その他の日時場所で出てきたことはあるのだろうか。2015年時点でも引き続き、米沢駅の駅弁を名乗りながら、駅弁催事と首都圏のNRE駅弁売店で売られた模様。8月から10月までの販売か。
※2021年2月補訂:終売を追記2012(平成24)年1月12日に販売された、米沢駅弁を名乗る弁当の掛紙。掛紙そのものと中身は、上記の2015年のものと変わらない。消費期限の表示方法と、掛紙では分からないが価格が異なる。
下記の駅弁「山形プレミアム弁当」の第2弾として、2012年春バージョンが、2012(平成24)年2月11日から12日まで東京駅の駅弁売店「駅弁屋旨囲門」で開催された駅弁大会でデビュー。掛紙の絵柄はほぼ同じで、紅葉が桜花に変わり、人が手に持つ食材も差し替えられている。今回の中身は味噌だれの米沢牛焼肉で覆う山形米「つや姫」の白御飯、めはりずし、俵飯、すき焼き、漬け物、玉こんにゃくなど。
こちらは本当に現地での販売がなかった模様で、東京駅や上野駅などでの販売。味は良いし、掛紙も賑やかだし、この駅弁で「つや姫」のうまさを知ったが、米沢駅の駅弁を名乗るのはどうかと思う。7月までに終売。
東京都千代田区の法政大学経営学部小川孔輔ゼミと調製元との共同開発により、2011(平成23)年10月15日から11月末まで、おそらく主に東京エリアで販売された期間限定駅弁。長方形の発泡材容器に、ゼミの先生と生徒を描いたという紅葉柄の掛紙を巻く。中身は山形米「つや姫」の白御飯に米沢牛カルビ焼肉を載せた牛丼と、赤豆の俵飯に赤カブや長ナスなどの漬物と、米沢牛入りの芋煮。
一日200個が新幹線車内、上野駅、大宮駅、米沢駅で販売されたというが、これもまた米沢駅弁を名乗る東京エリア駅弁の一種だろう。今夏に銀座で300人アンケートを取ったり、先の東京駅での第14回東日本縦断駅弁大会で先行販売されたりしたそうで、こうなると山形や米沢はもはや食材の供給元でしかない。味そのものは、牛肉の風味こそ強い味付けで隠れた感じだが、芋煮が常温の駅弁として雰囲気が良いほか、白御飯の力が秀でていたため、今後に現地でも支持を得られそうな気はした。期間中に約1万個を売った模様。
秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2009(平成21)年秋の新商品か。竹皮編みの柔らかく細長い長方形の容器を、中身を示すイメージ写真を商品名とともに印刷した掛紙を巻く。中身は写真と違い山菜がほとんど見えない五目おこわの上にタケノコ煮を載せ、ナス漬、ニンジンやサトイモなどの煮物、ふきみそ、ダイコンの味噌漬を添えるもの。
掛紙、容器、中身とも見栄えはとても良いが、中身は竹皮柄のボール紙で底上げされて半分が隙間である。山菜を探さないと見当たらない飯、その飯を青く染めるナス漬、苦みしかないふきみそと、どうしてこうなってしまうのかと思うガッカリ作。御飯そのものはおいしかったことが、せめてもの救いである。米沢駅で普段買えることは無いようだが、NREの東京地区での駅弁大会ではよく見掛けるレギュラー商品。価格は2011年の購入時で950円、2017年時点で春期販売の900円、2021年時点で950円。調製元公式サイトでは2日前までの予約販売旨書いてあった。2022年までの設定か。
※2023年4月補訂:終売を追記2010(平成22)年4月10,11日に東京駅構内で開催された「駅弁の日 東日本縦断駅弁大会(春)」こと第11回東日本縦断駅弁大会で発売か。黒い正方形の容器を、商品の名前と戦国イベントか何かの写真を印刷した正方形の掛紙で包む。
中身は日の丸おにぎりと五目飯おにぎり、焼肉の串、鮭塩焼、サトイモやゴボウなどと牛肉の煮物、有頭海老、玉子焼とかまぼこ、漬物、抹茶葛饅頭など。煮物と焼物で入る牛肉が旨く、御飯もおかずも付合せも視覚や味覚で良好で、牛肉駅弁にない好感触。
しかし牛肉駅弁ばかりが売れて売られる米沢駅で、この駅弁が本当に販売されているのかどうか。時刻表への掲載はなく、収穫報告は東京駅の駅弁大会と京王百貨店駅弁大会のものしか見られない。調製元への団体予約注文では買えたらしい。価格は2011年の購入時で1,100円、2017年時点で1,200円。2018年までの販売か。
※2022年4月補訂:終売を追記2009(平成21)年のNHK大河ドラマ「天地人」にちなんで、同年の3月1日に発売。正六角形で黒塗りの容器におしながきを置き、表面に直江兼続を、裏面に解説文と家系図を印刷したボール紙でふたをして、ラップの帯で留める。中身は中央に日の丸御飯と蒸し海老のちらし寿司を配し、その周囲を棒だら煮に玉こんと里芋の串刺し、米沢牛串、梅しそ団子と松前漬、米沢牛肉団子、玉子焼とおみ漬、巾着煮で囲む。
普段はどれもシンプルな米沢駅弁らしくない、なかなか複雑な内容。現地では一日5個ないし10個で登場したそうだが、おそらく関東の「駅弁屋旨囲門」にはそれ以上の数量が出荷されているのでは。NHK大河ドラマは日本全国で視聴されるとはいえ、これは米沢の駅弁だと思ってはならないのかもしれない。2010年以降は完全予約制とされる。2011年までの販売か。
NHK大河ドラマと駅弁は、昭和時代からのお付き合い。公式か非公式かはともかく、撮影地では1970年代頃から毎年ほぼ必ず新作駅弁が登場し、仙台駅「独眼竜正宗辨當」などいくつかの秀作は定番化している。最近は大河ドラマの撮影地や主人公ゆかりの地が複数設定されるので、今回の大河ドラマ駅弁も山形県と新潟県の各地で登場しているところ。
秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2005(平成17)年秋の新商品か。ラーメンのどんぶりを模した容器に透明なふたをかけ、中身写真や商品名などを載せたボール紙の枠にはめる。中身は御飯の上に牛チャーシューが2種2枚ずつと、メンマ、ナルト、シナチク、煮玉子、紅生姜など。米沢のラーメン店の味を共同開発で取り入れたそうな。
内容も風味もラーメンがうまく再現されていると思う。一方で米沢駅の牛肉駅弁を脅かすほどの存在になるのは難しいだろう。駅弁催事でネタとして買われる珍駅弁。現地ではほとんど販売されていないという報告もある。1年もたずに消えた模様。なお、2020(令和2)年の秋に同じ名前とコンセプトの駅弁が出現している。
※2021年3月補訂:現況を追記1943(昭和18)年頃のものと思われる、昔の昔の米沢駅弁の掛紙。30銭の停止価格が40銭の公定価格に訂正されており、1943(昭和18)年8月の駅弁の30銭から40銭への値上げを反映したものに見える。国民精神総動員と節米運動という戦時の文字が見えるが、それ以外に戦時を思わせる絵柄や文字は見られない。汽車が普通に山中を走り、おそらく奥羽本線の板谷峠を越えている。
第二次大戦前、35銭の価格からおそらく1920年代のものと思われる、昔の米沢駅弁の掛紙。名称と価格と調製元と注意書きと、風景と名所を描く、当時の駅弁掛紙の標準的な絵柄。松のある風景は、名所案内の2番目「松ヶ岬公園」か。つまり米沢城址のことで、米沢の中心市街地で現存し、サクラの名所として知られる。
30銭の価格から、1922(大正11)年でなく1936(昭和11)年の11月28日17時の調製と思われる、昔の米沢駅弁の掛紙。軍人がスキーをしているように見える絵柄は、不穏な時代の空気を反映したものか、あるいは日本にスキーを伝えたとされるレルヒ少佐がオーストリア=ハンガリー帝国の軍人であったように、当時はそんなイメージを持たれていたか。4箇所記した名所案内にスキー場は無いが、西吾妻山には第二次大戦後に天元台高原スキー場ができた。